新宿駅から中央本線の特急列車「あずさ」で約2時間40分。塩尻市は長野県の中部で松本盆地に位置する、人口約7万人の宿場町。ワインの生産や精密機械工業で知られるほか、空港があり幹線鉄道と高速道路が通る交通の要衝でもある。駅弁は1907(明治40)年からの調製元が屋号として残り、待合室とホーム上で駅弁が買える。1902(明治35)年12月15日開業、長野県塩尻市大門。
2014(平成26)年までに松本駅で発売か。2019年のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2019」にエントリー。市販の惣菜か仕出しの弁当向け容器に、中身をイラストで描いた掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。9区画の中身はそのイラストによると、山菜煮付け里いも玉ネギ豚バラの甘辛煮、赤板玉子焼き長芋の短冊揚げワサビ漬、揚げしゅうまい、コンニャクごぼう煮牛焼肉、山賊焼、あんかけ揚げ豆腐、豚ヒレカツソースがけ、味付けごはん野沢菜イタメ、山キノコと塩イカの甘酢漬物。御飯を1区画しか持たない、確かなおつまみ弁当。酒のつまみというよりはむしろ、飯のおかずになるようなものが、たくさん入っている。価格は2015年時点で850円、2022年時点で980円、2023年時点で1,200円。
2011(平成23)年の発売か。惣菜向けの平たく浅く赤いプラ容器を二段に重ね、おにぎりの形を描いた掛紙を巻く。中身は下段が梅干しおにぎりとタラコおにぎりと漬物、上段がおかずで、鶏唐揚、エビフライ、ウインナー、野菜とポテトのサラダ、かまぼこ、玉子焼、タケノコや肉団子などの煮物、昆布佃煮。幕の内駅弁っぽい感じも受ける、おにぎり弁当。価格は2016年時点で880円、2022年時点で980円、2023年時点で1,100円。
2006(平成18)年に塩尻駅などで発売か。竹皮編み風の容器に、駅弁の名前と山並みを書いた薄桃色の掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。容器の中で竹皮柄の紙に包まれた中身は、白飯の梅干しおにぎりと茶飯の山菜おにぎりが1個ずつと、タケノコやニンジンの煮物、マス塩焼、鶏肉、玉子焼、山菜煮付け、ポテトサラダときゅうりなどの生野菜、リンゴ1切れ、など。手作り感と駅弁感のある、食べ甲斐と山の風情もある、値段もお手頃なピクニックランチ。価格は2008年時点で840円、2015年時点で900円、2021年時点で1,000円、2023年時点で1,100円。
※2023年5月補訂:写真を更新し値上げを追記2008(平成20)年4月6日に購入した、塩尻駅弁の掛紙。上記の2023年のものと同じ。中身も同じ。当時は竹皮編み風でなく竹皮編みの容器だった。
1970年頃、昭和40年代の発売か。釜飯駅弁向けプラ容器に、味付け御飯を詰め、山菜、鶏肉、くり、うずら卵などで覆う。肉は少なく魚はなく、山菜や根菜で飯を進める、昔ながらの落ち着いた味で、今の時代にはおかずに困り物足りなく思われるかもしれない。昭和時代や1990年代までは、東北地方や中部地方のどこにでもあった山菜の駅弁は、今は珍しくなったと思う。価格は2003年時点で820円、2015年時点で860円、2021年時点で970円、2023年時点で980円。
※2023年6月補訂:写真を更新し値上げを追記2003(平成15)年2月15日に購入した、塩尻駅弁の掛紙。上記の2023年のものと、おおむね変わらない。変わったのは値段と調製元。この時は陶製の容器のプラ製のふたをしていたが、現地でなくスーパーの駅弁大会で買ったため、現地でも容器が陶製だったかは分からない。
1972(昭和47)年5月10日15時の調製と思われる、昔の塩尻駅弁の掛紙。中身はおそらく現在と変わらないだろう。
1982(昭和57)年12月25日に塩尻駅で発売。駅弁容器の中にワインのミニボトルを入れた駅弁は、東海道本線の神戸駅と中央本線の大月駅にもあるが、その元祖はこの駅弁。海老フライ・生野菜サラダ・鶏唐揚・サンドイッチ・ゼリーとともに場違いの感がある細巻き寿司が入っているが、常磐線原ノ町駅の「いなり天ざる」と同じく、駅弁の条件を満たすために御飯物を入れたと思われる。ワインは地元のワイン業者4社の赤・白・ロゼが交代制で入るそうな。価格は2003年時点で950円、2019年時点で1,000円、2021年時点で1,100円。購入には3個以上3日前までの予約が必要。
※2022年4月補訂:値上げを追記塩尻駅の幕の内駅弁。あるいは「アルプスの四季」に対してこちらは、主に松本駅で販売か。見るからに山の中らしい、日本アルプスの一部に林や紅葉と民家を描き、長野県歌「信濃の国」の歌詞を載せた、専用のボール紙箱を使う。黒いプラ製トレーに収めた中身は、日の丸御飯、焼鮭とかまぼこと玉子焼、鶏肉の味噌焼き、えび天ぷら、山きのこ甘酢、サトイモやタケノコなどの煮物、山菜とワインゼリーとわさび漬け。幕の内駅弁の基本に調製元の個性を載せた、上等幕の内駅弁。価格は2017年時点で880円、2021年時点で980円、2023年時点で1,100円。
※2023年6月補訂:写真を更新し値上げを追記2017(平成29)年10月15日に購入した、塩尻駅弁の紙箱。その絵柄も構造も、そして中身も、上記の2023年のものと同じ。調製元の名前が書き換えられるなどの小変化はある。
2003(平成15)年頃に松本駅で発売か。やや細身で小柄な長方形のプラ容器を収めるスリーブには、四季のイラストと、季節ごとの御飯の名前が記される。中身は3月から5月までの購入で、筍ご飯というよりはかやく飯と、焼鮭、かまぼこ、玉子焼、タケノコやニンジンなどの煮物、馬肉しぐれ煮、わさび漬けとワインゼリーなど。宣伝も自慢もないけれど、やや変わったものが入る、実は個性的な駅弁。6月から8月までは山菜ご飯、9月から11月まではきのこご飯、12月から2月までは栗ご飯となる。価格は2011年時点で630円、2015年時点で680円、2023年時点で780円。
※2023年6月補訂:終売を取り消し写真を更新2011(平成23)年6月19日に購入した、塩尻駅弁の掛紙。上記の2023年のスリーブと比べて、絵柄そのものはだいたい同じだが、縦横比が異なるほか、当時は四季全部でなくそのシーズンの御飯を記していた。内容もだいたい変わらない感じ。6月の購入で「山菜ご飯」のはずが、しそ御飯あるいはゆかりめしと呼ぶべきものが入っていた。
塩尻駅の幕の内駅弁。今回購入した際のレシートでの商品名も「幕の内弁当」だった。市販の仕出し弁当向けのボール紙製の容器に、アルプスには見えないけれど高原のような風景を描いた掛紙をかけ、ひもで十字にしばる。黒いプラ製トレーに収めた中身は、日の丸御飯、焼鮭にかまぼこに玉子焼、野沢菜とわさび漬け、ビーフカツ、こごみ胡麻和え、有頭海老に煮物、ワインゼリーなど。幕の内駅弁の構成に、肉や海老や山菜などで質を上げた、上等幕の内駅弁。価格は2008年時点で1,050円、2015年時点で1,080円。2023年時点で1,200円。
※2023年6月補訂:終売を取り消し写真を更新2008(平成20)年1月1日に購入した、塩尻駅弁の掛紙。その絵柄は、上記の2023年のものと同じ。中身も詰め方は異なるが内容は同じ。他の塩尻駅弁と異なり、値段もそれほど変わらない。
塩尻駅の駅弁屋のサンドイッチ。白いプラ製トレーにタマゴサンド2切れ、ツナサンド2切れ、ハムカツサンド1切れを詰めて透明なふたをかけた、容器も中身も普通の惣菜としてのサンドイッチに、食品表示ラベルを使わず調製元名称や食品表示を印刷した専用の掛紙を巻く。最近のコンビニの商品とは一線を画す、見た目に堅い性格のサンドイッチ。駅では売らない車内販売専用商品であるかもしれない。2019年3月の特急「あずさ」車内販売の廃止までには終売か。
※2023年5月補訂:終売を追記JR20周年の記念駅弁の塩尻駅版として、2007(平成19)年10月に東京駅の駅弁大会で発売か。ふたも本体もプラスティック製の釜飯容器に、おしぼりと香の物を載せて、ものぐさ太郎に関する物語と駅弁の名前などを書いた茶色い掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。
中身は2層構造。容器には普通に、御飯の上に桜麩(さくらぶ)や桜肉(馬肉)や糸こんにゃくや松茸や錦糸卵やネギなどを載せた丼が詰まり、その上にビニールシートをかけて海苔を敷き、白御飯とゴマと山菜を置く。
風味は上段も下段もクセがなく、構造的に食べにくくもなく、それでいて駅弁の名前や内容に演出が効いた個性の塊。地元の駅弁屋が駅で売る駅弁としての基本性能の高さを感じる。掛紙に書かれるとおり、塩尻駅の駅弁は最近、松本駅でも常に販売される模様。この駅弁は2009年頃までの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記1970年代に塩尻駅で発売か。ボール紙のパッケージにトレーを入れて、紙ひもでしばる。栗型の窪みに敷き詰められた鶏そぼろ付き栗御飯は、見た目では栗が1個ちょっとしか見えないものの、食べれば食べるほど中から栗が湧いてくる、甘みが強いことを除けばなかなかのもの。パッケージの絵には趣があるし、なんといってもこの内容でこの価格が嬉しい。2005年頃までの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記1972(昭和47)年に塩尻駅で発売。イワナの駅弁は、高崎駅と京都駅と、この塩尻駅にある。細長く敷いた酢飯に、岩魚と板昆布を載せて押し、竹皮に包んで四角い紙容器に入れる。いわなっ!と主張するパッケージがかわいらしい。おみやげにも向きそう。価格は2001年の購入時で740円、2015年時点で900円。2015(平成27)年までの販売か。
塩尻駅は、東京と名古屋を結ぶ中央本線が篠ノ井線を分ける駅であり、名古屋方面と篠ノ井線を結ぶ列車は進行方向を変える必要があった。1982(昭和57)年に駅が移転し、名古屋方面からも東京方面からも進行方向を変えずに走れるようになり、篠ノ井線が東京方面と名古屋方面の中央本線に分かれる配置となった。
※2019年8月補訂:終売を追記1970年代頃の調製と思われる、昔の塩尻駅弁の掛紙。この駅弁はその頃の、1972年までには発売か。どこでもありそうな日本の田舎の風景に、この地域にありそうな日本アルプスの山々、そして今でも長野県民の誰もが歌えるとされる県歌「信濃の国」の歌詞が描かれる。
第二次大戦前の調製と思われる、昔の塩尻駅弁の掛紙。塩尻からは見えないと思う富士山に、松竹梅や鶴を描く、明るく目出度い絵柄。「甲府運輸事務所管内構内立売賣營業者組合 塩尻駅 川上」の調製元表記がスタンプなので、複数の駅弁屋で使われた掛紙かもしれない。甲府運輸事務所とは、当時の鉄道省に置かれた国有鉄道の地方管理組織。
1930(昭和5)年8月6日6時の調製と思われる、昔の塩尻駅弁の掛紙。諏訪湖と富士と御野立所なる現在の塩嶺御野立公園と、白馬やツバクラやヤリやホタカの北アルプスの稜線を、強引に重ね合わせた感じ。下部の路線図のうち塩尻峠を経て下諏訪に至る道路かバスのルートは、後の1983(昭和58)年に鉄道がトンネルで通ることとなる。
おそらく1920年代、大正時代末期か昭和時代初期のものと思われる、昔の塩尻駅弁の掛紙。上記の1930年8月のものと、絵柄は同じで、右上の注意書きのみ異なる。こちらのほうが記述が少ない、ごみを腰掛の下に置くか持ち帰れ旨の内容がないので、上記の掛紙より少し古いものかもしれない。
1928(昭和3)年9月3日6時の調製と思われる、昔の塩尻駅弁の掛紙。この時代とこの大きさの駅弁掛紙でれば、風景や名所案内などあってもよく、実際に下記や上記の掛紙はそうなっているが、これは必要な事柄を文字と枠で記したのみで、素っ気ない。
1922(大正11)年の調製と思われる、昔の塩尻駅弁の掛紙。同年に上野公園で開催された平和記念東京博覧会で英国の皇太子殿下が来日されたことを記念して、全国各地の駅弁屋が同じデザインの記念掛紙を使用したもの。周囲に日本と英国の国旗を配し、右に駅弁の名前、左下に調製元、下部に日英の歓迎文、上部の2枠は広告枠。
1920(大正9)年5月16日11時の調製と思われる、昔の塩尻駅弁の掛紙。列車中より見たる日本北アルプスほたか岳と式内阿禮神社のイラストを描き、駅弁屋の主人が名所案内を格調高く語る。
おそらく1920年代、大正時代の調製と思われる、昔の塩尻駅弁の掛紙。下記の掛紙「御蕎麦饅頭」と同じもの。調製印の欄ができ、そこに2月21日と捺印される一方で、年の表記が省略され、後年に時期を特定できなくなってしまった。
1920(大正9)年5月16日の調製と思われる、昔の塩尻駅弁の掛紙。「御蕎麦饅頭」なので、生地か餡にそば粉かソバの実を入れたまんじゅうか。調製元は塩尻駅の駅弁屋。
1910年前後、明治40年代前後のものと思われる、昔の松本駅弁の掛紙。収集者は1908(明治41)年のものとした。明治天皇御野立地塩尻嶺と式内阿礼神社のイラストを描き、箇条書きでなく文章で名所案内を記す。調製元の洗纓軒川上は、かつて中山道塩尻宿の脇本陣であり、1907(明治40)年4月に塩尻駅の構内営業者となり、今も塩尻駅で駅弁を売るカワカミのことだろう。