東京駅から新幹線で3時間強。姫路市は兵庫県の南西部で瀬戸内海に面する、人口約53万人の城下町。製鉄や液晶などの臨海工業で栄え、国宝で世界遺産の姫路城が観光客を集める。駅弁は明治時代からの駅弁屋「まねき食品」が、アナゴや姫路城などの駅弁を販売。1888(明治21)年12月23日開業、兵庫県姫路市駅前町御殿前。
姫路駅でイベント時にときどき販売される復刻駅弁。正方形二段重ねの松製経木折に、かなり昔の駅弁掛紙デザインを取り入れた薄手の掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身は下段がプレーンな白御飯、上段が鯛塩焼、伊達巻、きんとん、玉子焼、焼蒲鉾、百合根、空豆、大豆昆布、フキ、ごぼうと奈良漬や梅干など。今の駅弁にないおかずの組み合わせに、御料理弁当以上、おせち料理以下の風味と雰囲気を感じる。
1888(明治21)年の山陽鉄道(当時)姫路駅の開業とともに構内営業へ進出した竹田木八が、その翌年に駅で売り出した弁当が、全国初の幕の内駅弁とされる。彼を創業者とする現在の姫路駅の駅弁屋が売る幕の内弁当が、特段の評価を得ている感じはないが、このような復刻駅弁を売ることにより、元祖をメディアに対してアピールしている。価格は2008年の購入時で1,250円であったが、一定しない模様。
2017(平成29)年2月の鶴屋百貨店の駅弁大会で販売された、姫路駅の元祖幕の内弁当。掛紙に昭和20年代の幕の内駅弁の絵柄を使い、角に丸みを付けた二段重ねの容器に、下段の御飯と上段のおかずの元祖幕の内弁当を詰めた。この頃の価格はおおむね、1500円+消費税で出していた感じ。
これは姫路駅の幕の内弁当か。商品名は「ご馳走幕の内弁当」とある。2013(平成25)年かその前から、新神戸駅や新大阪駅あるいは京都駅で売られるらしい。調製元が姫路駅の駅弁屋なのでここに収蔵するが、下記の姫路駅の幕の内駅弁「味づくし」と販売駅で使い分けるのかもしれない。専用のボール紙箱には姫路城に加えて浮世絵での歌舞伎役者のような絵柄もあり、まるで東京駅弁のよう。
中身は俵飯とちらし寿司、玉子やがんもなどの煮物、海老、かぼちゃ、れんこん、かき揚げなどの天ぷら、さば塩焼き、大根なます、アサリ佃煮、うぐいす豆など。地域性はなくとも、おかずを少しひねった、機能的な幕の内弁当。
姫路駅の幕の内弁当。JR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の実施に伴い、2004(平成16)年5月1日に発売したとされるが、下記のとおり姫路駅の幕の内弁当は、100年以上前から売られるものである。市販の汎用品に見えて調製元の専用品である紙箱には、商品名と姫路城、簡単なおしながきに駅弁マークとJR西日本のDISCOVERWESTロゴマークを描く。
黒いプラ製トレーに収めた中身は、白ごまの俵飯とたくあん、瀬戸内産真蛸のやわらか煮と姫路蓮根その他の煮物、兵庫県産黒豆、淡路産焼玉葱、サワラ西京焼、鶏もも照焼、玉子焼、牛肉とごぼうの煮物、エビの甘酢漬と大根なます、あさり佃煮、甘えび唐揚など。普段使いの幕の内駅弁、というジャンルのものは全国的にだいぶ少なくなったが、それよりはおかずが充実していると思う、お料理弁当。価格は2004年時点で1,000円、2014年時点で1,050円、2019年時点で1,080円、2022年時点で1,150円。
※2023年1月補訂:写真を更新し解説文を手直し2004(平成16)年7月25日に購入した、姫路駅弁の箱。おかずの内容に少々の差異はあるが、上記の駅弁「味づくし」と同じもの。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2019(令和元)年秋の新商品か。中身は駅弁の名前のとおりで、白飯に但馬牛を載せる下段と、焼サバ、コロッケ、煮物、黒豆、漬物などを収める上段の組合せ。但馬牛の使用をふたと食品表示で名乗るが、そんな高級な牛肉が使われているような雰囲気はなかった。姫路駅で買えるかどうかは分からない。価格は2020年の購入時で1,190円、2023年時点で1,200円。
※2023年8月補訂:値上げを追記2017(平成29)年1月の京王百貨店の駅弁大会で売られた、掛紙復刻弁当。かつて姫路駅の上等幕の内駅弁で使われた掛紙を使用、福井県の駅弁催事業者のロゴマークとキャッチフレーズも記される。中身は茶飯を牛肉とカボチャとタマネギと柴漬けで覆い、ダイコンやニンジンなどの煮物と、小松菜やレンコンなどの和え物を詰める。食品表示ラベル上で品名が「但馬牛と十品目の野菜弁当」とあり、そんな名前とこんな内容のものが2014年の秋頃から駅弁催事専用商品としてあるらしい。容器と中身は貧弱。掛紙の姫路城は見事。価格は2017年の購入時で950円、「但馬牛と十品目の野菜弁当」は2019年時点で980円、2020年時点で1,000円、2023年時点で1,080円。
※2023年8月補訂:値上げを追記2024(令和6)年4月5日から5月5日まで、姫路、新神戸、大阪、新大阪、京都駅などで販売。駅弁の日に合わせ、日本鉄道構内営業中央会の会員のうち31社が各社おすすめ駅弁に共通ノベルティ「千社札風カード」を添付して期間限定で販売した駅弁の、姫路駅バージョン。姫路城と桜を描いた掛紙をまとう、松花堂弁当タイプの容器に、瀬戸内産真鯛の鯛めし、たけのこご飯、タケノコや姫路城型ニンジンなどの煮物、焼サワラに玉子焼と菜の花ごま和えに桜餅を詰める。おかずの多い、柔らかな鯛飯駅弁。「幕の内」の要素を感じられないが、これは姫路駅が幕の内駅弁の元祖であることを言いたい記念駅弁なのかもしれない。
1994(平成6)年10月22日7時または20日10時の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙の一部。損壊が大きく情報が少ない。
昭和40年代、1970年前後の、10月8日7時の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙。写真は当然、姫路が誇る国宝姫路城。空の塗り分けのミスマッチさに時代を感じさせる。
昭和40年代、1970年前後の、10月18日5時の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙。写真は当然に姫路城。今より手前の木が茂っているように見える。城が白さを保つため、1957(昭和32)年の昭和の大修理からあまり時が経過していない頃の撮影か。「おかめ弁当 250円」「あなごずし弁当 250円」「すし 200円」「幕の内弁当 200円」と、他の駅弁の名前と値段も記す。
昭和40年代 1970年前後の、7月19日13時の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙。掛紙が汚れてしまっているが、写真はやっぱり姫路城。撮る位置や見る位置も、どれもだいたい同じ感じ。
1963(昭和38)年12月4日11時の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙。第二次大戦前や昭和時代の姫路駅弁の多くが姫路城を描き、これもそのとおりであるが、大天守と小天守の手前にカの櫓とその石垣を置く、他にない構図でできている。
第二次大戦前の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙。「長期建設」とは、日中戦争あるいは支那事変における1938(昭和13)年以降のスローガンだそうで、この掛紙もその頃のものとなろう。絵柄そのものは中国と関係なく、姫路とともにある姫路城である。
1931(昭和6)年1月17日14時の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙。名刺サイズの小さな紙片にもしっかりと、姫路城の天守を描く。調製元のまねきは、今も姫路駅で駅弁を売るまねき食品。
1927(昭和2)年4月26日8時の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙。絵柄は下記の1925年7月のものと同じで、緑色を橙色に置き換えたほか、注意書きの見た目が少し違う。小さな小さなサイズは据え置かれた。この紙片を折箱かふたに、どうやって貼り付けていたのかと思う。
1927(昭和2)年1月13日13時の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙。上等と普通の2種類があった当時の幕の内駅弁のうち、普通のものを単に「御辨當」とせず「並等」を付けたものは、比較的珍しいと思う。この当時の近畿地方にのみ見られたと思う、名刺ほどのサイズしかない、とても小さな掛紙。
1925(大正14)年7月23日12時の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙。名刺サイズの小さな紙片に、商品名と価格、駅名と調製元、注意書きと調製印と姫路城で、駅弁の掛紙に必要な事項をしっかり記載した。