東京駅から新幹線で約2時間半。金沢市は石川県の中央に位置する、人口約46万人の城下町。江戸時代に加賀藩の城下町として大いに栄え、街並みや郷土料理で観光客を魅了する。駅弁は国鉄時代からの駅弁屋である大友楼のものや、北陸地方各地のものが売店に並ぶ。1898(明治31)年4月1日開業、石川県金沢市木ノ新保7番丁。
金沢駅の商業施設に入居する駅弁屋の店舗で購入。正八角形の容器に酢飯を詰め、とりそぼろと錦糸卵で覆い、えびや花れんこんなどで彩り、揚げ物と煮物のおかずを添える。この日のこの店舗では最も安価な弁当であり、簡易版かお買い得な商品なのだろう。容器に掛紙をかけてひもでしばる姿は、昔ながらの駅弁にみえる。
笹の葉の色をした紙箱に、本物の笹で具と飯を縦横に巻いた、北陸タイプの正方形の笹寿司を、袋詰めして5個折り重ねる。紙帯に記された中身は「炙り鰤」「天然紅鮭」「能登牛しぐれ」「炙り鯖」「国産穴子」とあり、それぞれの具が正方形の酢飯の板に貼り付いていた。手を汚さずには食べにくいので、列車内での食事には向かないかもしれないが、味も見た目もおしゃれな、お菓子か土産物のようにも見える弁当類。
調製元はこのような笹寿司を、1955(昭和30)年に発売したという。当時に家電のトップメーカーであった東京芝浦電気の、製品のショールームで電気炊飯器を販売していた創業者が、実演で炊いて余した御飯を使い、金沢の寿司をアレンジして販売、これが評判を呼び、1958年に「芝寿し」を創業して笹寿司店にしたとある。
酢飯の半分にタレを染み込ませて、煮穴子を貼り付けた棒寿司を1本、縦横にフィルムで巻いて袋に密封し、たれと生姜と割りばしとおしぼりを含めて紙箱に詰めて、スリーブに収める。味は柔らかくも普通の穴子寿司。細長いにも程があると思う、市販の太めの魚肉ソーセージをもう少し太くしたくらいの、スリムな形状が印象的。
調製元は金沢市内の笹寿司店。金沢駅の商店街ほか北陸3県にチェーン展開するほか、富山駅や小田原駅などの駅弁を常時販売する東京と神奈川のスーパーマーケット「ザ・ガーデン自由が丘」にも商品を卸すため、上野駅で駅弁として親しまれてきたかもしれない。芝寿しは日本鉄道構内営業中央会の会員であり、するとどこかのJR駅で構内営業の権利を持つはずで、駅弁マークを使う駅弁を販売できるが、駅弁を名乗らないし、商品が駅弁と紹介されることもほとんどない。
焼海苔を挟んだ酢飯に、ベニズワイガニの棒肉やほぐし身と錦糸卵を貼り付けた棒寿司を1本、フィルムで巻いて8切れにカットして、さらにフィルムで巻いて袋に密封し、醤油とわさびと生姜と割りばしとおしぼりを含めて紙箱に詰めて、スリーブに収める。マヨネーズを隠し味とする、見た目も味も今風のカニ棒寿司。細長いにも程があると思う、市販の太めの魚肉ソーセージをもう少し太くしたくらいの、スリムな形状が印象的。
ボール紙で組み立てた笹の葉色の容器の中に無公害樹脂のトレーが入り、笹の葉に包まれた鯖と鱒の押し寿司が、紙帯を締めてビニールで個別に包まれた形で5個整然と入る。金沢駅の押し寿司駅弁らしい、やや固めの食感が特徴。緻密な酢飯に寸分違わぬ魚の身、和菓子折のように整然と並ぶ中身や丁寧な包装に、和と史を感じずにはいられない。パッケージに記される「特別調整品」の意味は不明。2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁。価格は2003年の購入時で1,100円、2015年時点で1,150円。現存しないのではないかと思う。
※2017年10月補訂:終売を追記2004(平成16)年7月26日に購入した、金沢駅弁のパッケージ。当時のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」のシールが貼られる以外は、容器も中身も価格も、上記の2003年のものと同じ。
1985(昭和60)年3月10日の調製と思われる、昔の金沢駅弁のパッケージ。昭和時代から二味笹すしが「特別調製品」だったことに驚く。構造は21世紀のものと異なり、富山駅弁ますのすしタイプ。
長持を模した紙箱の中に、ふた付きのトレーを入れる。中身は、あと少し押せば煎餅になりそうなほど固く締まった古代酢使用の酢飯の上に、紅鮭と小鯛で紅白をあしらった身を乗せる押し寿司。レモンの小片が添えられる。春秋の祭礼の際に御馳走として作られるという、加賀の伝統料理だそうな。価格は2002年の購入時で600円、2015年時点では650円。2015年頃までの販売か。
※2017年10月補訂:終売を追記有名駅弁に多用されるボール紙の立体パッケージの中に、密封されたトレーが入る。中身は固く締まった酢飯の上に細かいカニ身と牛そぼろが載るもの。お箸でそのまま食べられるが、プラのナイフも添付する。
金沢駅の駅弁は、同じ北陸本線の富山・加賀温泉・福井・敦賀の各駅の駅弁にに押されてか、どうか知名度が薄いと思う。しかし加賀藩政以来の伝統のなせる技か、とても繊細で芸術的な駅弁を創り出していると感じる。この駅弁もシンプルながら粒のひとつひとつにまで美しさが感じられるような、見た目も味も繊細な仕上がりが、もっと注目されてもいいと思う。2005年頃までの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記