札幌駅から特急列車「すずらん」で約100分。母恋駅はアイヌ語由来とされる当て字の地名を採った駅名で知られ、室蘭の市街地に位置する小さな駅。2002(平成14)年に駅弁「母恋めし」が誕生しヒット、駅弁ファンや街おこし関係者にも知られるようになった。駅弁は駅舎の小さな売店での販売。1935(昭和10)年12月29日開業、北海道室蘭市母恋北町1丁目。
札幌駅から特急列車「すずらん」で約1時間半。室蘭市は北海道胆振地方で内浦湾や太平洋に突き出した、人口約8万人の港町。天然の良港に恵まれ、鉄鋼業や石炭の積み出しや交通結節点として昭和時代には大いに栄えたが、後にいずれも衰退し人口が半減した。2010年代には母恋駅弁「母恋めし」が室蘭駅でも売られた。1897(明治30)年7月1日開業、北海道室蘭市中央町4丁目。
2002(平成14)年4月5日に発売。室蘭市内で約15年ぶりの駅弁。1987(昭和62)年の「第2回むろらん郷土料理コンクール」のアマ弁当部門で最優秀賞を獲得した創作弁当を、JR北海道との交渉により母恋駅の駅舎内で売り始めたもの。2004年の現地への訪問時には、駅舎に観光小物と駅弁の売店ができていた。販売個数は2003年4月現在で一日20個、2008年7月現在で一日40個限定とされる。鉄道の駅に加えて道の駅でも売られた。
紙製の成型容器に、中身のイラストを描いた掛紙を置き、和紙のような風呂敷で包む。中身はホッキ貝のおにぎりが2個、うち1個はホッキ貝の貝殻に収まり、くんせい卵、スモークチーズ、おつまみわかめ。表彰品かつ評判品だけあって風味も良好。写真のとおり中身のすべてがビニールで個別包装されているのは、食べ残しをポケットに詰めて持ち歩くためとも、個々のメニューの香りを他に移さないためとも紹介される。価格は2002年の発売時で840円、2010年時点で980円、2015年時点で1,058円、2017年時点で1,188円、2024年時点で1,399円。
室蘭は北海道の太平洋側では屈指の天然の良港で、石炭の積み出しから港湾工業都市として発展した。しかし1960年代に北海道を含め国全体で炭坑が衰退し、1980年代に円高で室蘭を含め国全体で鉄鋼業が苦戦し、そして札幌に近い苫小牧で平坦な湿原が掘割港と工業団地に開発されたため、室蘭市は半世紀で人口が半減するなど、すっかり衰退してしまった。良港を産んだ地形は昔も今も変わらず、母恋駅舎を背に半時間強まっすぐ登る眺望名所の地球岬からは、アイヌ語由来の当て字に負けない雄大な太平洋の眺めと強風を存分に浴びることができる。
※2024年3月補訂:写真を更新し値上げを追記2020(令和2)年1月21日に購入した、母恋駅弁の掛紙。上記の2024年のものと変わらない。買った場所も同じ京王百貨店の駅弁大会。他の輸送駅弁と違い入荷が不安定な印象で、当日の販売が中止になったり、夕方にどっさり来たりした。
2013(平成25)年1月12日に購入した、母恋駅弁の掛紙。上記の7年後とほぼ同じ。当時は「ご安全で楽しい旅を!!」しおりがなく、中身のうちおつまみわかめが小茄子漬であった。掛紙と風呂敷としおりで、調製元の名前が異なる。
2004(平成16)年9月12日に購入した、母恋駅弁の掛紙。当時の掛紙では、喫茶店が調製元の名前であった。