新宿駅から中央本線の特急列車で約2時間。北杜市(ほくとし)は山梨県の北西端を占める、人口約4万人の市。甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳や金峰山や茅ヶ岳に囲まれた高原に、農地が広がり、山や緑に観光客が来る。駅弁は大正時代から売られ、平成時代に売店へ「小淵沢駅の名物は駅弁です」と掲示するほどの名物となった。1894(明治27)年12月21日開業、山梨県北杜市小淵沢町。
1970(昭和45)年に発売。白いトレーをふたつ入れた薄いボール紙の容器には、八ヶ岳などの山々が描かれる。中身はプレーンな白御飯でトレーひとつ、スパゲティを敷いたチキンカツ3個にたっぷりレタスやミニトマト、山菜やコーンやリンゴでトレーもうひとつ。野菜山菜10種が詰められる、駅弁には稀な緑黄色たっぷりのお弁当。ふたを開けると草の香りが漂い、チキンカツもさっぱり感があり、中身に合っている。添付のソースとマスタードとドレッシングはお好みで。価格は2014年の購入時で950円、2017年時点で1,000円、2022年4月から1,100円。
※2022年4月補訂:値上げを追記小淵沢駅の名物駅弁「高原野菜とカツの弁当」の発売50周年を記念して、2020(令和2)年4月29日に予約限定で新発売。実演販売をする規模の駅弁催事では、予約せずに買える。専用の紙箱はおおむね、高原野菜とカツの弁当の色違いでできているため、その絵柄は令和時代の新商品とは思えないくらい、昭和の感じでできている。
中身もプレーンな白御飯に、スパゲティを敷いた鶏唐揚あるいは山賊焼ないし竜田揚、たっぷりレタスやミニトマト、山菜やコーンやリンゴで、高原野菜とカツの弁当のチキンカツを差し替えたつくり。原作が好きな人には買わずにいられない、そうでなければこの鶏肉を唐揚と呼ぶことに驚く駅弁。
2020(令和2)年1月14日に購入した、小淵沢駅弁のパッケージ。「高原野菜とカツの弁当」発売50周年を記念し、発売当時のパッケージを再現したという。最初はこんな絵柄だったのかと驚いた。中身は通常版と同じ。
2018(平成30)年1月10日に購入した、小淵沢駅弁のパッケージ。京王百貨店の駅弁大会で実演販売されたもの。「おかげさまで丸政創業100年」の記載のとおり、調製元の創業100年を記念したバージョン。意匠は変わらないが構造が変わり、ふたと本体が一体になっていた。
2005(平成17)年4月10日に購入した、小淵沢駅弁のパッケージ。この絵柄はおそらく、発売当時から変わらない。中身も同じ。過去には「チキンカツ使用」の文字がなかった。インターネット上の巨大掲示板「2ちゃんねる」で、この駅弁のカツがトンカツでないことを非難する投稿が頻繁に掲載されたことで、そんな補足が付いたのではないかと想像する。
2000(平成12)年4月10日の駅弁の日に、発売またはリニューアルか。駅弁業界で最近流行の竹皮製容器に、分かりやすく微笑ましい絵柄の掛紙を巻いて、プラ帯で留める。中身は梅+海苔、栗しめじおこわ、味噌焼のおにぎり、というより円形で平板の飯が1個ずつと、塩マスや鶏つくねやタケノコやレンコンに大学芋など。つまり、おにぎり弁当。
甲府駅でも販売があるようで、2005年3月11日付で甲府駅長おすすめの駅弁に選ばれているが、登山と結び付かない甲府よりも、客も列車も山登りのベースとする小淵沢でこそ、この名前と絵柄と中身がふさわしい。価格は2014年時点で950円、2017年時点で1,080円。
※2019年3月補訂:写真を更新2005(平成17)年9月4日に購入した、小淵沢駅弁の掛紙。竹皮編みの容器や中身や味は、上記の11年後と同じ。掛紙の絵柄は、まったくの別物。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2020(令和2)年秋の新商品か。郡山駅の「海苔のりべん」の、テレビ番組での大ブレイクで徐々に広がる海苔駅弁が、小淵沢駅にやってきた。駅弁の名前を書いた掛紙の色や柄は、まるで海苔。中身は白飯を海苔で覆い、鮭の西京焼、きんぴら、野沢菜、鶏照焼、漬物、煮玉子。体裁もちゃんと海苔弁している、その高級版ないし駅弁版。半年間で終売か。
※2022年4月補訂:終売を追記小淵沢駅の名物駅弁「高原野菜とカツの弁当」について、いつものパッケージの絵柄でオリジナルの缶の容器をこしらえて、2015(平成27)年1月の京王百貨店の駅弁大会で販売したもの。中身も味も上記の通常版と同じだが、容器代がかさむのだろう、価格は3倍以上もする。買いたい客が納得して買う記念商品。小淵沢駅でも「高原野菜とカツの弁当リミテッドエディション」の名で7月18日から8月31日まで、前日までの予約により販売したそうな。2015年のみの販売か。
※2020年6月補訂:終売を追記小淵沢駅の名物駅弁「高原野菜とカツの弁当」について、2014(平成26)年7月19日から8月31日まで2,000個を販売した特別版。名前に「Premium」を冠し、価格を当時で450円上げて、掛紙を金色にして、中身は見た目では同じ。食べても変わらなかった。地元の食材のみを使用したというが、地野菜とそうでない(?)野菜の味を見分けるのは困難だろうし、ブランド鶏「甲斐味鶏」を使うチキンカツも固めで臭く、通常版のほうがむしろジューシーだと思った。以後も毎夏の販売が続いた。2018年までの販売か。
※2020年6月補訂:終売を追記小淵沢駅の新駅舎の開業を記念して、2017(平成29)年7月3日に発売。JR東日本の駅弁催事では6月19日から先行販売。駅弁の名前と山を描いた掛紙は、そんな新しい駅弁を思わせない、昭和風のデザインだと思う。正八角形の容器に、白飯と古代米の赤飯を詰め、鶏照焼、ベニマス蒲焼、コーン天、野沢菜、玉子焼、山菜、漬物などで覆う。そんな中身も、まるで昭和の駅弁を復刻したような印象。年内に終売か。
小淵沢駅は、明治時代の開業当時の木造駅舎から、階段の地下道で線路をくぐって中央本線のホームに出て、階段の跨線橋で線路を越えて小海線のホームに出る、バリアフリーでない駅であった。そこで国と北杜市の補助金を使って、駅舎を移転新築し、跨線橋にエレベーターを増設し、バリアフリーの駅に生まれ変わった。駅舎の立ち食いそば店と土産物店も新駅舎に移転し、かつて駅前にあった観光案内所も組み込まれた。乗換客が詰まり、乗り換えたい列車においていかれる、狭い狭い跨線橋はそのまんま。
※2020年6月補訂:終売を追記小海線の開業90周年と全通70周年を記念して、2005(平成17)年5月21日に発売。八ヶ岳を背にしたヤマナシの樹木の写真の下に、小海線全駅の駅名と標高を記したボール紙製長方形の容器を、プラ帯で留める。中身は焼おにぎりと梅しそおにぎりと塩おにぎり、レタスやキュウリなどの生野菜、花豆天にソーセージにジャガイモにブルーベリー風味牛焼肉など。パッケージや駅弁の名前は「高原野菜とカツの弁当」に被るが、中身は別物。記念駅弁ということで、2005年内に売り止めた模様。
JR小海線は、1915年8月の佐久鉄道による小諸駅から中込駅までの開業に始まり、延伸や国有化を経て1935年1月に全通した。標高1375メートルの線内最高地点(野辺山・清里間)、標高1345.67メートルの野辺山駅は、いずれも普通鉄道では日本一の高さ。数字も車窓も小淵沢側は高原ムードたっぷり。しかし新型のディーゼルカーは窓が開かないので高原の風や空気を楽しめない。
※2015年2月補訂:終売を追記1999(平成11)年に発売された、主に甲府駅で売られる幕の内弁当。正六角形のボール紙製容器には、小淵沢を中心とした鉄道や道路や高速道路の路線図と周囲の山々が描かれるが、ここに甲府駅は入っていない。中身は日の丸御飯にマグロ照焼、玉子焼、鶏唐揚、牛肉野菜巻、肉団子、ニンジンやタケノコなどの煮物、カマボコ、しめじ和え、ミカンなど。
おしながきにすればいろいろ入っているが、御飯もおかずも見栄えと分量が貧弱で、千円の価格に見合わないのではと思った。駅弁が名物だと自信を持って名乗る小淵沢の駅弁はもっと元気なはずで、山梨の県都へも同じくらい力を入れてあげてもよいのに。2012年頃に売り止めた模様。
※2015年2月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2005(平成17)年秋の新商品か。ほぼ正方形の加熱機能付き容器を、山並みと松茸と商品名を描いたボール紙の枠にはめる。中身は餅米混じりの御飯の上を舞茸、しめじ、ごぼう、山菜で覆い、人参、栗、松茸、トリュフを少々添える。
キノコの種類を稼ぎ、パッケージのデザインに加えて松茸とトリュフを添付した、催事で映える駅弁に思えた。スーパーやデパートで小淵沢駅の駅弁として大々的に売られる一方で、公式サイトでの現地情報は「駅売店では、販売準備中のため、予約対象品です。」という疑義駅弁。この駅弁は現存しない模様。
※2015年2月補訂:終売を追記2013(平成25)年9月から11月まで実施する、公益社団法人やまなし観光推進機構とJR東日本八王子支社との観光キャンペーン「My Premium 山梨 空に、大地に。」の一環で、同年9月1日から11月30日まで小淵沢駅と甲府駅で販売。パッケージの英文から、ユネスコによる2013年6月の世界文化遺産への登録も意識していることが分かる。
ふたを開くと富士山が現れる。四角い容器を横に引き抜くと、4区画の中身は、フジザクラポーク豚めしと桜大根漬、甲斐サーモンの押寿司と甘酢生姜と巨峰寒天餅、鶏つくねときゃらぶきと煮物類、コロッケとスパゲティと玉子焼と鳴沢菜漬。富士よりもむしろ山梨で固めている。キャンペーン名をシールで後貼りし、駅名も調製元も駅弁マークもないパッケージは、駅弁以外での使用を視野に入れたものか。