東京駅から新幹線こだま号で1時間強。新富士駅は、東海道新幹線で1988(昭和63)年3月に追加された駅。富士山がよく見えるよう、駅の壁はガラス張り。開業時から現在まで一貫して各駅停車の「こだま」のみが停車する。駅弁は駅の開業とともに富士駅の駅弁屋が進出、2010年代には富士駅弁はこの駅のホームやコンビニのみで売られるようになった。1988(昭和63)年3月13日開業、静岡県富士市川成島。
静岡駅から東海道本線で30分強。富士市は静岡県の東部で富士山の南に広がる、人口約24万人の宿場町。豊富な水資源により明治時代から製紙業などの工業で栄え、市街には独特の臭いが漂う。駅弁は大正時代からの駅弁屋が健在でも、今では新富士駅でなく富士駅で駅弁が売られることは、ほとんどない。1909(明治42)年4月21日開業、静岡県富士市上横割。
2005(平成17)年11月14日に、新富士駅と富士宮駅で発売。史上初のやきそば駅弁だという。四角い加熱機能付き容器を収めたスリーブには、中身の写真や商品名に富士山や波浪や具材などをど派手に描く。中身は海老やホタテやイカや錦糸卵を載せた、豚肉とキャベツ入りの富士宮やきそば、山葵ご飯、牛肉しぐれ煮、わさび茎、イワシの削り節、紅生姜。
2000年代のご当地グルメブームでの成功事例として全国にその名を広めた富士宮やきそばの特徴である、もちもち太麺の雰囲気が加熱でも常温でも手軽に味わえるのではないかと思う。発売時にはデパートの駅弁催事でも売られ、その実演販売では加熱機能のない容器に掛紙を巻いて売られた。かつての国鉄時代、昭和時代の規制から生まれた、麺類に御飯を入れて「弁当」とする手法が、そんな規制がなくなった今になって、ここで採られたのも興味深い。価格は2005年の発売時で980円、2014年4月の消費税率改定により1,000円、2019年5月から1,100円、2023年11月から1,200円。
※2023年11月補訂:値上げを追記富士駅や新富士駅の、普通の幕の内駅弁。赤富士を描いた専用のボール紙箱に、日の丸御飯の白いプラ製トレーと、鶏カツ、サバ照焼、エビフライ、しゅうまい、玉子焼、かまぼこ、筑前煮、しば漬、わさび漬などを詰めるプラ製トレーを収める。駅弁として控えめな価格で、具の量と種類を確保した、食材や調理での地域性はない、弁当の実需がある新幹線駅らしい食事向け駅弁。価格は2010年時点で840円、2015年時点で850円、2019年5月から880円、2023年11月から950円。
※2023年11月補訂:値上げを追記2015(平成27)年8月9日に購入した、新富士駅弁の紙箱。箱も中身も、上記の2023年のものと同じ。
2004(平成16)年頃に630円で発売か。富士山とその他の山並みでデザインしたようなスリーブにはめる、正八角形の容器に白飯を敷き、桜でんぶ、サクラエビ、炒り卵、刻みシイタケ、鮭フレーク覆う。具は散らさず、真横にストライプ。サクラエビを入れるだけで駿河を表現できて便利だなと思った。長らく変わらなかった価格は、2019年5月から750円。
※2023年8月補訂:写真を更新2015(平成27)年8月9日に購入した、新富士駅弁の掛紙。当時はスリーブでなく掛紙を使っていた。それと価格以外は、2023年のものと同じ。2004年頃の発売時から変わらないかもしれない。
1988(昭和63)年3月13日の新富士駅の開業とともに「新幹線グルメ」のひとつとして誕生した駅弁。楕円形の容器に木目柄のボール紙でふたをして、富士の巻狩のイラストと解説文を印刷した掛紙で包む。中身は日の丸御飯、鮭柚子香焼、牛肉生姜煮、鶏雉焼、玉子焼、タケノコ煮、しめじ煮、ナス漬など。源頼朝が富士の裾野で行った巻狩をイメージしたそうな。おかずがなかなかスパイシーだと思う。価格は1988年の発売時で900円の統一価格、2006年時点で1,000円、2010年時点で1,100円、2019年5月から1,200円、2023年11月から1,300円。
掛紙によると富士の巻狩とは、鎌倉幕府の初代将軍である源頼朝が建久4年(1193年)に富士の裾野で数十万人を動員して10日以上も宴を開いた巻狩、つまり軍事訓練やお祭りの目的で行われた狩猟であるという。今も富士の広大な裾野では陸上自衛隊や米軍が戦闘訓練を行っている。富士の巻狩は「まきがり」で、駅弁の巻狩べんとうは「まきかり」と読ませる。
※2023年11月補訂:値上げを追記2010(平成22)年4月29日に購入した、新富士駅弁の掛紙。上記の2023年のものも、1988年の発売時からも、価格を除いて変わらない駅弁。
富士駅や新富士駅の、並等の幕の内駅弁。市販の仕出し弁当向けボール紙箱で、9区画のプラ製トレーに収まる中身は、日の丸御飯、サクラエビ載せ御飯、おいなりさんとかんぴょう巻、鶏カツ、サバ照焼、煮物、ポテトサラダ、しゅうまいとウインナー、オレンジと抹茶わらび餅。富士のある内容で、おつまみ向け。食事としては100円追加して幕の内弁当を買うのがよいと思った。2019年時点で現存しない模様。
※2020年4月補訂:終売を追記2008(平成20)年1月頃の発売。通常は新富士駅でのみ販売される駅弁。長方形の容器に、昭和中期の漫画の雰囲気を狙ったと思う絵柄のボール紙でふたをする。中身はサクラエビなどで彩る日の丸御飯に、豚肉西京味噌漬、黒はんぺんフライ、玉子焼、こんにゃくやカボチャなどの煮物、茎ワサビなど。富士山周辺の名産品を少しずつ詰めたのだという。副菜がことごとくスパイシーで、個人的には食べるのに難儀した。価格は購入時で1,000円、2014年4月の消費税率改定で1,030円。2016年頃か2019年までの販売か。
富士は日本一の山。1988(昭和63)年に東海道新幹線の三島駅と静岡駅との間に新富士駅を追加した際には、ホームの壁面をガラス張りにして富士山がよく見えるようにした。実際には駅が製紙工場その他の大規模工場群のど真ん中に位置するため、それらの工場がよく見えることになるのだが、南面を現す富士山は、晴れていれば陰が少なくいつも明るく輝き、見栄えがする。
※2015年7月補訂:値上げを追記ほとんど筒状の頑丈なボール紙製の容器に、商品名と中身写真とマスのイラストを描いた掛紙を巻き付ける。容器の中には笹むすびが5個入り、そのひとつひとつに三角形の白ゴマ入り酢飯とマスが詰まっている。持ち歩きやすく食べにくく、味はなかなか。マス寿司といえば富山の代名詞であるが、東海道本線沿線のものも乙なところが揃っている。2019年時点でこの5個入りは現存しない模様。
※2020年4月補訂:終売を追記上記の駅弁「笹むすび鱒ずし」の、3個入りバージョン。名前は「鱒ずし3個入」とも。中身は同じだが、容器もパッケージの絵柄もまるで異なる。値段は2017年の購入時で540円、2019年5月から650円。2020年頃までの販売か。
※2022年4月補訂:終売を追記2017(平成29)年1月10日の発売。その名のとおり、そして掛紙に書かれるとおり、富士宮やきそば、焼き鯖寿司、温野菜の詰合せ。正方形3個分の横長な容器に、左から順に富士宮やきそば、味噌焼き鯖ずし、野菜の煮物とわらびもちを詰めていた。やきそばは富士宮の特徴である太さとコシとサクラエビを備え、やきさばは高級品レベルの身の太さ。野菜はおしゃれな見栄えと味。これはなかなか格好良い駅弁。しかし材料の終了を理由に、同年7月9日限りで終売。
※2017年7月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2006(平成18)年10月発売の新商品。細長い長方形の容器を、蒲鉾型のボール紙に収納する。中身は笹の葉を敷いたゴマ入り酢飯の上に牛肉甘辛煮、桜海老バラ揚げ、じゃこ山椒煮、鯛の酢締めと花蓮根酢漬、椎茸の含め煮を順番に並べて、茎わさびを添える。
コンセプトはともかく、1,200円も取るのにこの分量、風味、品質、見栄えでは、富士山麓のおいしいパノラマなど広がらない。現地ではともかく、催事場では苦戦を強いられそう。富士と新富士の駅弁は通常、比較的商品寿命が長いと思うが、これは来年の今頃に出会えるかどうか。現存しない模様。
※2015年7月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2004(平成16)年秋の新商品か。丸い加熱機能付き容器を、富士とワサビ田と鰻蒲焼の写真を載せたパッケージに入れ、ビニールひもでしばる。中身はタレ御飯の上にワサビの茎を少々散らし、錦糸卵を敷いて、鰻蒲焼とささがきごぼうと青菜を載せたもの。冷めてもおいしいのは駅弁ならでは、というのは、加熱したのだが御飯が厚かったのか、あるいは操作ミスか、鰻蒲焼まで熱が届かなかったもの。現存しない模様。
※2015年7月補訂:終売を追記2002(平成14)年頃に発売か。丸い加熱機能付き容器を薄手のボール紙箱に入れる。中身はかなり水気の多い醤油飯の上に錦糸卵と笹掻きゴボウを敷いて鰻蒲焼を2切れ載せるもので、冷めた状態だと食べられたものではないが、暖めれば中身のすべてが柔らかく消化が良さそうな感じに変貌する。
なお、駅弁の名前やパッケージの記述を見ると三島駅弁のように見えて、実際に三島駅での販売もあるそうだが、富士駅弁の業者の商品なのでここで紹介する。現在は販売されていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記第二次大戦前のもの、30銭の価格と三島駅の位置から1930年頃のものと思われる、富士駅弁の掛紙。鉄道の歴史の中では富士の姿は変わらないから、この掛紙にも当然に富士山が描かれる。東海道本線のものと思われる鉄橋もちらりと見える。