福井駅からえちぜん鉄道で約40分。あわら市は2004(平成16)年に芦原町と金津町が合併してできた、人口約3万人の温泉町や宿場町。源泉かけ流しから偽装温泉まで、高級旅館から性風俗まで、幅広いタイプの温泉街は関西の奥座敷とされる。駅弁は下記のとおり、2014(平成26)年に売られたことになっている。1928(昭和3)年12月30日開業、福井県あわら市二面。
2014(平成26)年1月の京王百貨店の駅弁大会で販売。えちぜん鉄道あわら湯のまち駅の駅弁を名乗る、空前にして絶後の商品ではないかと思う。温泉の風呂桶をイメージしたという円形の容器を留めるボール紙の帯には、水玉模様の手ぬぐい風の地紋や、温泉マークや駅弁催事屋のマーク、駅名と商品名などが書かれる。
中身は、福井県産コシヒカリのチキンライスを、やはり福井の玉子を使うスクランブルエッグで覆い、デミグラスソースをかけ、ハム、大きなたくあん、菜の花、サトイモの煮付け、リンゴのコンポートを添える、オムライス風洋食弁当。催事場では残念ながら不人気であったが、常温の弁当なのにみずみずしく、味付けも爽やかに控えめで、食べ物としての弁当としては、そんな評価に納得がいかない出来。ただ、これのどこが福井や芦原や駅弁かと問われれば、答えられない感じ。
調製元は、あわら湯のまち駅の正面に実在する洋食堂。ここのオムライスは地元の名物だという。ただ、こんな弁当が駅弁として駅で売られたかどうかは疑義がある。一応、百貨店の会期の終了後に現地で試食会が開催されたり、2日前までの要予約で駅舎内の観光案内所で売ったと記すウェブページもある。同年の5月に現地を訪問したら、駅弁の痕跡はまったく無かった。
福井駅からえちぜん鉄道で約1時間の終着駅。勝山市は福井県の北東部に位置する、人口約2万人の城下町。恐竜の化石が出土し、恐竜博物館が建てられたことで知られる。駅には売店がなく、駅弁も駅前弁当も存在しないが、下記のとおり百貨店の駅弁催事で売るために駅弁が仕立てられたことがある。1914(大正3)年3月11日開業、福井県勝山市遅羽町比島。
2011(平成23)年12月25日に、えちぜん鉄道勝山永平寺線の終着駅である勝山駅で販売を開始したという、えちぜん鉄道史上初の駅弁。商品そのものは10月に「秋の勝山うまいもん祭」や北陸自動車道南条サービスエリアで販売したという。恐竜の卵を模したという樹脂製容器を、恐竜の絵柄や解説やペーパークラフトを印刷したボール紙の容器で囲う。卵の中には恐竜フィギュアが1体入り、弁当の中ぶたには化石の形を浮き出す。
中身は鶏そぼろと錦糸卵を載せた福井県勝山産コシヒカリの白御飯に、鶏豚ハンバーグ、玉子焼、鶏照焼、カボチャとサトイモとサツマイモ、玉子どうふ、水ようかんなど。内容はくどいほどの鶏づくしも、味は名前どおり中身どおり普通な感じ。
調製元が疑義駅弁も手掛ける催事屋であるため、自動的に疑義駅弁のマークを付けたくなるところだが、この商品はえちぜん鉄道が公式サイトで駅弁だと紹介しており、その点では公式な駅弁。もっとも、現地では土休日に限り購入7日以上前の平日までに3個以上での予約販売というし、それも2012年4月8日限りで中止したというから、疑義駅弁や催事駅弁のたぐいと何ら変わらない。京王百貨店の駅弁大会ではチラシで準目玉扱いしてくれ、テレビの情報番組でも宣伝してくれたのに、価格が問題だったのか、話題性が斜め上を行ったのか、会場では毎日盛大に売れ残っていた。
福井県の山中で九頭竜川の中流域に位置する勝山市は、1980年代から恐竜の化石が多く出土する地域として知られる。2000年7月には一万坪の敷地に黒川紀章がデザインしたドームや半地下構造を持つ建物を持つ福井県立恐竜博物館が開館、今では年間で約50万人もの入館者を集める日本一かつ世界有数の恐竜博物館として、福井の観光と日本の恐竜研究を牽引している。