浅草駅から特急列車で約2時間。日光市は栃木県の北西部を占める、人口約8万人の門前町。日光東照宮、中禅寺湖、鬼怒川温泉などの観光資源に恵まれ、年に一千万人以上の観光客が訪れる。東武日光駅では2社の駅弁屋が競い、鱒鮨や湯波のものがうまい。1929(昭和4)年10月1日開業 栃木県日光市松原町。
2021(令和3)年3月20日に1,000円で発売。駅弁の名前は、掛紙では「大樹お辨當」、食品表示ラベルでは「日光幕の内大樹」、レシートでは「日光幕の内辨當大樹」、公式サイトでは「幕の内弁当大樹」や「日光幕の内弁当大樹」とある。日光地区を中心に栃木県産の食材を多く使用したほか、「C11 207」の焼き印やSLを連想させる食材(蓮根、黒豆)を取り入れた「地産地消」と「SL大樹」をコンセプトにした東武のオリジナル駅弁と、販売元の東武商事がニュースリリース。
「大樹」とは、下今市駅と鬼怒川温泉駅を結ぶ東武鉄道のSL列車の名前であり、シンプルなデザインの掛紙に列車のロゴマークを使い、駅弁の名前とする。箸袋にも大樹のロゴ。平たいプラ容器の9区画の中身は、日の丸御飯、湯波としめじの御飯、ゆかり御飯、湯波、煮物、肉団子とカボチャと志そまき漬唐辛子、鶏唐揚と野菜、日光HIMITSU豚と「C11207」焼き印入り玉子焼、白玉柚子みそ添えとサヤ黒豆。日光やSLにこだわるも、食べてそんな感じもしない、幕の内タイプあるいはおつまみ豊富なお弁当。
2019(令和元)年の発売か。写真のとおり、おいなりさん6個に極小の玉子焼と柴漬けを添えたお惣菜。見えないところに、稲荷寿司の具として、錦糸卵、しいたけ、かんぴょう、にんじん、れんこん、湯波、水菜が細かく混ざり、これでうまみが出る。日光埋蔵金弁当などの駅弁を持つ調製元の商品で、駅弁売り場で売られる商品なので、掛紙を巻かないことが不思議に思える。
2019(令和元)年の年末までに発売か。東武日光駅の改札外待合室にふたつある売店のうちひとつ「東武日光売店」では、JR宇都宮駅の駅弁も売られる。これはJR宇都宮駅の駅弁屋が「東武日光売店限定販売」とうたう駅弁。箸袋を包む掛紙のような紙に、商品名としてそう明記してある。
木を紙で補強した正方形のエコ容器に発泡材のふたをして、鷲のような風呂敷で包む。これに酢飯を詰め、ゆば巻きの炙りを据え、たけのこ、にんじん、小海老揚げ、ダイズチーズ、れんこん、しいたけ、かんぴょう、枝豆、卵そぼろ、桜でんぶ、ごまを散らし、おはぎを添える。ちらしずしであることを考えても、見栄えはもう一息に思えるが、これで日光と栃木を感じ取ってもらえただろうか。
駅弁としては1992(平成4)年5月に、東武日光駅で発売した模様。ゆばを挟んだ直方体の酢飯に、中禅寺湖特産というヒメマスの身を寿司ネタ大にして貼り、笹の葉で目張りしてから竹の皮で包み、しおり、しょうゆ、おてふき、割りばし、ナイフを添えて掛紙で巻く。値段は高いが味はうまいの一言。価格は2002年時点で1,260円、2014年4月の消費税率改定から1,300円。
※2019年8月補訂:写真を更新2011(平成23)年10月21日に購入した、東武日光駅弁の掛紙。上記の2019年のものとほぼ同じだが、内容量が一人前でなく「310g」であったり、製造者に製造所固有記号が付いていたり、消費期限の捺印の日付が平成表記だったりなどの差異はある。
2002(平成14)年5月25日に購入した、東武日光駅弁の掛紙。絵柄は上記の2011年のものと変わらないが、当時は「中禅寺湖名産」の表記があり、掛紙そのものには食品表示がなかった。
長方形の容器に、三角形の笹巻きが5個列ぶ。中身は1個が鱒鮨、2個が白い酢飯にマスやシイタケやミツバなどを混ぜたもの、2個が茶色い酢飯にやはりマスやシイタケやミツバなどを混ぜたもの。肌触りの良い笹の葉は、ゴムやテープなどで留めることなく具にぴったり巻かれており、どうやって巻いたのか、どうすればきれいに取れるのかよく分からない、熟練の技を感じた。価格は2004年時点で750円、2014年4月の消費税率改定で780円、2020年時点で830円、2022年時点で880円。
※2020年5月補訂:写真を更新し解説文を手直し2004(平成16)年6月26日に購入した、東武日光駅弁のふた。食品表示の位置を除き、上記の2020年のものと見た目も容器も内容も風味も、見事に変わらない。ひっそり、しっかり、売られている。
2004(平成16)年頃の発売か。正八角形の容器に、具を見せたおいなりさん4個、見せない稲荷1個、らっきょう、生姜を詰める。いなりの具はすべて異なり、牛しぐれ煮、シイタケとかんぴょう、ワラビとゼンマイ、エビと錦糸卵、何もなしの5種。いろんな味が楽しめて賑やか。価格は2018年の購入時で620円、2020年時点で650円。
※2020年5月補訂:値上げを追記2002(平成14)年の発売。高さのある経木枠のわっぱ型容器を使用、そのフタには金縁紅葉の絵柄が貼り付けられ、輪ゴムと駅弁名付紙帯セロテープ留めで十字にしばり、割りばしを挟み込む。中身は湯葉混じりの酢飯の上の半分を湯波(ゆば)を敷き詰めて覆い、残りは玉子焼や煮物などを載せる。豆乳の加熱皮膜に地域性などないと思うが、なんとなく京都か日光くらいでしか駅弁にできなさそうな内容。容器も中身も上品に思える。価格は2015年の購入時で880円、2020年時点で930円。
東武鉄道の浅草駅や北千住駅から東武日光駅行きの快速列車に乗ると、片側2扉の車両の室内いっぱいに向かい合わせの4人掛け座席が並ぶ風景と、その着席者がことごとく軽装かハイカー姿の背筋が伸びて品のある高齢者である光景に、独特の雰囲気を感じる。車内で挨拶回りや飲食物配布などが始まったりすると、間違えて団体専用列車にでも乗ってしまったか、という感じ。特急スペーシアや準急や各駅停車はそうでもない。
※2022年4月補訂:値上げを追記2004(平成16)年6月26日の調製と思われる、東武日光駅弁のふた。上記の11年後とおおむね同じものであり、中身や味に変わりはない。
木目調で真っ黒な正方形の容器に、豪華絢爛な柄の和紙と駅弁の名前を記した短冊を載せて、ゴムで十字に留める。白いトレーに収まる中身は、マイタケ御飯にゆば巻、焼マス、椎茸とこんにゃく、玉子焼、昆布巻など。見栄えも中身も価格や内容以上の高級感を醸し出す。
通常の駅弁では、焼き魚のサケをマスにするとグレードダウンとなるところが、こちらは調製元がマス寿司屋なので、サケに負けないか上回る厚みと香りがある。これは名前のとおりゆばの駅弁であり、中身としてはマイタケ弁当なのだけど、焼マスの存在感が最も高い感じがした。東武日光駅限定駅弁の中では最も高い評価を集めているらしい。価格は2004年時点で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円、2020年時点で1,150円、2022年時点で1,200円。
※2022年4月補訂:値上げを追記2009(平成21)年11月20日に購入した、東武日光駅弁の掛紙。上記の2018年のものと、絵柄も容器も中身も味も価格も変わらない。当時の調製元表記には製造委託の記号が入っている。
2004(平成16)年6月26日に購入した、東武日光駅弁の掛紙。上記の駅弁「ゆば御膳」の、2004(平成16)年6月時点での姿。掛紙の絵柄は変わらず、これに添える紙片に食品表示がなかった。中身は上記の2009年や2018年のものと異なり、湯波の混ぜ御飯にマス焼、玉子焼、昆布、インゲンとシイタケの煮物、湯波巻を添えていた。
日光東照宮の四百年式年大祭の開催を記念し、「日光東照宮400年式年大祭記念弁当」の名で2015(平成27)年5月31日に東武日光駅、下今市駅、鬼怒川温泉駅にて1,300円で発売。翌年に「日光東照宮記念弁当」へ改称するも、外観や中身は変わらなかった模様。今回はさらに改元を記念して、2019(平成31)年4月27日から、掛紙に「祝令和2019.5.1〜記念」「新しき時 新しき夢へ」と入れ、値段を200円上げた。
中身はちらし御飯と赤飯、日光揚巻湯波煮、甘鯛の西京焼、鶏きじ焼、牛肉煮、エビやさつまいも、ニンジンやタケノコなどの煮物など。通常版に牛肉煮など200円分の増量を施したようだ。年内に終売か。2021年で新作として再発売、5月頃まで売られた模様。
※2022年4月補訂:終売を追記2013(平成25)年4月20日の発売か。松花堂の仕切りを少し曲げた4区画に、2種のおいなりさんと漬物、鶏唐揚2個と焼売と湯波あん、煮物と山菜と玉子焼、そぼろふんわり豆腐と牛肉煮とオレンジなどを詰める。名に違い、おつまみだけには特化していない、具だくさんのお弁当。価格は2018年の購入時で1,030円、2020年時点で1,050円。2022年までの販売か。
※2023年4月補訂:終売を追記2017(平成29)年8月10日の東武鉄道のSL列車「SL大樹」のデビューとともに発売か。竹皮に小さく平たい牛しぐれ煮のおむすび2個と、れんこん、黒豆、たまり漬を包み、商品名と「祝SL「大樹」運転記念」と書いて食品表示ラベルを貼った朱色の掛紙を合わせる。これはもしかすると駅弁発祥宇都宮説、竹の皮に握り飯2個とたくあんを包んで売ったというものを、おおむね再現したものか。中身の見栄えは宇都宮駅のそんな再現駅弁を、だいぶ貧相にしたように見えた。2022年までの販売か。
※2023年4月補訂:終売を追記安物の惣菜弁当に使われていそうなプラ製の容器を使用、これに商品名と必要な情報を書いた薄い掛紙を巻いて、輪ゴムでしばる。中身は笹の葉にしっかり包まれた、マス、梅干、高菜のおにぎりが各1個と、魚ハンバーグ、こんにゃくとしいたけ、レンコンときぬさや、柴漬けが入る。
安いのに味は良いけれども、あまりにも見栄えが悪い。調製元公式サイトの掲載画像からおかずが数点間引かれているので、悪い方向にコストダウンを図った印象がある。とはいえ、東武日光線の特急や快速で食べるお弁当としては、コンビニ弁当と同じ価格でそれ以上の雰囲気を出す役割は、まだ備えていると思う。価格は2009年の購入時で500円、2014年4月の消費税率改定で520円。2014年または2017年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記2002年か2003年頃に発売か。紫地紅葉の絵柄が美しい長方形の容器に、薄紫色の掛紙をかけて輪ゴムでしばる。中身は栗を中央に配置した黒米混じりの紫色おこわに、タケノコなどの煮物にこんにゃくや山菜など。特段のおかずがないのに強飯(こわめし)だけで食が進む内容は、控えめながら自我がある。駅弁を買いそうな通行人に声をかける販売人も、押し付けがましいところがなく好ましかった。この駅弁は現存しない模様。
※2015年8月補訂:終売を追記発泡材枠にトレーを接着した底の浅い八角形の容器に、セロテープで駅弁の名前を記した帯を貼る。中身は日光舞茸の茶飯にかんぴょうと、山菜や薩摩揚や蒲鉾や玉こんにゃくや海老など。味はなんとなく団体客向け旅館の朝食バイキングのような感じだが、御飯もおかずもとても柔らかく、元気な高齢者という東武日光駅の主要客層に配慮されたと思われるもの。なお、2010年現在でこの駅弁は販売されていないとのこと。
東武日光駅は国際的な観光地である日光の玄関口であるが、駅周辺に名所があるわけでなく、先に進むには高くて混んで渋滞して本数の少ないバスを待ち続けるか、車の排気ガスを浴びながら何十分も歩くかしかないため、アクセスの主流はマイカーか貸切バス。鉄道利用者の多くは外国人か高齢者ハイカーという感じで、駅や列車内はそんな独特の雰囲気がある。
※2010年7月補訂:終売の追記東武日光駅から徒歩3分。私鉄の日本鉄道が開業後ほどなく設けた日光の玄関口で、洋館の駅舎を皇族や大使や外国人も利用したが、東武鉄道の開業後約40年間の輸送競争に敗れ、1980年代以降は毎時1本ほどの普通電車が折り返す静かな駅。昭和時代に断続的に駅弁販売駅だった記録があるが、どのようなものかは知られない。1890(明治23)年8月1日開業、栃木県日光市相生町。