東京駅から新幹線で3時間。福井市は福井県の北部に位置する県庁所在地で、人口約26万人の城下町。戦国時代以降、朝倉氏の一乗谷、結城氏の北ノ庄城、松平氏の福井城、明治時代の福井県庁と、地域の行政の中心地となってきた。駅弁は1902(明治35)年から売られ、赤いカニ型容器の「越前かにめし」が有名。1896(明治29)年7月15日開業、福井県福井市中央一丁目。
1961(昭和36)年2月に発売。福井駅で伝統の駅弁、かつ一番人気の駅弁であり、全国を代表するカニ駅弁のひとつ。古くは陶器だった、カニの色と形をイメージした赤黒いプラ製容器を、駅弁の名前を書いた袋に詰めて封をする。これは長らく紙袋で、2024年1月までにプラ製の袋に変わった。中身はカニみその炊込飯を、ズワイガニやベニズワイガニのほぐし身で覆った、シンプルなカニ飯。
カニ味噌で御飯を炊いた、全国初のカニ飯駅弁だと紹介される。駅弁として普通にそのまま食べる以外に、電子レンジの使用や、チャーハンや雑炊にする食べ方を、袋で推奨する変わり者。価格は2006年時点で1,000円、2010年時点で1,100円、2014年時点で1,150円、2017年時点で1,180円、2018年時点で1,250円、2018年8月から1,300円、2022年7月から1,380円、2023年秋時点で1,420円、2024年時点で1,430円。
※2024年5月補訂:写真を更新2017(平成29)年5月26日に購入した、福井駅弁の紙袋。この紙袋と、カニ型のプラ容器は、見た目には半世紀ほど変わらない。一方で紙袋の絵柄や記載された内容に、中身のカニや飯の姿は、数年の単位で変化を続けていると思う。ここでは中身が下記の2013年時点の白飯とカニブロックが、茶飯とカニほぐし身に戻った。電子レンジやチャーハンや雑炊の推奨文は戻らなかった。
2013(平成25)年1月14日に購入した、福井駅弁の紙袋。袋の絵柄とカニ型のプラ容器は変わらない。2012(平成24)年8月にリニューアルしたという中身は、セイコガニ(メスのズワイガニ)の身や内臓で炊いた御飯の上に、カニの脚や肩肉を大粒にほぐして覆い、グリーンピースで彩ったもの。この駅弁の特徴であったチャーハンや雑炊の推奨文が消えた。飯にカニ味噌が濃く、細かいほぐし身がしっかり醤油味だった伝統の味が消えて残念だとは思う。しかし、飯を覆うカニを粉からブロックに変えたことでカニ身の香りが出現するなど、全体的に爽やかでジューシーになり、21世紀に売れる駅弁として正しい進化を遂げたとも感じた。上記のとおり、いつのまにか元へ戻った。
2006(平成18)年3月25日に購入した、福井駅弁の紙袋。。カニの出汁や味噌や内臓で炊いた御飯の上に、カニのほぐし身や脚の身を敷き詰めて、それ以外には何もないカニ丼。当時は、というより上記のリニューアル前までは長らく、飯は味噌で染まり、身は醤油で染まり、今より濃い味がした。チャーハンや雑炊にも適していた。この頃の味が懐かしい。
2001(平成13)年12月2日に購入した、福井駅弁の紙袋。袋も容器も中身も、とくに変わりない。この当時の中身なのか、この日かこの駅弁大会シーズンの内容だったのか、中身が白めで、醤油やかにみその風味が薄かったと思う。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2020(令和2)年秋の新商品か。長方形の加熱機能付き容器に茶飯を詰め、錦糸卵で覆い、ベニズワイガニの棒肉とほぐし身を載せ、椎茸と昆布巻と奈良漬けを添える。既存の加熱機能付き駅弁「越前ちゅんちゅんかにめし」の廉価版なのだろう、見た目には明らかにカニの減量を感じ、「頬福(ほおふく)」や「かにまみれ」を名乗るスリーブの華やかさとは対照的な寂しさを覚えるが、御飯と加熱の力により、食べればちゃんとカニの香りがした。11月から3月までの販売。
2024(令和6)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。同催事で6種類を販売した「贅沢盛り新作駅弁」のひとつとして、カニ身を上記の通常版「越前かにめし」より60%増量したという。黄色あるいは金色のカニ型プラ容器に、セイコガニの卵巣と味噌を炊き込んだ御飯を詰め、ベニズワイガニのほぐし身とコロ肉で覆い、刻み海苔の袋を添える。催事場での実演販売に向いた、飯と具だけの商品。小柄で地味だったのかどうか、催事場では難なく買えた。新幹線開業日の福井駅で売られることはなかった。
2023(令和5)年11月10日に、金沢、新大阪、京都、東京の各駅で発売。日本鉄道構内営業中央会の「駅弁マーク」制定35周年を記念し、会員のうち29社が主に11月10日から期間限定で販売した31種類の記念駅弁のうち、福井駅の駅弁屋のもの。福井駅が販売箇所に含まれず、実際に11月末に福井駅へ訪れても売られていなかったが、新幹線の工事により駅弁売り場が駅商業施設ごと失われてコンビニ前での台売りをしており、その影響があったかどうか。北陸3県の駅弁は車内販売会社のつながりで、昭和時代から3県の主要駅で買うことができた。
福井駅弁「越前かにめし」のカニ型プラ容器が、ここでは黄金色となり、これを留める白いスリーブでの商品名も金色に見え、駅弁マーク制定35周年企画の駅弁マークシールを貼る。この容器に酢飯を詰め、ズワイガニの棒肉、カニほぐし身、いくら、ホタテ、錦糸卵、刻み海苔、花れんこんなどを散らして盛り付ける。昔から中身がシンプルな「越前かにめし」もよいけれど、こんな賑やかな内容もまたよいと思う。
これは11月10日から12月31日までの販売。日本鉄道構内営業中央会のプレスリリースによると「金の越前かに寿し」のリニューアルだそうで、年が明ければシールを貼らずに駅弁大会へ出てきたり、すでに食品表示上の商品名にあるとおり、北陸新幹線開業記念の箔でも付けるのではないかと想像する。
今回は2023(令和5)年10月1日に、福井駅や東京駅や催事で発売か。同日からのJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2023」にエントリー。すでに2024年3月16日と発表された、北陸新幹線福井開業記念として、昭和36年発売の福井駅弁「かにめし」を復刻したという。復刻は下記のとおり、過去にも行われている。
出汁飯にズワイガニの棒肉を5本並べ、グリーンピースをふりかけ、奈良漬を添える中身は、昭和36年の復刻だと思う。それで通常版より370円高くても、もはや福井のカニでこの値段は無理なのだろう、中国産ズワイガニと韓国産ベニズワイガニの使用が、食品表示からうかがえる。同じ海を囲う国なので、一般的な味覚では差がなさそう。真っ白なカニ柄のプラ容器や、これを留める赤いスリーブや、添付する伸縮する箸は、昭和36年の復刻ではない。いつかは半世紀以上前の陶製容器の復刻を、見てみたいと思う。
2016(平成28)年の春または夏の発売か。越前かにめしの赤いカニ型プラ容器を、2007年の駅弁催事で使われた黄色ないし金色のものに変え、商品名とカニ爪を描いたボール紙の帯にはめる。中身は白い酢飯を錦糸卵、カニほぐし身、カニ身ぶつ切り、カニ脚2本で覆い、カニ味噌を添えるもの。「めし」でなく「寿し」。見栄えは豪勢だけれども、カニ味噌の混じらない酢飯は酸っぱいし、香らないし、「越前かにめし」より味がだいぶ落ちる感じ。価格は発売時や2017年の購入時で1,380円、2018年8月から1,500円。
※2018年8月補訂:値上げを追記2013(平成25)年1月までに発売か。福井駅の名物駅弁「越前かにめし」の赤いプラスティック製容器を、同じ色のボール紙の箱に詰める。中身は御飯の上にズワイガニの棒肉と、かにみそをかけたブロック、蒸しウニ、ホタテを置くもの。カニ駅弁としては、かなり豪華な部類だと感じる。ただ、調製元の公式サイトやそのネット通販に掲載がなく、東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」と阪神百貨店の駅弁大会でしか売られた形跡がないことが気にかかる。福井駅に存在するのかどうか。価格は2013年時点で1,380円、2015年時点で1,450円。2019年までの販売か。2022年の秋までに東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」で、1,680円にて再販か。
※2023年3月補訂:写真を更新2013(平成25)年11月3日に購入した、福井駅弁の箱。上記の2022年のものと、プラ容器や中身も含めて同じ。当時は宣伝文が側面でなく底面にあった。法令による食品表示の激増で、側面と入れ替えたのかもしれない。
2004(平成16)年11月1日から2005(平成17)年3月31日までの期間限定駅弁として発売、好評で毎年11月から3月までの季節限定駅弁に昇格。円形の加熱機能付き容器を、炎とカニで暖かな色のボール紙パッケージに入れる。中身はおそらくカニのだし汁やかにみそで炊いた茶飯の上に、ズワイガニのオスの棒肉とメスの甲羅の中身だというカニ身が分厚く載り、添付のカップにはかにみそが入る。
「ちゅんちゅん」とは、福井弁で「アツアツ」の意味だという。熱量による制限がある加熱式駅弁なので分量は少なめだが、その中に占めるカニの割合は大きく、カニ丼をもりもり食べた気分をこれほど出す駅弁は他にないと思う。2004年5月の「駅弁の達人」駅弁ブックでは1,600円と紹介されたが、現地で買ったら1,500円だった。2015年時点での価格は1,550円、2018年8月から1,880円。2004年度JR西日本「駅弁の達人」対象駅弁。
※2018年8月補訂:値上げを追記これは駅弁でなくスナック菓子。福井駅弁「特撰かにめし」と同じような赤い紙箱に、カニ型の赤いプラ容器でなく、銀色の袋をひとつ詰める。その中身は、魚のすり身でできた「かまぼこチップス」。福井駅弁「越前かにめし」の何かを取り入れたのだと思うが、食べればただの揚げ煎餅、あるいは中華料理の龍蝦片(えびせんべい)だと思う。福井でなく富山県新湊での製造で、連絡先もその製造者。価格は失念。
2023(令和5)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。白いスリーブの表記や、京王百貨店の通信販売での商品概要から、福井駅の駅弁「越前かにめし」の、1961(昭和36)年の発売当時の姿を再現しようとしたらしい。しかし白いスリーブや、カニ型の真っ黒なプラ容器は、越前かにめしの初代どころか、現在に至るまで通常版の歴史で使われたことがない。
中身は茶飯をズワイガニの棒肉で覆い、グリーンピースと奈良漬で彩るもの。この内容は、御飯のレシピも含め、発売当初の姿を再現したものだという。だから現在は越前ガニを使えない通常版の倍近い値段となり、しかし今に親しみや懐かしさを思い起こさせてくれない中身、特に外観なので、あまり客と話題を呼べなかったかもしれない。もし発売当時のカニ型の陶器まで再現されたら、駅弁大会の主役を喰う注目を集められただろうが、すると値段がもう倍額くらいになりそう。
越前かにめしのカニと飯の構成は不変でも、カニ肉の姿や飯の味は都度変わり、いつのものが最も親しまれたかは、よくわからない。今も類例の乏しい、カニ寿司でなくカニ飯であることと、赤い袋にカニ型の赤いプラ容器を詰めることは、きっと親しまれている。
2022(令和4)年10月14日に福井、金沢、新大阪、京都、東京の各駅で発売、31日まで販売。日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつ。福井駅で名物の駅弁「越前かにめし」について、1978(昭和53)年の国鉄「いい日旅立ち」キャンペーン時のパッケージを再現した。赤い紙袋の絵柄以外は、値段を含め現行版と同じ。赤いカニ型のプラ容器はもともと、当時も現在も同じ。当時に容器ごと蒸したり、中身を土鍋に入れて雑炊にするとよいとされた、セイコガニのみそと赤子で炊いた御飯にズワイガニの脚肉とほぐし身で覆った中身は、再現されなかった。
2020(令和2)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。普段は赤黒い「越前かにめし」のプラ容器を真っ白に変え、スリーブにはカニの金メダルを描き、こんな名前を付けて、この年に国内で予定された国際イベントを思い、何を言いたいのかを察する。中身はかにみそで炊かない茶飯を、カニ爪と殻付きカニ脚と3種のほぐし身に、味噌と錦糸卵などで覆うもの。通常版のほうがシンプルで良いような気がした。催事場では見た目で全然売れておらず、売り場に積み上げると白い容器が寒々しく見えたのかどうか。スーパーの駅弁大会にも出荷されたようで、3か月間ほどの販売。
※2021年3月補訂:終売を追記2018(平成30)年1月の京王百貨店の駅弁大会での実演販売でデビュー。「越前かにめし」の赤いカニ型容器が真っ黒になり、袋に入れるのでなく商品名を書いたボール紙のスリーブにはめる。中身は茶飯を、カニのブロック肉とほぐし身と、殻付きのカニ脚1本とカニ爪1個で覆うもの。カニほぐし身に付いた酢の酸味が飯や他の具と合いにくいと感じた以外、いつもの越前かにめしだった。過去の「香ばしい焼かにめし」にあった焼きや香りはどこへやら。2019年までの販売か。
※2020年6月補訂:終売を追記2016(平成28)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で実演販売。同月の東の巨大駅弁大会で売られた下記の駅弁「黄金のかにめし」との違いは、金粉の添付の有無だけ。それで駅弁の名前を変え、容器を留めるスリーブの絵柄を変え、値段も異なった。
価格は購入時で1,380円。どうもこの駅弁大会でのみ売られた疑義駅弁だったが、2017(平成29)年から新大阪駅の巨大駅弁売店「旅弁当駅弁にぎわい」にて1,500円で売られることがある模様。上記の駅弁「金の越前かに寿し」も加えた3種の金のカニ駅弁のうち、これが最もレアな存在に見える。同年の鶴屋百貨店の駅弁大会で実演販売したり、2021年の鶴屋や守口京阪の駅弁大会に輸送されたり、催事専用商品として時々製造する模様。
※2022年4月補訂:現況を追記2016(平成28)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、目玉の駅弁対決の二番手として、実演販売で発売。2007(平成19)年の40周年記念限定品以来の、金色ないし黄色のカニ形プラ容器に、メスのズワイガニであるせいこ蟹の味噌と卵巣で炊いた御飯を詰め、カニ棒肉2本とほぐし身で覆い、金粉入りの袋を貼り付ける。
つまり、「越前かにめし」の変異版。今回の催事場では、行列ができなくても、立地が良いためか、テレビの情報では一日約千個のペースで売れていたそうな。以後も「越前かにめし」群のひとつとして、主に冬期や輸送販売で売られた模様。2017年頃までの販売か。
※2020年6月補訂:終売を追記「越前かにめし」発売40周年を記念して、2007(平成19)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で販売された特別容器版。いつもの袋の中で、いつもの形のプラ容器が金色に輝き、いつもの中身を、特にカニ御飯の色を引き立てる。しかし催事場での人気は「越前ちゅんちゅんかにめし」が断然に上で、演出の認知度がいまいちだったかも。現地や他の駅弁大会で販売があったかは、分からない。
「越前かにめし」発売40周年を記念して、2007(平成19)年1月の京王百貨店の駅弁大会で500個×13日=6,500個、同時期の福井駅で3,500個が限定販売された陶製容器版。いつものプラ容器と同じ色の釜飯型陶器は、陶製のふたでもカニ型を再現。中身は通常版と同じはずだが、それを上回る風味とカニの分量を感じた。しかし催事場での人気は「越前ちゅんちゅんかにめし」が上で、演出がちょっとマニアックだったかも。
2000(平成12)年1月1日に発売。有名な「越前かにめし」と同じ形で色が少々異なるプラスティック製容器と紙袋の包装を使用、中身はカニ味噌で炊いた御飯の上にカニ身が載っている点までは共通だが、そのカニ身が焼いたカニ足と大粒のカニフレークに変わる。
その香りは抜群だが、最近のものはやや醤油辛いような気がする。電子レンジで容器のまま暖めて食べればもっと美味いという。冬季限定の駅弁だと思っていたらそうではなく、しかし「浜焼き」の接尾語が付いた冬バージョンがあるそうで、これが2004年度JR西日本「駅弁の達人」対象駅弁。上の写真がそうだが、通常版との違いは分からない。2014年頃までの販売か。
※2017年4月補訂:終売を追記コンビニ大手のファミリーマートが2006年1月24日から2月6日まで全国のチェーン店で販売した、福井駅弁の番匠が監修したカニ弁当。赤いプラ製トレーを貼った小さな楕円形の容器に茶飯を詰め、マヨネーズが似合いそうなニュルっとした風味のカニ肉を少々載せて、透明なふたをしてラップで包みボール紙の枠にはめる。調製は地域ごとのコンビニ取引先が手掛けた模様。
現地の駅弁の味を知る側から見ると不満を感じるが、内容も風味もいつものコンビニ弁当にないタイプの商品なので、様々な宣伝効果は出せたと思う。この商品の寿命はわずか14日間。年に何度かテレビで特集番組を見ると思うが、コンビニエンスストアは自社の発展と生き残りのために、定番品をまるで罪悪視するような非常に短いサイクルで次々に新商品を投入し、仁義なき戦いを続けているように見える。
入手状況から1994(平成6)年1月3日14時の調製と思われる、昔の福井駅弁の紙袋の一部。当時の写真から、包装や容器の構造に中身は上記の21世紀のものと変わらないようだが、紙袋に記す内容には違いがありそうだ。
1980(昭和55)年1月10日12時の調製と思われる、昔の福井駅弁の紙袋。底面の説明文には「牝の内臓をほぐして炊き込んだ混ぜ飯に雄の抜身を竝べ」とある。鶏肉と玉子、ニシンとカズノコなどの親子飯は駅弁にもあるが、これは実は夫婦飯であったことがうかがえる。現在もかにみそなどで炊いた御飯にカニの身をあしらう旨と中身を開設するが、雄牝の記載はない。