高崎駅から信越本線の普通列車で約30分。碓氷峠の前の終着駅。首都圏と日本海側を結ぶ幹線鉄道が急勾配を登る麓にあり、機関車を付けたり外す鉄道の要衝として、1997年に新幹線が開通するまで約百年間も栄えた。ここで売られた駅弁「峠の釜めし」は、あまりにも有名。1885(明治18)年10月15日開業、群馬県安中市松井田町横川。
玄米が世に健康食として認知されるはるか前の、1974(昭和49)年12月に横川駅で発売。小柄でとても細長い長方形の容器の、6割くらいに玄米の日の丸御飯を詰め、残りにがんもどき、きんぴら、ひじき、しいたけ等のおかずを詰め込む。おかず要らずの味付け玄米飯は、おかずとともに歯応えが豊か。長らく500円だった価格は、2020年時点で650円、2023年時点で800円。
長野新幹線の高崎駅から長野駅までの開通と引き替えに、あさま号その他の特急列車がすべて消え、軽井沢への線路も消えて終着駅となった横川駅に、往事の列車と旅客の賑わいはない。その後も休日には出したというホーム上の駅弁販売ワゴンも、ほどなく見なくなった。10年も経つと、駅舎の脇で健在な立ち食いそば店も、駅前の食堂などでも、峠の釜めし以外の駅弁を売ることはなくなった。玄米弁当は横川駅でなく、駅の裏のドライブインや軽井沢駅で少量が売られるようになっている。
※2023年11月補訂:値上げを追記2003(平成15)年8月3日に購入した、横川駅弁の掛紙。この玄米弁当もまた、横川と日本を代表する駅弁「峠の釜めし」と同じく、1974年の発売時からその姿と中身を変えていない。下記の1997年のものと比べて、JR東日本の1990年前後の観光キャンペーン「LOOK EAST」のロゴがようやく取れ、駅弁マークが右から左へ移動し、食品表示が加わり、「無農薬」「無添加」の表記がなくなった。
1997(平成9)年6月6日11時の調製と思われる、昔の横川駅弁の掛紙。玄米弁当の掛紙は発売以来、そのデザインを変えていないと思われるが、その時々のキャンペーンや法令などにより、アイコンが出たり消えたりなどの微妙な変化は生じている。
調製元の創業125周年を記念し、2011(平成23)年9月23日からの土休日に一日30個が1か月程度販売された期間限定駅弁。下記の駅弁「峠の松茸めし」の後継ではないかと思う。「峠の釜めし」と同じに見えて、本体の色つやが少し異なる陶器を使用。中身は信州産や国産というマツタケを使う炊込飯を、4分割で1本分の焼きマツタケ、鶏肉、クリ、ギンナンなどで覆うもの。価格的にマツタケ駅弁の最高峰、と呼びたいが、駅ではなく横川のドライブインと高速道路の横川サービスエリアで販売。秋の土休日の販売で、予約はできず、販売期間が一定せず、販売しない年もあるため、入手はかなり困難だと思う。
2011年は3,500円で販売。2012年はマツタケ不作のため販売中止。2013年は10月5日から20日までの土休日に3,600円で販売。2014年は9月14日から10月26日までの土休日に3,600円で販売。2015年は9月19日から10月中旬までの土休日に4,200円で販売。2016年は9月25日から10月中旬までの土休日に4,800円で販売。2018年も4,800円で販売か。この2019年は10月5日から土休日に4,800円+消費税=5,184円で発売し27日で終了。2020年は販売なし。2021年は10月9日から土休日に税込み4,800円で発売し17日で終了。2022年は10月8日から土休日に4,800円で販売し15、16日は休売し30日で終了。2023年は10月28日から土休日に6,000円で販売し11月6日に終了。いつ買えるかは、公式サイトとツイッターをチェック。
※2023年11月補訂:現況を追記1983(昭和58)年に1,500円で発売か。横川駅で秋限定の駅弁であり、松茸駅弁の最高峰であり、入手が困難である幻の駅弁。9月頃から10月頃まで横川駅や軽井沢駅や一部の直営ドライブインで販売されるそうだが、発売期間が短いうえに販売個数も少なく予約も不可、入手に数年から十年以上を要した駅弁ファンがざらにいた。この日は11時に改札脇のそば屋に入荷したところを捕まえた。
上げ底も加わって高さのある、角を落とした正方形の経木枠の容器に、木目調のボール紙でふたをして、インクジェット印刷の大きな掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身はマツタケの炊込飯に鶏唐揚、コンニャクやサトイモやニンジンやゴボウの煮物、付合せなどを添えるもの。
形も大きさも厚さも部位も不揃いな松茸が、やはり松茸の小片をごろごろと混ぜた御飯の上に、にょきにょきと生えている本物の松茸飯。価格はしばらく1,700円であったが、2005年から1,900円。駅弁に使う松茸は駅弁屋所有の山から採ってくるとも、信州産が入荷した日だけ駅弁を作るとも言われる。
この駅弁は2011年の秋シーズンの「峠の松茸釜めし」の発売によりなくなった模様。
※2012年11月補訂:終売を追記JR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2017」にエントリーするため、そのキャンペーン期間である2017(平成29)年10月から11月まで販売か。「明治30年代発売」として、当時の絵柄を使用した掛紙は、たしかに明治時代を思わせる調製印や名所案内や注意書きのないタイプで、記載事項が達筆でとても読めない。
中身は四角いいなり寿司が4個、かんぴょうとシイタケの太巻きが3個、野沢菜漬の太巻きが2個、パセリと紅生姜。当館で14年前に酷評した、下記の「御寿司」とほぼ同じで、現代の商品では見られない太巻きの具を除き、味はごく普通。値段は倍額。
昔は、明治時代から昭和30年代頃までは、日本全国各地の駅弁はだいたい、幕の内弁当と、このような寿司であったらしい。1885(明治18)年から駅弁が売られる横川駅でも、1958(昭和33)年生まれの「峠の釜めし」がヒットするまでは、同じ状況だったのだろうか。今では「峠の釜めし」以外の駅弁は、まず買えない。横川駅で釜飯以外の駅弁が買えたのは、9年ぶりであった。
2019年時点の横川駅やドライブインなどでは、「峠の釜めし」「玄米弁当」「峠の鶏もも弁当」と季節商品のみを販売する模様。
※2019年11月補訂:終売を追記横川駅で唯一の寿司駅弁。発泡材に紙のふたながら古めかしいサイズの容器に、公式サイトのURL付きながら古風な掛紙をかける。中身は正方形平坦な稲荷寿司4個と薄っぺらな太巻き5個。稲荷寿司の風味もさることながら、太巻きの具はなんと芝漬けと奈良漬け。腹が空いていても食が進まないガッカリ駅弁、または古風な見栄えを楽しむ駅弁。
2019年時点の横川駅やドライブインなどでは、「峠の釜めし」「玄米弁当」「峠の鶏もも弁当」と季節商品のみを販売する模様。
※2019年11月補訂:終売を追記横川駅の幕の内弁当。意味もなく「峠の」という枕詞が付くのが横川駅弁らしい。中身は俵飯に鶏唐揚や焼き魚や煮物が入る普通の幕の内駅弁で、その内容も味も格別なものはないが、そこはやはり横川駅らしく、掛紙のデザインを中心にパッケージからは旅のお供の駅弁らしさが感じられる。
特急「あさま」なき1997年10月以降の横川駅に、もはや活気のある駅弁販売は存在しないが、その後も毎日、改札脇の直営店舗で「峠の釜めし」他数種類の駅弁が販売され、休日には以前の釜飯販売ワゴンも出た。
2019年時点の横川駅やドライブインなどでは、「峠の釜めし」「玄米弁当」「峠の鶏もも弁当」と季節商品のみを販売する模様。
※2019年11月補訂:終売を追記2009年10月と2010年4月の東京駅での東日本縦断駅弁大会で販売された横川駅弁。3日前までの予約が必要な商品として、2009年の夏には駅弁屋のドライブインで登場していた模様。「「富岡製糸場」世界遺産登録応援弁当」の副題が付く。
長方形で二重構造の容器を、富岡製糸場の錦絵や赤煉瓦を印刷した掛紙で包む。中身は笹の葉で仕切られた古代米と豚大根菜の御飯、つくね風ハンバーグとクレープ風玉子焼、ミニトマト、かぼちゃ煮、こんにゃく、芋がら油炒めなど。群馬県富岡市の食材を主に使用したそうで、掛紙の裏面にコンセプトともども記される。内容や調理法は個性的なのに、奇抜な雰囲気のない落ち着いたお弁当。
富岡製糸場は、現在の群馬県富岡市で1872(明治5)年に完成した国営の工場。フランスの技術で大規模な器械が導入され、日本の殖産興業に貢献したという。1987(昭和62)年まで創業しており、明治時代の煉瓦建築が多く残っていることで、2005年には国の史跡に、翌2006年には国の重要文化財に指定された。現在では世界遺産への登録を目指しており、2007年には暫定リストへの記載が実現している。
全国各地の峠道で見掛ける「峠の力餅」の碓氷峠版。厳選された小豆と餅米を使用し、さっぱりとした甘さだというあんころもちが6個入っている。自身の足で歩かずに電車で楽して来てしまうと、当然に甘ったるい。24個入りは1,050円、16個入りは735円、この6個入りは価格を失念していたが、後の訪問で315円と判明。2023年時点で24個入りは1,188円、16個入りは864円、この6個入りは400円。
※2023年11月補訂:値上げを追記商品名は「碓氷峠の力餅「栗餡」」とも。上記の商品「碓氷峠の力餅」の、秋限定の栗バージョンらしい。容器や中身の構造は同じで、あんが栗色になり、商品名シールにも栗の文字と絵柄がある。味も栗っぽいスイーツ。
碓氷峠の力餅の、本来のパッケージ。紙箱に半透明のプラ製トレーを入れて、4×4=16個の力持ちが収納されている。日持ちは3日間。駅弁大会で見たのは今回が初めてである。碓氷峠で力餅を売る店は、他にいくつかあるそうな。価格は2009年の購入時で735円、2023年時点で864円。
※2023年11月補訂:値上げを追記