博多駅から新幹線で約20分、または在来線の特急や快速で1時間前後。北九州市は九州の北端で日本海と瀬戸内海に面する、人口約93万人の政令指定都市。戦前の官営製鉄所の進出を機に国内有数の巨大工業地帯として繁栄したが、産業構造の変化で近年は経済が停滞する。駅弁は明治時代に門司で創業した駅弁屋がコンコースに売店を構えるほか、折尾駅など他の駅の駅弁も売店に入荷する。1891(明治24)年4月1日開業、福岡県北九州市小倉北区浅野1丁目。
1978(昭和53)年11月に発売。無法松とは、福岡県小倉を舞台とした岩下俊作の小説「富島松五郎伝」や、これを原作とする映画「無法松の一生」の主人公である富島松五郎の通称で、昭和30年代頃に流行したこの作品や人物を題材とした駅弁である。
掛紙には駅弁の名前のみを記し、その下に無法松の解説を記載した竹皮柄のふたを重ねる。ふたに記されたストーリーのもと、山菜おこわ飯の上に、ギンナン、きくらげ、焼き鳥、くり、なると、いかだごぼう、煮サバ、イカ、シイタケなどを散らしている。
昭和時代の名物駅弁。2018年までは下記のとおり、腰弁当風にひもを付けて結んだ包装と、割竹風の容器を使い、主人公の職業である人力車夫と荒くれ者の人物像を反映していた。しかし2019年までに包装を掛紙に簡略化、2020年までに容器のこだわりも捨て、炭火焼きだった焼き鳥も業務用冷凍食品に差し替えるなど、劣化が著しい。映画やテレビドラマの新作が半世紀途絶え、無法松を知る者もだいぶ少なくなったのだろう。
上記の駅弁「おこわ無法松べんとう」の、2001(平成13)年時点での姿。昭和時代から平成時代までの姿。腰弁当風の包装に収めた、割り竹を模した緑色のプラ容器の中に、山菜おこわを詰め、カニ爪フライ、焼き魚、いかだごぼう、焼き鳥、かまぼこなどの具を散らし、口も気も荒い無法松を表現していた。
※2021年2月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し入手状況から1993(平成5)年4月13日15時の調製と思われる、昔の小倉駅弁のパッケージの一部。上記の駅弁「おこわ無法松べんとう」と、同じ姿をしていたのだろう。
九州新幹線(鹿児島ルート)の全線開業を記念して、2011(平成23)年1月1日までに発売か。N700系7000・8000番台車両の先頭車を模したプラスティック製の容器を、その容器がよく見える透明のプラ製ケースに収める。中身はかしわめしの上にハンバーグ、エビフライ、ウインナー、かまぼこ、玉子焼、紅生姜、缶詰みかんなどというジャンクフードな洋食系お子様ランチで、その点では新神戸駅などの先発品を踏襲している。価格は2011年の購入時で1,150円、2014年時点で1,200円、2017年時点で1,230円。2019年に調製元が北九州駅弁当から鹿児島県の松栄軒に変わった模様。
九州新幹線は博多駅から鹿児島中央駅まで、実距離で256.8km、営業キロで288.9キロの路線。2004年3月に新八代から鹿児島中央までの区間が開業し、2011年3月に博多から新八代までの区間も開業、山陽新幹線との相互直通運転を開始した。国鉄がJRに変わった四半世紀前は、博多駅から西鹿児島駅まで約4時間を要したものが、これにより新大阪駅から鹿児島中央駅までが約4時間に短縮された。
※2021年2月補訂:値上げと調製元の変更を追記正方形の容器を二段重ねで使用、ボール紙のふたをして、古風かつ仕出し弁当風の掛紙をかけ、ゴムで留めてラップで包む。中身は下段が松茸飯、上段がおかずで鶏唐揚、マス焼、肉巻き、かまぼこ、玉子焼、サトイモやレンコンなどの煮物、昆布巻、緑豆、おはぎなど。
駅の駅弁売店で買えたのだから駅弁だと思うが、公式サイトや時刻表や駅弁紹介本などでは昔も今も見たことがなく、汎用性のある掛紙を使うところからも、仕出し弁当の季節メニューなのだろう。もう一度買いたい旅の味とはならないが、食べておいしい御料理弁当。
2017(平成29)年秋の発売か。掛紙に「お酒のお供に」「つまみごぜん」とも書かれた、おつまみ弁当。中身は俵飯3個分に山川漬、鶏唐揚と玉子焼、じんだ鯖と松笠イカ、つくね団子と貝柱風フライ、焼きかまぼこと明太子、枝豆、きんぴら。中身には意外に多くの福岡が含まれる。古典的な幕の内駅弁の御飯を激減させるとこうなるのではないかと思う、食事にもできるおつまみセット。発売後ほどなく売り止めたと考えられる。
※2021年2月補訂:終売を追記2013(平成25)年までには発売か。調製元は小倉駅の駅弁屋だが、博多駅ビルや博多どんたくに「博多謹製」の文字まで入れたパッケージの絵柄を見ると、主に博多駅で売るための駅弁に見える。真ん丸の容器の半分は白御飯で、残りが豚味噌焼やサワラ西京焼や煮物や高菜と、辛子明太子の半身が2切れ。メインの明太子は「博多鳴海屋」のものだそうで、唐辛子の香り豊かで刺激は優しめ。2019年までの販売か。
※2020年4月補訂:終売を追記2010(平成22)年9月11日の発売だそうな。中身がよく見える長方形の惣菜容器を、商品名と宣伝文をとてもシンプルに描いたボール紙の箱に詰める。中身はワサビ入り酢飯にサバのじんだ煮や玉子焼などを巻いた、海苔巻きの太巻きが3切れ、昆布巻きの太巻きが2切れに、青梅甘露煮と甘酢生姜を添えるもの。弁当というより太巻寿司で、ワサビ酢飯のワサビと酢はとても軽く、サバの味を引き立てる。
このサバが、小倉の郷土料理という。小倉の藩主が小笠原忠政であった江戸時代初期に、小倉城が陣立て、つまり戦闘態勢に入った時、城主の好物だというサバその他の青魚のぬかみそ漬けを差し入れたことが、その由来なのだという。これが、イワシやサバなどをぬかみそで煮込む家庭料理として、北九州市でも小倉の町で約400年の時を刻んでいる模様。2011年には終売か。
※2015年10月補訂:終売を追記山陽新幹線での0系新幹線電車の引退を記念して、2008(平成20)年9月10日から12月まで販売された記念駅弁。新幹線が博多駅まで開業した1975(昭和50)年当時の幕の内駅弁を再現したという。正方形の容器に木目柄ボール紙のふたをして、当時の駅弁掛紙を掲載した掛紙をかけて、紅白のひもでしばる。
中身は日の丸御飯にチキンカツ、マス塩焼、有頭海老、カマボコ、玉子焼、昆布巻にニンジンやタケノコなどの煮物、付合せがひじきやうぐいす豆や缶詰ミカンなど。味と見栄えで見事に、昭和の悪しき幕の内駅弁が再現された。
掛紙写真で新幹線が吸い込まれるトンネルは、山陽新幹線の新下関駅〜小倉駅の新関門トンネル。1982(昭和57)年に上越新幹線が開業し、上毛高原駅〜越後湯沢駅の大清水トンネル(全長22,221m)が世界一になるまで、世界第2位で日本一長い鉄道トンネルというタイトルを保持した。このトンネルは、全長18,560mで工事を始め、工事中に掛紙記載の18,675mへ変更、完成時には現在の18,713mとなったため、資料により距離が異なることがある。
2008(平成20)年の春頃に、従来の幕の内駅弁をリニューアル。長方形の容器にフィルムをかぶせ、門司港駅舎のモノクロ写真を据えたレトロなデザインのボール紙でふたをして、割りばしごとラップで包む。黒いトレーに収まる中身は、ゴマ振り白御飯にサワラ味噌焼、カマボコ、玉子焼に煮玉子1個、なす肉詰めフライ、レンコンの磯部揚、ニンジンやタケノコなどの煮物と、付合せにウニ数の子や明太子など。
上記の復刻駅弁「復刻おべんとう」と同時に食べたため、幕の内駅弁30年の進化を見ることができた。三種の神器(焼き魚、カマボコ、玉子焼)の存在と、白御飯におかずという構成はそのままに、味と見栄え、おかずや付合せの内容がぐっと改善されて、おいしくなっている。一方で掛紙が廃止され、ボール紙のふたに変わってしまった。2011年頃までの販売か。
※2015年10月補訂:終売を追記2004(平成16)年10月14日に発売したものの、ほどなく消滅し、2006(平成18)年にリニューアルして再登場か。トレーを2個詰めた長方形の木目調容器に、九州と各地の食材を描く紙ぶたをかけて、ラップで包み食品表示ラベルを貼る。中身はそれに書かれるとおり、福岡の鶏飯と明太子とサバ明太子煮など、大分の椎茸煮と栗甘煮、宮崎の甘夏、熊本の高菜漬、鹿児島の薩摩芋甘煮、嵯峨野蓮根煮、長崎の豚角煮、沖縄のゴーヤ揚げ。
つまり駅弁紹介的に有名な博多駅弁「九州の彩」の小倉駅弁的模倣。その寿軒版より今風で、JRSN版ほど辛くない。内容が福岡と北九州に偏る印象はあるが、油と甘さが強いパワフル系で、満腹感は3社中最上位かと。コンセプトは同じなのに、3社それぞれが個性的な駅弁にしている。2019年までの販売か。
※2020年4月補訂:終売を追記2007(平成19)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、宮古のアワビ駅弁との対決にて実演販売されたお弁当。下記の駅弁「関門紀行ふくめし」と同じ、フグ風プラ容器をビニール袋に入れ、飾り気がなさすぎる柄の紙箱に詰める。中身はふぐだしの炊込飯の上にマフグの湯引き、カナトフグの一夜干し、トラフグすき見素揚げ、フグ皮昆布唐辛子をポンポン載せて、もみじおろしとポン酢を添える。
東京あたりでフグの駅弁や弁当というと、こういうものが想像されるのだろうか。そのためとても高額な商品になったが、はたして小倉に1,800円フグ駅弁の需要があるのだろうか。日本一のフグ名所である下関と、関門海峡を挟み一体の経済圏を構成する小倉にフグ駅弁があるのは不自然ではないが、駅弁屋の公式サイトにも掲載がなく、現地で入手との報告もなく、もう二度と買うことはできないだろう。駅弁マークへの信頼が、また落ちた。
2005(平成17)年頃に発売か。キティちゃんが祭りの太鼓を叩く姿を浮き出したプラ製立体成型容器をラップで包む。中身は星形チーズを添えたケチャップライスにキティ顔のミニ蒲鉾を載せ、エビフライとポテトフライ2個とかぼちゃマヨネーズという、駅弁の客層の多くを敵に回しそうな内容。
ベースになる有名駅弁が見つかる他の駅のキティ駅弁と異なり、これは小倉駅弁のどの商品にも似ていない突然変異タイプで、たぶん催事用商品と見るべきだろう。キティちゃんやこんな中身が好きな人にしか買われないだろうし、そうでなければならない商品。2011年頃までの販売か。
※2015年10月補訂:終売を追記2005(平成17)年10月14日に発売。赤いトレーを接着した長方形の容器を、中身写真と駅弁の名前を描いた窓付きのボール紙枠にはめて、ラップで包む。中身は白御飯の上にたくさんの明太子入り炒り卵と少々の高菜を敷き詰め、明太子の天ぷらを数個載せて、栗や椎茸などを添えるもの。
破裂させずに揚げるのに苦労するという、メインの明太子天ぷらは小さくて少ないが、御飯を覆う高菜や明太子入り炒り卵も含めた風味食感が斬新。ありそうでなかった内容は、旅行者に受けそうだし駅弁大会にも売り込みやすそう。福岡空港の空弁でもある。現存しない模様。
※2015年10月補訂:終売を追記2004〜2005年の駅弁大会シーズンに向けて投入か。灰色のかわいらしいフグ型のプラ容器を、中身の写真を載せたボール紙容器を立体的に組み上げて、しっかりつかむ。中身は生姜風味のふぐエキス入り御飯の上に、シロサバフグの唐揚げが調製元独自、青のり風味、辛子明太子風味で各一個ずつ、そしてトラフグの辛子明太子和えなど。
パッケージに注記が入るとはいえ、ふぐの唐揚げは骨入りなのでかなり食べづらい。それでも容器の力で駅弁大会では売れ続けると思う。それにしても、日本一のふぐ水揚げ港が目と鼻の先の門司港〜門司〜小倉エリアで、いままでふぐの名物駅弁がなかったのは不思議だ。2007年頃から中身の一部と外箱を変えた「ふくは福よぶふくめし」へリニューアル、2014年時点での価格は1,300円で、12〜2月の販売。2017年までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記1981(昭和56)年10月に発売。地元で獲れる小粒で濃厚な味のウニを、その味を生かすために御飯と一緒に炊いて、粒を拡散させている。ボール紙の正方形の容器に黒いトレーを入れてそのウニ御飯を半円型に入れ、残る部分は貝柱風フライに子持ちイカなどの煮物や海老にサワラの味噌焼など海の素材を用いたたっぷりのおかずで埋める。一応、アルミ箔カップで練りウニも入る。2019年までの販売か。
※2020年4月補訂:終売を追記1993(平成5)年4月13日11時の調製と思われる、昔の小倉駅弁の掛紙の一部。「関門の味」を銘打ち、関門海峡に架かる高速道路橋である関門橋を描く。
入手状況から1993(平成5)年4月13日のものと思われる、昔の小倉駅弁の掛紙の一部。上記の駅弁「うにめし」より高級な駅弁だろうか。しおりに内容の宣伝が記される。
2003(平成15)年のプロ野球ペナントレースの時期に合わせて発売か。大きめの正方形の紙箱には、ホークスのカラーで鷹と九州が描かれる。中身は俵飯に味付牛肉、肉団子、鶏唐揚、カニ爪、鰆味噌焼、貝柱風フライ、煮物などという、質量ともにパワフルな構成。博多の演出には明太子が使われ、イカに和えられチューブが御飯に乗る。福岡ダイエーホークス公式サイトで観戦弁当として紹介される、つまり福岡ドームでの販売もあるようで、正式名称は「ホークスV弁当」の模様。
福岡ダイエーホークスは、関西生まれのスーパーマーケット大手が大阪地盤のプロ野球団を鉄道会社から買収し、1998年のシーズンオフに福岡へ持ち込んだもの。当初は巨人ファンや西武(旧西鉄)ファンが多い九州でほとんど支持を得られないよう見られたが、有形無形の地元密着策により、今では12球団で巨人に次ぎ2番目の観客動員を誇る。その営業策の一環として、初優勝した1999年のシーズン中盤にロイヤリティ(球団名称やキャラクターやロゴ等の使用料)を無料開放したため、この駅弁にも「FDH」のロゴが承諾証なしに踊る。そんな球団も、親会社の経営不振により2004年限りでネット企業へ売られていった。
※2015年10月補訂:終売を追記2003年のNHK大河ドラマが「宮本武蔵」に決定したことを受けて、2001(平成13)年10月14日に発売。いちごのパックのような透明の容器にビニールをかけて竹の皮で包み掛紙をかけて針金でしばる。中身は二人の剣士をイメージし、黒白を付けるとシソとヒジキのおむすびをひとつずつ、五輪の書として竹輪磯部揚、武蔵の師で無添加たくあん、黄色で可憐な浜ぐるまが手焼の玉子焼とのこと。現在は売られていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記1997(平成9)年に発売。レトロで町おこしをしている門司港地区にちなんだ駅弁。長方形の容器の中は高級チョコレートのように細かく12区画に仕切られ、桜型の白・桜・ワカメ・うにの4種の御飯に、ワカメ御飯やふぐの唐揚げなど下関・門司・小倉にちなんだ食材が配置され、デザートにさつまいも。2007年頃までの販売か。
九州一の主要幹線である鹿児島本線の起点である門司港駅では、全国で初めて鉄道の駅舎が国の重要文化財に指定された。土休日には駅弁販売がある。
※2017年10月補訂:終売を追記北九州駅弁当の監修により、2006(平成18)年3月7日から20日まで、コンビニ大手のファミリーマートの全国各地の店舗で販売された商品。6区画のマスを持つ赤いプラ製トレーに、ミニ高菜おにぎり、ミニ明太子おにぎり、ミニおかかおにぎり、メンチカツ、焼サバと鳥照焼、煮物を詰める。
小倉駅弁に記憶がないタイプの内容で、どこに小倉駅弁の味が詰まるのか分からないが、夜食として食べての充実感は、今回のキャンペーンでの駅弁屋監修の4商品の中では一番良く、通常のコンビニ弁当にも対抗できると思った。
入手状況から1977(昭和52)年の調製と思われる、昔の小倉駅弁の掛紙。駅弁掛紙にしてはシンプル過ぎる気もするので、駅弁業者の仕出し弁当用の掛紙の可能性も感じるが、スタンプではあるが価格が記されているので大丈夫か。