高崎駅から信越本線の普通列車で約30分。碓氷峠の前の終着駅。首都圏と日本海側を結ぶ幹線鉄道が急勾配を登る麓にあり、機関車を付けたり外す鉄道の要衝として、1997年に新幹線が開通するまで約百年間も栄えた。ここで売られた駅弁「峠の釜めし」は、あまりにも有名。1885(明治18)年10月15日開業、群馬県安中市松井田町横川。
東京駅から北陸新幹線で66分。新幹線の開業で山の中に駅ができて住宅団地が造成されたが、町や駅としての発展はみられず、商店さえもない。駅の開業時に横川駅の駅弁屋が進出し、立ち食いそば店を営み「峠の釜めし」を売る。1997(平成9)年10月1日開業、群馬県安中市東上秋間。
1958(昭和33)年2月に横川駅で発売。その前年の12月に横川駅で非公式に発売したとする文献もある。今さら説明することもない、日本で最も有名な駅弁の一つ。焼き物を容器とした初めての駅弁とされる。益子焼の釜の中に茶飯を詰め、その上に鶏肉、タケノコ、ゴボウささがき、椎茸、栗・、ンズ、うずらの卵、紅生姜、グリーンピースを載せる。ふたも陶製で、掛紙をかけて紙ひもでしばり、釜型プラ製の別容器で5種の漬物を添付して出来上がり。
1997(平成9)年10月の長野新幹線開業により、横川駅では軽井沢への路線が廃止され峠の前の終着駅となり、碓氷峠越えの機関車を連結・開放する約5分間にホーム一杯に客と釜めしが並ぶ光景は失われた。駅前の国道18号の賑わいも1993(平成5)年3月の上信越自動車道藤岡IC〜佐久IC間の開通で失われ、横川駅弁の販売拠点は横川駅と駅前のドライブインから新幹線と高速道路サービスエリアへと移り変わった。
1995(平成7)年12月に累計販売1億個、2009(平成21)年10月に累計1億5千万個を達成。年間400万個ないし450万個を売り上げるという駅弁の王様だが、廃棄物減量が叫ばれる現在では、その数百万個もの釜の行方が気にかかる。駅弁屋さんで使われたり返された釜は、益子の土に帰しているそうだ。価格は長らく(過去15年間)900円であったが、2012年10月に1,000円へ値上げ。2018年12月から1,080円、2019年10月の消費税率改定でイートインに限り1,100円、2020年1月頃から持ち帰りでも1,100円、2022年4月から1,200円、2023年7月から1,300円。
※2023年6月補訂:値上げを追記上記の駅弁「峠の釜めし」を、横川駅前で駅弁屋が営業する食堂で食べたもの。駅やドライブインで売られる「峠の釜めし」そのものに加えて、お茶が付いて、テーブルで食べられて、価格は同じ。駅弁は列車内で食べるのが最上とされるが、こうして食堂でいただくのも悪くない。価格は2013年の注文時で1,000円、現在は1,300円のはず。以後10年間、いつ訪れても駅前の食堂には行列ができていて、これを買えないでいる。
※2014年12月補訂:解説文と写真を更新2014(平成26)年の秋までには登場した模様。名駅弁「峠の釜めし」について、陶器をパルプモールド容器と称する紙製に変え、掛紙に代えたボール紙の枠にはめる。これで見栄えと重量は通常のものと大きく異なるが、中身と味は同じ。発売当時は価格が通常版より100円安かったが、2016(平成28)年頃に通常版と同じ1,000円へ値上げし、以後の価格は通常版と連動し、2022年4月の値上げに追従せず再び100円安となり、2023年7月の値上げでも100円安。通常版より1年遅れて2019(平成31)年から、スリーブの絵柄を「峠の釜めし」発売60周年記念に変更した。
羽田空港では2013年3月20日に、荻野屋が監修し日本エアポートデリカが調製する空弁「大空の釜めし山の幸」「大空の釜めし海の幸」(各980円)を発売、これにサトウキビの絞りかすを素材とした今回の容器が使われ、日本デザイン振興会の2013年度の「グッドデザイン賞」を受賞した。
この駅弁のボール紙の枠には『「益子焼の器が重い。」というご意見を受け』制作したとあるが、客の捨て釜が来る鉄道会社と空港管理会社とバスツアー会社を除いて、そんな意見を本気で言う人がいるのだろうか。名物の駅弁と同じ味を当時お徳に食べられた利点と同時に、この駅弁を名物にした大切なものを省いた寂しさを感じた。2017(平成29)年10月のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2017」に、この紙容器版がエントリーされ、峠の釜めしの器が紙になってしまったと、ネット上がざわついた。
※2023年6月補訂:値上げを追記2018(平成30)年11月10日に購入した、横川駅弁のスリーブ。下記の2015年のものと、構造や絵柄は変わらないが、アイコンや注意書きがいろいろ増えている。
2015(平成27)年4月17日に購入した、横川駅弁のスリーブ。紙容器版「峠の釜めし」の発売時から2018(平成30)年までは、平成時代の通常版に似た色彩と絵柄のスリーブを使用した。
高崎でのSL列車の運行にちなんで、2014(平成26)年5月3日に高崎駅で発売。7月までの販売予定が、その後も時々出現している。著名な駅弁「峠の釜めし」の益子焼の容器を真っ黒に塗り、掛紙も蒸気機関車の車体色と同じく真っ黒。その不思議な車番「S330201」は、峠の釜めしが昭和(S)33年02月01日に発売されたことにちなむ。
中身は横川のドライブインやサービスエリアで売られる季節の釜飯に似る。イカスミの黒飯を、ローストビーフと、SLの火室の色彩を取り入れたアスパラやパプリカやカブなどの野菜炒めで覆う。普段は漬物を入れるプラ容器には、アンズと煮豆を入れた。温かく暖かい峠の釜めしとは正反対の、クールで明るい味。
上信越自動車道の横川サービスエリアで買えたおにぎり。横川駅の駅弁「峠の釜めし」の掛紙と同じような色と絵柄を持つ袋に、鶏肉とごぼうの混ぜ御飯を使う、小さな三角おにぎりがひとつ入っていた。ここの営業者は横川駅の駅弁屋。峠の釜めしと似た味がしたと思う。価格は2017年の購入時で204円、2022年時点で220円、2023年時点で250円。
※2023年11月補訂:値上げを追記今回は2022(令和4)年10月18日から31日まで、首都圏及び静岡・長野・宮城・福島・山形・岩手・新潟駅の駅のコンビニ「ニューデイズ」で販売。この年はこの前半2週間に「牛肉どまん中」「金色のひっぱりだこ飯」「チキン弁当」の、続く後半の2週間に「峠の釜めし」「いかめし」「深川めし」の駅弁風おにぎりが、それぞれ販売された。鉄道開業150年記念Newdays「鉄道の日フェア」の一環で、限定鉄道グッズ販売、駅弁風おにぎり販売、これらの駅弁風サンドイッチの販売、駅弁大会などが行われた。
これは横川駅弁の荻野屋が監修し、埼玉県のJR東日本クロスステーションが製造し、駅のコンビニで販売する企画商品。駅弁の峠の釜めしの掛紙と同じ絵柄の袋に、鶏肉とシイタケと紅生姜とアンズを具にした、栗とごぼうとシイタケの炊込飯でできたおにぎりを詰める。「峠の釜めし」のおにぎりは上記のとおり公式に現存し、軽井沢駅やドライブインで販売されるが、こちらは鶏飯から一歩踏み込んで、おにぎりにあるまじき具を入れることで、より駅弁の「峠の釜めし」に似せてきた気がした。
峠の釜めしの販売55周年を記念して、2013(平成25)年の春から横川のドライブインとサービスエリアで売られる商品。四季の変化を織り込んだプレミアムな釜めしという位置付けで、春夏秋冬の4種類を毎年回している。今回買えたのは5年目の「夏」。横川駅弁「峠の釜めし」と同じ益子焼の容器に、おしながきを置き、抹茶色の包装紙を載せて、「夏」と描かれた掛紙を巻く。
今回の「夏」の中身は、鮎の炊込飯を鳥照焼、ドライトマト、ズッキーニやカボチャや紫タマネギなどの夏野菜、茄子の揚げ浸し、うずらの卵、紅生姜で覆うもの。見栄えも価格もどの駅弁や弁当にも似ない、色も味も鮮やかな丼ものだった。土休日限定で販売。
2021(令和3)年11月6、7、13、14日に荻野屋横川店と関越自動車道上里サービスエリアで販売。翌2022年1月の京王百貨店の駅弁大会で予約販売。横川駅の駅弁「峠の釜めし」について、しげの秀一の漫画作品「頭文字D」(イニシャル・ディー)で、今回は2016年公開の映画「新劇場版 頭文字D Legend3 −夢現−」とのコラボにより、色違いの器と特製の掛紙2種類を用いて販売した。
これは「真子&沙雪ver.」。作中の物語にちなみ、女性キャラクター2名が峠の釜めしの看板と青い車を背景に並ぶ。益子焼の陶器も車と同じ青色をしている。中身は普段の「峠の釜めし」と同じく、茶飯を鶏肉やタケノコやゴボウにクリやうずら卵やアンズなどで覆うもの。値段は400円高いけれど、価格を気にしてこれを買う人はいないだろう。
頭文字Dの舞台は主に群馬県。実在する風景が作中に登場する。碓氷峠のふもとにある駅弁屋のドライブインや、その広告看板や駐車場も、加工したり隠すことなく描かれ、時には物語の鍵となった。作品のファンの「聖地」として、ここを訪れたり、写真を撮ったりする人がみられる。作中に描かれた車や人物を模した画像を、ネット上で探すことができる。
2021(令和3)年11月6、7、13、14日に荻野屋横川店と関越自動車道上里サービスエリアで販売。翌2022年1月の京王百貨店の駅弁大会で予約販売。横川駅の駅弁「峠の釜めし」について、しげの秀一の漫画作品「頭文字D」(イニシャル・ディー)で、今回は2016年公開の映画「新劇場版 頭文字D Legend3 −夢現−」とのコラボにより、色違いの器と特製の掛紙2種類を用いて販売した。
これは「拓海ver.」。作中の物語にちなみ、峠の釜めしの看板の前で、男性キャラクターが白黒のスポーツカーに寄りかかる。益子焼の陶器は車の下半分と同じ黒色をしている。中身は普段の「峠の釜めし」と同じく、茶飯を鶏肉やタケノコやゴボウにクリやうずら卵やアンズなどで覆うもの。値段は400円高いけれど、価格を気にしてこれを買う人はいないだろう。
頭文字Dは、週刊ヤングマガジンに1995年から2013年まで連載された漫画作品。公道の峠道を若者たちがスポーツカーで速さを競う内容。単行本が5,500万部も売れた人気作で、その影響でスポーツカーを買い峠道を走ったり、カーレーサーへの道を歩んだりする人が続出した。旅先で側部に「藤原とうふ店」と書いた白黒の車を見ることがあるのは、この作品の影響である。
2005(平成17)年かそれ以前の発売か。駅では売らず、上信越自動車道横川サービスエリアが主戦場。駅弁の今の「峠の釜めし」そっくりで、4割くらいの大きさのとても小さな陶器の釜にバニラアイスを詰めて、駅弁の具に見えなくもない色彩でクリーム、くり、チョコレート、パイナップル、あんず、サクランボを載せる。
食べるだけなら質も量も、市販の100円アイスを上回ることはないと思うが、横川ならではの楽しい商品。価格は購入時で525円、2014年の消費税率改定により540円。製造者は埼玉県熊谷のイタリアンジェラート屋で、販売は横川の駅弁屋。2018年頃までの販売か。
※2023年11月補訂:終売を追記2005(平成17)年かそれ以前の発売か。駅では売らず、上信越自動車道横川サービスエリアが主戦場。駅弁の昔の「峠の釜めし」そっくりで、4割くらいの大きさのとても小さな陶器の釜に抹茶アイスを詰めて、あずきとクリームを載せる。
食べるだけなら質も量も、市販の100円アイスと同じようなものだが、横川ならではの楽しい商品。価格は購入時で525円、2014年の消費税率改定により540円。製造者は埼玉県熊谷のイタリアンジェラート屋で、販売は横川の駅弁屋。2017年頃までの販売か。
※2023年11月補訂:終売を追記