新宿駅から特急あずさで2時間強。諏訪市は長野県の中央部にある人口約5万人の城下町で、精密機械工業やハイテク産業が集積する工業都市であり、諏訪湖に面して諏訪大社を擁する観光地。駅弁は1906(明治39)年からの駅弁屋が1972(昭和47)年に廃業、辰野駅の駅弁屋が進出したが2003(平成15)年頃に廃業、塩尻駅の駅弁が置かれたが2014(平成16)年頃に終了。2020年に下記のとおり「諏訪弁ほいじゃねェ」が出現。1905(明治38)年11月25日開業、長野県諏訪市諏訪一丁目。
2020(令和2)年1月24日の発売。上諏訪駅前の「れすとらん割烹 いずみ屋」、諏訪で1956(昭和31)年に創業したラーメンチェーン店「テンホウ」、2017(平成29)年に開業した上諏訪駅徒歩5分のゲストハウス「TATAMI」の3者が、諏訪の食と観光の魅力をアピールしようと弁当を開発し、JR上諏訪駅のコンビニエンスストア「NEWDAYS」で売られるようになったもの。調製はいずみ屋が担当。
掛紙には諏訪の寺院と紅葉の写真が使われる。6区画の中身は、ワカサギ唐揚と飯、川エビ煮付と飯、コイの甘酢あんかけ、野沢菜餃子と豚味噌焼、しみ豆腐、カリンの寒天やリンゴなど。この掛紙と中身は、発売1年未満ですでに何度か変わったという。諏訪の駅弁として食べて印象的で、それでいてそんなに癖はなく、そして他の事例ならばとても続かなそうな手の込んだものが、一年近くも駅売り弁当として続いていることもまた印象的だった。
10月にはJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2020」へのエントリー、第1位の駅弁大将軍を受賞した。今まではよく知られた駅弁やその派生品が受賞し、話題性では箔を追加したに過ぎなかったこのイベントで、調製元ともども新規の駅弁が受賞したことで、約10年前にJR九州管内で起きたように、新たな駅弁ブームを創出できるかどうか。
この駅弁は上諏訪駅では、2022年の秋までに終売の模様。その1年後の2023年12月、公式サイトで販売終了の理由が食品衛生法の改正と、駅売店での販売に「お弁当の卸販売の資格が必要」となったことであることが明かされた。
※2024年9月補訂:終売とその理由を追記1995(平成7)年9月9日7時の調製と思われる、昔の上諏訪駅弁の掛紙。国土地理院の地形図が掛紙の絵柄となっている。この杣人弁当は上諏訪駅を代表する駅弁で、御幣餅や鯉甘露煮が入った幕の内弁当だった。
1970年代のものと思われる、昔の上諏訪駅弁の掛紙。諏訪湖のほとりの高島城の、1970(昭和45)年に建てられた復興天守を描く。
昭和30年代頃の調製と思われる、昔の上諏訪駅弁の掛紙。当時の上諏訪駅の駅弁屋はすでにないが、同じ諏訪湖を沿岸として、やはり駅弁屋が消えた岡谷では、うなぎ弁当を名物駅弁化する動きがあり、昔からの地域の名物なのだろう。
1934(昭和9)年1月21日18時の調製と思われる、昔の上諏訪駅弁の掛紙。当時の人々はこんな格好をしてスキーを楽しんでいたことや、当時から霧ヶ峰(霧ヶ峯)がスキーの名所だったことが分かる。
1931(昭和6)年8月3日5時の調製と思われる、昔の上諏訪駅弁の掛紙。水面と笹藪と蛇籠で諏訪湖を描いたように思えるがどうだろう。ここでの名所は、諏訪湖畔温泉遊覧地、官幣大社諏訪神社、高島城跡。調製元の名前と駅名が温泉マークに入る。
1928(昭和3)年9月3日の調製と思われる、昔の上諏訪駅弁の掛紙。下記の1927年のものとまったく同じ、諏訪湖と富士山と八ヶ岳を描く構図を、黄色い版を追加した2色カラーで表す。左右にあった注意書きも改訂。貝殻の調製元表記や、専用欄が風景に紛れ込む調製印と、工夫された絵柄が興味深い。
1927(昭和2)年3月8日の調製と思われる、昔の上諏訪駅弁の掛紙。歌川広重「不二三十六景」信濃諏訪湖に似た構図で、諏訪湖と富士山と八ヶ岳を描く。ここでの名所は、諏訪大社と諏訪湖の納涼と高嶋城跡。
おそらく1920年代、大正時代末期か昭和時代初期のものと思われる、昔の上諏訪駅弁の掛紙。諏訪湖と富士と八ヶ岳を描いたのだろう、江戸時代かそれ以前から現在まで親しまれる構図。上記の掛紙「上等辨當」と、色は違えどまったく同じ絵柄。
おそらく1920年代、大正時代末期か昭和時代初期のものと思われる、昔の上諏訪駅弁の掛紙。諏訪湖と富士と八ヶ岳を描く構図は、上記の掛紙「御壽司」「上等辨當」と同じで、色が違う。「、色は違えどまったく同じ絵柄。「並等辨當」や「御辨當」でない「普通辨當」の名は、当時の鉄道省の規程にあるものの、この名をそのまま使う事例は珍しいと思う。
新宿駅から特急あずさで2時間強。下諏訪町は長野県の中部で諏訪湖に面する、人口約2万人の門前町(鳥居前町)。古くから諏訪大社下社と下諏訪温泉があり、中山道と甲州街道の下諏訪宿が位置する。下諏訪駅の駅弁があったと聞いたことはないが、小淵沢駅や塩尻駅などの駅弁が売られたことはあるらしい。1905(明治38)年11月25日開業、長野県諏訪郡下諏訪町広瀬町。