東京駅から電車で約25分。横浜市は神奈川県の東部で東京湾に面した、人口約380万人の港町。東京の衛星都市として人口日本一の市であるほか、異国情緒とウォーターフロントで多くの観光客も集める。駅弁は、大正時代からの駅弁屋がコンコースやホーム上や駅周辺各地に駅弁売店を構え、「シウマイ弁当」は日本一売れる駅弁とされる。1915(大正4)年8月15日開業、神奈川県横浜市西区高島2丁目。
調製元である崎陽軒の創業百周年と、高木学園女子高等学校の創立百周年を記念して、両者が初めてタイアップして2009(平成21)年2月13日から3月13日まで販売された共同開発駅弁。淡い桃色の容器にかわいらしいアイコンが並んだ掛紙を巻き、ピンク色の輪ゴムでしばる。中身は桜花を置いて白ゴマを振った白御飯に、鶏唐揚、玉子焼、春雨炒め、こんにゃくなどの煮物、コールスロー、シウマイ1個とミニ大福2個。
中身を書けば普通の弁当、パステルカラーな色彩が甘くて初々しく、柔らかい食感が淡い感じで、企業の男性管理職が女子高生に抱く妄想が表現されていると言われれば、うなずけるような感じ。しかし今時に電車で見掛けるフツーの女子高生は、少なくとも外見に関してはもっとけばけばしいとも思う。駅弁屋と地元高校とのタイアップ駅弁は、他の地域であればテレビや新聞に出て郷土の話題になるものだが、情報過多の首都圏ではすっかり埋もれてしまい、横浜市内でもその存在にあまり気が付かれなかったようだ。
高木学園女子高等学校は、1908(明治41)年に高木君氏が「神奈川裁縫女学校」として設立した、横浜市港北区菊名にある女子高。戦後長らく「高木女子商業高等学校」の校名であった。中学受験学習塾の大手である日能研は、高木知巳氏が1953年に開設した菊名小学学習教室を前身とするが、この駅弁について調べるまで両者には関連性があると思い込んでいた。公式サイトを見る限りそんなことは書かれていない。
崎陽軒の創業100周年を記念して挑戦する100企画の一環として、2008(平成20)年4月1日から30日まで販売された高級季節弁当。東京駅で毎年4月の土日2日間にNREが開催する駅弁大会には毎年、この種の特別弁当が出てきており、その2008年版とも見える。この駅弁大会の他に本店と東京地区のデパ地下の14店舗で通常販売し、横浜駅の中央通路売店や付近の商業施設内の8店舗では予約制で販売した。
木目調で正八角形の容器に、昔の駅弁掛紙を何枚も重ねた絵柄の掛紙をかけて、ゴムで十字にしばる。中身は酢飯の混ぜ御飯にカニなどを載せ、玉子焼、銀だら照焼、揚げ海老、道明寺蒸し、カボチャやタケノコなどの煮物、特製シウマイ2個、桜餅など。雰囲気も風味も内容も豪華な行楽弁当。
崎陽軒の創業100周年を記念して挑戦する100企画の一環として、2008(平成20)年6月1日から8月31日まで販売した、初めての夏の高級季節弁当。販売箇所が横浜や東京のデパ地下を中心とする25箇所に拡大され、予約なしで買えるようになった。発売期間もたっぷり3か月。
木目調で正八角形の容器に、昔の駅弁掛紙を何枚も重ねた絵柄の掛紙をかけて、ゴムで十字にしばる。中身は穴子飯に金目鯛照焼、海老揚げ、海鮮蒸し、シメジ山椒煮、カボチャやウリなどの煮物、イカやワラビなどの酢の物、玉子焼、笹餅など。春に引き続き、雰囲気も風味も内容も豪華な行楽弁当。
崎陽軒の創業100周年を記念して挑戦する100企画の一環として、2008(平成20)年9月1日から30日まで販売した、初めての秋の高級季節弁当。夏に比べて販売箇所が25箇所から約30箇所へ、販売期間が3か月間から1か月間へ、容器が正八角形から近年の横浜駅弁では記憶にない長方形二段重ねへ、掛紙が正方形から容器を巻ける長さの長方形へ、それぞれ変更されている。
中身は下段がブナシメジの混ぜ御飯、上段がメカジキ照焼、玉子焼、海老、椎茸やレンコンなどの煮物、サツマイモのレモン煮、カニ風味団子、特製シウマイ2個など。上下段とももみじ型のニンジンが、下段にはさらにイチョウ型の玉子焼がワンポイント。中身が秋一色で、掛紙も秋満載、風味は強め、数個の食材の強い甘みが口に残る。
崎陽軒の創業100周年を記念して挑戦する100企画の一環として、2008(平成20)年12月1日から31日まで販売した、初めての冬の高級季節弁当。上記の「秋」に比べて二段重ね容器の色が黒く、形が正方形に変わり、掛紙が縦長から横長に変わり、価格が200円上がった。
中身は下段がカニとイクラと錦糸卵のちらしずし、上段がブリ照焼、玉子焼、帆立揚げ、イカとエビの蒸し物、ふぐ皮や椎茸やニンジンなどの煮物に昆布巻、梅花型のまんじゅう、特製シウマイ1個など。冬に雪が積もる地方の駅弁でよく見る食材が、いろいろ詰まっていた。これで100周年記念の特別季節弁当は春から一巡したが、来年からの定番商品化はあるのだろうか。
崎陽軒創業百年を記念した「100周年100企画」のうち、弁当などの商品に関する企画のフィナーレを飾るかのように、2009(平成21)年1月20日から2月15日まで販売された記念弁当。赤く大きな正方形の容器に、掛紙代わりのおしながきを二つ折りにしてかけて、箸袋を置いてゴムで留め、市販の和紙風風呂敷で包む。中身は松花堂タイプに仕切りと個別トレーで4分割され、御飯、煮物、揚げ物、焼き物などをそれぞれ収めている。
100周年にちなみ100種類以上、B5サイズのお品書きで数えたら105種類もの食材が使われているという。しかしまともにそんなに使ったら、一人前の分量に抑えられるはずがない。ここでは「健穀米炊き込みご飯」に雑穀や混ぜ物に調味料まで動員して46種類を積み上げ、豆や実でも12種類を数え、豆串に振った金箔までも食材としてカウントした。このような市販弁当は空前にして絶後かもしれないし、他の駅弁屋が百周年を迎えても真似をしないだろうと思う。