東京駅から快速電車で約40分。千葉市は千葉県の西部で東京湾に面する、人口約98万人の城下町で県庁所在地。かつては行政や陸軍で、第二次大戦後は工業都市として発展した。駅弁は1928(昭和3)年から万葉軒が販売、かつてはコンコースや各ホーム上に駅弁売店を構え、安価な名物駅弁をいくつも擁した。1894(明治27)年7月20日開業、千葉県千葉市中央区新千葉1丁目。
珍しく1業者で2種類も出す、千葉駅版の「大人の休日」駅弁のもうひとつ。木製のような触感と強度があるボール紙製のフタ付き長方形の容器に、柄はともかく印刷はインクジェットプリンタのちょっとチープな掛紙を貼り、和紙風の風呂敷で包んで高級感を出す。中身はアサリ御飯と高菜の日の丸御飯、鯛の佐倉味噌焼、トコブシやサザエやヒジキ、カボチャやタケノコなどの煮物など。趣味的には掛紙の改善により、容器や包装や内容や風味で演じる高級感がより生きると思う。価格は2005年の購入時で1,200円、2015年時点で1,300円、後に1,500円、2019年10月から1,600円。2017年時点で下記のとおり、接頭辞を外した「大漁万祝」として、エキナカで売られていた模様。2020年の春頃までに、ひっそりと終売か。
千葉駅で高級も含めた駅弁を販売しても、それをどこで食べるかという問題はある。房総特急は1991年の成田空港乗り入れで京葉線に逃げ、空港特急「成田エクスプレス」はほとんど千葉駅を通過し、わずかに残る鹿島や銚子への特急は高速バスに乗客を喰われ青色吐息。東京方面の電車は緩行線に加え快速線も通勤電車化され、他方面への電車は昔ながらの国鉄型とはいえ混雑が激しく、一部で治安の悪さも指摘される。
こんな厳しい環境でよくぞ駅弁が残っているものだが、もともと国鉄の拠点駅としては珍しく長距離列車が来ない駅であり、昔から駅弁というより持ち帰り弁当、現代のホカ弁やコンビニ弁当の機能が強かったのだろう。
※2021年3月補訂:終売を追記上記の駅弁「大人の休日 大漁万祝」の、2017年時点での姿。JR東日本各地の大人の休日駅弁は自然消滅し、この弁当も駅で見ることはなくなったが、調製元のカタログには載っており、こうやって数をまとめて事前の注文により購入できた。この年には、千葉駅の駅弁売店でなく、千葉駅の駅ビルに入居した調製元の売り場で売られていたとの報告もある。
掛紙に代わる紙帯に、駅弁を示したり思わせる表示はない。中身はおおむね共通で、今回はサクラエビ飯とアサリ飯、キンメダイの西京焼、イワシのさんが揚、豚肉とタケノコの巻き物、シイタケやエビの揚げ物、カボチャやニンジンなどの煮物、五目玉子焼、海苔の佃煮など。市販されたのは2017年頃までのようで、以後は7日前まで20個以上の予約限定で注文を受けていた。2020年の春頃までに、ひっそりと終売か。
※2021年3月補訂:終売を追記ごくまれに、千葉駅の隠れた名作とも評される駅弁。2000年代に春限定の駅弁として発売か。後に通年販売に格上げされた。掛紙には千葉県の地図を掲載し、県内の潮干狩りスポットを列記する。中身は茶飯にアサリの生姜煮、甘く煮たハマグリ、刻み海苔と柴漬けを載せ、イワシ団子、イカ味噌焼、レンコンの挟み揚げ、 ひじき煮などを添えるもの。具材の選択と味付けに筋が通っている。2020年の春頃までに、ひっそりと終売か。
かつて千葉の名物であった、潮干狩りで賑わった遠浅の生命豊かな海を、埋立と工場進出による工業地帯化で経済的に豊かな海に変えたことは、とかく罪悪視されがちである。しかしそれが千葉や日本の発展を支えたことも、見逃してはならないと思う。なお現在でも、富津や木更津まで行かなくても、船橋や稲毛の人工海浜で潮干狩りができる。
※2021年3月補訂:終売を追記2012(平成24)年11月30日に購入した、千葉駅弁の掛紙。絵柄は上記の2019年のものと変わらないが、表記はとてもシンプルだった。このように安い駅弁であったが、2015年時点で850円、2015年7月から900円、後に980円、2019年10月から1,050円と、後にどんどん値上げされた。
2005(平成17)年7月10日の調製である、千葉駅弁の掛紙。なるほどこれは駅弁の名前どおりの潮干狩りだな、昭和30年代まで現在の千葉市あたりの海岸もこんな風景だったのかな、と想像できるシンプルな絵柄。
2013(平成25)年の春頃の発売か。中身はつまり鯛飯で、茶飯をタイのそぼろで覆い、マグロ煮、イワシ棒天、イカ団子、玉子焼などを添えるもの。容器が貧弱に柔らかかったり、飯がボロボロと食べにくかったり、つくりのチープさが気になったが、それでも一食として過不足ない具と量は備えていた。2016年までの販売か。
2010(平成22)年11月20日に「貝」と同時にデビュー。千葉駅弁では記憶にない陶製の釜飯容器にプラスティック製のふたをして、駅弁の名前と鯛を描いた赤い正方形の掛紙をかける。中身はタイの混ぜ御飯の上にキンメダイ塩焼、タイそぼろ、はんぺん、ひじき煮、のげ海苔煮、エビを載せ、タイ味噌と漬物を添えるもの。
鯛飯の駅弁は東海道本線で百余年の時を刻むが、千葉県の魚はタイであるため、千葉の駅弁に鯛飯があってもおかしくない。価格、見栄え、味とも、そこそこよくできている印象。このシーズンの駅弁大会では、催事場でより映えていた。2014年までの販売か。
※2015年8月補訂:終売を追記2010(平成22)年11月20日に「鯛」と同時にデビュー。千葉駅弁では記憶にない陶製の釜飯容器にプラスティック製のふたをして、駅弁の名前と三種の貝を描いた茶色い正方形の掛紙をかける。中身は貝の煮汁で炊いた炊込飯の上に刻み海苔を振ってからアサリ煮、サザエ煮、ハマグリ煮を載せ、はんぺん、ひじき煮、海苔佃煮、タイ味噌などを添えるもの。潮の香りで他駅の貝飯に負けていないし、見栄えでも催事場で映える。2014年までの販売か。
※2015年8月補訂:終売を追記JR京葉線の全線開通20周年を記念して、2010(平成22)年3月10日から4月頃まで販売された記念駅弁。こうやって東京駅の第11回東日本縦断駅弁大会でも販売された。黒塗りの容器に、京葉線の通勤電車の写真を載せた赤い掛紙を巻き、ラップで包む。中身は白御飯の上に鰹節をまぶし、三番瀬で獲れたという海苔を浅炊き、浅炊き韓国風、焼海苔の3種で覆い、アサリ串、熱い紅白のカマボコ、玉子焼、鮭塩焼、がんもどき、タクアンなどを添えるもの。
安い弁当の代名詞である海苔弁で、しかも安い駅弁が賑やかな千葉駅弁で、千円もするとは言葉を失う。しかし、金箔の貼付は蛇足としても、海苔にとてもこだわった感じで食後に満足できる。海苔の分量も香りも生の柔らかさも他の駅弁や海苔弁の比ではなく、名前はふざけているが実力は確かな記念駅弁。
千葉県で船橋市と市川市の沖に位置する三番瀬は、江戸川放水路の河口に広がる干潟及び約1,800ヘクタールの浅海域。神奈川県の三浦半島から千葉県の富津岬までの東京湾の海岸線は、高度経済成長期までに工業化でほとんど埋め立てられたが、この付近は埋立計画の進展より環境保護運動の盛り上がりが勝り、偶然にそして奇跡的に干潟が残ることとなった。今もノリやアサリが獲れる希少な海域であり、その保全が千葉県知事選挙の大きな争点にもなる。