東京駅から東北新幹線で約50分。宇都宮市は栃木県の中央に位置する、人口約52万人の城下町で県庁所在地。工業都市として栄えるほか、二荒山神社の門前町や、餃子の町としても知られる。駅弁は明治時代から一貫して健在。駅弁の発祥地はここだという説がある。1885(明治18)年7月16日開業、栃木県宇都宮市川向町。
宇都宮駅弁「玄氣いなり」の、2024年時点での姿なのかどうか。明治26年創業で「松廼家開業130周年記念弁当」だと、1893+130=2023年の発売か。小柄でも太ったおいなりさん3個と、タケノコやレンコンなどの煮物を、細長いプラ容器に並べ、商品名や宣伝文に食品表示で文字だらけの掛け紙を巻く。今までのものと違い、おいなりさんの中身は見えないが、食品表示でうるち玄米60%、もち玄米40%とした中身の、つぶつぶなのにもちもちの味は変わらない。価格も元に戻った感じ。
2022(令和4)年の7月までに発売か。黄色い掛紙に文字とイラストで描かれるとおり、細長い容器に、うずら卵と鶏照焼の玄米いなり、牛そぼろと紅生姜の玄米いなり、ゆばとわさび菜の玄米いなり、ヤシオマスほぐし身の玄米いなりを並べ、玉子焼としいたけ煮を添える。玄米の歯応えと栃木の創作を楽しめる軽食。しかし以前の「玄氣いなり」が20年以上500円でお買い得だったところが、倍額の1,000円になり割高なものになってしまった。
2022(令和4)年の2月までに発売か。小柄で細長い容器に、大豆と玄米を混ぜた酢飯を詰め、ヤシオマスの中落ちほぐし身と玉子そぼろで覆い、牛そぼろと岩下の新生姜を載せたいなりずしを詰め、かんぴょうやれんこんなどの煮物とふきのとうを添える。焼き魚と玉子そぼろでなぜ白飯や茶飯でなく酢飯を使うのか疑問に思うことを除き、実は栃木をおいしくいただける軽食。玄米の使用にこだわり、御飯に歯応えがある、宇都宮駅弁らしい商品でもある。
2008(平成20)年9月11日に旧作をリニューアル。大小の正方形の容器を二段重ねにして、中身の写真と駅弁の名前を書いた黄色いボール紙の枠にはめる。中身は下段が御飯で白飯とこんにゃくを混ぜたタケノコおこわにナス漬、上段がおかずで霧降高原豚の味噌焼、焼売、かまぼこ、ゆば、タケノコ、かんぴょう、煮豆、漬物など。下段の御飯がたっぷりなのに上段がどれも薄味なので、御飯のおかずに欠く印象を受けるヘルシーな駅弁。価格は100円の値下げ。
※2018年10月補訂:写真を更新2010(平成22)年9月5日に購入した、宇都宮駅弁のスリーブ。「日光強めし」の2008(平成20)年9月のリニューアル時には、スリーブの絵柄も中身やおしながきを記すデザインにリニューアルされた。調製元公式サイトによると2013(平成25)年2月に「販売当時のひも掛け容器に変更」し、上記のとおり元へ戻す。中身は2018(平成30)年時点と同じ。
正方形の容器を二段重ねて、紫とピンクの中間色な掛紙代わりの紙のふたをかけて、割り箸ごと紙ひもでしばる。中身は下段が「強めし」つまりおこわで、上段が焼豚やカニ焼売や小海老やぜんまいやかんぴょうなどのおかずや付け合わせ。ひたすら山菜や漬物や付け合わせを食べさせる中高年向きの駅弁に見えて、茶飯に近いおこわが単体で食べられるので、おかずの不足感はない。2008年9月11日に上記へリニューアル。
1983(昭和58)年の発売か。御飯に玄米を使用した、幕の内タイプの駅弁。真っ黒の容器に玄米の混ぜ御飯を敷き、梅干し、かんぴょう、グルテンミート(大豆たんぱく)、ニンジンとタケノコの煮物、ナス漬けを配し、ぜんまい、コウナゴ、煮豆、油揚げを添える。玄米そのものが健康食であるうえに、肉も魚も使わないところでもヘルシーさをアピールする。
上記の駅弁「下野玄米弁当」の、2003年時点での姿。掛紙が同じで、中身もほぼ同じ。そして価格まで変わっていない。この間に駅弁の平均価格が、約800円から約1000円まで上がったと考えられるのに、これはすごいことである。また、宇都宮駅の駅弁は、玄米がうまい。
※2017年9月補訂:新版の収蔵で解説文を整理1999(平成11)年の4月の発売は、おそらく4月10日の駅弁の日に合わせたもの。平たい長方形の容器に御飯とおかずを詰めたと書けば、幕の内タイプの駅弁として一般的。その中身がとても個性的で、御飯は白米に赤米、きび、緑豆、そばを混ぜて炊いた、古代米または雑穀飯あるいは本来の姿を持つ赤飯。おかずはグルテンミート、こんにゃく、たけのこ、にんじん、ひじき、山菜などで、肉も魚も使わないヘルシー志向。掛紙の絵柄や色彩、そもそも駅弁の名前から、個性的というよりはむしろ異端と表現したほうがよい、とても変わった駅弁だと思う。
※2021年3月補訂:内容を整理宇都宮駅の開業120周年を記念して、2005(平成17)年8月頃にリニューアル。中身も風味も価格も駅弁の名前も変わらないが、容器が変わった。見栄えが派手になりアピール度が上がったという声もあり、ここでも駅弁掛紙がフタ兼用ボール紙に変わってしまったという嘆きあり。それでも味と中身で長らく親しまれた駅弁であったが、2022年の春に消えてしまった。
宇都宮駅も2005年8月20日にリニューアルされ、エレベータやエスカレータが整備されたバリアフリーの駅になるとともに、最近のJR東日本の方針により商業施設を大増設。改札外の駅弁売店はイートインスペースを設けた「駅弁屋旨囲門」に変わり、改札内の駅弁売店はますます駅利用者の主要動線から外れた。これが駅弁にとって、吉と出るか、凶と出るか。
そんな改札外の駅弁売店も、宇都宮駅弁の売店に戻されたあと、再度のリニューアルで撤去。2015年10月の訪問日時点での改札外での駅弁販売は、改札口付近での移動店舗に変わっていた。
※2022年9月補訂:終売を追記2005(平成17)年10月1日に購入した、宇都宮駅弁のふた。デザインも価格も容器も中身も、上記の2015年のものと変わらないが、売り続けるうちに駅開業120周年が130周年になったため、後のものは「宇都宮駅開業120周年(平成12年)記念弁当」と、時点表記の括弧書きが追加されている。
スーパーの惣菜コーナーで見たような長方形の容器に、市販の包装紙に駅弁の名前などのシールを貼った掛紙をかける、しかし駅弁らしさを失わない工夫が凝らされた外装。中身はコシヒカリの玄米にひじきやこんにゃくなどを混ぜた御飯を油揚げの中に詰めた、寿司ではないおいなりさんを3つと、竹の子や人参などの煮物に串コンニャク。早い(その場で買える)・旨い・安いと三拍子揃ったエコノミーな、若者の小腹とお年寄りの腹を満たすのに十分な駅弁。2005(平成17)年8月頃に上記へリニューアル。
2016(平成28)年10月1日の発売。宇都宮駅で定評の駅弁「玄氣いなり」5個に、ごぼうの金平、ダイスチーズ、人参とレーズンのラペ、葱のぬた和え、かんぴょうの胡麻酢和え、椎茸煮のトッピング6種を添え、鶏の照焼、モロのフライを詰める。「お弁当箱の中でお料理しよう!!」と掛紙に書いてあるとおり、おいなりさんに好きなトッピングを載せて食べるのだろう。しかし宇都宮駅弁のおいなりさんは、飯が単品でうまいので、実はトッピング要らず。販売は年内限りか。
「雷様剣士(らいさまけんし)ダイジ」は、とちぎテレビで2014(平成26)年4月から毎週放送されている、実写県民ヒーロー番組。栃木弁で「大丈夫」を意味する名を持つヒーローが、栃木弁を話し、下野国つまり栃木県内で、謎の鬼「鬼怒乱(きどら)」と対決する。例えば秋田が誇るご当地ヒーロー「超神ネイガー」の人気や知名度に、どこまで迫れるか。
※2017年9月補訂:終売を追記JR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2013」の開催に合わせた、2013(平成15)年10月の発売か。JR東日本大宮支社の毎年10月から11月までの観光キャンペーン「BIGREDとちぎ」との関連も、掛紙の絵柄に感じられる。
正八角形の容器に、かんぴょうを載せた玄米いなり、古代米いなり、牛スープ玄米むすび、鶏照焼、ゴボウやニンジンなどの煮物、甘栗を詰める。駅弁の名前は栃木の食材の多用と結びつくが、中身は「玄氣いなり」の上等版といった感じ。既存駅弁どおりの風味で、おかずの味や分量が物足りなくても、飯だけで食が進む。3か月間ほどの販売か。
※2016年10月補訂:終売を追記2006(平成18)年秋の駅弁催事で発売した催事用商品。駅弁ではなく「駅弁屋の味」。実在の駅弁屋が作っているようだが、駅売りはないようで、パッケージにも「こちらの商品は駅では販売しておりません。」の注記もある。
約11センチ四方の容器の中に、うるち米ともち米の玄米を混ぜた茶飯を詰め、湯葉やグルテンミートやかんぴょうなどを載せる。内容は宇都宮駅弁らしいし、風味も宇都宮駅弁のものだが、分量に対する価格は感覚的に2割ほど高い。駅弁屋と催事屋とスーパーの三層構造でマージンがかかっていると思えば、そんなものか。このシーズンだけの販売であったと考えられる。
※2015年8月補訂:終売を追記大きめの正八角形の容器を大きな掛紙で包む。中身は、かんぴょう混じりの玄米いなり寿司に、かんぴょうの天ぷらに、小麦タンパクでできた人造肉「グルテンミート」に、日光ゆば巻きという、宇都宮駅弁ならではの食材に、豚ロースくわ焼きや海老フライなどという、かなり独特な内容。好みは分かれるかもしれないが、少なくともゲテモノを食べている感じはしないはず。私はおいしくいただけた。2014年頃までの販売か。
掛紙に描かれたイラストは、スイカほどの大きさがあるユウガオの実「ふくべ」の皮で作る魔除けのお面で栃木の工芸品。この実の果肉を細くはぎ取って干したものがかんぴょうとなる。約300年の歴史を刻み、全国の生産量の9割を占める栃木のかんぴょうも、1980年頃に約3,000ヘクタールがあった作付面積が、1990年頃には半減の約1,700ヘクタール、2000年頃には激減して約270ヘクタールと、衰退の一途。
※2021年3月補訂:終売を追記1957(昭和32)年頃に発売。小ぶりの赤いプラスティック製容器を、エメラルドグリーンの掛紙で覆う。中身は駅弁の名前どおり、御飯粒のしっかりした醤油の香りが香ばしい茶飯が何も混ぜられずに敷かれ、鶏肉とゆで卵、帆立にゴボウと人参の煮物が添えられる。
明らかにおかずの量が不足する、茶飯の御飯そのものを味わう駅弁。ただ、おいしい茶飯とはいえ何も混ざっていない御飯を食べ続けるのはさすがに飽きが来るので、どちらかといえばおかずが豪華な1,050円の茶めし弁当をおすすめしたい。2008年に調製元が駅弁から撤退したため、この駅弁も終売となった。
※2009年3月補訂:終売を追記こちらは1960(昭和35)年に発売。長方形の容器の中で、茶めしの周囲を、帆立・焼売・海老フライとともにおでんの具一式が取り囲む、食べ応えのある駅弁。
長い間駅弁の創始者と信じられてきた白木屋ホテルは、現在は宇都宮駅弁から撤退したが、この駅弁の製造元である富貴堂は宇都宮駅開業の翌年に創業し、数年後に2回目の還暦を迎える老舗。下記「日光杉並木」の松廼家も明治時代の1893年創業と、3世紀をまたぐ。東北本線上野・黒磯間は、東北と呼ばれるのは心外だと1990年に「宇都宮線」という愛称を付けられたが、このような米が主題の駅弁は東北のものだ。2008年に調製元が駅弁から撤退したため、この駅弁も終売となった。
※2009年3月補訂:終売を追記200円の価格から昭和40年代のものと思われる、昔の宇都宮駅弁の掛紙。大谷石と大谷平和観音、男体山などの日光連山、名産として干瓢(かんぴょう)とマッシュルームが描かれる。