東京駅から特急列車で約2時間半。下田市は静岡県の東部で伊豆半島の南東に位置する、人口約2万人の港町。幕末から昭和まで、風待ち港や開港場や造船や漁港と港で栄えたが、商工業が衰退した今では黒船来航と海産物や温泉などの観光に生きる。駅弁は改札外駅舎内の売店で販売。1961(昭和36)年12月10日開業、静岡県下田市東本郷。
東京駅から特急列車で約2時間。大室山から相模灘に至る八幡野や先原の緩斜面に広がった樹林は、1961年の鉄道の開通で伊豆高原や大室高原の名前で別荘地として開発された。最寄り駅の名前は伊豆高原になり、駅は商業施設になり、今も駅を一歩出ると別荘販売の案内所に出会う。駅弁は伊豆急下田駅と同じものが、商業施設内で買える。1961(昭和36)年12月10日開業、静岡県伊東市八幡野。
伊豆急下田駅ほか伊豆急行線の主要駅で売られる幕の内駅弁。市販の仕出し弁当向けの紙箱を覆う掛紙には、JR伊東線熱海駅からの鉄道路線図と、2011年から2016年までの伊豆急行2100系電車の先頭車3両の車体色と、伊豆半島から見える風景の数々を地図状に切り抜いた写真を描く。これをひもで十字にしばり、駅弁の雰囲気を増した。
中身は白飯と梅干の日の丸御飯に大根桜漬を添え、焼サバ、玉子焼、肉団子、ひれかつ、しいたけとにんじんとふきの煮物、ひじき。かまぼこが入らない点を除き、実に標準的な幕の内駅弁という中身で、この姿が今に残るのは貴重だと思うし、観光地の駅において伊豆を感じない中身で現役を張ることも興味深い。
2017(平成29)年の発売か。日の丸御飯に鶏唐揚、ウインナー、ポテトフライ、ポテトサラダ、たくあんという、普通の惣菜弁当。容器も市販の弁当箱で、あるいは掛紙も市販品か。味は意外に悪くなく、伊豆の地でこんなに海や港や歴史や温泉と無縁な駅弁があるのかと、観光地の主要駅でもこんなホカ弁タイプで駅弁らしくない商品の需要があるのかと、驚きの反応をもって好意的に受け止められている気がする。価格は2017年時点で700円、2024年時点で820円。
※2025年1月補訂:値上げを追記2010(平成22)年までには販売されていた模様。調製元は下田市内の宅配仕出し屋さん。伊豆急行の駅弁売店で、伊豆急やその子会社の調製でない弁当を見たのは初めて。市販の惣菜弁当向け紙箱の中身は、日の丸御飯、ヒレカツ3個、スパゲティ、ポテトサラダ、たくあん。
こんな惣菜弁当が、東伊豆や下田の駅弁と思うと悲しくなる。一方で、単に弁当が必要な人には向くし、この手の弁当にありがちな常温での臭みや固さはない。伊豆急下田駅やその周囲には、すぐ歩ける範囲で自動車交通におびえることなく行けるホカ弁やコンビニが無いため、そんな用途にぴったり。価格は2010年時点で900円、2016年時点で930円。
その名のとおり、あぶりさんまの棒寿司。商品名のみを記して食品表示ラベルを貼り付けたモノクロ印刷の掛紙を巻く、惣菜向けプラ容器にラップと笹の葉を敷き、白胡麻を混ぜた酢飯にサンマの開きの炙りを載せた棒寿司を1本横たえ、6切れにカットして包む。味や香りはとくにない。伊豆にはもっとうまい海の幸や駅弁があるし、サンマを使うにしても棒寿司では身の厚さや酢加減で他の魚より不利になるから、素直に塩焼きにしてしまうほうがうまいと思った。価格は2008年時点で500円、2014年4月の消費税率改定で520円、2016年時点で570円、2017年時点で620円、2019年時点で700円、2024年時点で880円、12月時点で960円。
上記の駅弁「あぶりさんまの棒寿司」の、2013(平成25)年時点での姿。上記の2024年のものと変わらない。異なるのは食品表示ラベルの書式と、そこに書かれた調製元。
上記の駅弁「あぶりさんまの棒寿司」の、2008(平成20)年時点での姿。駅弁大会で購入。内容は上記の2013年や2024年のものと変わらない。この時は竹皮に包んでいた。調製元は上記いずれのものとも異なる。
大船駅や小田原駅の駅弁と同じタイプのアジ寿司駅弁。鯵寿司が8個と、緑と赤のしそ巻きが1個ずつ入る。伊豆急公式サイト等によると「伊豆近海産の素材新鮮な真アジを軽く酢締めにした握りずし」がうたい文句。身をすりつぶして握り固めたようなざらつきのある魚の身は、個性や特徴なのかどうか。価格は2003年時点で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円、2019年時点で1,130円、2024年時点で1,180円、12月時点で1,260円。
1961(昭和36)年に全線が一気に開業した伊豆急行線。過去には親会社の東急から通勤電車を借りてくるほど大勢の利用者で賑わった。自社の電車はすべて新造で、1985年の新型電車「リゾート21」は、展望席や海側に向いた座席を備える、豪華で革新的な普通列車用車両と絶賛された。しかしその後は道路整備の進展や伊豆観光の魅力低下などで利用が低迷、度重なる災害にも悩まされ、会社は債務超過に陥り、2004年には東急の完全子会社となる。新車の購入は1993年が最後となり、以後はJRや東急が使い古して老朽廃車したような電車を使うようになった。2024年時点でリゾート21が事実上2本だけ残り、乗り合わせた観光客を引き続き感心させている。
※2025年1月補訂:写真を更新し値上げを追記上記の駅弁「あじずし」の、2003(平成15)年時点での姿。上記の2024年のものと比べて、中身は変わらず、掛紙も同じ。当時はアジの量が、写真のように倍半分ほどは違わなくても、3割は多かったかもしれない。当時に感じなかった淡泊な印象は、そこでの違いか。
伊豆高原駅の駅弁売り場で買えたお惣菜。コンビニにあるような小さな加熱什器での販売。鉄道を使うと東伊豆や伊豆急行線は関東地方の延長という印象なので、静岡県三島のみしまコロッケがなぜここにあるのか不思議に思ったが、伊豆は静岡県で、静岡県の地域区分では富士川より東側を「東部」、あるいは三島市まで伊豆に含むため、違和感を覚えるものではなかった。温かいばれいしょのコロッケをひとつ、専用の紙袋に詰める。食べれば普通のコロッケ。衣はちゃんと、さっくさく。調製元は伊豆高原駅で買える伊豆急下田駅の駅弁屋と同じ会社であるが、駅弁とも伊豆高原駅で駅弁を売る店舗とも異なる、伊豆高原駅の商業施設にあるパン屋さんの名前になっていた。
2010(平成22)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売を行うために発売か。長方形の容器に半透明のシートをかけて、商品名やイセエビの写真を印刷したボール紙でぐるっと巻いて、ゴムで留める。中身は茶飯の上を焼き海苔とキンメダイのそぼろとひじきで覆ってキンメダイの西京焼を載せた御飯と、イセエビの半身がひとつと、ワサビ三杯漬。
商品名からも中身の見栄えからもイセエビに目が行くところであるが、伊豆急下田駅弁のうまくて個性的な点は、あくまでも海苔であると思うし、この駅弁でも薫りを出している。イセエビも良い味を出しているけれど、キンメダイもうまく料理されているし、ひじきもみずみずしく、イセエビ以外の箇所にも注目すべき伊豆の鉄道の味。2013年時点で販売されていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記京王百貨店駅弁大会のために、2010(平成22)年1月に発売か。「伊勢海老」と書いた正方形のボール紙製容器を和紙風な風呂敷で包む。中身は塩ゆでされたイセエビがまるごと1尾に、キンメダイ押寿司3個、サザエの俵飯3個、サザエつぼ焼1個、キンメダイ焼き1枚など。現地では前日の16時までに予約が必要で、京王百貨店の駅弁大会でもたしか1〜2週間前までの事前予約が必要であった。
下記の駅弁「伊豆づくし」の豪華版という印象。イセエビは見た目でこそ本当に豪華だが、実際問題として殻付きから食べる際にはトゲに難儀するので、味よりもむしろ見た目で豪華さを楽しむ駅弁ではないかと思うし、売り上げよりも話題性を重視した商品であろう。ただ、サザエもキンメダイも既存の駅弁で定評があるし、イセエビも含めて食べてうまい弁当でもある。
2013年時点で販売されていない模様。2011年3月の東日本大震災を境に、伊豆急行線の駅弁の種類は大幅に減少したように見える。
※2013年5月補訂:終売を追記円形の経木枠の容器にボール紙のふたをかけて、紙ひもでしばり割りばしを挟む。中身は容器に直接詰めた炊込飯の上に、刻みサザエ、さやいんげん、ひじきを載せて、殻ごとまるごと1個のサザエを添える。たっぷりの大根漬物も添付。
ほのかな磯の香りと柔らかな食感が心地良い、良い観光地としての伊豆らしさが満点の駅弁。ただし、世間に出回る見本写真と比較して、どう見ても具が半分しか入ってない感じで、悪い観光地としての伊豆らしさも満点である。2013年時点で販売されていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記JTB時刻表創刊80周年を記念して、2006(平成18)年2月16日に発売。プラ製トレーとボール紙箱の市販惣菜容器に、JTB時刻表の創刊号表紙をデザインした掛紙をかけて、紙ひもでしばる。中身は南伊豆産のゆで伊勢海老を半身まるごと詰めてサザエ1個などを添え、アジの押寿司、金目鯛の押寿司、ひじきの俵飯、桜の塩漬けを載せた俵飯、桜の葉で巻いた俵飯を御飯として入れる。
弁当や車内食として見れば、容器が場所を取るし、殻だらけの海老に難儀するし、中身の統一感もいまいち。しかし話題づくりと雰囲気づくりの点では素晴らしいし、各地で紹介されたり現地で売り切れたりの実績も上がっている。伊勢海老の漁期の都合で、6月から9月までは販売を休止。2013年時点で販売されていない模様。
日本の本格的月刊時刻表の始まりは、漢数字で全国の汽車や汽船の時刻を収録した、1894(明治27)年10月創刊の庚寅新誌社「汽車汽船旅行案内」。鉄道省の業務用時刻表の市販版として日本旅行文化協会が1925(大正14)4月に創刊した、現在のJTB時刻表の前身である「汽車時間表」が採用したアラビア数字の時刻表記は、当初は戸惑いもあっただろうが、戦後の市販時刻表はほぼすべてがこの形式になっている。
※2013年5月補訂:終売を追記2004(平成16)年に発売したそうで、駅弁の名前から判断して下田港開港150周年である2004年限定の駅弁と思われる。黒船やペリー提督などが描かれる掛紙は、下田黒船弁当の「下田」の文字を「開港150周年」のシールで隠して使用、これを正方形ボール紙の高級折詰容器にかける。中身はわさび茎飯とひじき飯と二種の御飯に、さざえ壷焼をひとつ詰めて、金目鯛マリネ、桜海老等のかき揚げ、珍しく丸まったエビフライ、薩摩揚やいわしのはんぺんなど。
中身は伊豆の特産品で固められているようでもあり、黒船やペリーとの関連はよく分からず、おそらく次回に購入すると中身はガラリと入れ替わっているかもしれない。濃い味付けは駅弁らしく、出来立てでない状態でやや落ちる感じの味は駅弁らしくないと思う。この駅弁は現存しない模様。
※2014年12月補訂:終売を追記竹籠印刷のボール紙容器にモノクロな掛紙をセロテープで止める。中身は梅干等が入った海苔たっぷりの握り飯が3個、鯵の干物が1匹と、煮物とゆで卵。磯の香りがほのかに漂う。但し、中身はいつでもこれではない模様。この駅弁はおそらく現存していないと思う。
※2014年12月補訂:終売を追記東京駅から特急列車で約2時間半。河津町は伊豆半島の南東部で太平洋の相模灘に面する、人口約6千人の町。天城峠から相模灘へ流れる河津川に沿い、温泉地やバス路線があるほか、昭和時代に河津桜が発見され植樹が進み、2月には100万人近い観光客が訪れた。駅弁は伊豆急下田駅と同じものが売店に入荷。ただし2024年時点で販売休止中。1961(昭和36)年12月10日開業、静岡県賀茂郡河津町浜。