東京の鉄道ターミナルのひとつ。19世紀の末に甲州街道の宿場町のはずれにできた小さな駅は、20世紀に入ると東京の西の玄関口となり、私鉄や地下鉄が次々に乗り入れ、利用者数で世界一の駅になるまでに発展した。1897(明治30)年頃から1991(平成3)年まで新宿駅の駅弁があり、以後は東京駅と同じ駅弁が売られる。1885(明治18)年3月1日開業、東京都新宿区新宿3丁目。
2019(令和元)年7月に新宿、東京、品川、上野、大宮の各駅で発売。1957(昭和32)年から1991(平成3)年まで新宿駅で売られた、かつての名物駅弁「鳥めし」の、2001(平成13)年から2011(平成23)年まで売られた復刻版の、さらに復刻版。今回は掛紙でなくスリーブを使用するが、その絵柄には昭和時代の鳥めしと同じものが採用された。
御飯を鳥そぼろと玉子そぼろで覆い、グリーンピースで彩り、みかんと菜の花と漬物を添える中身も、かつてと同じ復刻版。親子そぼろめしの味が硬くなったような気はした。値段はぐっと上がって680円。調製元は上記5駅のNRE駅弁売店で売られる駅弁を作る日本ばし大増でなく、普段はサンドイッチなどを作る埼玉県戸田市の日本レストランエンタプライズであった。
復刻版としては2001(平成23)年に発売。小柄な長方形の容器に透明なふたをして食品表示ラベルで留め、昭和の頃と同じ絵柄の掛紙を巻いてセロハンテープで留める。中身は味付け御飯の上にふわりとした鳥そぼろと玉子そぼろと、アクセントにグリーンピースを載せて、小ナス醤油漬、菜の花辛子和え、ダイコン桜漬け、ミカンを添えるもの。
1957(昭和33)年から1991(平成3)年12月までの長い間、新宿の名物駅弁であった田中屋の「鳥めし」を、約10年ぶりに日本レストランエンタプライズ(NRE)が復刻販売したもの。コンコースの駅弁売店ではなく、現在も駅のホーム上でパンやおにぎりを販売するかつての駅弁業者の売店で販売される。
復刻販売の開始以後、一時の好景気で全国各地の駅弁が値上がりし、NREもその間に高額高級路線へシフトし、新宿駅は改良工事が進み、新宿駅に発着する電車もほぼ作り替えられたのに、この駅弁は見た目も中身も、そして価格も変わっていない。この値段でこの内容。いつまでも残って欲しい名作。しかし調製元の駅弁からの完全撤退により、2011(平成23)年に終売の模様。
※2016年7月補訂:終売を追記2001(平成13)年12月1日に購入した、新宿駅弁の掛紙。上記の8年後と比べて、「紙」と「プラ」の法定の識別表示がないこと以外は、何も変わらない。
1980年代のものと思われる、昔の新宿駅弁の掛紙。当然といえば当然だが、この絵柄が上記の復刻版に流用された。中身もほぼ同じ。
1989(平成元)年5月27日の調製と思われる、昔の新宿駅弁の掛紙。同年4月の消費税の導入により、価格をシールで訂正して使う。平成時代の駅弁らしからぬ、古めかしい姿をしていると思う。
1981(昭和56)年7月18日8時の調製と思われる、昔の新宿駅弁の掛紙。上記や下記のものと変わらない。
1979(昭和54)年9月22日14時30分の調製と思われる、昔の新宿駅弁の掛紙。下記の1978年7月のものと比べて、調製印の白抜きができた。
1978(昭和53)年7月25日6時の調製と思われる、昔の新宿駅弁の掛紙。下記のちょうど1年前の「特製副食付鳥めし」に比べて、調製元の表記が手書き風から活字タイプに整えられた。
1977(昭和52)年7月25日6時の調製と思われる、昔の新宿駅弁の掛紙。「特製副食付」とは、どんなものが添付されたのだろうか。
1969(昭和44)6月25日6時の調製と思われる、昔の新宿駅弁の掛紙。絵柄は後のものや復刻版と共通なので、あまり古さを感じさせない。
電子レンジ対応の白いプラ製トレーに透明なふたをして、商品名を書いた黄色くシンプルな掛紙を巻く。中身は白御飯の上に炒り卵と鶏肉ぶつ切りのタレ焼きを敷き詰めるもの。新宿の名物駅弁「鳥めし」をデパ地下風にアレンジしたような感じで、商品名どおりのふわふわした風味と食感を楽しめる。なお、購入価格は写真のとおり、50円引きシールで840円。
この弁当は、デパ地下になくてはならない、もはやデパ地下で見ないことはない、惣菜で東証一部に上場したロックフィールドが1992年から展開する人気の惣菜屋「R 1/F」の惣菜である。だから全国各地で買えるだろうし、ぱっと出てすぐに消える商品であろうし、駅弁の定義に引っかかることは絶対にないと思う。
しかし新宿駅での販売形態は、店舗の見栄えこそ違いがあれ、NREの駅弁屋と変わらない。容器に掛紙を巻く姿も、実に駅弁らしいものである。こういう商品と販売形態があるから、趣味として駅弁を取り扱うと、その定義に悩むことになる。なお、当館でも駅弁類似商品として時々収穫する、エキナカにも入る惣菜屋「神戸コロッケ」も、ここのブランドのひとつである。