東京駅から電車で約45分。大船駅のある鎌倉市は、神奈川県の東部で相模湾に面した、人口約17万人の古都。13世紀に幕府と呼ばれる武家政権がここを拠点とし、農漁村に戻るも明治時代に別荘地や観光地として再興、文人や要人が好んで住んだり訪れた。東海道本線が横須賀線を分岐する大船駅では、1898(明治31)年から大船軒が駅弁を販売、鎌倉の文人や駅前の映画撮影所の関係者に親しまれた。1888(明治21)年11月1日開業、神奈川県鎌倉市大船1丁目。
1976(昭和51)年12月1日の発売。最近では2020(令和2)年6月に、この姿へリニューアル。小柄な長方形の容器に酢飯を詰め、エビ、ホタテ、アナゴ、イクラ、おぼろ、サーモン、マグロ、小鯛、シイタケ、グリーンピース、錦糸卵を散らし、鯵の押寿しを2個とガリと醤油を添える。中身からも、通年販売という形態からも、アジサイの要素は無いと思うが、お花畑のイメージはあるのだろう。2000年前後には雑誌やテレビの駅弁ランキングで上位に挙げられた、人気の駅弁だった。価格は2020年の購入時で1,000円、2022年6月から1,080円、12月から1,150円。
※2023年1月補訂:値上げを追記上記の駅弁「あじさいちらし」の、2017(平成29)年時点での姿。正八角形の容器に酢飯を詰め、とりそぼろ、エビ、アジ、サーモン、鮭そぼろ、れんこん、錦糸卵、しらす、おぼろ、シイタケ煮、イクラ、グリーンピースで彩るちらし寿司だった。
※2021年2月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し上記の駅弁「あじさいちらしずし」の、2001(平成13)年時点での姿。内容は変わらないが、当時は掛紙が容器を覆い、その絵柄は美しく、中身を見れば具が多く、酢飯の地肌が見えることはなかった。
※2017年4月補訂:新版の収蔵で解説文を見直し1981(昭和56)年3月23日15時の調製と思われる、昔の大船駅弁の掛紙。掛紙の雰囲気は2001年のものとそれほど変わらないのではと思うし、あじさいの描き方はこういう感じしかないとも思う。
2004(平成16)年6月頃に発売か。駅弁の名前から、大船駅の駅弁「あじさいちらしずし」の豪華版と思われる。容器や掛紙などそのスタイルは、通常版と同じ。中身もほぼ同じで、山菜の代わりにサーモンや鯵などの寿司ネタ大の切り身3個が入り、価格が200円高い。しかし酢飯が丸見えになる見栄えと、辛味の強い鶏そぼろなど具と飯の調和という観点で、通常版に劣ると感じられてならない。3年間くらい、6月頃限定の駅弁として売られた模様。
※2015年9月補訂:終売を追記「湘南ツイン弁当」に続く、漫画アクションの連載作品「駅弁ひとり旅」とのタイアップ駅弁の第2弾として、2009(平成21)年3月28日に発売。正八角形の容器に透明なふたをして割りばしを置き、表面に漫画のキャラクターや江ノ島の風景を、裏面に鉄道路線図やおしながきや名所案内を印刷した正方形の掛紙をかけて、ゴムで十字にしばる。
中身は酢飯の上に錦糸卵と桜でんぶを敷いてボイルエビ、イクラ、グリーンピース、刻み椎茸煮を載せたちらしずしと、鯵の押寿し1個、椎茸の伊達巻、マグロの真丈揚、ハーブチキンとかまぼこの串、ニンジンなどの煮物などのおかず。
前作はジャンクフードであったが、今回は風味良好。ちらしずしはふんわりほのかで、おかずは美しく薫り高い感じ。失礼だが最近の大船軒らしからぬ作品に仕上がっていると思う。掛紙の案内も含めて、いい旅ができそうな駅弁になった。後に下記のとおり外装を変えたあと、2012年に終売か。
※2016年9月補訂:終売を追記上記の駅弁「湘南玉手箱」の、2010(平成22)年時点での姿。漫画作品とのタイアップが外れており、掛紙がボール紙のふたに変わるとともにデザインが大きく変わったが、内容と風味と価格は同じ。しかし容器の中に仕切りが入ったことで、見栄えの賑やかさがほぼなくなった。裏面の「湘南名所案内」は大船観音、鎌倉湖(散在ガ池)、清浄光寺で、ずいぶん不思議な組合せ。