東京と日本の中央駅。東海道・山陽・東北・上越・山形・秋田・北陸の各新幹線、東海道・中央・総武・東北の各線、山手線や京浜東北線などの電車が、一日あたり3000本以上行き交い、100万人以上の利用者で終日賑わう。駅弁はJR東日本やJR東海の子会社のもので約100種類とも、エキナカの商品を含め400種類以上とも、デパ地下の弁当を含め1000種類以上とも言われ、さらに全国各地の駅弁も集まり、こちらも日本最大。1914(大正3)年12月20日開業、東京都千代田区丸の内1丁目。
2012(平成24)年かそれ以前から、毎年3月3日あるいは年によってはその前後に、東京駅などで売られる駅弁。今は日本ばし大増ブランドでデパ地下などで売られる弁当かもしれない。今回の2022(令和4)年版は、商品名や雛祭りの絵柄を使う紙帯を巻いた、浅く小柄な正八角形の容器に、酢飯を詰め、タケノコ、菜の花、カズノコ、れんこん、錦糸卵、しいたけ、エビ、イクラ、おぼろ、お麩で覆った。少量で高価な気もするが、駅弁売店に季節感をもたらす存在のひとつである。
調製元が2006(平成18)年から東京駅などで販売する恵方巻きの駅弁の、2022(令和4)年2月3日のもの。この名前では6年ぶりの販売かもしれない。透明なプラ容器に、太く短い太巻きを1本詰め、掛紙を巻く。太巻きの具は、穴子・玉子・高野豆腐・かに風味かまぼこ・胡瓜(きゅうり)・かんぴょう・おぼろの7品目。恵方巻きの具材は7品目である、それは七福神にちなんだものだと紹介する記事もある。
2014(平成26)年6〜9月のJRグループの観光キャンペーン「山形デスティネーションキャンペーン」に向け、同年5月30日に山形県内や米沢駅でなく、東京・新宿・上野・大宮の各駅で発売。山形県内の観光資源の写真をちりばめた掛紙を使用する。
中身は下段4区画がサケの押し寿司、山形米「つや姫」の白御飯、味噌おにぎりの高菜包み焼き「弁慶飯」、牛肉や野菜の煮物、上段の6区画が米沢牛の肉団子、キノコと山クラゲ、豚肉の竜田揚、玉こんにゃくなどの煮物、牛焼肉とイカフライ、様々な漬物。
常温できれいな味と形を保ち、とても良い雰囲気。山形米「つや姫」の駅弁はNREも出したり、自宅でも炊いているが、山形県の駅弁屋が作るほうが、断然に香りが活きると思った。東京での販売は2019年までか。
※2020年12月補訂:現況を追記2017(平成29)年2月に「プレミアムフライデー特製おつまみ弁当」の名前で発売。2018(平成30)年に中身を変えず、名前をこの「特製おつまみ弁当 祭」に変えた模様。
15区画に「枝豆と鶏肉の梅肉和え」「ラタトゥイユ」「玉子焼きと紅白蒲鉾」「鶏団子の甘酢餡」「炙り〆鯖と紅白なます」「三種の煮物」「豚肉の黒胡椒塩炒め」「小鯛の一口ちらし寿し」「キャロットラベ」「牛肉とごぼうの甘煮」「竹輪の磯辺揚げ」「三浦ひじきと油揚げの煮物」「グリ茶の羊羹」「鯖の塩焼き生姜の甘酢漬け添え」「鎌倉ハムのポテトサラダ」で、13種類のおかずとミニちらし寿司と甘味を詰めたと、掛紙に書いてある。この売店で人気になった青森駅弁「ひとくちだらけ」を、都会のセンスで作ったらこうなった感じの、名前どおりのおつまみ弁当。
上記の駅弁「特選おつまみ弁当祭」を、2019(令和元)年9月に買ったもの。名前と値段と容器は同じで、掛紙が赤くなり、中身の半分弱が入れ替わっていた。掛紙の上面から側面へ移動したおしながきを転記すると、「グリ茶の羊羹」「牛肉とごぼうの旨煮」「豚肉の塩炒め」「鶏唐揚げ」「サバの味噌煮」「三崎マグロカツ」、「鶏肉の野菜入りパテ」「浅利時雨煮のせ茶飯」「しらすごま油炒め」「彩り野菜のミートボール明太マヨソースがけ」「三浦ひじき煮」「鎌倉ハムとカリフラワーのトマト煮」「コールスローサラダとスモークサーモン」「四種の煮物」「玉子焼きと紅白蒲鉾」で15区画。JR東日本グループ会社の事業再編という不思議な理由により、2021年3月限りで終売。
※2021年3月補訂:終売を追記2019(令和元)年7月10日に東京駅で発売、8月に上野駅や大宮駅でも発売。東京の駅弁であり、東京で小江戸といえば埼玉県川越が有名であるが、この駅弁はそのどちらでもなく、2015(平成27)年から栃木県栃木市の市役所と観光協会が推進する「とちぎ江戸料理」と調製元による、栃木が主題の駅弁である。掛紙には栃木市内の観光名所がイラストで描かれる。
クチナシで染めた黄色い御飯を、鶏つくね、かんぴょう煮、こんにゃく串、レンコン揚、サメの漬焼、岩下の新生姜などで覆い、菜の花おひたしやサツマイモ甘露煮などを添える。普通の駅弁に見えて、味も自然なのに、実は一風変わったお弁当。10月には中身は秋バージョンに変わったという。2019年末までの販売か。
栃木市は、関東平野で栃木県の南部に位置する、人口約16万人の宿場町で工業都市。明治4年(1871年)の廃藩置県で栃木県と県庁が置かれたが、1884(明治17)年に宇都宮へ県庁が移転し、現在は人口で県内3番目の地位に甘んじる。江戸時代にも日光街道が奥州街道を分岐する城下町であった宇都宮に対して、栃木は脇街道の途中の一宿場町に過ぎなかったが、天皇の代理である例幣使が日光へ行くルートになったり、利根川水系の巴波川(うずまがわ)の水運と陸運との結節点として栄えた。交通や物流の変化で廃れた街並みを、「蔵の町」として観光に活用し始めている。
※2020年12月補訂:終売を追記2017(平成29)年7〜9月のJRグループの観光キャンペーン「信州デスティネーションキャンペーン」に合わせ、その開催期間中に東京、上野、新宿、大宮の各駅で販売。円形の容器の半分は、野沢菜漬や玉子そぼろなどで覆われた茶飯。残りの半分が、長野県産鹿肉のトマト煮込みハンバーグ、ブロッコリー、りんご白ワイン煮。残りが長野県産ぶなしめじソテーと煮物。
茶飯の部分だけで飯が喰え、鹿肉ハンバーグの味は牛豚合挽きなどとほぼ変わらず。エリンギや煮物類などを含め、その風味や内容は、まるで東京駅弁「五目わっぱ飯」のような定番弁当の感覚。期間限定で消してしまうには惜しい、完成度の高い駅弁。キャンペーン期間中に限定せず販売されたが、2019年5月限りで終売。
※2019年6月補訂:終売を追記東京駅構内の商業施設群での、北海道新幹線開業を記念した「北海道AND青森フェア」に伴い、2016(平成28)年3月15日から半月間くらいの期間限定販売か。北海道新幹線のH5系電車の帯色を使う掛紙には、「2016.3.26北海道新幹線開業」のロゴマークがある。中身はホタテ丼、カニいくらちらし、鮭塩焼、野菜炒め、イカしんじょう、ごまどうふなどで、青森や函館にちなんでいるような、そうでもないような。
2015(平成27)年11月1〜30日に、東京、上野、品川、新宿、大宮の各駅で販売。新潟県農林水産部、農業協同組合(JA)、全国農業協同組合連合会新潟県本部(JA全農にいがた)による、新潟米のプロモーション活動の一環。新潟駅の駅弁ではない。
添付のしおりでカラー写真により解説する、新潟のお米農家ユニット「新潟ライスガールズ」が監修したという中身は、神楽南蛮味噌を添えた日の丸御飯、鮭焼漬、鶏照焼、鶏そぼろ入り玉子焼、妻有ポーク入りメンチカツ、サトイモやニンジンなどの炊き合わせ、煮豆など。
米と味噌と鮭とカツが新潟という。近所のスーパーで買える新潟コシヒカリは、他県での新種の登場や、2005年頃からの「コシヒカリBL」への切り替えで、相対的あるいは絶対的に味がずいぶん落ちたと感じていたが、この駅弁の冷たい白御飯は、クールに香ってうまいものだった。
2014(平成26)年12月から翌月頃まで、東京駅で販売か。掛紙に記されたお品書きのとおり、四角い容器に鶏とソーセージのパエリアを詰め、あさり胡麻バター炒め、地中海風野菜煮、ミートオムレツ、アイガモローススモーク、銀鮭のマスタードマヨネーズ、牛ホホ肉のフランドル風、福神漬、メープルシロップケーキを添える。
こんなつくりは、この秋に大塚食品とNREと大船軒が出した共同開発駅弁「PLAY TABLE Bento」そっくり。また、この駅弁の名前に、2001(平成13)年7月から2007(平成19)年まで売られた東京駅弁「O−bento」を思い起こした人が少なくなかったはず。おそらく大船駅でなく、東京エリアで販売されたのではないかと思う。
2014(平成26)年6月14日から個数限定で販売。山形のお米の名前を名乗るが、調製は東京のNRE。4つに区切った容器の2区画に真っ白な御飯を詰め、梅と味噌を添えて、もう1区画に芋煮と果物、残る1区画に焼鮭、玉子焼、みょうがなど。とても出来の良い山形キャンペーン弁当。ただ、肝心の米の味がなぜかいつものNREであり、山形駅弁「やまもり弁当」で感激した味を感じられなかった。3か月間ほどの販売か。
2013(平成25)年12月27日から翌年1月5日まで、東京エリアのNREの駅弁売店で販売された期間限定商品。2011年の年末年始にも、同じ名前で中身が異なる幕の内弁当が販売された模様。調製元は仙台駅の駅弁屋である。
梅干しとイクラとコンブ佃煮を添えた白御飯、サケ類塩焼、かまぼこ、玉子焼、鶏ごぼう巻、海老すり身、春雨きんちゃく、ニンジンやナガイモなどの煮物、帆立貝ひもとカズノコなどの和え物、小茄子漬など。季節の高級駅弁と同じような掛紙と容器と内容と風味を感じる。ふるさとが何か分からなくても、帰省の新幹線での食事に合いそう。
2011(平成23)年3月までに東京地区のNRE駅弁売店で発売か。長方形のプラ製の惣菜容器に、商品名をシンプルに描いた掛紙を巻く。中身は白御飯の上をサーモン焼、ハンバーグ、ゆで卵、コロッケ、エビフライ、ブロッコリーで覆い、インゲンとポテトサラダを添えるもの。
これは何か新しいコンセプトに基づくものなのか。見た目は駅弁で、掛紙にも「EKIBENYA駅弁」のマークがあり、価格はコンビニ弁当で、内容はなんとなくホカ弁で、味はコンビニ以上デパ地下以下。同じようなスタイルの商品が他に2種併売されていた。調製元は愛知県名古屋市に本社を置くスーパーやコンビニ向け惣菜会社。2012年までの販売か。
※2016年9月補訂:終売を追記NREとジェイアール東日本企画との共同開発により、2010(平成22)年2月11日に発売。赤い柄の紙製カップに「元祖」と書いた赤いシールを貼る透明なふたをする。中身は下段が白御飯、ふたと一体になったトレーに入る上段が麻婆豆腐。具は豆腐たっぷり、味は食べると甘く、あとから刺激が湧いてくる四川風。麻婆豆腐の駅弁など、常温でこれだけやる麻婆豆腐など、過去にあったかどうか。
個人的に辛いものが苦手なので、食後には大変なことになり、駅や列車内で食べなくて良かったと思ったもの。駅弁マーク付のすごい奴がデビューしたもので、発売当初はNRE東京5号売店の棚1つを占領したり、4月には女性アイドルグループ「AKB48」の人気メンバーのお気に入りだとテレビで紹介されたりのフィーバーぶりであったが、どうも7月にはその火が消えて駅弁もなくなった模様。
2010(平成22)年秋のJRグループ観光キャンペーン「信州デスティネーションキャンペーン」に向けて、2009年12月1日から2010年3月31日まで販売された駅弁。JR東日本の子会社で長野駅前に建つホテルメトロポリタン長野の洋食料理長と和食料理長がプロデュースしたそうだが、長野ではなく東京で調製され、東京、上野、新宿、大宮で販売される東京の駅弁。長野駅での輸送販売も行われていた模様。
紙と木を貼り合わせた円形の容器に透明なふたをして、野沢菜を版画でたくさん描いたボール紙の枠にはめる。中身は茶飯の上を玉子そぼろと野沢菜炒めで覆い、野沢菜キムチを添えて、おかずに焼き鮭、ダイコンやイカなどの煮物、野沢菜の天ぷら、野沢菜ソテーを載せた鶏グリエなど。野沢菜が油や香辛料で強く味付けされており、雰囲気は素朴やヘルシーからはほど遠いガッツリ系。しかし香りには少々の上品さが感じられた。
野沢菜は長野県下高井郡野沢温泉村に伝わる特産品の野菜。江戸時代の宝暦6年(1756)年頃に野沢の健命寺の住職が大坂から持ち帰った天王寺蕪が、野沢の土に合い突然変異でうまい菜になったと伝えられているが、DNA鑑定でその両者には関係がないという無粋な研究成果がある。長野県や新潟県や徳島県が主な産地。
2010(平成22)年の3月から5月頃までの販売か。薄い木と紙の楕円形の容器にお品書きを載せて透明なふたをして、豚と飛行機が青空を飛んでいるボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上を豚肉の味噌煮、ジャガイモ、カボチャ、ゴボウ、ニンジン、絹さやなどで覆い、ブロッコリーとタマネギを添え、なめことそばの実和えとワインくずもちを付けるもの。豚を除き、アンチファンから駅弁はこれだからと非難されそうな、非常に濃い味付けだった。
これは山梨県とアイオワ州の姉妹都市締結50周年記念として、アメリカンポークを使い山梨県の郷土料理であるほうとう風の弁当にしたもの。1959(昭和34)年に山梨県が伊勢湾台風の被害を受けた際、アメリカ・アイオワ州から35匹の豚が航空輸送で贈られたことから、両者が姉妹州関係を結んだと、パッケージとお品書きで紹介される。
しかしなぜ伊勢湾台風でなぜ山梨県になぜアイオワがなぜ豚を贈ったのか、なぜ山梨県内の駅弁ではなくNRE東京エリアの駅弁なのか、飛行機柄でフレンドシップと来たらフォッカーF27では、など、実物を見ても食べてもさっぱり分からないところ。
あるいは山梨県「山梨・アイオワ友好交流レシピコンテスト募集」の優秀作の商品化なのだろうか。この駅弁にはアメリカ大使館の後援が付いているそうで、在日アメリカ大使館の首席公使であるジム・ズムワルト氏が2010年4月6日に公式ブログで収穫報告を行っている。
2009(平成21)年の夏頃に発売か。発泡材で角を落とした小柄な長方形の容器に、小エビとグリーンピースを振ったチャーハン、焼売、肉団子、タケノコ煮とザーサイを詰め、透明なシートをかけて、駅弁の名前とそのイメージを印刷したボール紙のふたをして、太い輪ゴム1本で留める。
炒飯駅弁の最高峰とされる横浜駅弁「横濱チャーハン」は東京駅や上野駅でも購入できるので、NREが炒飯駅弁を出しても分が悪いし、こちらは中身がそっくりで分量も品数も少なく値段も高いから、比較すれば負ける点しかない。こちらのほうが御飯の味がきつくパラパラ感がないので、こういう味が好きであれば買ってもよいし、少なくとも不味いものではない。現存しない模様。
NREとスポーツ新聞「サンケイスポーツ」を発行する産業経済新聞社がタイアップし、2009(平成21)年4月28日から売り出した、史上初と発表されている新聞付き駅弁。正方形8区画を持つ黒いプラ製トレーを紙箱に収めるスタイルはNREの記念駅弁でよく見かけるスタイル、その箱には星占いのイラストが描かれ、中にはおしながきが入っている。
中身は日の丸御飯、オムライス、五目炊込飯、ハンバーグとマカロニ、菜の花のおひたしとニンジンなどの煮物、プルコギ、蒸し鶏と桜大根漬、コーンとグリーンピースとスモークチーズ。見た目に違い、御飯の多い食事タイプのお弁当。新聞紙面の占いと駅弁の食材がリンクしていると書かれているため、駅弁に付いてきた6月6日のサンスポの24面「イレーネの西洋占星術」を見ると、黄道十二星座の牡羊座から順に「プルコギ」「チキンライス」「炊き込みご飯」「ハンバーグ」「チーズ」「パスタ」「にんじん」「牛肉」「春雨」「グリーンピース」「ゴマ」「鶏肉」とあり、確かにだいたい合っていた。発売3か月ほどで終売か。
※2016年9月補訂:終売を追記2009(平成21)年2月1〜3日に東京駅などで販売された、NREの恵方巻駅弁の4年目版。透明なプラ製の惣菜容器に太巻きを1本収め、商品名と具のリストなどを載せた掛紙で巻き、販売時に割りばしを付ける。中身はきゅうり、かんぴょう、アナゴ、椎茸うま煮、桜でんぶ、カニ蒲鉾、玉子焼を酢飯と海苔で巻いた太巻き寿司。
食べやすいようにカットされてはいないのが恵方巻ならでは。商売繁盛や無病息災を願い、これを節分の日にこの年は東北東の方角を向いて、目を閉じて黙って丸ごとかぶりつくと縁起がよいという。七福神にちなんで具は7種類がよいのだとか。そんなことを知らなくても普通においしくて腹持ちのよいファストフード。この名前で販売したのは、2016年が最後か。
※2020年12月補訂:終売を追記2009(平成21)年2月1〜3日に東京駅グランスタ内「駅弁屋 極」で販売された、NREの恵方巻駅弁の上等版。上記の並等版と概要は何ら変わらないが、こちらの上等版は具のアナゴを愛知県産うなぎ蒲焼に、椎茸うま煮を白胡麻入り沢庵に、桜でんぶを「日本ばし神茂」の御蒲鉾に、カニ蒲鉾をずわい蟹甘酢漬に、玉子焼を「築地すし玉青木」の手焼玉子焼に置き換えたうえで、海苔も「山本海苔店」の滋賀県産焼海苔に替えて、黒いボール紙の箱に収めた。
価格に2.6倍の差があるとはいえ、同じ店が作った同じような太巻き寿司なので、懐の痛み具合で気分を盛り上げないと風味の差が出ないような。しかし高級店で500円の、大衆店で1,300円の恵方巻を売ってもいろいろと問題があるだろうし、東京でも21世紀に入って恵方巻の知名度が上昇して春の節分の風物詩と見られるようになったため、こういうものがそれぞれの駅弁売店に出ることは、駅弁の振興に貢献していると思う。ただ、カラーコピーで刷ったような掛紙の品質だけは、並等版に負けていた。
リクルートの月刊旅雑誌「いい旅見つけた」の企画で、2004(平成16)年7月16日に発売。底を除いて経木でできた駅弁らしい形状の容器に、雑誌のデザイナーな香りを感じるデザインの掛紙をかけて、朱色のひもでしばる。中身は白御飯に南高梅一個と千葉県南富津産の海苔と高知県四万十川産の海苔佃煮を少々、御飯の中にその海苔に加えて鰹節を全面に敷き、おかずは焼鮭、玉子焼、野菜煮物、あさり佃煮など。当初発売の五万個には8ページのしおりが付いた。
調製元の社長、駅弁評論家、旅雑誌の編集部、アンケートや試食会に参加した雑誌の読者の意見を反映したらこうなった。やや量が少ないが価格も控えめ、外観も中身も非常にあたりまえな、しかし上質で現在の駅弁や街の弁当から失われた平凡が、むしろ非凡さを演じる。しかしあまり話題にはならなかった感じ。2004年と2005年に売られた模様。
※2016年9月補訂:終売を追記2004(平成16)年1月16日から3月10日まで東京都内各駅で発売されたNRE史上初の受験生応援駅弁。絵馬札型の五角形の容器に掛紙をかけて紅白のひもでしばる。中身は試験に勝つトンカツ、明るい未来が見通せるレンコン、学習能力を上げるDHAが含まれる鯖照焼、「大学」芋、脳を動かす糖質を含む白御飯の上にはサクラサク桜花一輪を添えるなど、つまり普通の幕の内弁当な中身をネタに能書きを垂れて、受験生の体調に気遣い、かつ縁起をかついだとしている。
そのふたは絵柄こそないものの絵馬札のような掛けひもが付き、割りばしはゴウカクをもじった五角形というこだわりよう。十代がほとんどの受験生が千円もする駅弁を買うか、ここまで気遣われると本番で自滅してしまうのでは、などと思うのは考え過ぎか。今は珍しくない親子同伴受験生の親が好んで食べそう。受験シーズン限定で、2009年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記