東京駅から北陸新幹線で約2時間。富山市は日本海の富山湾に面した、富山県の面積の3割を占めるの県庁所在地で、人口約41万人の城下町。かつて市内を流れる神通川のサクラマスを使った押寿司の郷土料理「ますのすし」が、鉄道の開通で駅弁となり全国に知名度を広げ、富山と駅弁を代表する商品として君臨する。1899(明治32)年3月20日開業、富山県富山市明輪町。
1957(昭和32)年の発売。富山で「ますのすし」より通に好まれる名物。中身はつまり「ますのすし」のマスを、ブリとかぶらと人参に置き換えたもので、北陸の郷土料理「かぶらずし」をヒントに考案されたらしい。個人的にはかぶらの大根のようなカブのような臭いと酸味がブリの風味を消しているように感じるが、そんなところも通好みといったところだろう。
普通の駅弁の、今でいう消費期限が製造後8時間前後だった頃から、この駅弁は製造後20時間から30時間が一番の食べ頃という。価格は2004年時点で1,300円、2014年時点で1,500円、2020年時点で1,600円、2023年時点で2,000円、2024年4月から2,100円。
※2024年4月補訂:値上げを追記2004(平成16)年5月21日に購入した、富山駅弁のパッケージ。下記の2001年のものとはほとんど、上記の2020年のものとはまったく、変化がないことに驚く。駅でなくスーパーマーケットで買ったので、閉店前で30%引きのシールが貼られた。これは普通の駅弁とは違い、製造後20時間から30時間が一番の食べ頃というから、こんな割引後のほうがおいしいかもしれない。
2001(平成13)年8月12日に購入した、富山駅弁のパッケージ。上記の3年後との差異は、左右にある調製元のロゴマークだけ。
2004(平成16)年11月17日に、翌年3月までの期間限定で登場、後に11月下旬から3月中旬までの冬季限定駅弁として、販売を継続中。高さのある楕円形の容器に透明なふたをかけて、中身の写真を載せたボール紙のパッケージにはめる。中身は、わさび風味の酢飯を薄く敷き、その上にワカメや白エビや生姜などとともに、ブリ一尾でふたつだけ取れるカマを、煮込んでタレに付けて載せる。
「ます(ぶり)のすし」以外の富山駅弁が、輸送や実演で販売されることはとても珍しい。魚のカマは、骨や殻や鱗の処理に苦労して食べる通好みの食材という印象があるが、この駅弁では売り文句のとおりそのままかぶりつける。食べた人からは好評しか聞こえてこない人気商品。価格は2005年の購入時で950円、2014年時点で1,100円、2020年時点で1,200円、2023年時点で1,350円。
※2024年4月補訂:値上げを追記富山駅弁「ぶりのすし」の、1人前バージョン。長方形のボール紙製容器を使用する以外は「ぶりのすし」そのもので、手頃な量なのでひとりで楽に食べられる。価格は2003年の購入時で750円、2014年時点で「ぶりのすし小箱」と名を変えて850円、2020年時点で950円、2023年時点で1,100円、2024年4月から1,150円。
※2024年4月補訂:値上げを追記2001(平成13)年2月25日頃の調製と思われる、昔の富山駅弁の紙袋。上記の2003年10月のものと、あまり変わらない。調製元のロゴマークの使い方が、この間に変わったようだ。
2017(平成29)年秋の新作か。この年から4月の「白えび天ぷら」、夏の「牛すき焼き」、10月の「能登豚弁当」とシリーズ化されているように見える富山駅弁「源の旅めし」のひとつ。黒い片面段ボールで包装した正方形の容器の中に、酢飯を敷き、刻み昆布をまぶし、ぶりかまを置き、カニとフキとレンコンと白海老天で彩るもの。つまり、冬に人気の富山駅弁「ぶりかまめし」の変型。この味は何度でもいける。値段は2017年の購入時で1,380円、2018年時点で1,300円。2019年には掛紙から「源の旅めし」が外れた模様。2020年までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記富山駅の知られざる駅弁。2000年代には発売されていたようで、駅で普通に買えるようになったのは2010年頃からか、あるいは北陸新幹線富山駅の開業後か。これは「小箱」シリーズのサイズで、有名な駅弁「ますのすし」「ぶりのすし」と同じように、酢飯にタイの身を貼り合わせ、白板昆布で覆う。味はマスやブリと違い淡泊で、それらに比べて印象に残りにくい感じ。2019年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2016(平成16)年1月に京王百貨店の駅弁大会の実演販売でデビュー、同時に富山、高岡、金沢駅などで発売。富山駅弁で定評の「ぶりかまめし」の容器と飯とぶりかまを変えず、付合せであるワカメと白エビを、かぶらとカニほぐし身に差し替えたもの。焼き魚やタレの味とカニは喧嘩して、かぶらは良い気分転換で、こんな組合せがあってもよい感じ。旧作のリニューアルでなく、両者を仲良く併売した。2020年春頃までの販売か。
※2022年4月補訂:終売を追記2014(平成26)年12月29日の発売。おそらく事実上、2015年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売するために生まれたのだろう、掛紙代わりのシールには大会の正式な名称が記される。駅弁の容器では他に見たことがない平皿に、御飯をこんもりと小さく盛り、クリームソースをかけたブリかま煮焼、目玉焼き風オムレツ、ブロッコリー、カリフラワー、プチトマト、パプリカを被せる。
これは駅弁催事をコンベンションに見立てて出品したコンセプトモデルではないか。高い値段と少ない分量で、ネット上の評判は芳しくないものの、大きめな皿に少しだけ料理を盛り、立体的に彩り豊かな具材を並べる、北陸新幹線の開業をにらんだ今後の駅弁の姿として意欲的な取り組みだと、私は感じた。新幹線が開業する2015年3月に「京王百貨店…第50回記念駅弁」の標記を外して、駅売りされることはあるのだろうか。味は「ぶりかまめし」での定評が生きている。駅弁大会の会期の後には、売られなかったようだ。
※2017年4月補訂:終売を追記2012(平成24)年の12月までに発売か。デビューの地や主戦場はもしかすると、東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」かもしれない。中身は上記の名駅弁「ぶりかまめし」とほぼ同じ。違いは、ブリのカマが1個ではなく3切れになったこと、ラッキョウの赤ワイン漬と甘酢生姜の付合せが付いたことと、丸い容器が四角くなったことと、ふたに富山駅の名物駅弁「ぶりのすし」の絵柄を持ってきたこと。味の良さは折り紙付き。できればこの味は、酢の入らない飯でいただきたいところ。2020年までの販売か。
※2022年4月補訂:終売を追記