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 旅の友「駅弁」。実際に食べた9,000個以上の駅弁を中心に、日本全国と世界の駅弁を紹介します。

駅弁Q&A

駅弁に関する質問回答集です。ご質問がありましたら、談話室(掲示板)への投稿か、お問合せでお願いします。なお、これらの回答は私の知る限りの内容であり、鉄道事業者や駅弁業界の公式見解ではありません。

(現在の掲載項目)

加熱式駅弁の元祖はどこ?(2007年3月掲載、2021年3月追記)

【Q】ひもを引くと暖まるタイプの駅弁を初めて売り出した駅はどこですか。噂によるとマンガ「ミスター味っ子」が発明したそうですが。

【A】ひもを引くと暖まる、水と生石灰が触れると消石灰になる反応熱で駅弁を暖める機構を初めて採用した駅弁は、1987(昭和62)年5月に兵庫県の東海道本線神戸駅で淡路屋が発売した「あっちっちスチーム弁当(穴子弁当)」が元祖のようです。

寺沢大介氏の漫画作品「ミスター味っ子」では、その作品の中で味っ子がこれを発明したことになっているそうですが、駅弁趣味の世界では定説として採用されていないようです。

なお、温めたり温まる駅弁の元祖は、この「あっちっちスチーム弁当(穴子弁当)」ではありません。古くは蒸気で温めて販売する駅弁や、昭和時代後期には使い捨てカイロと同じように鉄の酸化反応で温まる駅弁がありました。できるだけ出来立ての駅弁を売るようにした調製元もありました。

どうやったら駅弁屋になれるの?(2004年8月掲載、2021年3月更新)

【Q】駅弁屋になって駅で駅弁を販売したいのですが、どうすればいいのですか。

【A】どうすればいいかと質問されましても、私自身が部外者で未経験ですから、なんとも言えません。少なくとも鉄道会社とも弁当業とも無関係な個人や業者が、ゼロから一般的な駅弁屋を立ち上げることはどうも無理なようです。ここで、近年に駅弁へ新規に参入した事例から、その参入パターンを以下のとおり分類しました。

(1)鉄道会社が子会社を作り駅弁を販売させる
 JRグループ各社などの鉄道会社が、列車内や駅構内での弁当や食品類の販売を目的に子会社を設立し、駅弁を仕入れるか調製して販売します。例えば、JR西日本が子会社として設立した、京阪神地区や小倉駅や博多駅などで駅弁も販売するJR西日本フードサービスネットがあります。当然に、部外者がこのパターンで駅弁に参入することはできません。

(2)既存の食堂や弁当屋が駅弁業者となる
 市中の食堂や弁当屋が、鉄道会社から駅弁屋であることを認めてもらい、駅構内で弁当を販売します。例えば、駅前で食堂を営む旅館が「奥久慈しゃも弁当」で駅弁に進出した、茨城県のJR水郡線常陸大子駅があります。駅弁は調製元に加え鉄道の信用も背負いますから、その参入に際する審査や規制は厳格を極めるそうで、このパターンでの新規参入はなかなか見られません。JR東日本の管内では、数年に一度くらいは見ています。

(3)鉄道会社とタイアップして駅弁を販売する
 鉄道会社と共同開発の形で駅弁をつくり、駅や列車内やイベント時に販売します。例えば宮崎県の高千穂鉄道高千穂駅や、山形県の山形鉄道長井駅などで、このような弁当が販売されました。JRグループ各社や大手私鉄を相手に、単身や単体で売り込んでも相手にされないと思いますが、地方や中小の鉄道会社であれば、または地域の自治体や商工会を巻き込めば、参入できるかもしれません。ただ、このパターンで駅弁に参入しても、駅弁が毎日の販売でなかったり、事前に予約をしなければ買えなかったり、すぐに売り止めてしまうケースがほとんどです。高千穂駅や長井駅の駅弁も、あまり続きませんでした。

(4)駅構内の売店に弁当を卸し駅弁を名乗る
 キヨスクなどの駅構内の売店に弁当を卸し、駅弁と名乗り宣伝することで、世間に駅弁と認知させます。例えば静岡県のJR東海道本線三島駅で、駅のコンビニ「ベルマート」で売られる「伊豆山海おぼろ寿司」が、駅弁として知られつつあります。商取引として鉄道会社よりも弁当店と交渉するほうが容易でしょうし、このように売られる地元の弁当は少なくないようですが、弁当でなく駅弁と認識してもらえなかったり、販売が続かないことが多いようです。

(5)駅前に売店か弁当屋を構え駅前弁当を名乗る
 鉄道の駅の駅前か駅付近に店舗を構えて、駅弁屋を名乗り、駅弁を販売します。例えば駅のテナントが「駅弁」と大きく書いた電飾看板を店頭に置いて「くじら弁当」を販売することで、約10年かけて雑誌などに駅弁と紹介されるようになった、千葉県のJR内房線館山駅があります。この場合は参入の困難さよりもむしろ、後ろ盾のない弁当を駅弁と認識してもらうことが困難かもしれません。毎年のようにこのような駅弁が出現し、ほとんど続かないことを見てきています。

(6)駅弁大会に弁当を出品し駅弁と名乗る
 駅構内でも駅前でも弁当を売らず、主に秋や冬に各地のデパートやスーパーで実施される駅弁催事に弁当を卸し、駅弁と名乗ります。どことは書きませんが、実例がいくつも存在します。金銭的な利益は出るかもしれませんが、その商品を除いてどう見ても駅弁とは認識できませんし、少なくとも駅弁ファンの信用は失います。もっとも、駅での実態がない「駅弁」が、催事での販売の好調により、後付けで駅での販売を始めた事例もいくつかあります。

(7)既存の駅弁屋から営業権を譲り受ける
 撤退または廃業を考えている既存の駅弁屋から、営業権を譲り受けて駅弁屋となります。高知県のJR土讃線高知駅や、長野県の中央本線塩尻駅などで、このような調製元の交代がありました。しかし一般的に、主な駅の駅弁屋が撤退または廃業した場合、後継の駅弁屋が現れないか、近隣の駅弁屋が駅弁や売店を引き継ぐことがほとんどです。何らかの参入障壁が存在しているか、または不採算が目に見えて尻込みされているのかもしれません。

なお、駅弁は昭和四十年代以来の衰退産業です。現時点で駅弁のない駅にいきなり駅弁専業で参入しても、先行きはおそらく明るくありません。最悪の場合には潰れて借金を背負います。仕出屋や食堂や弁当屋などでまずは会社の基盤を確立して、それから駅弁を試みるという手順が、無理のないやり方ではないかと思います。

日本以外の国や地域に駅弁はあるの?(2004年7月掲載)

【Q】 日本以外の国で、日本の駅弁のようなものは販売されているのでしょうか。販売されていれば、その国や地域を教えてください。

【A】 日本と同じイメージで見ることができる駅弁は、当館掲載の日本と台湾の他には存在しないようです。それと似たものとして、韓国や中国の車内販売弁当や、イタリアの駅で売られるランチボックスを挙げる人がおり、特急列車の車中食や発展途上国の駅の物売りあたりになると駅弁としての紹介例がほとんどなくなってきます。

個人的に、駅弁の成立には少なくとも次の要素が不可欠だと考えています。
(1)一日十数本以上の中長距離旅客列車が発着する鉄道路線の存在
(2)駅改札の存在及び鉄道事業者の駅構内販売への強力な許認可権および指導権。
(3)弁当文化。一人で持ち運びが可能な容器を使用し、
   調製と消費に数時間の間合いを許し、現地調理なしに食べられる食事の存在。
(4)列車の客室内での食事を許す車内マナー。

旅客を運ぶ鉄道と駅がなければ駅弁はあり得ませんが、それに加え改札口で仕切られた駅構内と、その中で一定期間の商売を営む業者か商人が駅弁を生むと思います。これがない欧州や発展途上国の駅では、旅客が駅舎内や駅周辺のレストランに行ったり、売り子が勝手にホーム上で商品を販売したりして、仮に弁当が売られていても同一ないし類似品の継続的な販売が期待できません。

それに、弁当があり車内で食べられないと駅弁の存在が難しくなります。これには、パンやおむすびの単品ではなく少なくとも弁当やランチボックスの形態で詰められた商品が国民に認知されていること、そしてそれを座席で食べることを許容する文化ないし乗客や列車管理者の理解あることが必要で、意外にもこれが他国にはあまり存在しないようです。一方で列車の食堂車や駅の食堂の充実度は日本の比ではないそうです。

過去にマスメディアの企画でヨーロッパやアメリカで駅弁の販売を試みたケースがあるそうですが、定着することなく消えています。台湾では鉄道趣味の普及や日本の駅弁大会の盛り上がりにより駅弁が活気付きそうで、一方で現在でも一日で一周できる限られた鉄道網を、2006年2月頃に台北・高雄間で開業予定の高速鉄道(新幹線)がさらに縮めることにより、日本と同様の理由で駅弁が衰退する危惧があります。

駅弁は全部で何種類あるの?(2004年6月掲載、2021年3月追記)

【Q】 駅弁は全部で何種類ありますか?

【A】 日本全国に何種類の駅弁が存在するか、多くの方々に興味がある事項だと思いますが、これに対する確固たる回答は誰もすることができません。その主な理由は次のとおりです。

(1)駅弁の定義が確立していない
 駅弁は駅で販売されているお弁当と言えますが、それらのどこまでが駅弁と見なせるか、確固たる定義がありません。駅構内のコンビニの弁当、要予約なお弁当、駅弁大会専用商品、車内販売用弁当、旧国鉄の公式な駅弁屋が駅構内でなく駅前で販売するお弁当など、幅広いグレーゾーンに様々な解釈が存在します。なお、当館の定義は「駅弁入門」に記すとおりです。

(2)駅弁を統括する組織が存在しない
 鉄道の総延長を国土交通省が把握しているような、駅弁の業者数や商品数を把握する団体が存在していません。昭和の頃はかつて国鉄駅の駅弁屋が強制加入させられた国鉄構内営業中央会の、加盟業者数が駅弁業者数、販売駅数が駅弁販売駅数、弁当の種類が駅弁数の根拠とされてきましたが、これでも私鉄の駅弁がサポートされておらず、その後継団体である日本鉄道構内営業中央会は任意加入となり、サポート外の範囲が拡大しました。

(3)駅弁の新陳代謝が激しくなってきている
 駅弁も通常の商品と同じく新商品や発売中止があり、その頻度はますます上がってきているように見えます。年単位や月単位での発売、極端な例では一日限りの駅弁というものまであり、その情報を完全に把握することはほぼ不可能であると言えます。

これらの事情を勘案したうえでおおざっぱに駅弁の種類を推定すると、約2,000〜3,000種類になると思います。「JR時刻表」「JTB時刻表」など市販の月刊大判時刻表に載るものが約千種類、そこに載らない幕の内弁当や私鉄の駅弁が同数程度。駅弁の調製元は最盛期の500社以上からは半減していると思われますが、種類は倍増しています。

なお、当館では資料調査により2010年4月時点での駅弁一覧をまとめ、以後毎年春頃の更新を続けています。約2,200種類の駅弁があると考えています。
全国駅弁一覧

地方の駅弁を東京で買いたい!(2004年5月掲載、2021年3月更新)

【Q】地方の駅弁を都内で買いたいんだけど、いつどこに行けばいいの?すぐに絶対教えてください!!!

【A】このようなご質問が当館に多く寄せられており、個人的には困っているところです。まずは人に質問をする態度から学習していただきたいと思います。

昔も今も駅弁は基本的に現地の販売駅でしか手に入りません。都内に一年中全国の駅弁が集まっているという考えは捨ててください。なお、次のケースでは都内でも地方の駅弁が購入できます。

1.東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」へ行く
 JR東京駅の在来線改札内、中央通路の5・6番ホーム階段と7・8番ホーム階段との間にある駅弁売店「駅弁屋 祭」には、JR東日本管内のものを中心に、全国各地の駅弁が、約200種類も毎日入荷しています。東京でない駅弁をとりあえず食べてみたい場合や、首都圏や東北地方や上信越の主な駅弁でベスト10を組む程度であれば、充分に間に合うと思います。

2.駅弁大会へ行く
 スーパーや百貨店や駅構内での催事として、全国各地の駅弁が輸送や実演で販売されることがあります。多くの方々にお馴染みの光景かもしれませんが、食品事故防止の観点から、その開催時期は1〜2月を中心におおむね10〜3月の間に限られます。毎年1月中旬に2週間の会期で開催され、北海道から九州、時には海外まで約300種類の駅弁を販売する、京王百貨店新宿店の駅弁大会「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」がおすすめです。

3.通信販売で探す
 一部の駅弁屋はハガキやFAXやネット通販で、駅弁の通信販売を実施しています。普段は通信販売を実施していない駅弁屋でも、電話などで相談すれば駅弁をクール便で送ってくれることがあるそうです。やはりこの場合も、食品事故防止の観点から、4〜9月は通信販売を休止したり、駅弁でなく冷凍食品など駅弁の中身や雰囲気を再現した商品を専用に用意するところもあります。

4.車内販売
 かつては上野駅や新宿駅や東京駅を行き先とする新幹線や特急に乗ると、車内販売で列車の始発駅や途中駅で積み込んだ駅弁が買えることがありました。現在は東海道・山陽新幹線を除き、日本中の列車から車内販売がほぼ消えてしまったため、このような手段では地方の駅弁を入手できなくなりました。東海道・山陽新幹線でも、地方の駅弁を車内で販売することはないようです。