東京駅から北陸新幹線で約2時間。富山市は日本海の富山湾に面した、富山県の面積の3割を占めるの県庁所在地で、人口約41万人の城下町。かつて市内を流れる神通川のサクラマスを使った押寿司の郷土料理「ますのすし」が、鉄道の開通で駅弁となり全国に知名度を広げ、富山と駅弁を代表する商品として君臨する。1899(明治32)年3月20日開業、富山県富山市明輪町。
富山駅の駅弁として、1912(明治45)年に発売。この駅弁の特徴である、ボール紙のパッケージと、画家の中川一政による絵柄は、1965(昭和40)年から使われるという。木製の曲げ物に、笹の葉を敷き、酢飯を詰め、マスの身を貼り、竹とゴムで押す。名物の駅弁として広く知られるほか、このようなマスの押し寿司そのものが富山の名物である。
分量が多く、日持ちがするので、土産物や複数名にも対応すると思う。一般的な駅弁の賞味期限、今でいう消費期限が製造後4時間から8時間とされていた昭和時代にも、この駅弁は夏季で2日、夏季以外で3日の日持ちがしたため、当時から上野駅や大阪駅など富山以外でも買うことができた。出来立てよりもむしろ、製造後20時間から30時間が一番の食べ頃という。
富山市を流れる神通川の下流域では昔から、この駅弁のようなマス寿司を作り食べる食文化が存在した。これが鉄道の開通により駅弁となり、レールに乗って現在の全国的な知名度を獲得したという。鉄道がなければ、という仮定はあまりにも現実性に欠けるが、明治時代から、あるいは少なくとも戦前から駅弁になっていなければ、マス寿司が富山の名物と広く認知されることはなかったかもしれないし、あるいは資源の枯渇により食文化そのものが消滅していたかもしれないと思う。富山にはこのような鱒寿司を売る会社がいくつもあり、その数は30とも40とも50ともされる。
価格は2001年の購入時で1,100円、2006年8月から1,300円、2014年4月の消費税率改定で1,400円、2020年時点で1,500円、2023年時点で1,700円、2024年4月から1,800円。おそらく他社の同種製品も、同じ価格に値上げされていると思う。
※2024年4月補訂:値上げを追記2018(平成30)年10月に「伝承館ますのすし富富富」(2,000円)と「特選ますのすし富富富」(1,900円)を発売し、翌年1月頃までの期間限定で販売。翌2019年は「特選ますのすし富富富」(1,900円)のみを、新発売として12月20日から1月中旬まで販売。2021年は「復活!!」として10月1日か2日から11月28日か29日まで販売。いずれも富山駅で既存の駅弁「伝承館ますのすし」や「特選ますのすし」の酢飯に、富山県の新たな銘柄米「富富富(ふふふ)」を使うもの。
見た目での違いは、通常版の外箱に「富富富」のシールを貼っただけ。画家の中川一政が描いたボール紙のパッケージに収めた木製の曲げ物に、笹の葉を敷き、酢飯を詰め、マスの身を貼り、竹とゴムで押す姿は、通常版とまったく同じ。おいしさも変わらないように思えた。米が替わり味が優れたかどうか、食べ比べても分からないかもしれないが、「ますのすし」は富山の内外で広く売られる人気の商品なので、新たなお米をアピールする役割を担えたと思う。2023年までの販売か。
富富富は、富山県の銘柄米。県内で約8割の作付面積を占めるコシヒカリの品質が高温登熱で、稲の穂が出て実るまでの気温が高いことで低下することを受けて、富山県農業研究所が2003(平成15)年に開発を着手、2016(平成28)年に選抜した品種「富山86号」に、2017(平成29)年3月に公募を参考に名付けた。競走馬の血統にたとえるとコシヒカリの3×2×1相当となる強烈なインブリードで、お目当ての遺伝子を導入したという。夏が高温でも高品質、草丈が短く倒れにくい、稲の病気「いもち病」に強く農薬を減らせることが特長。富山県が何億円もの宣伝費を投入しアピールするが、コシヒカリと何が違うのか伝わらないようで、2020年時点で販売に加えて作付面積でも苦戦中と報じられる。
※2024年4月補訂:終売を追記富山駅弁のマス寿司の最高峰。販売は期間限定かつ数量限定とされ、いつでも買えるわけではない模様。酢飯に天然サクラマスを合わせて棒状にし、笹の葉を貼り合わせて本物の竹筒に挿入し、竹皮でふたをして、割りばしや竹ナイフやしおりとともに紙封筒に入れる。
調製元によると、この竹ずしには三つの感動があるという。一つは、竹筒に入っている驚き。二つは、鮮やかなさくら色の天然サクラマス、緑の笹、白いすし飯の美しいコントラスト。三つは、サクラマスの上品な脂の旨みとふんわりとやわらかいすし飯、爽やかな笹の香り。酢も塩も控えめで、今までにない握りずしのような食感。たしかにマスの身が厚く、ジューシーな気がするも、通常版の倍額ほどの差異はない。それは、普通のものも十分にうまいということ。私はこれが無予約非取材で買えたことに感動した。
価格は2010年時点で3,000円、2014年時点で3,700円、2023年時点で3,900円、2024年4月から4,200円。
※2024年4月補訂:値上げを追記富山駅の駅弁屋がおくるマスの棒寿司。棒状酢飯の頭半分にいぶしたマスを貼り付けて、さらに白板昆布と酢レンコンを貼り、ビニールと不織布シートと竹皮と竹すだれの四重構造で包むもの。通常の円柱形のものと比べて、薫製の香りが、あったような、なかったような。今回は東京駅構内での特設実演販売場で購入。これは駅弁売店ではなくデパートで売られる商品である模様。価格は2010年の購入時で1,600円、2014年4月の消費税率改定で1,650円、2019年時点で箱詰めに変わり1,350円、2023年時点で1,450円、2024年4月から1,500円。
※2024年4月補訂:価格の改定を追記上記の駅弁「ますのいぶしすし」を、2か月半後に熊本県熊本市の鶴屋百貨店での駅弁大会で買ったもの。中身は同じで、パッケージはボール紙製で、値段は400円も安い。この値段なら抵抗感は小さくなるし、しかし高級感もともに小さくなるだろう。2019年までに現地版がこの姿に変わった。
上記の商品「ますのいぶしすし」を、8年後に同じ場所で買ったもの。鶴屋百貨店の駅弁大会限定というが、現物からはそれが読み取れない。箱や分量は当時と変わらないが、今回はマスの棒寿司を黒板昆布で巻いていた。
富山駅弁「ますのすし」の豪華版。容器の構造や中身の分量は、通常版と同じ。金色を使うパッケージが豪華に見え、特級部位を肉厚に使うという中身のマスが鮮やかなピンク色で身が柔らかく、これで「特選」を名乗る。
価格は2004年の購入時で1,500円、2006年8月から1,700円、2014年4月の消費税率改定で1,800円、2020年時点で1,900円、2023年時点で2,100円、2024年4月から2,200円。おそらく他社の同種製品も同価格に値上げされていると思う。
※2024年4月補訂:値上げを追記2017(平成29)年2月5日に購入した、特選ますのすしのパッケージ。この年の鶴屋百貨店の駅弁大会では、パッケージに鶴屋65周年や「がんばろう熊本」や昔の駅弁掛紙の絵柄などを記したシールを貼り、駅弁でなく「特製駅弁当」つまりこの駅弁大会限定の商品として販売した。中身や値段は、駅弁の特選ますのすしと、まったく同じ。
2004(平成16)年7月31日に購入した、富山駅弁のパッケージ。上記の2020年のものと、絵柄も表も裏もほとんど同じ。和紙のような地柄の有無くらいしか違いが見えない。当時は中身のふたが、焼き印でなくイラストのシールだった。この年のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣」の応募券が、シールの貼付でなく、パッケージに直接印刷されていた。
2001(平成13)年8月18日に購入した、富山駅弁のパッケージ。上記の3年後と変わらない。当時は手提げのための穴が開けられるようなミシン目が入っていた。
特選の上のランクの富山駅弁ますのすし。中身や分量や容器の構造は通常版と同じで、これを大きな専用段ボール箱に詰める。日本海産サクラマスの特大物を厳選して使用したそうで、なんとなく風味が上品で柔らかい感じがしたり、しかし特選のものと見た目も風味もそんな変わらないような気がしたり、微妙な舌かグルメなセンスが必要なのかも。本社工場「ますのすし伝承館」観光用見学コースで一日20個限定販売と公式サイトに書いてあるが、これはちゃんと駅で買えた。価格は2005年の購入時で2,000円、2014年時点で2,700円、2023年時点で2,900円、2024年4月から3,100円。
※2024年4月補訂:値上げを追記上記の駅弁「ますのすし」の倍量バージョン。構造は同じで筒の高さが倍になった木製容器を、やや大きめのパッケージに収める。中身は通常の「ますのすし」が重ねて2個入るもので、つまりひとつ食べたら底にもうひとつ入っている、食べ応え満点の駅弁。
価格は2003年時点で2,100円、2006年8月から2,500円、2014年4月の消費税率改定に合わせて2,700円、2020年時点で2,900円、2023年時点で3,300円、2024年4月から3,500円。おそらく他社の同種製品も同価格に値上げされていると思う。
※2024年4月補訂:値上げを追記2003(平成15)年1月21日に購入した、富山駅弁のパッケージ。下記の21年前とも、上記の17年後とも、ほとんど変化がないことに驚かされる。
1982(昭和57)年3月8日1時の調製と思われる、昔の富山駅弁のパッケージ。上記の21年後と、ほぼ変わっていない。当時は手提げのための穴が開けられるようなミシン目が入っていた。価格は「一重」の850円に対して、この「二重」は1,600円であった。
富山駅弁の「ますのすし」と「ぶりのすし」を、ひとつの容器の中で重ね合わせたもの。要予約や注文販売の駅弁を除けば、2020(令和2)年時点で富山駅「竹ずし」や米子駅の吾左衛門鮓に次ぐ、全国で4番目に高価な駅弁で、富山駅弁「ますのすし(二重)」と並んでおそらく最も量が多い駅弁である。少々のおかずを買い足せば、家族分の夕飯になるだろう。
価格は2004年時点で2,370円、2006年8月から2,500円、2014年時点で2,700円、2015年時点で2,800円、2020年時点で3,000円、2023年時点で3,600円、2024年4月から3,800円。おそらく他社の同種製品も同価格に値上げされていると思う。
※2024年4月補訂:値上げを追記2004(平成16)年7月31日に購入した、富山駅弁のパッケージ。富山駅弁の「ますのすし」群の見た目は、国鉄がJRになった1980年代頃からずっと変わらないように見えて、データで比較すると変化していることが分かる。調製元のロゴマークの有無や、裏面の解説文の分量などに、上記の2020年のものとの16年分の差異が見られる。
ボール紙でできた長方形の押寿司容器に、富山駅弁のますのすしが3切れ分と、富山駅弁のぶりのすしが3切れ分収まる。丸く大きな通常版は、多くの人にとってひとりで食べるには大きすぎるので、このパッケージは便利。新幹線の車内で手軽に食べられる。ただし消費期限は当日限り。値段は2017年の購入時で850円、2019年時点で950円、2023年時点で1,100円、2024年4月から1,150円。
※2024年4月補訂:値上げを追記富山駅弁「ますのすし」のミニチュア版。長方形のボール紙製容器を使用する以外は「ますのすし」そのもので、手頃な量なのでひとりで食べられる。列車内や駅弁大会ではあまり扱われないので、「ますのすし」よりは正当な駅弁と言えそうだ。価格は2002年の購入時で650円、2010年時点で「ますのすし小箱」と名前を変えて750円、2014年時点で800円、2019年時点で900円、2023年時点で1,000円、2024年4月から1,050円。
※2024年4月補訂:値上げを追記2009(平成21)年9月19日に発売。こうして出てみれば、今までなぜ無かったのかが不思議な、富山駅弁ますのすしの1人前で、通常版を縮小した食べきりサイズ。写真のとおり、いろんなものがだいたい通常版の縮小コピーで、具体的には直径を3センチ減らし14センチとした。おひとりさまにはきっと、ありがたい商品。価格は2009年の発売時で800円、2014年時点で900円、2019年時点で1,000円、2023年時点で1,200円、2024年4月から1,300円。
※2024年5月補訂:写真を更新2009(平成21)年10月17日に購入した、富山駅弁のパッケージ。上記の2024年のものと、書いてあることは同じ。栄養成分表示に2割くらいの差異があるけれど、中身や分量が変わったとは思えない。
2014(平成26)年の1月までに、百貨店などでの駅弁催事や富山駅で発売か。「ますのすし小丸」と同じく、富山駅で既存の駅弁「特選ますのすし」を、縮小して1人前にしたもの。写真にすると通常版と変わらない見栄えで、手に取れば確かに小さくなっている。価格は2014年時点で1,200円、2015年時点で1,300円、2023年時点で1,500円、2024年4月から1,600円。
商品名は「復刻ますのすし(小丸)」とも。2022(令和4)年10月1日に首都圏と京阪神地区で発売、31日まで販売。日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつ。富山駅などで普段売られる駅弁「ますのすし小丸」の、外箱に替えて掛紙を巻き、その絵柄に昔の駅弁掛紙、調製元が富山駅弁ますのすしの販売開始当時のものだとする掛紙を取り入れた。キャンペーン特典のミニクリアファイルも添付。北陸以外や駅弁大会では「小丸」が来ないので、ひとりで食べきれる分量での販売は、便利だったと思う。
ボール紙でできた長方形の押寿司容器に、富山駅弁のますのすしが3切れ分と、上記のたいのすしが3切れ分収まる。丸く大きな通常版は、多くの人にとってひとりで食べるには大きすぎるので、このパッケージは便利。新幹線の車内で手軽に食べられる。ただし消費期限は当日限り。価格は2017年の購入時で900円、2019年時点で950円。2020年までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2014(平成26)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、「開業時の掛け紙を使用した「限定復刻パッケージ」」として輸送販売された商品。今回もまた「特選ますのすし小丸」は、レギュラー商品でない形で販売された。百年前の掛紙を取り入れたデザインのパッケージは、今回は通常版のますのすしと同じような形をしていた。
2013(平成25)年2月の熊本県熊本市の鶴屋百貨店の駅弁大会で、第50回鶴屋百貨店全国駅弁大会記念として販売。後に2014年1月の京王百貨店の駅弁大会でも売られている。上の「ますのすし小丸」と同じく、富山駅弁の「特選ますのすし」をそのまま小さくしている。これはいつかどこかでレギュラー入りするのではないかと思う。
2016(平成28)年5月21日頃の調製と思われる、富山駅弁のパッケージ。伊勢志摩サミットの開催を記念して、仙台駅から小倉駅まで11種類の駅弁について、パッケージに駅弁の名前の英文表記とほぼ共通のロゴマークを印刷し、東京駅の駅弁売店で販売した。価格と中身は通常版と同じ。
2004(平成16)年7月30日の調製と思われる、富山駅弁のパッケージ。下記の2001年のものと同じに見えて、パッケージを開けるための穴が塞がり、そこに調製元の赤いロゴマークが入る違いがある。また、同年のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の実施に伴い、その応募シールが直接印刷されている。
2001(平成13)年8月11日の調製である、富山駅弁のパッケージ。この形と姿は、富山駅にこの駅弁がある限り、永遠に変わらないのではないかと思う。
1985(昭和60)年3月10日12時の調製である、昔の富山駅弁のパッケージ。ほぼ変わらない絵柄であるが、アイコンの有無や裏面の記載は少しずつ変化する。
1972(昭和47)年9月1日8時の調製である、昔の富山駅弁のパッケージ。後の「ますのすし弁当」や「ますのすし小箱」のような、棒状のマス押寿司が入っていたのだろう。