青森駅からバスで1時間強。JR五能線の五所川原駅と同じ場所にある、津軽鉄道の始発駅。五所川原市は青森県で津軽半島の内部に位置する、人口約5万人の町。江戸時代の新田開発で生まれ、昭和時代の鉄道の開通で米やリンゴが集積、商業で栄えて複数の百貨店が立地するほどの拠点となった。駅弁はないが、鉄道会社が3日前まで2個以上の事前予約で販売する「駅弁」はここで受け取る。1930(昭和5)年7月15日開業、青森県五所川原市字大町。
2007(平成19)年9月に発売。津軽鉄道史上初の駅弁。とはいえ、駅に行けば買えるものではなく、12〜3月に限り、3日前まで2個以上の事前予約により、11〜14時に限り津軽鉄道本社、津軽五所川原駅、金木駅のいずれかで受け取れるという、団体客やグループ向けのオリジナル弁当。もちろん、条件を満たせば個人でも買える。調製元は五所川原郊外の居酒屋さん。
客車内のストーブをレトロモダンに描いた掛紙を巻く、竹皮編みの容器の中身は、ゆかりとめはりの丸いおにぎりが各1個と、イカとニンジンなどの和え物、焼鮭、カズノコや昆布などの和え物、エビフライ、サトイモ、ホタテなど。中身はメインの食材以外は一定しないようで、様々な内容の写真がネット上で見て取れる。今回に購入したものでは、サケハラスないし焼鮭の代わりに、小さく太めでごつい形の魚一匹を頭を落として焼いて挿入。白身で骨っぽく、腹にはスジコにもなりきれない紅色の卵を抱え、これはなんという魚なのか、個性が強く印象に残った。4〜5月は「さくら弁当」、6〜8月は「だざい弁当」、9〜11月は「いなほ弁当」に変わる。価格は2007年の発売当時で1,000円、2015年の購入時で1,100円、2020年時点で1,150円。
津軽鉄道では、現在の路線の開業時から中古車での運行であったり、乗客や貨物の減少による慢性的な経営難により、古く暖房のない客車を使い続けていた。冬になると客席の一部を撤去し、1両あたり2基の石炭ストーブを据え付けた。そのような客車や路線や鉄道会社が各地で消え、気が付けば全国でここだけの存在になると、これが「津軽鉄道のストーブ列車」として注目され、1980年代には観光客が好んで乗りに来るようになっていた。
今はさらに乗客が減り、朝の通勤通学時間帯に客車を使う必要がなくなり、補助金で入れた新車で暖房付きのディーゼルカーにより輸送をまかなえるようになったが、ストーブ列車は観光客向けの運行を続けている。毎年12〜3月の日中に、2〜3往復の運転。
※2020年12月補訂:値上げを追記「ストーブ弁当」「さくら弁当」に続く、津軽鉄道の駅弁第3弾として、2008(平成20)年9月に1,000円で発売し、11月まで販売。以後も毎年9〜11月の販売が続く。これも「ストーブ弁当」と同じく、3日前2個以上の予約販売。松花堂弁当タイプの仕出し容器を、表面に路線図と五所川原マップと、岩木山を背景に稲穂を進む列車の風景、裏面に中身のイラストを描いた掛紙で包む。
今回の中身は、ひじき御飯であった季節の炊き込みご飯、おにぎりと稲穂と漬物、焼き魚と食用菊ごま和えとたたきごぼうと玉子焼、エビに揚げ出し豆腐に秋なすピリ辛ひき肉のせ。焼きの香りが印象的。少々の持ち歩きにくさや食べにくさは、食事のための駅弁や弁当でなく、旅の味わいでできている。中身のイラストと内容が微妙に異なるのは、上記のストーブ弁当と同じで、これも津軽鉄道駅弁の味わい。
2016(平成28)年11月の発売。調製元はJR新青森駅弁のつがる惣菜で、販売元は津軽鉄道。「ストーブ弁当」その他の季節の弁当と同じく、3日前まで2個以上での注文販売となる。りんご色の掛紙には商品名と鉄道会社名、リンゴと鉄道車両、お品書きと「献立:高瀬亘」「監修:小林しのぶ」の文字が描かれる。旅行ジャーナリストの小林しのぶ氏が考案し、東京都代々木の和食店主の高瀬亘氏が具体化。つまり、東京生まれの商品なのだろう。
今回は駅弁大会で購入。とても細長い容器に収まる中身は、「焼きりんごと豚ロースのミルフィーユカツ」「エビしんじょうりんご皮巻き」「りんごのきんぴら」「りんごと鶏ひきにくのミートボール」、りんご酢のちらし寿司と姫りんごの甘露煮。本当にリンゴづくし。デザートでそのまま食べるか、せいぜい焼かれるかのリンゴが、こんなにいろんなものにできるのかと驚いた。半年間ほどの販売か。
※2020年12月補訂:終売を追記