これは駅弁でなく、鉄道銘菓とも言い難いが、大分の菓子に鉄道の駅と列車を組み合わせており、駅売りが考えられるので収蔵。薄焼きの黒ごま小麦粉せんべいが14枚、個別包装で入っている。2008年に姫路へ多くの観光客を集めた第25回全国菓子大博覧会で、名誉総裁賞を獲得したそうな。あまり知られていない大分の郷土料理で、小麦粉を使ったおやつ「やせうま」を焼いたものだろうか。
掛紙には、1989(平成元)年3月に博多駅〜由布院駅〜別府駅で運行を始めた観光客向け特急列車「ゆふいんの森」と、1990(平成2)年12月に竣工した由布院駅の駅舎を描く。1987(昭和62)年4月の分割民営化で国有鉄道から転換したJR九州が、古い急行形気動車の車体を深緑色のオールハイデッカーに載せ替えたり、有名デザイナー仕様でギャラリーを備えて改札口を廃した駅舎を建てたもの。鉄道の営業の常識を疑うこの試みは、バブル経済の頃に大いに注目された。
これは鉄道の駅弁でなく、国道388号沿いの「道の駅かまえ」で販売されていたお総菜。駅弁、空弁、速弁に次ぐ「船弁」として開発したといい、商品名を描いた紙帯に船弁と2回書く。中身は四角い棒状の酢飯に、地元の養殖ブリの薄切りを炙ったものを貼り合わせたもの。煮たり生で食べることが多い魚の、また違った香りと食感を楽しめた。
調製元は、蒲江の漁師が10人集まり国と県の補助金を得て2005年に立ち上げた食品加工販売業者。「漁師の船弁プロジェクト」としてブリやヒラメを使った弁当を開発し、道の駅やイベントなどで販売しているという。
1974(昭和49)年2月指定の日豊海岸国定公園は、大分県南部と宮崎県北部にまたがる、太平洋と瀬戸内海との間にある豊後水道に面したリアス式海岸。翌年に国道に指定された国道388号がここを縦貫するが、公共交通機関の足はほとんどなく、時刻表で旅をする限り訪れる機会を持てない。そもそも、豊後の国の大分県と日向の国の宮崎県は、時刻表を見ても分かるとおり交流が少ない。訪れてみれば良い魚と地形と海があるのに、ここへ旅に出たという話をさっぱり聞かないのは、すこしもったいないと思った。
これは鉄道の駅弁でなく、大分自動車道湯布院インターチェンジの出口真正面にある「道の駅ゆふいん」で買えた、道の駅弁のようなもの。酢飯とサバを貼り合わせて8切れにカットした焼きサバ寿司が、ラップと竹皮に包まれる。小柄なのに、なかなかの値段。価格の札に切れ目を入れたことから、道中の弁当というよりはむしろ、土産物として売るのだろう。
博多から特急列車「ソニック」で約1時間半。中津市は大分県の北西端で周防灘に面した、人口約8万人の城下町。江戸時代に豊前国中津藩の城下町として発展、明治時代に小倉県から福岡県を経て大分県に編入され、繊維工業から製鋼業を経て自動車などの重工業都市になる。福沢諭吉と唐揚げで知られる。駅弁は1942(昭和17)年に大分駅の駅弁屋が支店を出して販売したが、1998(平成10)年頃に撤退した。1897(明治30)年9月25日開業、大分県中津市大字島田。