札幌駅から特急列車で2時間強。新得町は北海道の中央部で石狩山地と十勝平野にまたがる、人口約6千人の畜産と蕎麦の町。かつては根室本線が狩勝峠越えに挑む鉄道の町でもあった。駅そばの味に定評がある。駅の開業時からあり、「やまべ鮨」が知られた駅弁の販売は、1982(昭和57)年頃になくなったが、近年に駅舎内の売店で曜日限定の駅弁が出現した模様。1907(明治40)年9月8日開業、北海道上川郡新得町本通北1丁目。
調製元のフェイスブック投稿によると、2019(令和元)年6月までに新得駅で発売。透明なふたと赤い掛紙を使う長方形の容器に、白飯を詰め、牛焼肉で覆い、ナムルと柴漬けを添える。1990年代まで駅や車内販売で親しまれたポリ茶瓶(ポリ容器)を使う、冷たいほうじ茶を添付。この十勝産牛肉あるいは豊西牛の焼肉は、不揃いに切って焼いた見た目も、赤身のざらついた食感でも、焼肉のタレの味でも、駅弁や惣菜の牛肉とはひと味違う手作り感。公式な駅弁が消えて久しい新得駅で、4年以上も販売が定着している。調製元は新得駅近くの焼肉店。木曜から月曜までの販売。
これは駅弁ではないが、名物として名高い新得駅の駅そば。地元・新得のそばの実を丸ごと挽いたそば粉を使う手打ち麺に、日高昆布と鰹節をベースにしたつゆを注いで、刻みネギを添える。他に「山菜そば」「かしわそば」「月見そば」「天ぷらそば」(各370円)があり、いずれも地元の食材を使用する。列車内などへテイクアウトできる持帰容器(30円)や、麺のみの単品販売もある。
新得駅はかつて公式な駅弁販売駅であり、ホーム上の駅そばも旅客に親しまれていた。特急列車の時代となり駅での停車時間が少なくなったことで、1970(昭和45)年頃に駅そば屋が一度閉店したが、1981(昭和56)年10月の石勝線の開通に合わせて復活を果たした。営業時間は10〜17時と短めだが、今も駅でそばを立ち食いできる。
新得駅の駅そばで、上記の「かけそば」と同じもの。30円の追加で持ち帰り容器に入れてくれる。昭和時代は、大都市を除く日本全国の駅の立ち食いそば店で、容器代の追加でテイクアウトでき、列車内に持ち込むことができた。今は珍しくなったのではないかと思う。この新得駅では、持ち帰り容器に入れるだけでなく、ていねいに袋詰めしてくれたうえ、麺がのびるがそれでもいいか、と店員さんから何度も念押しされた。
1950年代、昭和30年前後のものと思われる、昔の新得駅弁の掛紙。名所案内に一番手として挙げる北海道種畜場の風景を描く。北海道開拓使が札幌の真駒内に設けた牧牛場が、1947(昭和22)年に新得町へ移転、今も地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部畜産試験場という長い名前で現存し、1573ヘクタールの敷地で牛豚鶏羊の畜産に関する試験研究および技術支援を行う。新得駅では明治時代の開通時から駅弁が売られ、やまべ鮨は名物であったが、1982(昭和57)年頃になくなってしまった。