新宿駅から中央本線の特急列車で約2時間。北杜市(ほくとし)は山梨県の北西端を占める、人口約4万人の市。甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳や金峰山や茅ヶ岳に囲まれた高原に、農地が広がり、山や緑に観光客が来る。駅弁は大正時代から売られ、平成時代に売店へ「小淵沢駅の名物は駅弁です」と掲示するほどの名物となった。1894(明治27)年12月21日開業、山梨県北杜市小淵沢町。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けて、2020(令和2)年の9月に発売か。焼き物の釜飯向け容器にプラ製のふたをして、商品名を描いた正方形の掛紙をかけ、ひもで十字にしばる姿は、横川駅の名物駅弁「峠の釜めし」に似る。中身は茶飯を鶏肉、ホタテ、シイタケとタケノコとニンジンの煮物、いんげん、ぎんなん、うずらの卵などで覆うもので、やはり「峠の釜めし」とかなり似る。そう思うと、駅弁の名前にも「峠の釜めし」を含んでいる。1960年代以降、北海道から九州まで各地に出現した横川駅弁の類似品の中で、現時点ではこれが最も似ていると思う。味や雰囲気も、それに近い。漬物の別添がないのは、大きな差だと思う。
野麦峠は、かつて飛騨国と信濃国を結んだ鎌倉街道、江戸街道あるいは野麦街道の、現在の岐阜県高山市と長野県松本市を結ぶ岐阜県道と長野県道の、国境のち県境や市境に位置する、標高1672メートルの峠。今では約20km北にある安房峠(あぼうとうげ)を通る国道158号や、その下を抜ける安房トンネルが、岐阜と長野を結ぶメインルートであるが、明治時代か大正時代までは野麦峠が使われ、多くの旅人が歩いて越えた。明治時代には諏訪の製糸工場へ飛騨の女性が出稼ぎに行く道であり、これが国語の教科書や人気の映画の題材になったことで、峠の名は今もよく知られる。出稼ぎや重労働の悲惨さと結び付く形で、知られてしまっている。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2003(平成15)年の秋の新商品か。焼き物の釜飯向け容器に陶製のふたをして、商品名を描いた黒い掛紙をかけて、ひもで十字にしばる姿は、釜飯駅弁の元祖で横川駅の名物駅弁「峠の釜めし」と同じ。中身は茶飯を山菜、鶏照焼、シイタケ、くりなどで覆うもので、これは駅弁の名前のとおり。
名前や掛紙を変えてみたり、容器が陶器であったりプラ製になったり、小淵沢駅や茅野駅を名乗ったりしながら、現地や催事で販売が続く。現地では予約販売か注文販売かもしれない。価格は2003年の発売時で840円、2010年時点で880円、2014年時点で930円、2015年時点で980円、2020年時点で1,050円。
※2022年6月補訂:解説文を改訂し値上げを追記上記の駅弁「八ヶ岳山菜とり釜めし」の、2004(平成16)年2月時点での姿で、2003年の発売当時の姿。容器や中身が一緒でも、掛紙の絵柄が異なるだけで、まるで新作か別バージョンの駅弁に見えてくるもの。駅弁催事向け商品なのだろう、これも駅弁大会で購入した。2006年1月の京王百貨店の駅弁大会では、これが長野県の茅野駅の駅弁と紹介され、さらに「八ヶ岳の山菜馬かめし」というすごい誤記で会場内掲示に載り、ネット上がざわついた。
2016(平成28)年2月の鶴屋百貨店の駅弁大会でデビューか。陶製の本体にプラ製のふたをする釜型容器に、山の風景を描いた掛紙をかける。中身は茶飯を錦糸卵と野沢菜で覆い、鶏肉、タケノコ、シイタケ、きぬさや、うずらの卵、ギンナン、ニンジンで覆うもの。このページにたくさん掲載している、小淵沢駅の釜飯駅弁と同じタイプ。小淵沢駅弁を小淵沢駅以外の場所で見る機会は多いが、外国人観光客で賑わう富士急行の河口湖駅で見るとは思わなかった。これは「五目」で、他に「牛」があったらしい。2017年までの販売か。
※2022年6月補訂:終売を追記この小淵沢駅弁あるいは茅野駅弁の季節の釜飯は、2014(平成26)年度あるいは同年秋の発売だろうか。電子レンジ対応と思われる真っ黒なプラ製の釜に茶飯を詰め、鶏肉やシイタケやうずら卵などの煮物、ワカサギ甘露煮、野沢菜、寒天餅などで覆う。釜飯駅弁として、しっかりしたつくりになっていると思うが、このページにある様々な釜飯と同じく、この商品の主戦場は駅弁催事であると考えられる。現地で買って食べたという話は、ほとんど見られない。これは「冬」版で、他に「秋」と「春」があったらしい。2018年の「春」版をもって、同年の4月頃に終売か。
※2022年6月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2009(平成21)年秋の新商品か。調製元の公式サイトによると、1985(昭和60)年発売の秋季限定駅弁だそうな。焼き物の釜飯向け容器にプラ製のふたをして、金色の掛紙をかけて、赤いひもで十字にしばる。中身は白御飯の上を牛肉煮で覆い、グリーンピースを散らしてゴボウ煮を添えて、さらにマツタケ煮で覆ってウズラの卵を置き、その上に金粉を撒くもの。
金ピカ、牛肉、松茸というコンセプトが明確で、確かに駅弁催事ではなかなか映えている。駅弁売店にあれば宣伝になると思うが、現地では前日までに要予約というし、収穫報告もスーパーとデパートのものしか出てこない、事実上の駅弁催事専用商品。価格は2010年の購入時で980円、2014年時点で1,050円、2015年時点で1,080円。2019年までの販売か。
※2020年4月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2007(平成19)年の秋の新商品か。焼き物の釜飯向け容器にプラ製のふたをして、中身の写真に商品名を上書きする真ん丸の掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身は茶飯の上をホタテ、椎茸、松茸、タケノコ、栗、インゲン、山菜、錦糸卵などで覆ったもの。調製元の公式サイトでは秋季限定発売をうたうが、2月の購入日はどう考えても秋ではない。現地に実態がない、駅弁催事専用商品かもしれない。現存しない模様。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2007(平成19)年の秋の新商品か。加熱機能付き駅弁を思わせる、弁当向けには大きなボール紙の箱の中に、柔らかいプラ製の釜型容器がひとつ収まる。中身は紙箱の写真のとおり、御飯の上に山菜などを敷いたうえでフジザクラポークの豚ひき肉、豚角煮、豚焼肉で覆うもの。
決して分量の多い駅弁ではないが、駅弁の名前どおり大盛の雰囲気がたっぷり。豚焼肉のレア感は他の駅弁では味わえないし、豚肉の品質も良さそう。ただ、パッケージにわざわざ電子レンジのイラストまで掲載して加熱を勧めたり、購入箇所が疑義駅弁の販売に積極的だったり、ネット上での発表や報告状況などを見ると、現地で見られない駅弁大会専用商品の疑念はある。2009年までの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2005(平成17)年の秋の新商品か。焼き物の釜飯向け容器に陶製のふたをして、商品名を描いた正方形の掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身は茶飯の上を鶏肉やごぼうや椎茸や山菜や栗や舞茸などで覆うもので、標準的な釜飯駅弁。色彩のくすみ、あるいは落ち着きは、小淵沢駅の釜飯駅弁の特徴だと思う。風味も同様。
小淵沢駅で釜飯駅弁を見たことがないし、公式サイトにも釜飯駅弁はないし、しかし駅弁催事ではかなり幅を利かせている。このページに挙げた駅弁は全部まとめて、小淵沢駅弁を名乗る催事向け商品なのかもしれない。2011年頃までの販売か。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2004(平成16)年の秋の新商品か。円形の加熱機能付き容器を、賑やかな柄のボール紙にはめる。中身は茶飯の上に錦糸卵を敷き、松茸や山菜やきんぴらやアワビを載せるもの。
「松茸・鮑入り」とはいえ、さすがにその量は極少であり、加熱式駅弁にしては具の種類が多いのに、加熱で風味が活きて出来立てを思わせる。しかし2004年11月現在で、各地の駅弁大会なる催事で売られているにもかかわらず、現地での発売は未定とする。現存しない模様。
※2014年7月補訂:終売を追記2004(平成16)年1月に発売か。焼き物の釜飯向け容器に陶製のふたをして、商品名を描いた正方形の掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身は炊込御飯を錦糸卵、鶏肉、竹の子、椎茸、しめじ、姫竹などで覆うもので、釜飯駅弁の正統。同じシーズンに併売の「山菜鶏釜めし」と、とてもよく似ているので、小淵沢駅の釜飯駅弁は駅弁催事での需要が旺盛なのだろうと思う。駅弁大会対応商品。2004年のみの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記四国を除く全国各地に存在し、特に東北地方や中部地方で多く見られる、釜飯タイプの駅弁の、小淵沢駅バージョン。焼き物の釜飯向け容器に、木製のふたをして、商品名を描いた正方形の掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身は味付け御飯を、鳥もも肉、姫竹、しめじ、赤かぶの酢漬けなどで覆うもの。見たまんまの味が楽しめる。翌年か翌々年には「山のふもとのとり釜めし」に改称したのだろう、掛紙の絵柄が同じである。