熊谷駅から秩父鉄道で1時間強。秩父市は埼玉県の西端で盆地に位置する、人口約6万人の門前町。市街にある秩父神社と12月の夜祭、秩父山地のハイキング、武甲山の石灰石などで知られ、年に500万人以上の観光客が来るという。秩父駅に駅弁はないが、駅ビルの1階が土産物店であり、ここで売られる弁当や惣菜が、駅弁を名乗ったり駅弁と紹介されることがある。1914(大正3)年10月27日開業、埼玉県秩父市宮側町。
秩父駅では2020(令和2)年4月までに発売か。秩父駅が入居するビル「秩父市地場産業センター」の1階店舗「ははそ食堂」、のち2022年3月のリニューアルで「じばさん商店」内の売店「縁むすび」の、店頭で売られるお弁当。秩父市街で2017年限りで閉店した鳥料理店「鳥新」の弁当が、翌2018年に秩父地域おもてなし観光公社の監修で復刻され、駅裏の仕出し料理店「こいずみ」の調製により売られるようになった。鉄道会社も店舗も調製元も駅弁とは紹介しない、そもそもこの商品自体を紹介しないが、駅に来た駅弁ファンが、これは秩父駅の駅弁だと感じて買っていく。売り場には「秩父の駅弁」の掲示もあった。
昭和の折箱といった感じの紙容器を、商品名を書いた竹皮柄の掛紙で包む。中身は日の丸御飯にたくあん、鶏むね正肉の唐揚げ、鶏レバー煮、とり皮、鳥砂肝、じゃがいも、海苔の佃煮。中身ぎっしり重量級で、油たっぷりな昭和の味。これに親しみや懐かしさを覚えるか、おっさん臭いと敬遠するか。駅へ午前中に来たら、温かい状態でいただけた。秩父市街の八尾百貨店でも買えるという。価格は2020年時点で700円、2023年時点で770円。
上記の弁当「復刻鳥新弁当」とともに購入。弁当に入る鶏唐揚だけが6個で550円。惣菜の販売には無用な掛紙を巻いていて、まるで駅弁のようにみえた。ぷりぷりの鶏肉に、油たっぷりの衣。掛紙に「秩父幻のから揚げ」の表記があり、そういうキャラクターなのだろう。
以前から秩父駅の土産物店で見掛けていた、イワナの押し寿司。2017(平成29)年4月の西武秩父駅のリニューアルで、同駅の土産物店にも置かれるようになり、まれに同駅の駅弁と紹介される記事が出る。もとは道の駅の商品で、2001(平成13)年7月の道の駅ちちぶのオープンに合わせて作られたのだそうな。
竹皮柄のボール紙容器に、イワナに白板昆布をかけた押寿司を1本入れ、商品名と魚と流れを描いた掛紙を巻く。駅弁ではなく土産物だが、駅弁のような商品。少々の塩気を持つ、身も飯も味もやわらか。価格は2018年時点で980円、2019年10月時点で1,080円、2023年時点で1,480円。
※2023年11月補訂:値上げを追記2019(令和元)年5月11日に購入した、秩父駅弁の掛紙。2か月前と変わらない。同月の改元に伴い、製造年月日と消費期限の印を、和暦から西暦に買えたことが分かる。
熊谷駅から臨時列車で約10分。秩父鉄道の車庫と車両工場である広瀬川原車両基地で、2005(平成17)年から5月頃に毎年実施する一般公開イベント「わくわく鉄道フェスタ」開催日のみ、列車が止まり、客が乗り降りできて、会場内で記念弁当「広瀬川原駅弁当」が売られる。車両基地は1969(昭和44)年3月開設、「駅」は2005(平成17)年6月4日初開設、埼玉県熊谷市曙町1丁目1番地。
2005(平成17)年から毎年1回実施される、秩父鉄道の工場公開「わくわく鉄道フェスタ」の会場で売られる「駅弁」。ボール紙製の市販惣菜弁当容器に、イベント告知ポスターと意匠を合わせた、前年のイベント風景の写真を7点散りばめた大きな掛紙をかけて、セロハンテープで留める。今回の中身は日の丸御飯に鶏唐揚、エビフライ、肉団子、ホットドッグ、ウインナー、スパゲティ、きんぴらごぼう、玉子焼、焼たらこ、オレンジなどで、小学生にも向く洋食弁当。分量はたっぷり、味はしっかり。1日限り、500個限りの記念弁当なのに、掛紙も立派に刷られている。
秩父鉄道に広瀬川原という駅はなく、本来はひろせ野鳥の森・大麻生間にある車両基地。イベント当日だけそこに駅がある扱いにしているようで、駅名標が仮設され、臨時列車が設定され、きっぷも売っていた。会場は大変賑わっており、臨時列車は満員運行。普段は休日の午前中に満員電車など走るはずがないのか、沿線の方々がびっくり見ていたような。
広瀬川原での毎年5月の工場公開と弁当販売は以後も続く。なぜか2019(令和元)年から、乗車券の発売において広瀬川原が駅の扱いでなくなったため、ここで売られる弁当が駅弁とは言えなくなった。
※2019年8月補訂:現況を追記2019(令和元)年5月18日に秩父鉄道の広瀬川原車両基地で開催されたイベント「わくわく鉄道フェスタ2019」で販売されたお弁当。市販の仕出し弁当向けボール紙製容器に巻かれた掛紙には、秩父鉄道のSL列車「SLパレオエクスプレス」に使用されるC58363蒸気機関車と、東武鉄道のSL列車「SL大樹(たいじゅ)」に使われるC11207蒸気機関車の写真と列車名が記載される。
中身は調製元の注文販売弁当をアレンジしたようなもので、日の丸御飯にエビフライ、チキンカツ、白身魚フライ、スパゲティ、フライドポテト、マカロニサラダ、大根漬など。中身にSLや秩父や東武のものは何もない。
地図や路線図では、広瀬川原に駅はない。しかしこの車両基地には、鉄道事業上の貨物駅がある。秩父鉄道がここで「わくわく鉄道フェスタ」を開催する際には、熊谷駅や秩父駅方面から広瀬川原駅行きの臨時列車を運行する。広瀬川原にはホームがないので、電車を車両基地内の線路に入れた後に仮設の階段を押し当てて客を下ろす。
この列車の乗客に対し、2018(平成30)年までは広瀬川原駅までの営業距離で乗車券を発売したため、普段は表に出ない駅へのきっぷが買えると、切符の愛好家に知られていた。しかしなぜかこの2019(令和元)年の時には、手前のひろせ野鳥の森駅または大麻生駅までの乗車券の購入を指示したうえで、会場内のきっぷ売り場に「今回、広瀬川原駅から各駅までの乗車券・入場券発売はありません」と掲示した。駅弁の名前も駅名入りからイベント名入りに変わり、どうもここは駅や駅弁ではなくなってしまったようだ。大変心苦しい旨の詫び文もあり、国土交通省かどこかから指導でも受けてしまったのだろうか。
2019(令和元)年5月18日に秩父鉄道の広瀬川原車両基地で開催されたイベント「わくわく鉄道フェスタ2019」で販売されたお弁当。市販の仕出し弁当向けボール紙製容器に巻かれた掛紙には、秩父鉄道で急行列車に使われる6000系電車と、東武鉄道で特急りょうもう号に使われる200型電車、普通列車に使われる8000型電車の写真が使われる。
中身は調製元の注文販売弁当をアレンジしたようなもので、ふりかけ茶飯にポテトコロッケ、エビフライ、豚生姜焼、スパゲティ、ポテトサラダ、ブロッコリー、大根漬など。中身に秩父や東武のものは何もない。
掛紙での電車の名前について、秩父鉄道では「系」、東武鉄道では「型」を使うので、誤りでない。「形」を使うところもあり、おおむね鉄道会社ごとに使い分けられており、その差異に法則性は無い。うっかり使い間違えると、鉄道雑誌では誤植の扱いとなるし、こだわりを持つ鉄道マニアから攻撃を受けることもある。東武鉄道はややこしく、200系の中に200型と250型が、8000系の中に8000型や8500型などがある。この掛紙ではきっと、公式サイドでしっかりこだわって使い分けたのだろう。
秩父鉄道のSL列車「SLパレオエクスプレス」の車内で販売されるお弁当。市販のボール紙の製惣菜弁当容器に、蒸気機関車の写真と、SL列車の編成図や停車駅やキャラクターを描いた掛紙を巻く。中身は白御飯にSL形の海苔と梅干しと焼鮭を載せ、海老チリと焼売と春巻きとザーサイ、トンカツとスパゲティとウインナー、ごぼうとがんもどきと玉子焼。意図したのかどうか、御飯と中華と洋風と和風の詰合せにも見える。お子様ランチでも惣菜でも駅弁でもないような、中間的な内容と風味。
秩父鉄道のSL車内での弁当販売は、結果的に2019年で終了。2020年は蒸気機関車の法定検査でSLの運転がなく、2021年からは「SL弁当開発プロジェクト」として予約限定の弁当を入れ替え続ける。
SLパレオエクスプレスは、1988(昭和63)年3月19日から5月29日まで開催した地方博覧会「さいたま博覧会」に合わせて、大井川鉄道と国鉄山口線に次ぐ国内三例目の蒸気機関車本格復元運行として、同年の3月15日から秩父鉄道の熊谷駅から三峰口駅までの間で運行を開始したSL列車。埼玉県吹上町立吹上小学校で1973(昭和48)年から保存されていたC58形式363号機を、JR東日本の大宮工場で動態復元した。今も同じ区間で一日あたり1往復が、主に3月から12月までの土休日に運行される。列車の名前は、秩父鉄道の沿線で1975(昭和50)年と1981(昭和56)年に化石が発見された、約1,500万年前の海獣「パレオパラドキシア」にちなむ。
なお、SLパレオエクスプレスの牽引機は、よく故障する気がする。2012(平成24)年8月には広瀬川原車両基地内で脱線し翌年の春まで動かなかったり、2018(平成30)年9月の故障でも年末まで運用を外れた。ここのSLには予備車がないため、通常であれば列車ごと運休するものだが、秩父鉄道は貨物輸送のため多くの電気機関車(EL)を保有しており、ここではSLをELに付け替えて、列車名を「ELパレオエクスプレス」に呼び替えて、同じ客車と時刻にて運行する。
SL列車は北海道から九州まで各地で乗れるが、EL列車はJRブルートレインの全廃により、今では富山県の黒部峡谷鉄道や、JR東日本高崎支社のSL列車が高崎駅以南に来る時くらいにしか見られず、むしろこちらが珍しい。ここのEL列車は上記のとおり、年に数度あるかないかの臨時列車を除き、SLの故障で突然に現れるものであるから、ますます珍しい、貴重な存在である。
※2023年11月補訂:終売を追記上記の車内弁当「SLパレオランチ」の、2016(平成28)年時点での姿。紙容器は同じで、掛紙の絵柄が異なる。中身は似ているようで同じでなく、白御飯にSL形の海苔と太陽の梅干を載せ、トンカツ、エビフライ、ウインナー、焼き鮭、煮玉子、ポテトサラダ、スパゲティ、ミニハンバーグ、ごぼう、カップゼリーなどを詰める、少し大人の味を持つお子様ランチだった。
秩父鉄道の観光列車「SLパレオエクスプレス」について、この日は朝にSLが故障してしまい、来て乗ってみたら「EL」化。その際は指定券や整理券が払い戻されるが、列車そのものは通常運行。現場では手慣れたもので、録音による車内放送でもちゃんと「EL」を名乗っていた。
※2019年8月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し上記のSL列車弁当「パレオランチ」の、2005(平成17)年時点での姿。当時の弁当名は「パレオエクスプレスSLべんとう」と長く、分かりやすかった。価格は300円安いが、中身はたいして変わらない。予約は団体のみ、秩父鉄道の子会社である秩鉄商事での取り扱い。
※2016年10月補訂:新版の収蔵により解説文を移動し簡略化秩父鉄道のSL列車「SLパレオエクスプレス」の車内販売で、2013(平成25)年の運転シーズンからの発売か。SLパレオエクスプレスの走行写真の掛紙を巻いた、市販のサンドイッチ向けプラ製の惣菜容器の中に、埼玉県深谷市の銘柄豚「花園黒豚」を使う、「メン」チカツや「コロ」ッケやハム「カツ」のサンドイッチを収める。
いずれの具も柔らかい味と香りと口当たりを持つが、ここまでは見た目も内容も普通の惣菜サンド。この商品は、透明なふたを開けるとパンとマーガリンが香り、食べるとパン生地にほのかな甘さを感じた。こんな体験は、駅弁でも惣菜でも初めて。調製元は熊谷市内のパン屋さん。2019年時点でこの商品のSL車内での存在を確認できていない。
※2019年8月補訂:終売を追記もともとは、秩父農工科学高等学校と秩父鉄道や秩鉄商事が協力し、同校フードデザイン科の開発と横瀬町の業者の調製により、2014(平成26)年3月から鉄道イベントで、8月中はSL列車で販売したお弁当。今回購入したものは、当時と弁当の名称こそ同じだが、中身(12区画のなんでもまるごと弁当)、価格(1,200円)、調製元が異なるため、歴史は断絶している模様。
弁当の名前と秩父鉄道の車紋をデザインした真っ黒な専用ボール紙箱を使う。中身は白御飯にSL形の海苔と梅干を載せ、ハンバーグ、コロッケ、鶏唐揚、ウインナー、煮玉子、ポテトサラダ、スパゲティ、ごぼうなどを詰める、ハンバーグ弁当。同じ列車で販売される「パレオランチ」と、だいたい同じ。こちらは掛紙を用いず、ボール紙箱そのものを専用品としていた。2019年時点でこの商品のSL車内での存在を確認できていない。
※2019年8月補訂:終売を追記2006(平成18)年3月18日に、秩父鉄道SL列車の車内販売でデビューし、その約2か月前に秩父鉄道熊谷駅の駅弁として京、王百貨店駅弁大会で販売された。上記の駅弁「パレオエクスプレスSLべんとう」と同じく、熊谷駅で列車に積み込まれる。駅での販売はない模様だが、目撃報告はある。
発泡材枠にトレーを接着した長方形の容器に透明なフタをして、蒸気機関車の顔の写真を載せた掛紙で割りばしごと容器を巻いて、セロテープで留める。中身は白味噌焼き豚肉と赤味噌焼き豚肉と、秩父地方の家庭で使われるというしゃくし菜の油炒めを白御飯の上に貼り付ける豚丼。インパクトと風味は並だが、埼玉県の駅弁というだけで希少価値がある。この弁当は2012年までの販売か。
※2016年10月補訂:終売を追記