東京と日本の中央駅。東海道・山陽・東北・上越・山形・秋田・北陸の各新幹線、東海道・中央・総武・東北の各線、山手線や京浜東北線などの電車が、一日あたり3000本以上行き交い、100万人以上の利用者で終日賑わう。駅弁はJRの子会社が調製するもので100種類以上とも、エキナカの商品を含めて400種類以上とも、デパ地下の弁当を含めて1000種類以上ともいわれる、世界一の駅弁販売駅。1914(大正3)年12月20日開業、東京都千代田区丸の内1丁目。
2020(令和2)年1月20日に発売し、1か月ほどの販売か。同年6月17日の東京駅の駅弁売店「駅弁屋 踊」のオープンに合わせ、同店限定の駅弁として掛紙を替えてリニューアル発売。東京都農業協同組合中央会(JA東京中央会)が江戸東京野菜と定義する食材を多用した、野菜の握り寿司駅弁。中身はおしながきに記されるとおり、小松菜のサバ寿司2個、キュウリとイクラのコハダ寿司、キュウリとワサビのエビ寿司、大根甘酢と生姜甘酢のサーモン寿司、人参甘酢の寺島ナス寿司、大根甘酢と人参甘酢の小鯛寿司、福神漬。野菜寿司というのは弁当屋が作りたがるのだろうか。好みの問題で、個人的に苦手。3か月ほどで売り止めたかもしれない。
江戸東京野菜とは、江戸期から始まる東京の野菜文化を継承するとともに、種苗の大半が自給または、近隣の種苗商により確保されていた昭和中期(昭和40年頃)までのいわゆる在来種、または在来の栽培法等に由来する野菜のことと定義される。現在市販される野菜の多くは「F1」、大手種苗会社が農家に種を販売する一代雑種であり、規格や品質が優れたり安定する代わりに、技術的や遺伝的あるいは法的に自家採種ができない、農家は会社から種を買い続けなければならないものである。
F1は有害で危険だと煽る信仰や商売の他に、F1がなかった時代の野菜を懐かしむ人もいて、お金や手間を掛けて栽培に取り組む農家や団体がある。また東京では都市の発展で、戦後昭和の高度経済成長の頃まで作られていた品種が農地ごと開発でなくなっていったこともあり、JA東京中央会ではそんな品種を残していく、食べていく取り組みを行っている。
NREの野菜弁当の、2017年の夏バージョン。掛紙の絵柄はまるで、同じ東京駅で東海道新幹線の、JRCP版の野菜弁当のように賑やか。「野菜・いも・豆類・きのこ・果実を24種類使用」したという中身は、マンナン入りご飯に枝豆と野沢菜を載せ、彩り揚げ野菜、冬瓜煮、ゴーヤ胡麻金平、キャベツとコーンのサラダ、オクラやカボチャなどの煮物、いちじく蜜煮。たしかに白飯と白く酸っぱいソースを除いて野菜類だらけで、マンナン混じりを感じられない普通の白飯の、おかずに困るような気がした。2019年から季節を問わない「たっぷり野菜弁当」となり、同年までの販売か。
NREの野菜弁当の、2017年の春バージョン。2012年の夏シーズンから、従前の「たっぷり*野菜弁当」(*には春夏秋冬の季節の漢字が入る)から「*のたっぷり野菜弁当」へ改称した模様。2014年からは、ボール紙のふたが掛紙に替わった。
「野菜・きのこ・豆・果実類を26種類使用」したという中身は、マンナン入りご飯に生姜おかかを載せ、ソラマメやタケノコなどの煮物、菜の花梅かつお和えと根菜サラダ、ハスやアスパラガスやカボチャの天ぷら、野菜のトマト煮と揚げじゃがいも、ゆずわらびもちなど。
NREの野菜弁当の、2012年の春版。いつからかは分からないが、パッケージがコンパクトに一新され、おしながきはふたの裏に記載されるようになった。正方形に近い経木枠の容器に直接、商品名とそのイメージをデザインしたボール紙のふたをする。
野菜や豆を21種類使ったという今回の中身は、十六穀入り御飯、ナスやニンジンなどの煮物、大豆タンパクのカツ、菜の花のおひたし、タケノコやシイタケやサトイモなどの煮物、コーンやゴボウなどのマヨネーズ和えなど。見栄えが幕の内駅弁のような一食分の弁当に近付き、つまり野菜の存在感は薄れ、しかし肉や魚を使わない点は貫かれている。
NREの野菜弁当の、2009年の秋版。駅弁の名前に季節の名前が復活している。今回の6区画の中身は、舞茸御飯、16穀入り御飯、煮物類、なすとシシトウの焼き物に切り干し大根とサンマ蒲焼、ニンジンやレンコンなどの煮物、おからと里芋、焼栗のデザートとキノコマリネ。野菜というよりイモとキノコのお弁当で、確かにパッケージでもサツマイモとキノコの使用を強調している。そのいずれも野菜じゃないよね、とチクる気がしない、雰囲気の良いお弁当。
NREの野菜弁当の、2009年の春版。駅弁の名前から季節の名前が消えたが、春夏秋冬でパッケージの色と中身を変えていることに変わりはない。今回の中身は山菜御飯に梅御飯、牛肉野菜炒め、レンコンやタケノコなどの煮物、ソラマメとエビのかき揚げ、コーンサラダ、よもぎ大福など。おしながきに加えてパッケージでも、一日の野菜摂取推奨量350グラムの半分にあたる180グラムが、この駅弁に入っていることを強調するようになった。
下記の駅弁「たっぷり冬野菜弁当」の、2006年版。駅弁の名前と価格と容器を変えずに、パッケージのデザインを派手に変え、中身もだいぶ入れ替えた。今回は白御飯ときんぴら御飯、カブ煮とくわいサラダ、蒸し鶏に様々な野菜煮物、レンコン揚げとゆず大福。旅情は微塵(みじん)もないが、食事として満足できるし、それが旅の食事でもよい。
2005(平成17)年11月18日に発売の、NREの季節野菜駅弁の2005年の冬版。どう見ても秋色の風呂敷包みと春夏秋冬の文字をCGで描いたボール紙の箱に、黒いトレーを入れて食品表示ラベルで留める。中身は菜めし御飯と舞茸御飯にブリ照焼や豚肉炒めやホウレンソウ揚げに煮物やサラダなど。
依然として旅の気分は薄いが、季節が一回り半して発売が続くので好評なのだろう。また、トレーの形状が変わったので、機能的なお弁当というより駅弁やデパ地下弁当のような雰囲気も帯びてきた。
2005(平成17)年5月21日に発売の、NREの季節野菜駅弁の2005年の春版。夏色の風呂敷包みと春夏秋冬の文字をCGで描いたボール紙の箱に、白いトレーを入れて食品表示ラベルで留める。中身は青じそ御飯にタコのマリネや、いわし唐揚げや鶏の野菜巻やイカ焼売などと、デザートの水饅頭。今回は野菜の存在感がとても小さく、肉や魚がたっぷり入る普通のお弁当。180グラムの野菜は、どこに入っているのだろうか。
2005(平成17)年2月21日から5月20日まで販売された、NREの季節野菜駅弁の2005年の春版。春色の風呂敷包みと春夏秋冬の文字をCGで描いたボール紙の箱に、白いトレーを入れて食品表示ラベルで留める。中身はわかめ桜海老御飯にサワラ西京焼、海老団子にレンコンなどの煮物、豚肉メンマ炒めやタケノコサラダなどに、デザートの桜大福。個人的に大好きなコンセプトと薄めの風味で、オフィスでの昼御飯にしたい駅弁。
2004(平成16)年9月頃に発売した、同年の夏頃に初登場の「たっぷり夏野菜弁当」の後継商品で、年末には「たっぷり冬野菜弁当」にバトンタッチ。秋色の風呂敷包みと春夏秋冬の文字をCGで描いたボール紙の箱に、黒いトレーを入れて食品表示ラベルで留める。中身は舞茸御飯に豚味噌焼、薩摩芋やナスや里芋やごぼうなどたっぷりの野菜煮物、秋刀魚のなますやキノコと青菜の煮浸し、デザートに栗焼。
全部食べれば野菜の一日必要摂取量350グラムの半分超である180グラムが摂れるという、健康志向だけの駅弁。だからといって旅の友には味気ないかといえばそうでもなく、薄味も過度ではなく肉も魚も入っているし具だくさんなので、職場でも列車内でも昼食一食分として、けっこういける。季節で回る定番化を望みたい。