東京駅から特急列車「踊り子」で約2時間。伊豆市は2004(平成16)年の4町合併でできた人口約3万人の市で、修善寺は文豪が愛した古くからの温泉町。駅弁は1990年代かそれ以前から売られていたようだが、2000年代にその存在が知られるようになり、今では「あじ寿司」が人気。1924(大正13)年8月1日開業、静岡県伊豆市柏久保。
1999(平成11)年に発売。黒く小さく底が深い専用のボール紙製容器に、駅弁の名前や宣伝文句を記した小さな掛紙を巻く。中身は、限りなく白御飯に近い感じの酢が薄い酢飯の上に、限りなく刺身に近い感じの酢が薄い鯵の酢締めをたっぷり折り重ねて、松崎特産の桜葉塩漬けにレモンスライスを添えるもの。胡麻や生姜や青ジソや醤油やワサビの風味も一切れ毎に楽しむことができる、噂どおりの絶品。
2000年代には販売数量は一日10個限定とされ、海が荒れるなどして当日朝の鯵の入荷がないと作られないという希少価値が過去に売り文句として週刊誌に掲載されたが、最近はもっとたくさん作っている模様。価格は発売時で900円、2008年2月から1,000円、2009年8月から1,100円、購入時で1,200円、2015年時点で1,100円、2016年時点で1,188円、2019年10月から1,296円、2022年時点で1,300円、2023年時点で1,500円。
修善寺は、東京からの直通特急が発着する、西伊豆観光の玄関口のひとつ。国鉄〜JRの駅でないこともあり、著名な駅弁専門家でも駅弁の存在を知らなかったという無名で地味な駅弁販売駅であったが、この駅弁が雑誌に取り上げられるようになり、下記のように2009年1月には京王百貨店の駅弁大会での実演販売も実施され、その知名度を広めている。
※2024年9月補訂:値上げを追記2009(平成21)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売された修善寺駅弁の掛紙。黒いボール紙製容器にこのような掛紙が巻かれるようになり、駅弁の名前が「舞寿しのあじ寿司」に変わった。中身は上記の2012年時点のものと同じ。
ここでのアジの味は残念ながらというか、やはりというか、固めでプリッとした食感がない固めで骨混じりのもので、大量製造の弊害が出て現地版には及ばなかった。それでも修善寺に駅弁あり、と大いにアピールできたのではないだろうか。
2003(平成15)年7月21日に購入した、修善寺駅弁のふた。当時は掛紙が使われておらず、駅弁の名前もシンプルに「あじ寿司」であり、駅弁売店は土産物店の入口の片隅のとても小さな箱であった。中身は2012年時点のものと同じ。
2009(平成21)年9月5日に修善寺駅で発売。修善寺駅の名物駅弁「武士のあじ寿司」と同じアジと酢飯を使い、大葉と生姜を合わせて細めに巻いて、深めにカットして6切れを容器に詰める。見栄えは写真でも現物でも「あじ寿司」のほうが良いと思うが、アジと味のレベルは同じで、食べやすさは断然にこちらだと思う。価格は2012年時点で1,200円、2015年時点で1,100円、2016年時点で1,188円、2019年10月から1,296円、2022年時点で1,300円、2023年時点で1,600円。
※2024年9月補訂:値上げを追記2012(平成24)年9月21日に購入した、修善寺駅弁の掛紙。絵柄は上記の2022年のものと、まったく同じ。中身も同じ。修善寺駅の駅弁屋は、駅弁屋を指す業界用語「調製元(ちょうせいもと)」のかわりに「調整元」を使う。
静岡県伊豆半島内の4町合併に伴う伊豆市(いずし)の発足を記念し、2004(平成16)年4月29日に発売。だから駅弁の名前は「い寿司」で「いずし」であり、わさび色の掛紙にも「伊豆市だからい寿司!」と書いてある。
小柄で四角い折箱に、笹の葉を2枚敷き、わさびの茎と胡麻を混ぜた酢飯を詰めて、アジ、エビ、椎茸、にんじん、炒り卵、おぼろの順で覆い、きぬさや、しょうが、醤油を添える。押寿司タイプの駅弁にない柔らかさを持ち、雑多に見えて整った風味は、具の調理に加えて組合せにも優れるのではないかと思う。価格は2011年時点で1,100円、2016年時点で1,188円、2022年時点で1,200円、2023年時点で1,500円。
※2024年9月補訂:値上げを追記上記の駅弁「い寿司」の、2008(平成20)年時点での姿。2022年時点の姿と、よく見比べないと分からないくらい変わらない。
伊豆は伊豆半島一帯の旧国名で、明治時代に駿河や遠江(とおとうみ)と合わせて静岡県の一部となってからも、神奈川とも静岡とも、関東地方とも中部地方とも付かないひとつの地域をなしている。いわゆる平成の大合併において修善寺・土肥・天城湯ヶ島・中伊豆の4町で合併話がまとまった際に、伊豆半島の1/4強のエリアを占めるだけなのに新市名「伊豆市」の採用を強行、他の市町からの反感を買った。これに対抗してか、翌2005年に伊豆市の北側で伊豆長岡・大仁・韮山の3町が合併した際には新市名を「伊豆の国市」と命名、よそ者には紛らわしい状態が発生した。
※2022年5月補訂:新版の収蔵で解説文を整理修善寺駅の駅弁売店で買えた惣菜。シイタケや鶏肉などの五目飯を丸く固めて焼いた焼きおにぎり2個とたくあん2切れを、惣菜向けの透明プラ容器に詰める。駅弁のようには見えないけれど、駅弁と意識されることはないと思うけれど、味と香りに優れ、形もきれいで美しく、良い軽食。駅弁売店のつくりも、都会の和菓子屋さんのような美しさ。
2010(平成22)年3月15日の発売。前日23時に放送されたテレビ朝日の番組「地球号食堂」の、駅弁プロジェクトで生まれた新作駅弁。同番組によると、伊豆の特産「ワサビ」と、知る人ぞ知る伊豆の地鳥「天城シャモ」を使い、伊豆修善寺の有名駅弁屋「舞寿し」の主人が、新しい駅弁を作り出したのだという。修善寺駅弁の主役はあじ寿司だが、最近は地元の駿河湾産の地アジがなかなか獲れず困っているとも紹介されたらしい。
竹皮編みの容器に半透明のトレーを詰めて、店主が描いたという鶏とワサビと商品名の掛紙をかける。中身は鶏ガラスープで炊いたワサビ飯を、焼き鶏と炒り卵で覆い、野菜の煮物とシイタケと、ワサビ茎を添える。食材はいずれも、地元のものだという。ワサビの香りで味わう、美しい鶏丼。まずは2010年3月22日まで一日20個を販売、以後は土日曜日に販売。価格は2010年の発売時で1,300円、2014年の購入時で1,400円、2016年時点で1,512円、2022年時点で1,500円、2023年時点で1,800円。
※2024年9月補訂:値上げを追記下記の駅弁「椎茸弁当」をリニューアル。四角い容器に、シイタケの戻し汁で炊いた五目飯を詰め、シイタケを6個程度転がし、炒り卵で彩り、タケノコなどを添える。家庭料理かお惣菜のような、シイタケの炊込飯の味。価格は2014年の購入時で900円、2016年時点で972円、2022年時点で1,000円、2023年時点で1,300円。
※2024年9月補訂:値上げを追記嵩(かさ)のある正方形の樹脂容器をすっぽりと掛紙で覆いビニールひもでしばる、駅売店で見れば一目で駅弁と認識できるパッケージ。中身は混ぜ御飯の上に椎茸とわらび・ぜんまい・姫竹等の山菜などを載せるものだが、肝心の椎茸は小粒で量が少なく、最も多い具は錦糸卵である。それでも味は良く、少量であることもありすいすいと食が進む。価格は購入時で700円、2008年2月から750円、2015年時点でシイタケを増やした「武士の椎茸弁当」900円へリニューアル。
※2015年10月補訂:値上げを追記2006(平成18)年か、それ以前の発売か。ここの人気駅弁「あじ寿司」と、形が同じで絵柄が異なる箱と掛紙を使う。中身は駅弁の名前のとおり、酢飯の上にサーモン、ゆでエビ、カニかまぼこ、イクラ、シイタケ、タケノコ、玉子そぼろなどを散らす、ちらしずし。これもまた、きれいな見た目と味。価格は2011年時点で1,000円、2016年時点で1,080円、2019年10月から1,188円、2022年時点で1,300円。2022年で終売か。
※2023年4月補訂:終売を追記名前は立派だが、つまり助六。中身はいなりずし3個と、カンピョウの細巻き8個のみ。特徴は皆無だが、調製元が寿司屋ということで、味の基本性能は高い、特に酢飯の風味に優れていると感じた。価格は2011年時点で600円、2016年時点で648円。2020年頃に終売か。
※2022年4月補訂:終売を追記上記の駅弁「武士(たけし)の助六弁当」の、2003(平成15)年時点での姿。中身は同じで、容器がビニール製っぽく、名前は「月見助六」だった。これの何が「月見」なのかは不明。価格は購入時で500円、2008年2月から600円。2009年に「武士(たけし)の助六弁当」へ改称か。
※2017年3月補訂:新版の収蔵による紹介文の整理2009(平成21)年9月の発売か。中身はシンプルに、いなりずしが6個とわさび漬。ワサビとワサビ田のイメージでデザインされたと思う掛紙も、またシンプル。具の酢飯には天城の本ワサビと調製元自家製のワサビ茎が混ぜられており、ワサビの香りがおだやかに漂う。価格は2011年時点で650円、2016年時点で702円。4個入りの商品もあった模様。2020年頃に終売か。
※2022年4月補訂:終売を追記修善寺駅の駅弁屋さんのサンドイッチ。掛紙をかけた紙箱に、レタスを挟んだハムサンドとレタスを挟んだ玉子サンドを3切れずつ、まとめてラップに包んで入れる。
この包装のため具の水分がパンを均一に湿らせる上に開けにくく、具や分量の割に割高で、添加物の有無は不詳だがそれを除けばコンビニのサンドイッチのほうが美味いと感じる。包装の工夫だけで味が向上するのではとも感じる。現在はサンドイッチの販売はない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記