上野駅から特急列車で1時間ちょっと。水戸市は茨城県の中部で那珂川が流れる、人口約27万人の城下町で県庁所在地。江戸時代に徳川御三家のひとつ水戸徳川家が収める水戸藩が置かれ繁栄した。駅弁は明治時代から3社が競い賑やかだったが、2000年代に撤退、休業、倒産ですべて消えた後、2011年に地元の居酒屋が進出し駅弁が復活した。1889(明治22)年1月16日開業、茨城県水戸市宮町一丁目。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2022(令和4)年秋の新商品か。名前から下記の駅弁「偕楽園弁当」のリニューアルに思えるが、公式サイトでは旧版も「新型コロナの影響による、一部製造停止中」として掲載する。掛紙の絵柄は梅花となり、おしながきでなく偕楽園の紹介文を記す。
中身は白飯をきんぴらとしらすで覆い、鶏団子やにんじんなどの煮物、桜しゅうまいと玉子焼、昆布巻と焼鮭と蓮根さつま揚げと薩摩揚げ、焼きゆばと小松菜ナムルを、それぞれのプラケースに収めたもの。旧版の内容から水戸を少し抜いてコンパクトに収めた感じ。雰囲気の良い幕の内弁当と思うか、やっぱり駅弁は値段が高いなと思われるか。
2019(平成31)年4月以降に発売か。偕楽園の好文亭を描く掛紙に、中身の写真とおしながきも載せる。中身はシラスと海苔を載せた日の丸御飯に、納豆コロッケ、常陸牛しぐれ煮、ローズポーク焼売、梅れんこん、小松菜ナムル、レンコンの挟み揚げ、鶏の幽庵焼、サツマイモ甘露煮、鮭塩焼、玉子焼、こんにゃくやサトイモなどの煮物。
幕の内駅弁の内容と機能を構成しながら、水戸や茨城の食材や特産を多用し、多種で粒揃いのおかずが個々にうまい、下記の「常陸之國美味紀行」とともにお薦めできる水戸駅弁。掛紙に「四季折々」と書かれているので、季節の展開を期待したい。価格は2019年時点で1,200円、2020年時点で1,250円、2022年時点で販売休止中。
偕楽園は、東京方面から電車で水戸へ行くと、水戸駅の手前で左右に広がる庭園。岡山県岡山の偕楽園と石川県金沢の兼六園と並び、日本三名園のひとつとして紹介される。江戸時代末期の天保13年(1842年)に常陸水戸藩第9代藩主の徳川斉昭が開いた、水戸市によると日本一広い都市公園だという約300ヘクタールの敷地に、約百種三千本の梅園、池泉回遊式の大名庭園、明治時代にできた常磐神社などを備える、年に約100万人が訪れる茨城県で有数の観光名所。
※2023年7月補訂:値上げと販売休止を追記2011(平成23)年4月までに、水戸駅で発売か。掛紙に「限定販売」とあるが、水戸駅ではいつでも買えた。商品名をかっちり書いた白い掛紙を巻く容器の中身は、日の丸御飯、焼鮭と玉子焼、ワカサギ甘露煮、海老天、キス天、ウナギ蒲焼、レンコンはさみ揚げ、レンコンやニンジンなどの煮物、梅しゅうまい、サツマイモのデザートなど。常陸之國というか茨城県あるいは水戸ではなく霞ヶ浦あたりの、現在や過去の名物がきれいに詰まる、幕の内タイプの駅弁ながらデパ地下に負けない上質な折詰。価格は2013年の購入時で1,000円、2014年時点で1,100円。2017年までの販売か。
※2023年7月補訂:終売を追記水戸駅の並等幕の内駅弁の、鈴木屋版という位置付けか。梅花と徳川斉昭が偕楽園内に建てた休憩所「好文亭」を描いた専用のボール紙箱を使用、黒いトレーに収まる中身は、日の丸御飯にマス塩焼・カマボコ・玉子焼、ハンバーグ、白身魚フライ、千切りキャベツ、ニンジンやゴボウなどの煮物、煮豆に柴漬けなど。偕楽園とのつながりはないだろうが、この値段の割には分量と内容でお買い得だと思う。
この駅弁は2010年1月の調製元の撤退(倒産?)により失われた。
※2010年3月補訂:終売を追記水戸駅の中等幕の内駅弁の、鈴木屋版という位置付けか。人間くさい顔をした天狗をたくさん描く専用のボール紙箱を使用、黒いトレーに収まる中身は、黄門米コシヒカリの日の丸御飯にカマボコ・玉子焼、豚生姜焼に鶏唐揚に肉団子にエビフライ、ごぼうなどの煮物に煮豆やオレンジなど。確かに並等の「偕楽弁当」より単価とカロリーが高そうなおかずが入っており、こちらもお買い得と感じるべきか。
水戸と天狗とのつながりは、幕末の水戸藩における尊王攘夷派のうち過激派「天狗党」からか。1860年代初頭に江戸で桜田門外の変や坂下門外の変を主導して幕府と対立、1864年に筑波山で挙兵して幕府軍と戦い(天狗党の乱)、戦況が不利になると朝廷に直訴しようと京都を目指し、今の栃木・群馬・長野・岐阜の各県を経由し2か月をかけて福井県敦賀付近まで移動したところで幕府軍に包囲されて降伏、処刑された。この駅弁とのつながりは、たぶんない。
この駅弁は2010年1月の調製元の撤退(倒産?)により失われた。
※2010年3月補訂:終売を追記水戸駅弁の鈴木屋が一世紀の歴史で培われた実力を注ぎ込んだという、渾身の幕の内駅弁。黒塗りの正方形ボール紙製容器の中に、容器内側の朱塗りがよく見える透明のトレーを入れる。コシヒカリの御飯に、海老フライ・鶏唐揚・クリームコロッケ・鮭塩焼・玉子焼・ハンバーグ・煮物類その他おかずの数々を詰め込む。東京駅で買う1,100円の幕の内弁当は何なのかと思うくらい、品質の高いもの。ボリュームもたっぷり。この駅弁は2010年1月の調製元の撤退(倒産?)により失われた。
※2010年3月補訂:終売を追記1996(平成8)年2月15日の調製と思われる、昔の水戸駅弁の掛紙。箸袋をセロハンテープで掛紙に貼り付けたのは、収集者か調製元か。駅弁の名前は水戸黄門の諸国漫遊から来たのだろう、徳川家の三つ葉葵の家紋と、水戸駅前の水戸黄門助さん格さん像の写真を使う。
昭和30年代、1960年前後の、6月8日11時の調製と思われる、昔の水戸駅弁の掛紙。偕楽園の絵柄の裏側に描かれる滝や温泉マークは、県は同じでも当時は水戸から2時間はかかったであろう、袋田の滝と温泉だそうな。
昭和30年代、1960年前後の、2月25日11時の調製と思われる、昔の水戸駅弁の掛紙。こちらは水戸名物の梅に偕楽園という、分かりやすい絵柄。弁当のトウの字も新字体で読みやすい。