東京駅から新幹線で3駅35分。小田原市は神奈川県の南西部で相模湾に面する人口約19万人の城下町かつ宿場町。関東地方の西の出入口として、戦国時代や江戸時代に歴史の舞台となった。駅弁は明治時代に国府津駅で創業した、東海道本線では最古の駅弁屋が健在だが、実態はJRや小田急の子会社が近隣のものを含めた駅弁を集めて売る。1920(大正9)年10月21日開業、神奈川県小田原市栄町1丁目。
真っ黒な容器に白飯を敷き、固めの牛焼肉と牛たん焼で覆い、花れんこんで彩り、ビビンバと煮豆と漬物とタレを添える。真っ黒な掛紙の絵柄を含め、どこの駅弁か判別が付かないシンプルさ。掛紙に記される肉の高橋本店とは、つまり調製元のことである。
竹皮柄の寿司向け紙容器に、海老天むすびを4個並べ、きゃらぶきを添える。つまり天むす。天むすとしてとくに変わるところはなく、一般的な見栄えと分量と味と値段を持つと思った。「箱根越え弁当」とあるが、これはこの調製元の弁当群に共通する表記なので、これが箱根にちなむものではないと思う。
細長い容器に掛紙の見本写真のとおり、稲荷寿司3個、アジ寿司2個、昆布カップ、玉子焼を並べる。おいなりさんは個々に見た目が異なる3色稲荷に見えて、中身はすべて同じ牛しぐれ煮だった。駅弁らしい見た目とつくりと値段を持つ、軽食と一食の中間品。
2000年代までには小田原駅で発売か。明治時代に国府津駅で生まれた小田原駅の名物駅弁「小鯵押寿司」に似た、JR駅の公式な駅弁屋でない調製元がつくるアジ寿司。平たい長方形の折箱に、酢飯にアジを合わせた握り寿司を9個並べ、わさびとガリを添える。
アジ寿司は、サクラの葉をかけた「桜の香り」3個、昆布の帯を締めた「とろろ昆布」3個、具と飯の間にしそふりかけを仕込んだ「梅じそ」3個。昆布と甘酢でしめたというアジに、小田原レモンを混ぜたという酢飯で、今では酸味の塊となってしまった駅弁の小鯵押寿司よりは、いただきやすく、見た目の輝きもあると思う。「特選」や「PREMIUM」の付かない商品は、見たことがない。JR小田原駅の改札内にない駅弁売り場や箱根湯本駅で、小田原駅弁と並べて販売される。
※2022年10月補訂:写真を更新し解説文を全面改訂2018(平成30)年5月13日に購入した、小田原駅弁の掛紙。上記の2022年のものと、絵柄も中身も同じ。価格と、食品表示ラベルの記載量が異なる。
新幹線小田原駅の改札外高架下でJR東海の子会社が運営するコンビニエンスストアで、「駅弁」として陳列し販売されていたお弁当。竹皮柄のボール紙箱に、メンチカツサンド2切れ、海老天の天むす2個、白胡麻いなり1個とガリを詰める。カツサンドも天むすも稲荷寿司も、駅弁としても定番の商品であるが、これらをひとつにまとめたものは初めて見た。進化したおにぎり弁当。「箱根」とは全然関係ないと思うが、こんな道中食もアリ。
新幹線小田原駅の改札外高架下でJR東海の子会社が運営するコンビニエンスストアで、「駅弁」として陳列し販売されていたお弁当。真っ黒な紙箱に、商品名を今風に描いた掛紙を巻く。半透明のプラ製トレーに収まる中身は、白御飯を海老天で覆い尽くし、天つゆをたっぷりかけ、紅白の蒲鉾とわさび漬と柴漬けを添えるもの。厚めの衣はふわふわで、常温でも油くさくなく、これはなかなか強力なお弁当。
小田原駅の橋上自由通路でブース販売されていたお弁当。枠は木材の円形わっぱ容器をボール紙の枠にはめる姿は駅弁らしい。中身は各種あるが購入したものは「唐揚げ」とあり、御飯の上に鶏そぼろと錦糸卵を敷き詰め、小指サイズのサイコロ鶏唐揚を十数個散らして、きくらげやぜんまいなどを添える。
購入時に加温を勧められたが、駅弁としての収蔵を考えて断った。しかし常温で食べると鶏唐揚の脂と油と醤油か塩の刺激味が口と胃に物凄く重く、暖めればそれが少しは軽くなるのだろう、これは駅弁ではない感じ。
小田原駅の橋上自由通路で台売りされていたお弁当。商品見本では色紙に墨書きしたデザインの掛紙を巻いていたが、実物はこのとおりの惣菜弁当。中身は白御飯の上にしらすをたっぷり敷き詰めて、厚焼き玉子や里芋や鶏唐揚を添えるもの。素っ気ないけど、かわいらしい。
前回(2004年)に初めてこの調製元の弁当を駅で収穫した時と比べて、売店も商品も完全に変わっていた。駅弁とそうでない弁当との大きな差異のひとつが、ここにある。
トレーを入れたボール紙パッケージの中に、日の丸御飯ととても柔らかな国産豚ロース肉生姜焼に、ポテトサラダやフライドポテトや生野菜などを詰める。小田原駅自由通路内の駅弁山積売店で入手した、小田原市内の食肉店兼惣菜屋の駅弁風弁当で、肉屋と惣菜部門で使い分けるのか、同じ調製元の「箱根めぐり道中おにぎり」と比較して、調製元の電話番号が1番だけ異なる。価格は2004年の購入時で800円、2015年時点で980円。
※2015年9月補訂:値上げを追記黒いトレーをふたつ入れたボール紙のパッケージは、手に持つだけで重量感がある。中身は柔らかくたっぷりの茶飯、分量のある焼き魚、分厚い紅白の蒲鉾に玉子焼、五目巾着や煮物類など、分量と品質の両方を同時に満足できる内容。ただ、食品表示ラベルに「保存温度10℃以下」とあり、駅弁らしくなく常温に弱いらしい。価格は2004年の購入時で1,000円、2015年時点で1,230円。
※2015年9月補訂:値上げを追記小田原駅の駅弁屋の弁当なのに、直営の駅弁売店では取り扱われない、街弁の扱いであるらしい商品。正方形ボール紙製の市販惣菜弁当容器に駅弁の名前を記し、食品表示ラベルを貼った紙帯を巻き輪ゴムで留める。中身はトレーで9分割され、じゃこめし・炊込飯・赤飯と三種の御飯と、チーズ帆立やナス豚肉揚げ、春巻や枝豆揚や春巻に椎茸や人参などの煮物、デザートに弁当名の焼き印がある温泉饅頭。
食品表示ラベルに35種類もの食材が記される具だくさん弁当。さすが駅弁屋の弁当で、常温での味が引き立つ。この時期の小田原駅で一週間に17個もの駅弁を購入したが、その中で一番の出来だと感じた。訪問時には小田原駅の橋上自由通路の土産物店で、箱根湯本駅など他の弁当に埋もれる形での販売だった。箱根湯本の土産物店で人気だとか。価格は2004年の購入時で1,000円、2014年4月の消費税率改定で1,030円、2022年時点で1,100円、2023年6月から1,150円。
※2023年8月補訂:値上げを追記小田原駅の橋上自由通路で、台売りされていたお弁当。黒く分厚い容器に、こちらは同時購入の「しらすご飯」と違い商品見本どおり、色紙に墨書きしたデザインの掛紙を巻く。中身は白御飯の上にキャベツ千切りを敷いて、写真のとおりソースで真っ黒になったアジフライを3切れ載せて、煮物と厚焼き玉子を添えるもの。
アジフライは見た目に反してさっくり爽やかな風味で、調製元が人気者と紹介する厚焼き玉子もほのかにふんわり甘く、旧国鉄駅の駅弁屋とは見栄えも内容も風味もひと味違うもの。アジフライ弁当に千円も払うのは抵抗感があるから、うまく宣伝して調製元の個性を反映した駅弁だと認識してもらうとよさそう。