2012(平成24)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で水了軒の大阪駅弁「八角弁当」とともに販売されていたお弁当。ふたまで陶製の釜飯駅弁タイプ容器に、マスコットキャラクター「うながっぱ」など岐阜県多治見市のことを書いた掛紙を輪ゴムで留める。中身はワサビ飯の上を錦糸卵と刻み海苔で覆い、ウナギ蒲焼きを刻んで並べ、ワサビ味噌とキュウリ漬物を添えるもの。つまり、ひつまぶしのようなもの。中国産と明記されるウナギがとろけるおいしさだった。
調製元の公式サイトによると、この弁当は2011年7月ないし8月から多治見駅の駅ビル「アスティ」の惣菜屋で販売し、名古屋駅や水了軒ブランドでも販売予定とある。販売予定のまま1年が過ぎたと思う。岐阜県大垣市の惣菜屋が大阪駅弁の水了軒を2010年に取得しているため、「八角弁当」とこれが併売されていることについては不思議ではない。購入時かその春までに売りやめた模様。
掛紙に書かれるとおり、岐阜県多治見市では2007年8月16日、埼玉県熊谷市とともに最高気温40.9度が観測され、1933(昭和8)年7月25日に山形県山形市で観測された最高気温記録40.8度を74年ぶりに更新した。掛紙に描かれる「うながっぱ」は、これを受けて観光振興の目的で創作されたキャラクターである。
※2017年4月補訂:終売を追記名古屋鉄道の新岐阜駅(当時)構内のおむすび屋台で販売されていた握り飯。鰻蒲焼の具が見えるように御飯を海苔で包むという最近流行のスタイルのおむすびをひとつ、おむすび型のビニール容器に詰めたもの。駅弁と呼べる品物ではないが、御飯の風味が良かったことと、新岐阜駅に駅弁がないので、おまけで紹介。
明知鉄道が2007(平成19)年5月から恵那、岩村、明智の各駅で販売しているおせんべい。大きさが直径6センチ程度の、ヒマワリのタネを混ぜたシナモン風味で甘めの小麦粉せんべいを個別包装して、せんべいのしおりと鉄道のしおりとともに袋詰めする。他に「ピーナツ」「パンプキンシード」「ココナツ」で計4種類があり、6枚入りで250円、10枚入りで350円。電話注文による代金引換販売でも入手可能。
1985(昭和60)年11月に国鉄の廃止対象線であった明知線の恵那駅から明智駅までの25.1kmを転換した明知鉄道は、同様の形態で誕生した他の第3セクター鉄道会社と同様、毎年の赤字に苦しんでいる。2006年11月に千葉県の銚子電気鉄道が廃線の危機でぬれ煎餅の購入を呼び掛けたことが話題になり売り上げを伸ばしたことにあやかろうと、中津川の煎餅屋から商品を仕入れて鉄道せんべいとして販売を始めたもの。赤字の解消とまではいかないが、品切れを起こすほどの人気だそうな。
名古屋駅から東海道線の快速電車で30分ちょっと。大垣市は岐阜県の南西端で濃尾平野に位置する、人口約15万人の城下町。地下水が自噴し河川が入り組む水の都で、繊維から電子へ移行した産業都市でもある。駅弁は19世紀末に相次いで進出した構内営業者がいたが、1990年代までになくなった。1884(明治17)年5月25日開業、岐阜県大垣市高屋町一丁目。
昭和30年代頃の調製と思われる、昔の大垣駅弁の掛紙。駅弁の名前は新字体なのに、価格が「百園」と旧字体。東京駅と大垣駅を結んだ夜行快速列車「ムーンライトながら」で大垣駅に乗り降りした度に、ここに駅弁があればよいのにと思った。ただ、もし駅弁が残っていても、春夏冬の「青春18きっぷ」の利用期間は人気列車の乗換競争や席取り合戦と混雑で駅弁どころではなく、そうでない期間は利用者が少なかったようで、駅弁があっても売りにくかったかもしれない。
35銭の価格から、昭和14年でなく1925(大正14)年1月17日の調製と思われる、昔の大垣駅弁の掛紙。イラストで大垣城と養老の滝、そして交通案内で谷汲山が、名所として記される。
※2024年8月補訂:販売年の訂正