2005(平成17)年11月14日に新富士駅と富士宮駅で発売した、史上初のやきそば駅弁。現地版は加熱機能付き容器を使用して980円で売られるが、写真は百貨店駅弁催事での実演販売版。竹皮柄の紙容器に焼きそばを詰めて錦糸卵を添え、その隣に笹の葉を敷いて桜海老おにぎりと煮イカと有頭海老を置き、ワサビ茎を付ける。
近年に熱い地域おこしB級グルメとして知名度を爆発させた富士宮のやきそば。そのコシのある麺が見事に再現され、暖かくても常温でもうまい。それに劣らず、やきそばの味を引き立てながら腹を満たす御飯等の追加で、弁当としての体裁も整える。
現地では人気の駅弁となっており、メディアでの紹介例も多い。しかしゼニに厳しい食いだおれの街で、やきそばへの900円の値付けは無謀だった。上記のとおり中身は単なる焼そばに終わっていないのに、折込チラシで主役を演じたのに、実演ブースは閑古鳥。催事場ではまったく駄目で、現地でこそ映える駅弁。
価格は2005年の発売時や購入時で900円、2015年時点で加熱機能付き容器を使い1,000円。現地では通常、加熱機能付き容器のものが売られるようで、この写真のような加熱機能を持たない容器での販売は、駅弁催事での実演販売に限られる模様。
※2015年10月補訂:現況を追記駅弁がほとんど売られていない駅弁催事で、代わりに買った催事用富士宮やきそば。ネギやタマネギなどを混ぜて炒めた焼きそばに目玉焼きを置いて、桜えびをまぶして柴漬を添えて500円ちょっと。味は見たまま。掛紙記載の調製元情報は公式サイトのものと違うのだが、駅弁でないので詮索はしない。
焼そばは高くてこのくらいの価格だという固定観念を催事場で覆すのは、1社1駅弁の力では難しいといと思う。しかし、そばならともかく焼そばだけ容器に詰めても駅弁には見えないだろう。催事場では苦戦が続いていると見える上記駅弁「極富士宮やきそば弁当」の参考として収蔵。
静岡地区の駅のキヨスクで、幅広く売られているらしい駅売り商品。細長い容器に木目調の紙ぶたをして、割りばしを置いて輪ゴムでしばり、掛紙を巻いてセロテープで留める。中身はアジの押寿司1本が、笹の葉を敷いて、レモンと生姜を載せて、醤油を添えて置かれるもの。味はまあまあ。雑なつくりに手作り感がある。
駅弁としての紹介例はないと思うが、シンプルな掛紙にシールでない調製印があるなど、所属駅が不明な点を除き、他の静岡県内各地の駅弁より昔ながらの駅弁らしい感じも受ける。東海道興津宿のシールが貼られ、調製元は静岡市清水区興津で旧東海道に面する割烹旅館。東海道本線興津駅の駅弁とするのが、ふさわしいか。
JR東海道新幹線と東海道本線の三島駅に隣接する、伊豆箱根鉄道の駿豆線(すんずせん)の始発駅。伊豆長岡や修善寺へ行ける電車が毎時2〜3本出るほか、一日2往復の特急列車がJR線に乗り入れて東京駅へ向かう。この駅で独自の駅弁はないが、下記のとおり2017年に駅弁が売られた。1934(昭和9)年12月1日開業、静岡県三島市一番町。
2017(平成29)年3月5,11,12,18,19日の5日間に、伊豆箱根鉄道三島駅と特急列車「踊り子」105、109号の三島田町駅〜修善寺駅の車内で、各日30個ずつを販売。伊豆箱根鉄道駿豆線沿線の3市1町と鉄道会社で構成する「駿豆線沿線地域活性化協議会」と静岡県が、地元食材を使用した駅弁をきっかけに伊豆半島や駿豆線沿線の観光地に足を運んでもらおうと、三島市内のホテルとともに開発した「駅弁」。続いて3月18〜20日と25,26日には「いずっぱこ桜弁当満開」が、伊豆長岡駅と修善寺駅と踊り子号で販売されたという。
7つのくぼみを持つ、透明な正六角形のプラ製容器をふたつ重ね、掛紙を巻いて、様々なチラシとともに紙袋に収める。中身は一方が桜おこわ、梅おこわ、白米、菜飯、桜海老ご飯、鯛ご飯で6個の手まり飯と漬物、他方にウナギ蒲焼や桜海老玉子焼や金目鯛や焼き菓子など、同じサイズのおかずが7個分。見栄えと香りがとてもおしゃれで、こんなに少量な弁当を、2000円で買おうと思う客の発掘が最大の課題だと思った。
伊豆箱根鉄道の駿豆(すんず)線は、静岡県内で三島駅と修善寺駅との間、19.8kmを結ぶ鉄道。路線図だけを見ればローカル線に見えて、時刻表だけを見れば東京駅から特急列車「踊り子」2〜3往復が乗り入れる観光路線に見えるが、実態は地元に根ざした都市鉄道。鉄道会社が新車で買った3両編成の電車が各駅停車で、通勤通学客などを乗せ、全線を40分弱で結ぶ。修善寺駅に名物の駅弁があるとはいえ、駅弁の需要や必要性はあまりないように見える。
静岡から普通列車で約1時間。袋井市は静岡県西部で太平洋遠州灘に面した人口約9万人の宿場町で、農業や工業がさかんなほか、近年はサッカースタジアムや花火大会で知名度を上げている。駅弁は地元の結婚式場「さのや会館」が2004年に開発し、改札外駅舎内のコンビニで販売されたが、2006年の春までに駅売りがなくなった模様。1889(明治22)年4月16日開業、静岡県袋井市高尾字三門。
2004(平成16)年7月1日に袋井駅で発売。第二次大戦後では初めて思われる、静岡県内のJR駅での新規参入の駅弁。といっても駅や鉄道会社に公式に認められてはおらず、駅舎内のコンビニの取扱商品のひとつという扱い。しかしファンやメディアからは駅弁と認識されていると思う。当初は団体予約を除き金土日曜日に一日5個が販売されていたが、後に完全予約制。全国観光土産品連盟推奨品。
駅弁のパッケージには見えない、花火大会の写真をふんだんに使った大きなボール紙箱に、二段重ねの円形の容器を詰める。中身は下段が桜海老と錦糸卵と刻み海苔とシラスをまぶして花火に見せた御飯、上段が花火型にくりぬいた花レンコンやニンジンに、イイダコやコンニャクや玉子などでも花火を演出し、焼き魚や煮物やオレンジなどを添える。感想は「盛り沢山」の一言。
袋井の花火大会「ふくろい遠州の花火」は、実質1995年開始と歴史は浅いが、袋井商工会議所とその会員の強力なプロデュースにより、わずか十年程で静岡県一、全国屈指の大規模花火大会に成長した。近年は三万発の花火と35万人の人出で賑わう。
※2007年5月補訂:予約制化を追記静岡駅から電車で40分の、JR東海道本線の吉原駅に隣接。1966年に2市1町の合併で富士市へ吸収されるまで単独で市制を敷いた吉原は、静岡県の東部で駿河湾に面した宿場町。江戸時代の宿場町が中心市街地に更新されたほか、工業の発展で国鉄駅と町や工場を結ぶ鉄道ができた。駅弁はJR駅でなく岳南電車の駅で2019年に生まれ、しかし翌年のコロナ禍で市販を停止。1949(昭和24)年11月18日開業、静岡県富士市鈴川本町。
岳南電車の「夜景電車」5周年を記念し、2019(令和元)年9月14日に発売された、岳南電車史上初の駅弁。夜景電車の運行時に予約販売されるほか、土曜日に限り11時以降の吉原駅での受取で事前予約により販売される。長方形の容器で白飯をシラスで覆い、イワシ竜田揚の棒を1本載せ、玉子焼、小松菜おひたし、大根桜漬を添付する、駅弁らしい内容。シラスとイワシが味よりは香りで風味を出す、最高のシラス駅弁。ただ、立地と売り方から、知名度を広げようがない存在である気がする。
調製元は富士市内の電機部品工場の水産加工部門。翌2020年からの政府の新型コロナウイルス感染症対策により、駅での予約販売が休止され、そのまま市販をやめてしまった。鉄道イベントに出てくることはある。
岳南電車は、静岡県の富士市内で吉原駅と岳南江尾(がくなんえのお)駅との間、9.2kmを結ぶ鉄道路線と鉄道会社。1〜2両の電車が約30分毎に走り、全10駅を約20分で結ぶ。沿線工場の貨物と従業員の輸送を担ったが、車社会化で貨物や旅客を自動車に奪われたうえに、JR貨物の合理化のあおりを受けて2012(平成24)年3月に貨物輸送がなくなり、廃線の危機を迎えた。以後は富士市の補助金により運行が続く。観光の資源も要素もない路線に客を呼び込むため、富士山が見える、工場夜景がきれい、クリスマス装飾など、鉄道の存続のための話題づくりに余念がない。
※2023年11月補訂:終売を追記静岡駅から東海道本線の列車で約30分。東海道本線と大井川鐵道の乗換駅。金谷駅がある島田市は、静岡県の中部で大井川が流れる、人口約9万人の宿場町。江戸時代に幕府が大井川の架橋を禁止したことで、その両岸にある嶋田と金谷の宿場町が大いに栄えた。JRの金谷駅に駅弁はないが、国鉄時代の1970年代や1980年代に静岡駅の駅弁が売られたことがある。1890(明治23)年5月16日開業、静岡県島田市金谷字新町。