東京駅から特急列車で約2時間半。下田市は静岡県の東部で伊豆半島の南東に位置する、人口約2万人の港町。幕末から昭和まで、風待ち港や開港場や造船や漁港と港で栄えたが、商工業が衰退した今では黒船来航と海産物や温泉などの観光に生きる。駅弁は改札外駅舎内の売店で販売。1961(昭和36)年12月10日開業、静岡県下田市東本郷。
2017(平成29)年の発売か。日の丸御飯に鶏唐揚、ウインナー、ポテトフライ、ポテトサラダ、たくあんという、普通の惣菜弁当。容器も市販の弁当箱で、あるいは掛紙も市販品か。味は意外に悪くなく、伊豆の地でこんなに海や港や歴史や温泉と無縁な駅弁があるのかと、観光地の主要駅でもこんなホカ弁タイプで駅弁らしくない商品の需要があるのかと、驚きの反応をもって好意的に受け止められている気がする。
2013(平成25)年までに登場していた模様。調製元は下田市内の宅配仕出し屋さん。伊豆急行の駅弁売店で、伊豆急やその子会社の調製でない弁当を見たのは初めて。市販の惣菜弁当向け紙箱の中身は、日の丸御飯、ヒレカツ3個、スパゲティ、ポテトサラダ、たくあん。
こんな惣菜弁当が、東伊豆や下田の駅弁と思うと悲しくなる。一方で、単に弁当が必要な人には向くし、この手の弁当にありがちな常温での臭みや固さはない。伊豆急下田駅やその周囲には、すぐ歩ける範囲で自動車交通におびえることなく行けるホカ弁やコンビニが無いため、そんな用途にぴったり。
棒寿司1本を笹の葉に包んでラップを軽く巻き、竹皮に包んで輪ゴムで留めて、掛紙を巻いてセロテープで留める。中身は駅弁の名前どおりの、あぶったサンマの棒寿司。その品質や風味は残念ながら購入時でワンコインの価格相応な印象。伊豆にはもっとうまい海の幸や駅弁があるし、サンマを使うにしても棒寿司では身の厚さや酢加減で他の魚より不利になるから、素直に塩焼きにしてしまうほうがうまいと思う。価格は2008年の購入時で500円、2019年時点で700円。
※2019年8月補訂:値上げを追記上記の駅弁「あぶりさんまの棒寿司」の、2013(平成25)年時点かつ現地での姿。伊豆高原駅での購入であるが、伊豆急行線の駅弁はどの駅で買っても同じである。竹皮の包装が、こちらではプラ製容器となっていたが、それ以外は同じである。500円の駅弁など、そうあるものではない。価格は2014年4月の消費税率改定で520円、2019年時点で700円。
※2019年8月補訂:値上げを追記大船駅や小田原駅の駅弁と同じタイプのアジ寿司駅弁。鯵寿司が8個と、緑と赤のしそ巻きが1個ずつ入る。伊豆急公式サイト等によると「伊豆近海産の素材新鮮な真アジを軽く酢締めにした握りずし」が謳い文句だが、私が購入したものは身をすりつぶして握り固めたようなざらつきのある魚の身が、形状も食感も失望する酢飯の上に雑に配置される、がっかり駅弁だった。一方で絶賛する声もあるため、閉店前半額処分品を購入したため味の劣化が進んだものと理解しておく。価格は2003年の購入時の定価で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円、2019年時点で1,130円。
1961(昭和36)年に全線が一気に開業した伊豆急行線は、過去には親会社の東急から通勤電車を借りてくるほど大勢の利用者で賑わい、1985(昭和60)年登場の新型車両「リゾート21」は、展望席や海側に向いた座席を備える豪華で革新的な普通列車用車両と絶賛された。しかしその後は道路整備の進展や伊豆観光の魅力低下などで利用が低迷、開業当初からの度重なる災害にも悩まされて会社は債務超過に陥り、JRの老朽電車を塗り替えて使用するような状況に追い込まれた。
※2019年8月補訂:値上げを追記2010(平成22)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売を行うために発売か。長方形の容器に半透明のシートをかけて、商品名やイセエビの写真を印刷したボール紙でぐるっと巻いて、ゴムで留める。中身は茶飯の上を焼き海苔とキンメダイのそぼろとひじきで覆ってキンメダイの西京焼を載せた御飯と、イセエビの半身がひとつと、ワサビ三杯漬。
商品名からも中身の見栄えからもイセエビに目が行くところであるが、伊豆急下田駅弁のうまくて個性的な点は、あくまでも海苔であると思うし、この駅弁でも薫りを出している。イセエビも良い味を出しているけれど、キンメダイもうまく料理されているし、ひじきもみずみずしく、イセエビ以外の箇所にも注目すべき伊豆の鉄道の味。2013年時点で販売されていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記京王百貨店駅弁大会のために、2010(平成22)年1月に発売か。「伊勢海老」と書いた正方形のボール紙製容器を和紙風な風呂敷で包む。中身は塩ゆでされたイセエビがまるごと1尾に、キンメダイ押寿司3個、サザエの俵飯3個、サザエつぼ焼1個、キンメダイ焼き1枚など。現地では前日の16時までに予約が必要で、京王百貨店の駅弁大会でもたしか1〜2週間前までの事前予約が必要であった。
下記の駅弁「伊豆づくし」の豪華版という印象。イセエビは見た目でこそ本当に豪華だが、実際問題として殻付きから食べる際にはトゲに難儀するので、味よりもむしろ見た目で豪華さを楽しむ駅弁ではないかと思うし、売り上げよりも話題性を重視した商品であろう。ただ、サザエもキンメダイも既存の駅弁で定評があるし、イセエビも含めて食べてうまい弁当でもある。
2013年時点で販売されていない模様。東日本大震災を境に、伊豆急行線の駅弁の種類は大幅に減少したように見える。
※2013年5月補訂:終売を追記円形の経木枠の容器にボール紙のふたをかけて、紙ひもでしばり割りばしを挟む。中身は容器に直接詰めた炊込飯の上に、刻みサザエ、さやいんげん、ひじきを載せて、殻ごとまるごと1個のサザエを添える。たっぷりの大根漬物も添付。
ほのかな磯の香りと柔らかな食感が心地良い、良い観光地としての伊豆らしさが満点の駅弁。ただし、世間に出回る見本写真と比較して、どう見ても具が半分しか入ってない感じで、悪い観光地としての伊豆らしさも満点である。2013年時点で販売されていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記JTB時刻表創刊80周年を記念して、2006(平成18)年2月16日に発売。プラ製トレーとボール紙箱の市販惣菜容器に、JTB時刻表の創刊号表紙をデザインした掛紙をかけて、紙ひもでしばる。中身は南伊豆産のゆで伊勢海老を半身まるごと詰めてサザエ1個などを添え、アジの押寿司、金目鯛の押寿司、ひじきの俵飯、桜の塩漬けを載せた俵飯、桜の葉で巻いた俵飯を御飯として入れる。
弁当や車内食として見れば、容器が場所を取るし、殻だらけの海老に難儀するし、中身の統一感もいまいち。しかし話題づくりと雰囲気づくりの点では素晴らしいし、各地で紹介されたり現地で売り切れたりの実績も上がっている。伊勢海老の漁期の都合で、6月から9月までは販売を休止。
日本の本格的月刊時刻表の始まりは、漢数字で全国の汽車や汽船の時刻を収録した、1894(明治27)年10月創刊の庚寅新誌社「汽車汽船旅行案内」。鉄道省の業務用時刻表の市販版として日本旅行文化協会が1925(大正14)4月に創刊した、現在のJTB時刻表の前身である「汽車時間表」が採用したアラビア数字の時刻表記は、当初は戸惑いもあっただろうが、戦後の市販時刻表はほぼすべてがこの形式になっている。2013年時点で販売されていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記2004(平成16)年に発売したそうで、駅弁の名前から判断して下田港開港150周年である2004年限定の駅弁と思われる。黒船やペリー提督などが描かれる掛紙は、下田黒船弁当の「下田」の文字を「開港150周年」のシールで隠して使用、これを正方形ボール紙の高級折詰容器にかける。中身はわさび茎飯とひじき飯と二種の御飯に、さざえ壷焼をひとつ詰めて、金目鯛マリネ、桜海老等のかき揚げ、珍しく丸まったエビフライ、薩摩揚やいわしのはんぺんなど。
中身は伊豆の特産品で固められているようでもあり、黒船やペリーとの関連はよく分からず、おそらく次回に購入すると中身はガラリと入れ替わっているかもしれない。濃い味付けは駅弁らしく、出来立てでない状態でやや落ちる感じの味は駅弁らしくないと思う。この駅弁は現存しない模様。
※2014年12月補訂:終売を追記竹籠印刷のボール紙容器にモノクロな掛紙をセロテープで止める。中身は梅干等が入った海苔たっぷりの握り飯が3個、鯵の干物が1匹と、煮物とゆで卵。磯の香りがほのかに漂う。但し、中身はいつでもこれではない模様。この駅弁はおそらく現存していないと思う。
下田に限らず伊豆半島の主要駅ではなぜか、バスやタクシーの運転手が駅前でたむろしている光景がよく目に付き、あまり心地良いものではない。どんな目的があるのかは不明。
※2014年12月補訂:終売を追記