博多駅から九州新幹線で約40分。熊本市は九州の真ん中に位置する、人口約74万人の政令指定都市かつ県庁所在地の城下町。立派な城と豊かな水を誇る、九州第三の大都市。駅弁は1896(明治29)年から売られたが2013(平成25)年に撤退、2010年代に駅弁屋となった惣菜店も2018(平成30)年に撤退、現在は新八代駅や出水駅の駅弁が、駅のコンビニで売られる。1891(明治24)年7月1日開業、熊本県熊本市西区春日三丁目。
熊本駅の新幹線高架下で2018(平成30)年3月にオープンした商業施設「肥後よかモン市場」に入居する、熊本で最強の惣菜店チェーン「おべんとうのヒライ」で買えたお弁当。駅弁として紹介されたり宣伝はされていないが、JR熊本駅の店舗での限定販売とあり、見た目も加えて熊本駅の駅弁のようなもの。
熊本を支配した熊本県のマスコットキャラクター「くまモン」の色彩と表情を持つ丸いプラ容器に、直巻きおむすびを入れた袋と、鶏唐揚、玉子焼、肉団子、ウインナー、さくらんぼ、ヒライ名物の竹輪サラダ天ぷら、熊本名物のいきなり団子を詰める。惣菜弁当そのまんまの中身も、ちゃんと熊本で構成されている。
2018(平成30)年2月はじめの熊本駅で買えた恵方巻き。調製元が九州各地に店舗を持つ弁当・そうざい店であるため、恵方巻きの駅弁というよりはむしろ、駅でも売った弁当屋の恵方巻きだろう。透明なプラ製ケースに太巻きを1本横たえ、商品名を描いた掛紙をくるりと巻く。食品表示ラベルでの商品名は「赤鶏巻」。細身の太巻きには、かんぴょうやキュウリなどとともに、鶏肉も巻かれていた。調製元の2018年3月頃の駅からの撤退により、今後は売られないと思う。
※2021年3月補訂:終売を追記熊本駅の鹿児島本線下りホームで湯気を上げながら売られた弁当のひとつで、下記「うなぎのセイロむし」のアナゴ版。底面に細かな穴を開けた経木折に、タレ御飯を詰め、刻んだアナゴで覆い、ごぼうとダイコン桜漬けを添える。当然にホカホカで、身は不思議とポロポロで、タレにウナギの香りがした気がする刻みアナゴ丼。翌月(2018年3月17日)の熊本駅全面高架化で、販売店舗がどうなったかはわからない。調製元の駅からの撤退により、2018年3月頃までに終売か。
※2021年3月補訂:終売を追記おそらく第4回のJR九州「九州駅弁ランキング」に合わせて、2007(平成19)年10月に発売。駅弁の名前は、同ランキングその他の紹介記事や食品表示ラベルでは「くまんどんのおてもやん弁当」であり、掛紙には「くまんどんおてもやん弁当」とある。暗号のような10文字のひらがなは、熊本を示す「くまんどん」と女性の名前「おてもやん」に分かれ、いずれも熊本の民謡で第二次大戦前に全国で知られるようになった「おてもやん」の歌詞にあり、その歌詞はこの掛紙にも記される。
黒いプラ製トレーをボール紙の容器に詰めた、市販の仕出し弁当用パッケージに、駅弁の名前と「おてもやん」の歌詞に和装の女性を描いた掛紙を巻く。中身は鶏飯に鶏タレ焼、アユの甘露煮と馬肉コロッケ、玉子焼とかまぼこと高菜刻み、タケノコやニンジンやナスなどの煮物、からしれんこんなど。茶色が勝るも食べ進みの良い感じ。価格は2011年の購入時で900円、2017年時点で1,100円。調製元の駅からの撤退により、2018年3月頃までに終売か。
おてもやんとは、一日で約6000本もの路線バスや高速バスが発着する全国最大級のバスターミナル「熊本交通センター」の前に立つ銅像が示すような、元気でおてんばな若い娘の代名詞であるような気もする。熊本ではおてもやんやそのアレンジ版「おてもやんサンバ」が、お祭りでよく流されて踊られるという。
※2021年3月補訂:終売を追記2008(平成20)年10月1日の発売は、JR九州の駅弁キャンペーン「第5回九州駅弁ランキング」に向けたものか。同ランキングその他の紹介記事では「阿蘇高菜弁当」とあり、掛紙には「阿蘇高菜めし弁当」と書かれる。
小柄ながら二段重ねの正方形の容器をボール紙のパッケージに収め、これに駅弁の名前を書いた掛紙をセロハンテープで貼り付ける。中身は下段が高菜飯、上段がおかずでタチウオの大葉巻き、鶏塩焼、ニンジンやレンコンなどの煮物、タケノコの炒め物、玉子焼とかまぼこ、切り干し大根、からしれんこんなど。中身や調理法に地元ならではのクセがある、旅先の味。調製元の駅からの撤退により、2018年3月頃までに終売か。
阿蘇高菜は、熊本県内で阿蘇地方を中心に約200ヘクタールで栽培されている葉物の野菜。その漬物は、家庭や食堂から土産物まで幅広く使われる。
※2021年3月補訂:終売を追記1993(平成5)年に発売。黒いプラ製トレーをボール紙の容器に詰めた、市販の仕出し弁当用パッケージをそのまま使う。中身は左下に日の丸俵飯、左上によもぎふとサトイモの田楽、タコの甘露煮、からしれんこん、サツマイモ甘露煮、真ん中に高菜漬、右上に有頭海老、タチウオ焼、馬肉ごぼう炒め、玉子焼、はじかみ、右下にあさりすり身などの煮物、人文字のぐるぐる、ゼリー。
見ても食べても高菜と辛子蓮根の他には普通のお総菜しか入ってないように見えて、焼き魚はタチウオ、ネギは人文字のぐるぐる、肉ごぼう炒めには馬肉という具合で、食品表示ラベルを見れば頑固に熊本を表現していることが分かる。宣伝や解説が何もない点が控えめすぎて惜しい。
この駅弁はもともと、肥後国熊本藩の藩主の家系で第18代当主である細川護煕が、1993(平成5)年5月に第79代内閣総理大臣となったことを祝ってできたものだそうな。細川首相はわずか8か月で退陣したが、駅弁はこのように21世紀にも健在であった。
この駅弁は2013年3月頃の駅弁屋の撤退により、現在は買うことができない。駅弁売店の跡地は2014年2月時点で、立ちうどん店になっていた。
※2014年2月補訂:終売を追記1959(昭和34)年4月に発売した、熊本駅で伝統の駅弁。黒いプラ製トレーをボール紙の容器に詰めた、市販の仕出し弁当用パッケージをそのまま使用、中身は日の丸俵飯、エビチリ、春巻、しゅうまい、玉子焼、ワカメサラダ、ザーサイ、ゼリーなど。今買える駅弁として、東京や横浜で千円以上の駅弁と比較してしまうと、冷めてもうまいけれど食感は維持できなかった感じ。
横浜駅弁の崎陽軒の存在が大きいためあまり意識できないが、駅弁の誕生時からある和食の駅弁や、第二次大戦前には高級品であった洋食の駅弁に比べて、中華料理の駅弁は実はほとんど見られない。中華街や南京町のない熊本でなぜ半世紀も前から中華駅弁があるかというと、調製元が中華料理店を経営していたからだという。そういう目で中身を改めて眺めると、昭和の昔の幕の内駅弁を中華風にアレンジしたような雰囲気が感じられた。
この駅弁は2013年3月頃の駅弁屋の撤退により、現在は買うことができない。駅弁売店の跡地は2014年2月時点で立ちうどん店になっていた。
※2014年2月補訂:終売を追記熊本市内ではどこでも買えて、熊本県内で時々見掛けて、それ以外の地域ではほとんど見聞きできない、郷土のおやつ。サツマイモのスライスとアズキのあんこが、小麦粉の生地に包まれて蒸されたもの。熊本駅の駅弁売店でも一等地に積まれており、駅弁と一緒に購入した。1個でたしか180円、半分で120円。
名前の由来はだいたい、いきなり突然に、簡単にすぐ作って出せるものだからと紹介される。風味はとても無難で、材料も全国で広く手に入るものであり、これがなぜ頑固に熊本限定の域に留まるのか、とても不思議に思う。調製元の駅からの撤退により、2018年3月頃までに終売か。他社のものなら、今でも駅で買えるはず。
※2021年3月補訂:終売を追記かつて熊本駅で名物の駅弁であり、アサリの不漁で1980年代に販売休止、しかし2004(平成16)年3月の九州新幹線開業に合わせて復刻された駅弁。アサリ型というよりホタテ型のプラ容器に、掛紙をかけてネットに入れる。中身は駅弁の名前どおりアサリ飯。茶飯の上をアサリが覆う。
中身の原価が安いのだろうが、特殊な容器を使う駅弁で630円とは格安の部類に入り、シンプルでちょっと甘めの味も良い。熊本駅弁は一時期、抽象名の幕の内風弁当ばかりだったと思うが、たこ壷めしやこの駅弁のような具体名の単品弁当のほうが、少なくとも駅弁大会では受けが良いと思う。しかし2011年現在で、駅弁売店でも駅弁大会でも見掛けなくなってしまった。
※2011年2月補訂:現況を追記2001(平成13)年発売の新作。たこつぼ型の容器に、干しダコの戻し汁で炊いた御飯に、人参・ゴボウ・ヒジキに加えて細かく刻んだ天草の天日干しタコを混ぜる。普通の容器に入った630円のものや、320円のおにぎりも一緒に発売。アサリの不漁で看板駅弁「あさり釜めし」の製造販売が難しくなったための新製品で、次期の看板駅弁として売り出し中。
上記の駅弁「干したこ飯」と同じものを指している気はするが、その根拠が見つからなかったので、異なる駅弁として紹介する。タコツボ型の分厚い焼き物の容器に、天草産の干しタコをたっぷり混ぜた御飯を詰めて、タコの唐揚や甘酢煮などを載せる。容器が構造的に球形の容器より転倒に対して弱く、口が細いので中身をほじくるのに苦労するが、味と香りはなかなかのもの。倒れたり落ちたりしないよう、気を付けながらいただく。
上記の駅弁「たこ壷めし」の、2005(平成17)年時点での姿。駅弁の名前も中身も同一であるが、価格が端数切り捨てとなり、陶製容器がずんぐりむっくりしたタイプに変更されたので、本物の蛸壷とは異なる感じの形状にはなったが、不意に転倒することがなくなった。しかし食品表示ラベルが味のある掛紙のど真ん中に貼られたのはよくない。2011年現在で、駅弁売店でも駅弁大会でも見掛けなくなってしまった。
※2011年2月補訂:現況を追記小柄で背の高い経木製の長方形の容器の中に、焦茶色をしたタレ御飯を敷き、その上に鰻蒲焼を二切れとゴボウなどを載せ、上部側部をしっかりラップで巻いた状態で陳列し、購入時に掛紙をかけての販売。陳列棚は底から蒸気が出ていて、それを容器の上げ底と底に開いた穴で拾う、つまり購入時まで蒸されているから、すぐ食べれば暖かい。
この弁当は熊本駅ビルに入居した弁当屋の製品で、時刻表に駅弁の記号を付ける公式な駅弁ではないが、改札内でも改札外でも国鉄時代からの公式な駅弁屋の隣に店舗があり、一部商品には掛紙もあるから、普通の人から見て駅弁に違いない。しかもその店舗は明るく清潔感があり、商品も安めで店員さんも快活となると、両者の勝敗は明らか。駅弁屋はどう感じていただろうか。調製元の駅からの撤退により、2018年3月頃までに終売か。
※2021年3月補訂:終売を追記熊本駅の幕の内弁当。正方形のボール紙製パッケージの中に、9区画の黒いトレーを入れ、日の丸、じゃこ、高菜で3種類の御飯と、鶏唐揚や焼き魚に煮物や揚げ物を詰めたもの。価格に対する中身の味と量はまずまずだが、前述のとおり隣に強力なライバルがいるとなると、特徴の薄い内容では勝負にならないのでは感じる。
この駅弁は2013年3月頃の駅弁屋の撤退により、現在は買うことができない。駅弁売店の跡地は2014年2月時点で立ちうどん店になっていた。
※2014年2月補訂:終売を追記入手状況等から1977(昭和52)年の調製と思われる、昔の熊本駅弁の掛紙。それにしてはずいぶんと高価だが、当時の国鉄の旅行キャンペーン「一枚のキップから」のロゴマークがあるので、誤差があっても数年程度のはず。掛紙に描かれるイラスト、は何をイメージしたのだろう。
昭和40年代頃の調製と思われる、昔の熊本駅弁の掛紙。一応、銀杏城という別名を持つ熊本城の天守閣とイチョウの葉と阿蘇山を描いているようだが、デザインがシンプルなので、調製元の記載がなければ、どこの駅の駅弁だか分からないものだと思う。