営業当時で、函館駅から普通列車で約2時間半。江差町は北海道南部の渡島半島で日本海に面した、人口約7千人の港町。江戸時代にニシン漁や北前船で大いに栄え、当時の家並みの一部が今も残る。1936(昭和11)年11月に通じた鉄道は、2014(平成26)年5月に廃止された。その終着駅である江差駅には駅弁がなかったが、鉄道の廃止が決まってから「新・江差駅弁当」が誕生した。1936(昭和11)年11月10日開業、2014(平成26)年5月12日廃止、北海道檜山郡江差町字陣屋町。
JR江差線と江差駅の廃止が決定した後の2013(平成25)年11月に発売。調製元の食堂や配達で販売し、土休日に限り駅でも売られた模様。小判形の容器に、飯の上と中に寒海苔を敷いた御飯と、ニシンツブ貝、ニシン甘露煮、玉子焼、じゃがいもカレーコロッケ、ニンジン、ブロッコリーなどのおかず。手作りやローカル線を売りにするのに、素朴や手作りという感じのない、しっかりとした、きれいなお弁当だなと思った。江差駅がなくなった現在、今後に駅や駅跡や駅弁大会に来るのだろうか。調製元は江差市街で眺めの良い洋食屋さん。2015年までの販売か。
江差は北前船やニシンが消えても、北海道の檜山支庁が置かれ、漁業と奥尻への玄関口として栄えていた。しかし道路の整備や車社会化と、函館まで鉄道と同等の運賃と時間で本数の多いバスの運行で、鉄道は廃れた。ところが、1980(昭和55)年の国鉄再建法による特定地方交通線の指定、つまり国鉄の廃止対象線の選定において、江差線は五稜郭駅〜木古内駅〜江差駅の区間で輸送量が評価されたため、函館の都市圏輸送に支えられて存続。一方で木古内駅以遠では江差線より乗客が多かった松前線(木古内駅〜松前駅)が、1988(昭和63)年1月限りで廃止されてしまった。
1988(昭和63)年3月の青函トンネルの開通で、江差線の五稜郭駅〜木古内駅は事実上の幹線鉄道となり、木古内駅に本州〜函館駅の特急列車がやって来た。しかし木古内駅〜江差駅の乗客は減り続けた。鉄道も町も特需を活用できなかった。北海道新幹線の開通が2016(平成28)年の春に決定し、木古内に新幹線の駅ができる目前の2014(平成26)年5月、江差線の木古内駅〜江差駅が廃止された。そういえば松前線の廃止もまた、青函トンネルの開業の直前であった。新幹線の開通で五稜郭駅〜木古内駅は第3セクター鉄道に転換され、JRから江差線の路線名が消えた。
※2020年5月補訂:終売を追記