東京駅から新幹線で約1時間40分。名古屋市は愛知県の西部で伊勢湾に面する、人口約230万人の城下町。日本国内第三の大都市圏として、製造業や商業で大いに栄える。駅弁は改札外コンコースや新幹線改札内で3社約50種が積まれ、地元や近隣の弁当なども加えて、こちらも大いに栄える。1886(明治19)年3月1日開業、愛知県名古屋市中村区名駅1丁目。
東海道新幹線の開業15周年を記念して、1979(昭和54)年に発売。上等の幕の内駅弁「特製幕の内ひかり」と、この並等の幕の内駅弁「幕の内こだま」が、同時に発売された。昭和時代の幕の内駅弁らしい形と大きさの容器にかけたふたには、名古屋城の大天守、エビフライに見える金鯱、東海道新幹線こだま号車両のイメージイラストを載せる。中身は俵型の白飯に、サバ照焼、かまぼこ、玉子巻、チキンカツ、ミートボール、ごぼう煮、昆布巻、うぐいす豆、福神漬。
駅弁の幕の内弁当として標準的な内容を、確かな品質に優れた見栄えと比較的廉価で提供する、駅弁の鑑。駅弁ファンに評判で、名古屋駅弁や幕の内駅弁で一番だとの評価も聞かれるほか、名古屋駅でもよく売れているという。「ひかり」の駅弁が早くに消え、後に売られた「のぞみ」の駅弁も定着しない中で、列車の利用は冴えない「こだま」が、駅弁では人気を保ち続ける。価格は2005年当時で730円、2015年時点で760円、2019年8月から780円。
※2019年8月補訂:写真を更新し値上げを追記2015(平成27)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、大会の50回を記念して、東海道新幹線開通50周年にちなみ、50年前の駅弁の掛紙を復刻して販売した記念商品。掛紙は1964(昭和39)年10月1日、つまり新幹線開業日の調製印がある名古屋駅弁のものが、法令上必要な表記などを加えて、そのまま使用される。電車と路線図と東京五輪が描かれる。
中身は通常の「幕の内こだま」と同じ。厳密にはこの駅弁は、新幹線の開業時ではなく15年後に発売しているから、復刻したのは駅弁「こだま」ではなく当時の幕の内駅弁の掛紙である。この松浦商店の幕の内も、この会場で同時に販売された静岡駅弁の幕の内も、実需や駅弁のプロの間で高く高く評価される逸品だと感じるが、駅弁催事で映えるものでなく、実際に催事にはまず来ない。復刻掛紙の名目とはいえ、今回の京王はマニア心をくすぐった。
上記の2015年1月の復刻駅弁「こだま」と同じものに見えて、こちらはその2か月前に名古屋駅で買ったもの。差異は価格と、御飯が俵型であることくらい。こちらのほうが普段の名古屋駅での姿である。
2020(令和2)年1月8日に購入した、名古屋駅弁のふた。この年の京王百貨店の駅弁大会で、特段の予告や宣伝なしに、ふたに昭和50年代と思われる掛紙の絵柄を掲載して販売した。中身は俵飯が白飯になった以外は、現地のものと同じ。
2005(平成17)年9月5日に購入した、名古屋駅弁のふた。上記の2019年1月のものとおおむね同じ絵柄を持ちながら、エビフライならぬ金鯱が大きく描かれたり、新幹線こだま号の車両が0系電車であったり、背景や宣伝文がなかったなどの差異がある。
1988(昭和63)年10月10日10時の調製と思われる、昔の名古屋駅弁の掛紙。絵柄は下記の代々と同じ。東海道・山陽新幹線にはすでに新型の100系新幹線電車が走っていたが、こだま号には1986(昭和61)年の6月から10月頃までに12両編成を暫定的に使用した以外に使われておらず、掛紙のイラストも0系のままで正しい。1987(昭和62)年4月の国鉄分割民営化の影響で、日本鉄道構内営業中央会の文字と、国鉄の旅行キャンペーン「エキゾチックジャパン」のロゴマークが消えた。
1984(昭和59)年3月22日12時の調製と思われる、昔の名古屋駅弁の掛紙。絵柄は下記の1982年10月のものと同じで、国鉄の観光キャンペーンのロゴマークが「いい日旅立ち」から「エキゾチックジャパン」に差し替えられた。調製元の所在地も元に戻った。
1982(昭和57)年10月31日18時の調製と思われる、昔の名古屋駅弁の掛紙。下記の1981年7月のものと、まったく同じ。
1981(昭和56)年7月25日17時の調製と思われる、昔の名古屋駅弁の掛紙。絵柄は下記の1981年4月のものと変わらないが、駅弁屋の建て替えでもしていたのか、調製元の所在地が仮営業所となっている。
1981(昭和56)年4月3日6時の調製と思われる、昔の名古屋駅弁の掛紙。当時の幕の内弁当の掛紙にも使われた、歌川広重の浮世絵「東海道五拾三次之内」の宮に描かれた、熱田神宮で5月5日に行われた馬の塔の神事の絵柄に、当時の新幹線電車のイラストを組み合わせた。
2002(平成14)年10月12日の調製と思われる、昔の名古屋駅弁の掛紙。0系新幹線電車は1999(平成11)年9月に東海道新幹線から引退済みで、名古屋駅舎も1993(平成5)年に解体済みであったが、掛紙にはいずれも以前のとおり描かれている。あるいは復刻駅弁か。