東京駅から東北新幹線で約1時間20分。東北新幹線と東北本線、磐越西線、磐越東線が接続し、水郡線の列車が乗り入れる駅。郡山市は福島県の真ん中に位置する、人口約32万人の宿場町。明治時代に発展した農業に加えて、鉄道や国道や高速道路が四方から集まる立地に商工業が集積、東北地方で仙台に次ぎ福島を上回る都市圏を形成する。駅弁は明治時代から売られ、昭和時代から2010年代まで複数の駅弁屋が競った。1887(明治20)年7月16日開業、福島県郡山市燧田。
2006(平成18)年に発売。2月下旬から5月のゴールデンウィークの頃まで販売される、春限定の駅弁。駅弁の名前となる三春の滝桜が、大きめの容器を包む正方形の掛紙に大きく描かれる。中身は毎年同じではないようで、今回の2022年のものは、「里山ごはん」とする郡山米あさか舞コシヒカリの炊込飯にタケノコを並べ、こんにゃくやシイタケなどの煮物、玉子焼とサワラ塩麹焼とかまぼこの焼き物と漬物、鶏ささみ竜田揚、桃のシロップ煮、三色豆などのおかずを3列に収める。これは花見ができそうなお料理弁当。価格は2006年の発売時で1,200円、2011年から1,000円、2015年から1,050円、2020年から1,080円。
三春滝桜(みはるたきざくら)は、福島県田村郡三春町の里山に生えるシダレザクラの木。1922(大正10)年10月に、当時の国の史蹟名勝天然紀念物保存法に基づく天然紀念物に指定された、推定樹齢1,000年以上の巨木。周囲を草原としたゆるやかな斜面で、多くの支柱に支えられながら、四方と上空に10メートル前後の枝を伸ばし、4月に多量の花を咲かせる。その時期には20万人か30万人の観光客が訪れ、磐越東線に臨時列車が走り、三春駅からの臨時バスが運行され、周囲の道路を封鎖して観桜料を徴収する。そうでない時期に訪れると人はほぼ無く、風景の一部に紛れていた。
ここでは梅、桃、桜が春に一度に咲くそうで、これが三春の地名の由来になったという説があり、駅弁の中身にもこれらが取り入れられる。昭和時代まではサクラよりも馬産、三春駒(みはるごま)やその木製玩具がよく紹介されていたと思う。
上記の駅弁「三春滝桜べんとう」の、2010(平成22)年時点での姿。タケノコ御飯と菜の花、桜めしと赤かぶ漬、玉子焼と鶏肉ハーブ焼とニシン昆布巻とサワラ西京焼にふきのとうみそ、鶏つくねとニンジンや三角揚げなどの煮物、桃しそ巻きにうぐいす豆などという中身であった。滝桜を使う掛紙の絵柄も異なる。当時はスーパーの駅弁大会での販売もあった。
※2022年7月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し上記の駅弁「三春滝桜べんとう」の、2006(平成18)年の発売時の姿。桜御飯と菜の花御飯、焼き鳥にエビフライに玉子焼、桜型人参や油揚げなどと、白桃や赤かぶや三春くるみゆべしという中身であった。滝桜を使う掛紙の絵柄も異なる。
※2022年7月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し久々に見たような気がする、郡山駅のマツタケ駅弁。2014(平成26)年からこの姿で出ていた模様。秋の色と柄が豊かな掛紙に包まれた容器に、マツタケを載せたシメジ御飯、ニンジンやこんにゃくなどの煮物、野菜の五色揚げ、大学芋、れんこんのきんぴら、漬物を詰める。以前の野暮さや地味さはなく、マツタケは良い意味で目立たない印象。9月から11月までの販売か。価格は2015年時点で1,000円、2018年の購入時で1,050円、2020年時点で1,080円、2023年時点で1,100円。
※2023年10月補訂:値上げを追記JR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2013」へのエントリーに向けて、2013(平成25)年の夏までに発売。長方形のプラ容器に茶飯を詰め、クリとニンジンとしいたけで彩り、サトイモとエビとマイタケの揚げ物、カマボコと玉子焼、きんぴらごぼう、つくね、こんにゃくなどを添える。掛紙写真や実物の見栄えのとおり、うまくないはずがないという感じ。「福の島おとなの幕の内」に続き、ここでも駅弁の名前に使った「おとなの」とは何だろうかと思う。価格は2013年の発売時で1,000円、2018年時点で1,100円。
※2023年12月補訂:写真を更新2013(平成25)年10月13日に購入した、郡山駅弁の掛紙。上記の2023年のものと、絵柄は異なるが、主旨は変わらない。中身もまた然り。長方形のプラ容器にシメジ御飯を詰め、クリとニンジンとマツタケで彩り、サトイモとエビとマイタケの揚げ物、カマボコと玉子焼、きんぴらごぼう、つくね、こんにゃくなどを添えた。
2012(平成24)年10月27,28日に只見線の会津若松駅と会津川口駅との間で運転された「SL只見線奥会津号」の運転に合わせて販売した郡山駅弁とされ、掛紙には10月14日の「2012鉄道の日記念」と書かれていたりするが、どうもこの商品は11月の東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」と、翌年1月の京王百貨店の駅弁大会でしか売られていないのではと思われる。掛紙のSL写真(おそらくC11325)の正面ナンバープレートをなぜか塗りつぶしている点にも妖しさを感じる。
紫色の容器と掛紙を持つ駅弁の中身は、クリとサケを載せたシメジ飯、つくねと玉こんにゃくの串、玉子焼、牛肉煮、マイタケ天、赤かぶ漬、桃甘露煮など。中身は美味だった。
正方形の容器にビニールを載せて木目調のボール紙でふたをして、シンプルにも程がある弁当名しか書かれない掛紙をかけて食品表示ラベルを貼り、紙ひもでしばる。中身は茶飯の上に鳥そぼろやレンコンなどを雑に貼り、薄いが枚数の多い松茸を乱雑に置き、もろみそと柴漬けを添える。
内容的に異色で、松茸の分量も比較的多い松茸駅弁なのだが、ふたを開けると辛味噌と柴漬けの刺激臭が漂い、松茸は鳥そぼろの強い味付けに負けて香りが飛んだ。属地不詳な掛紙でも、商品名を隠すようにべったり食品表示ラベルを貼るのも気になる。どこを切ってもつくりが雑な、がっかり駅弁。2015年時点で現存しない模様。
郡山駅の松茸駅弁。形の良い楕円形の容器に茶飯を敷いて、薄く小さい松茸が4切れとこちらも小ぶりな鶏肉が一切れ、あとは銀杏や麩など見た目を彩るための食材がいくつか添えられる。松茸は高価な食材だとはいえ、これだけ御飯に対するおかずが少なくては美味い福島米でもカバーできない。おかず満載の駅弁を同時に購入して分けて食べたいところ。価格は2003年の購入時で900円、2014年時点で950円。2014年までの販売か。
この駅弁に限らないが、全国の松茸駅弁のほとんどは掛紙に一本まるごとないし複数本の松茸を描くが、中身は当然にスライスものが数切れであるから、うがった見方をすれば誇大広告となる。これが問題視されると掛紙のデザインを変更しなければならなくなるか。
※2017年10月補訂:終売を追記