博多駅から新幹線で約20分、または在来線の特急や快速で1時間前後。北九州市は九州の北端で日本海と瀬戸内海に面する、人口約93万人の政令指定都市。戦前の官営製鉄所の進出を機に国内有数の巨大工業地帯として繁栄したが、産業構造の変化で近年は経済が停滞する。駅弁は明治時代に門司で創業した駅弁屋がコンコースに売店を構えるほか、折尾駅など他の駅の駅弁も売店に入荷する。1891(明治24)年4月1日開業、福岡県北九州市小倉北区浅野1丁目。
JR九州の駅弁キャンペーン「九州の駅弁ランキング第2弾」の開催に向けて、2005(平成17)年の秋までに発売か。木製の簡易な押寿司容器を、やはり簡易なデザインのボール紙箱に入れ、まるごとラップで包んで食品表示ラベルを貼る。中身は福岡産ヒノヒカリを酢飯に用いたニジマスの押し寿司。スモーク風な塩気と筋気と脂気がたっぷりのお魚は、酒のつまみに向く感じ。
九州の駅弁ランキング第2弾では、2005(平成17)年10月から翌2006(平成18)年1月まで、対象の50駅弁に付くシールを集めると賞品が当たるシールラリーが実施され、この駅弁も対象であった。しかしこの駅弁は、その期間中である12月中までに販売が中止され、しかし売店には見本を置き続け、購入希望者には難癖を付けて販売を拒否したという。そんなトラブルがあったためかどうか、翌年の第3弾以降、シールラリーは実施されていない。
1956(昭和31)年に発売し、1984(昭和59)年に消えた過去の名物駅弁を、JRダイヤ改正と駅弁の日を記念して2001(平成13)年3月10日から5月まで復活販売し、同年10月14日から正式に再販売。発泡材製の正八角形の容器を使用、一面に酢飯を敷き鯛の切り身を載せ、刻み海苔や錦糸卵やスライス椎茸などを添える。輸送販売で酢を多めに調合したのかもしれないが、酸味が勝る酢飯と酸味しかない鯛の組み合わせは、空腹でないと食が進まない。あるいは数十年前と現在での好まれる風味や味覚の差であろうか。2005年過ぎに終売か。
※2015年10月補訂:終売を追記2001(平成13)年12月31日に購入した、小倉駅弁のふた。上記の駅弁「ちらし鯛すし」と同じもの。ふたをよく見比べると、2005年に「名物」とある接頭辞が、こちらは「玄海」である。
下記の駅弁「あなごちらし寿し」を、2005(平成17)年にリニューアルしたものか。押寿司タイプの木枠の容器を、商品名を書いたワサビ色のボール紙枠にはめて、ラップに包み食品表示ラベルを貼る。中身はワサビ混じりの酢飯に刻み穴子が散らされるもの。穴子も飯も大人の味で、以前のプレーン酢飯版に対して確実に、風味に奥行きが出ている。福岡空港の空弁でもあり、そこでは一日20個限定の人気商品なのだとか。2012年頃までの販売か。
※2017年10月補訂:終売を追記1965(昭和40)年2月に、姫路駅に続き全国で2番目に登場したという穴子寿司駅弁。駅弁の名前について、パッケージには「あなごちらし寿し箱寿し」、食品表示ラベルでは「穴子ちらし箱寿司」、公式サイトでは「穴子ちらしずし」と、微妙に異なる。
輪ゴムでしっかり中身を押した木製の押寿司容器を、ボール紙の箱に詰める。容器の中で笹の葉風のビニールシートに収めた中身は、酢飯の上に錦糸卵と刻み穴子をまぶしたもの。口に含めば穴子の香りがたっぷり広がる。これならば笹の香りも欲しいと思うのは贅沢か。価格は2002年の購入時で1,050円、2015年時点で1,100円、2017年時点で980円。2019年までの販売か。
※2020年4月補訂:終売を追記1960年代頃、昭和30年代頃の、10月31日16時の調製と思われる、昔の門司駅弁の掛紙。掛紙に太鼓を描いたのは、小倉祇園太鼓か、門司の大里太鼓か。門司と小倉は1963(昭和38)年2月の5市合併で同じ北九州市となったが、もともとそれぞれで市制を敷いたような別の町であり、貿易で栄えた港町と小倉藩小笠原氏15万石の城下町という違いがある。駅弁屋も1956(昭和31)年8月まで別個に存在した。
北九州駅弁当の監修により、2006(平成18)年2月21日から3月6日まで、コンビニ大手のファミリーマートの全国各地の店舗で販売された商品。穴子タレ色の紙枠に収まった同色のプラ製トレーに、酢飯を詰めて錦糸卵を敷いて薄く小さく柔らかなアナゴを載せてタレを撒く。風味のみ本物の小倉駅弁に近付いていると思う。2週間の販売期間で北九州や駅弁を全国のコンビニ客へ売り込むことができたであろうか。