札幌駅から函館本線の普通列車を乗り継いで約1時間半。現在は駅員もいないような駅であるが、かつては函館本線が岩内線を分け、急行列車も止まる主要駅であった。駅弁は昭和時代の戦前から末期まで売られた。その後も当時の駅弁屋が駅前に商店を構え、かつての駅売り銘菓「トンネル餅」の販売が続けられた。1904(明治37)年7月18日開業、北海道岩内郡共和町小沢。
1904(明治37)年の小沢駅の開業とともに生まれた、かつての駅売り銘菓。手のひらサイズの経木折に、煉瓦積みのトンネルと蒸気機関車を描いた古めかしい掛紙をかける。中身は上新粉を練って蒸して砂糖を加えた、関東地方あるいは東日本で「すあま」と呼ばれる、マシュマロとういろうを足して2で割ったような、柔らかい和菓子が10個入る。駅前の国道に面した「伯洋軒末次商店」での販売。2010年の訪問時にこの商店は、トンネル餅の販売のみで営業していた。価格は2010年の購入時で400円、2022年時点で450円。
現在の小沢駅は急行列車や長距離列車が止まるどころか経由さえもしない、駅員もいない閑散とした駅。しかし過去には文字通りの函館本線として、函館と札幌方面とを結ぶ列車が多く発着したほか、岩内へ至る岩内線の分岐駅でもあり、鉄道の要衝とは言わないが主要駅のひとつであった。トンネル餅もそんな駅構内で立ち売りにて販売されていたそうな。調製元はかつて小沢駅の公式な駅弁屋でもあった。
函館本線の小樽駅または余市駅から長万部駅までの区間は、2030年度末を目標とする北海道新幹線の新函館北斗駅〜札幌駅の開業時、あるいはその前に廃止されることが見込まれ、その際にはトンネル餅も売り止めると、2022年3月にHBC北海道放送のニュースで放送された。4月には来年末か来年秋頃の終了とSNS上で紹介された。調製元は経営者家族の入院により6月で閉店、トンネル餅は惜しまれる時間なく終売となった。
※2022年8月補訂:終売を追記