東京駅から東北新幹線やまびこ号で約2時間半。一関市(駅名は「一ノ関」で市名は「一関」)は、岩手県の南端に位置し、北上川沿いの北上盆地を中心街とする、人口約11万人の城下町。駅弁は明治時代からの駅弁屋のものが売られ、新幹線改札付近と西口駅舎に駅弁売店がある。1890(明治23)年4月16日開業、岩手県一関市深町。
2022(令和4)年10月15日に一ノ関駅で発売。JR東日本盛岡支社の鉄道開業150年記念「鉄道の日」関連イベントの一環で売り出した。竹皮の柄を印刷した市販のボール紙製容器に巻く、山と鶏と鉄道車両の絵柄を持つ掛紙と、簡単な絵柄のお品書きは、JR一ノ関駅の社員がデザインしたという。岩手県産鶏肉の照り焼き入りおむすび2個、若鶏のふっくら唐揚げ、玉子焼き、煮物、桜漬け。鶏肉をたっぷり感じられる、おにぎり弁当タイプの駅弁。東京駅で売らない、「駅弁味の陣」にエントリーしない、スーパーやデパートの駅弁大会に出すわけでもない、通信販売向けでない、仙台駅以外の東北地方の新作駅弁は、今ではとても珍しい存在だと思う。
2023(令和5)年の4月8日から16日まで、一ノ関駅と盛岡駅で販売。こうやって東京駅でも買えた。駅弁の日に合わせ、日本鉄道構内営業中央会の会員のうち26社が、この年の4月10日から各社の駅売店などで販売した、駅弁の日記念のおにぎり駅弁の、一ノ関駅バージョンとして販売。他社とのタイアップはないが、駅弁カードは付いてきた。掛紙の絵柄は異なるが、名前と容器と中身と価格は上記の駅弁「鶏むすび辨當」と同じ。鶏照焼のおむすび2個と、鶏唐揚、玉子焼、煮物、大根桜漬。
下記の駅弁で、かつての一ノ関駅の駅弁「鶏舞弁当」が、2017(平成29)年7月の東京駅で買えたもの。茶飯を鶏照焼やタケノコなどで覆い、笹かまぼこや山菜などを添える中身は、以前の復刻版や、おそらく現役当時と同じ。掛紙に「復刻版」の記載が加わっており、今後は適宜あるいは常時、販売されるのだろうか。こんな中身と味と価格の鶏飯であれば、レギュラー商品に戻してもいいような。
2010(平成22)年10月9〜11日に東京駅で開催された「第12回東日本縦断駅弁大会」で販売された、1990年代頃まで販売されていたと思うかつての一ノ関駅の駅弁の復刻商品。長方形の容器に透明なふたをして、絵柄が古めかしい整合系の掛紙をかける。中身は岩手県産ひとめぼれの茶飯の上に鶏照焼スライスを貼り、タケノコとシイタケも置き、笹かまぼこ、山菜、サクランボなどを添えるもの。現存してもおかしくなく、復活を切望するほどでもなく。
駅弁の名前に付いている「鶏舞(とりまい)」とは、掛紙に書かれているとおり一関地方の郷土芸能。南部神楽の演目のひとつであり、岩戸開きで夜明けを待っていた鶏たちが喜び舞い踊るということで、掛紙のように派手に着飾った少年少女が舞台や祭りで飛び跳ねる。北上川の中流域には、いろいろな名前でこのような郷土芸能が各地に存在していると思う。
1980(昭和55)年9月12日11時の調製と思われる、昔の一ノ関駅弁の掛紙。この絵柄が上記のように復刻された。東北新幹線の開業に向けて1976(昭和51)年から国鉄と東北六県が実施したキャンペーン「北へ向かって」と、1978(昭和53)年11月からの国鉄の旅行キャンペーン「いい日旅立ち」のロゴマークが入る。
2017(平成29)年1月の京王百貨店の駅弁大会での輸送販売までにデビューか。白御飯を牛肉で覆い、ししとうで彩り、玉こんにゃくとガリを添える、シンプルな内容。下記の駅弁「あぶり焼き和牛弁当」と「ひふみ弁当」から、コンセプトを得ていると感じる。
この普通の牛肉駅弁に見える牛肉に、国産黒毛和牛の門崎熟成肉、「60日以上の枯らし熟成後、ウェットエイジングにてさらに2週間熟成させた国産の黒毛和牛のみを使用」したという。これはうまい牛丼だと思う。その理由が熟成なのか、肉質なのか、タレなのかは分からない。2019年までの販売か。
※2020年4月補訂:終売2013(平成25)年に900円で発売か。白御飯を「豚肉の南部焼き」なる薄い豚焼肉で覆い、煮物と玉子焼とポテトサラダとゴマ寒天と大根桜漬を添えるもの。香りも臭みもないクリーミーな豚肉を、ゴマとタレでいただく、なんかうまい感じで、安価でお得。販売は断続的か、東京への輸送販売向け商品かもしれない。南部焼きとは生姜焼きのようなもので、肉に下味を付けて、ゴマに和えたりまぶしたりして焼くものだとか。調製元が2020年4月に休業のち廃業したため、この駅弁もなくなったはず。
※2020年12月補訂:終売を追記JR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2015」の開催に向けて、2015(平成27)年8月までに発売。白御飯の上を、牛肉の炙り焼きとドライタマネギで覆い、牛肉のハンバーグを置き、牛すじ煮込みとラタトゥイユ(野菜煮込み)を添える。最近流行の熟成肉、岩手県一関市の牧場が生産する黒毛和牛「いわて門崎丑」を3週間以上寝かせた「門崎熟成肉」の使用が、パッケージでうたわれる。
何の弁当だか分からない名前は、パッケージの記述によると「ひとくち満足すじ煮込み」「ふか味醍醐味炙り焼き」「みんな大好きハンバーグ」の頭文字だそうな。たしかにこれは、ガッツリ牛肉駅弁。今回これを買った駅弁売店で人気の、米沢駅牛肉弁当に負けない賑やかさとパワーを感じる。名前も肉々しくすれば、ここでいい勝負ができるかもしれない。2020年1月発売の「岩手一ノ関金格ハンバーグと牛あぶり焼き弁当」は、これと似た内容に「ひふみ弁当スタイル」と掛紙に記したが、置き換えでなく1年間ほどは併売した模様。
※2023年4月補訂:終売を追記2006(平成18)年に発売か。黒塗りのふた付き容器に、牛と商品名を筆で描いた柄の掛紙をかけて紙ひもでしばる。中身は何も載らないプレーンな白御飯に、前沢牛のハンバーグをやはりプレーンな状態で詰め、ロールキャベツ、人参、ブロッコリー、ポテトサラダを添え、デザートに黄桃シロップ漬を入れる。
個人的にハンバーグは好物だが、ブランド牛を安肉でもなんとかなるハンバーグにすることはもったいないし、このハンバーグも粒子の細かさが牛肉の品質差を削いでしまった感があるが、ソースを完全別添にするくらいだから、御飯ともども直球勝負の自信作なのだろう。こういう駅弁があることで商品の幅が大きく広がるため、牛肉駅弁との併売であれば各地に広がっても良いと思う。2年くらい販売された模様。
※2016年11月補訂:終売を追記