東京駅から新幹線で3時間弱。神戸市は兵庫県の南東部で大阪湾に面する、人口約150万人の港町。古代からの湊は1868年の開国開港で関西を代表する港湾都市となり、異国情緒や夜景で有名な観光地でもある。駅弁は第二次大戦後に神戸へ移転した駅弁屋の、肉や洋食や新幹線型など、様々な駅弁が賑やかである。1972(昭和47)年3月15日開業、兵庫県神戸市中央区加納町。
2018(平成30)年10月14日に新神戸駅などで発売。JR西日本が同年6月30日から、山陽新幹線「こだま」で新大阪駅から博多駅まで一日1往復を運転する「ハローキティ新幹線」の駅弁。この車両の先頭車を模した陶器に御飯を詰め、牛すき焼きで覆い、星形のニンジンとキティ柄のかまぼこで彩る。見た目や名前によらない、渋い内容。
ハローキティ新幹線は、JR西日本が山陽新幹線こだま号で運用する500系新幹線電車のうち、2018(平成30)年5月までエヴァンゲリオン新幹線「500 TYPE EVA」で運用していた8両編成1本をリフォームしたもの。海外でも知られるサンリオのキャラクター「ハローキティ」にちなみ、青かった車体はピンク色のリボンになり、車内のカーテンや座席のヘッドカバーはキティの絵柄になり、座席をすべて撤去した1号車は写真で見る限りまばゆいくらいのピンク色。のぞみ号で2時間半の区間を、4時間以上かけて走る。
2016(平成28)年7月1日に新神戸駅などで発売。同じ駅で同じネタの駅弁が、まだ0系新幹線が現役で走っていた8年前に出ており、これは不思議な再登板。駅弁そのものは一新されており、容器は3両編成の陶器から先頭車のみのプラスティック製容器に、対象はR67編成から最終営業のR68編成に、中身はちらしずしからお子様ランチに変わった。
東海道・山陽新幹線を走った0系新幹線電車の先頭車をデフォルメしたプラ製容器に、きのこピラフを詰め、ハンバーグ、鶏唐揚、ポテトフライ、エビフライ、スパゲティ、ミックスベジタブル、日の丸のかまぼこを添える。鉄道の切符を巨大にした「駅弁購入記念券」を添付。今までの神戸の新幹線容器の駅弁は、本格的な陶器と中身を持っていたのに、今回は神戸以外のそれと同じような、プラ製容器に冷凍食品風のお子様ランチに退化した印象を受けた。
2017(平成29)年12月15日に購入した、新神戸駅弁のスリーブなど。実車の引退から20年近くが経過しても、この駅弁は神戸や首都圏で人気を保つ。絵柄や容器や中身や値段は、2016年の再登板時から変わらない。
2015(平成27)年の秋までに、4年前に発売したものを、ひそかにリニューアル。923形T5編成「ドクターイエロー」の先頭車両の形状をデフォルメした陶器は、前作よりずいぶんと細長くリアルになった。中身はサフランライスの上をオムレツ、エビフライ、スコッチエッグ、さつまいも、スパゲティ、ニンジン、ミックスベジタブルで覆うもので、前作との違いはライスくらい。つまり引き続き、内部までしっかりレモンイエローに塗った陶器に詰まる、黄色いお子様風洋食駅弁。2022年までの販売か。
ドクターイエローとは、新幹線電気軌道総合試験車のこと。1964(昭和39)年の東海道新幹線の開業当時に用意された、電気機関車に1両で牽引される軌道検測車と、新幹線開業前に鴨宮のモデル線で試験に供された4両編成の試作車両を改造した電気試験車が、黄色い車体に青い細帯を巻いたことから、いつしかそんなニックネームが付けられた。新幹線博多開業の前後に0系タイプの新車に置き換わり、21世紀に入り今回の700系タイプの新車に取って代わった。
新幹線の6時から24時までの営業時間内に、関係者のみを乗せて走り線路と架線の状態を計測し、その結果を後日の24時から6時までの保守工事の内容に反映する。つまり何日かに一度は普通に見られる電車であるが、これがいつからかどこからか、見たら幸せになれるという都市伝説が新聞にも書かれるようになってしまった。
なお、東北・上越新幹線でも過去には黄色い車体に緑色の細帯を巻いたドクターイエローが存在していたが、2001(平成13)年にこれを置き換えたE3系タイプの「East i」は、黄色をやめて白い車体に赤い細帯を巻いてしまった。
※2023年4月補訂:終売を追記2015(平成27)年8月5日に、新神戸駅などで発売。今回は同年3月に営業運転を開始した、北陸新幹線向け電車のうちJR西日本の「W7系」の先頭車形状のイメージを、陶器で再現した。中身はサフランライスに、エビフライ、ハンバーグ、コロッケ、つくね、ミックスベジタブル、スパゲティを重ねたお子様ランチ風。実車も駅弁も、見た目では500系に似ていて、弁当の中身の雰囲気は異なる。
W7系電車は、2015(平成27)年3月14日の北陸新幹線の長野駅から金沢駅までの開業に向けて用意された、同線専用の新幹線電車。同じ目的で製造し、開業の1年前から長野新幹線(高崎駅から長野駅まで)で先行的に使用されたJR東日本の「E7系電車」と同じもの。北陸新幹線は環境法令上の制約で、最高時速が260kmに制限されるため、時速320km運転を目指した500系や、時速320km運転を実現したJR東日本のE5系より、空力音つまり騒音を気にしなくてよい分だけ、ずんぐりとしている。2019年までの販売か。
北陸新幹線は、最終的には大阪を目指し、もしかすると東海道・山陽新幹線に乗り入れるかもしれない。しかし2016年時点で現時点で敦賀市から大阪市までのルートをめぐり、関係府県間で醜い争いが繰り広げられている、つまりルートが決まらない状態では、W7系は新神戸駅や兵庫県内に来る前に廃車を迎え、営業運転で乗り入れることはないだろう。ここでは、W7系電車の第1編成が神戸市内の川崎重工業で製造された事実をもって、新神戸駅の駅弁にした。
※2020年4月補訂:終売を追記2015(平成27)年11月7日から一日あたり50個を販売。山陽新幹線全線開業40周年、テレビアニメ「エヴァンゲリオン」放送開始20周年を記念し、同日からの山陽新幹線ラッピング電車「500 TYPE EVA」の運転開始に合わせて登場した。
容器は車両と同じく、JR西日本の500系新幹線電車や、下記の「500系新幹線弁当」と同じ。紙箱や陶器の絵柄が、ラッピング電車やアニメ作品の絵柄に変わった。中身は、醤油飯にイクラ醤油漬と焼鮭と海苔を載せた、つまり鮭はらこめし。東や北でなく西日本の駅弁として、この内容は珍しい。鮭の親とイクラの子の組合せは、アニメの世界観を表現したものだという。高価な駅弁であるが、訪問時の駅弁売店では続々と売れていた。2018年までの販売か。2022年2月にオンラインショップで再販。
エヴァンゲリオン、正確には「新世紀エヴァンゲリオン」は、1995(平成7)年10月から1996(平成8)年3月まで、テレビ東京系列で毎週放送されたSFアニメ作品。地球規模の大規模災害により人類の半数が死滅した世界で、東京の壊滅でできた神奈川県足柄下郡箱根町の芦ノ湖の北岸に位置する架空都市「第3新東京市」を舞台に、少年や少女が人型兵器「エヴァンゲリオン」を操り、人類と敵対する謎の生物「使徒」と戦う。
低視聴率のテレビアニメが放送終了後に長く話題となる社会現象として、「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」の再来とされる。番組の再販や映画の制作が繰り返され、2010(平成22)年になって主題歌「残酷な天使のテーゼ」が日本音楽著作権協会の著作権使用料分配額で全国第1位になるなど、息の長いブームが続く。「Neon Genesis Evangerion」のタイトルで、世界中のアニメファンが知っている。
2015年はストーリー設定上の年でもある。JR西日本では2015年11月から2017年3月までの予定で「新幹線:エヴァンゲリオン プロジェクト」を「始動」、新大阪駅〜博多駅で一日1往復の「こだま」に使うこのラッピング電車は、車内の内装や展示・体験ルームでも、作品の世界観を再現する。駅弁以外の各種グッズも登場中。
※2019年8月補訂:終売を追記2011(平成23)年9月1日に新神戸駅などで発売。おそらく史上初ではないかと思う、鉄道事業用車をテーマにした駅弁。駅弁の名前のとおり、923形T5編成「ドクターイエロー」の先頭車両の形状をデフォルメした陶器を、側面に窓が開いてその容器が見えるボール紙の箱に詰める。中身は黄色いきのこピラフの上をオムレツ、エビフライ、スコッチエッグ、さつまいも、スパゲティ、ニンジン、いんげんで覆うもの。
内部までしっかりレモンイエローに塗った陶器に詰まる黄色いお子様風洋食の内容と味は、鉄道車両形の容器の駅弁として他を圧倒する。乗れない電車の妙な人気で、この駅弁の発売は新聞やネットで話題になり、発売開始後約1か月半で在庫完売ということで年内の一般販売が見合わされたほど。価格は2011年の発売時で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円。2015年の秋までに、上記の新版へリニューアル。
※2018年1月補訂:写真を更新2011(平成23)年11月3日に購入した、新神戸駅弁の紙箱。これも3年後も、見た目はまったく変わらない。当時の御飯はカレーピラフだった。価格も消費税5%時代なので異なる。
2014(平成26)年9月10日に発売。ついに新神戸駅の新幹線型容器の駅弁の真打ちが出てきた。営業運転の開始から17年を経て、いまだに高い人気を誇るJR西日本の新幹線電車「500系」を、陶器でデフォルメして再現した。
上面と側面で容器が見えるようにした紙箱の中に、500系新幹線電車の先頭車の形状を模した陶器が収まる。天井のふたを開けて見える中身は鶏飯。御飯に海苔と錦糸卵を振り、香辛料で味付けた「播州百日どり」の蒸し鶏3切れと唐揚を2個、ニンジン、インゲンを載せる。100日のトリを5つ入れて「五百鶏(ごひゃっけい=500系)」とかける。そんな駄洒落を吹き飛ばす、駅弁はもちろん惣菜でも食堂でも経験のない薫りの高さ。2020年の春までに終売か。
JR西日本の500系新幹線電車は、1997(平成9)年3月に山陽新幹線の新大阪駅から博多駅までの「のぞみ」でデビュー。山陽新幹線の高速化で航空輸送に対抗するため、国内初の営業列車での時速300km運転、そして将来の時速320km運転を目指し、1992(平成4)年からの試験車両「WIN350」での成果を活かして開発した。
広島駅から小倉駅までの停車駅間の平均速度261.8km/hと、新大阪駅から博多駅までの運転区間の表定速度242.5km/hは、世界最速記録として1997年版のギネスブックに掲載された。かつて100系新幹線電車の山陽新幹線での時速275km運転を阻んだ、世界一厳しい日本の高速鉄道に対する騒音基準を満たすため、円形を意識した車体断面と全長15メートルもの流線形状を持ち、これが美しさとして鉄道ファンや子供達を魅了した。また、騒音の低減をフクロウに学んだという、T字の形をしたパンタグラフが、テレビなどで話題になった。
しかし、円形の断面による車内空間の狭さや、先頭車の先頭側に出入口を設けられなかったことで、東海道新幹線を多用するビジネスマンや、これを主な顧客と考えるJR東海からの評判は良くなかった。時速320kmでの営業運転は実現せず、700系やN700系という新型が出たことで、2010(平成22)年2月限りで、在京メディアの非難とともに東海道新幹線から追い出される。
以後は編成を16両から8両に短縮、最高時速を285kmに下げ、山陽新幹線の「こだま」として運用を続ける。新幹線電車としては老齢の域に達しているが、広告主に配慮しなくてよい趣味や興味の観点からは、以後の新型車両よりもむしろ高い人気を維持していると感じる。弁当箱としてもやはり、形状は美しく、中身をほじくり出しにくいため食べにくい。
※2021年3月補訂:終売を追記東海道新幹線の新型電車「N700A」の2013(平成25)年2月8日のデビューを前に、同年1月20日の発売。駅弁の容器も実物の車両も、その形状はN700系と同じ。車体側面のロゴマークや駅弁のパッケージなどが、新しいものになっている。中身はステーキ弁当のような牛すき焼き弁当という、いつもお子様ランチになってしまう電車形駅弁らしからぬ大人の味。今回の催事場での人気は低調だったが、調製元の得意分野が生きた、中身だけ取り出しても満足できる味と内容と価格であると思う。価格は購入時で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円。2016年までの販売か。
N700Aは、デビューから5年半を経過したN700系のマイナーチェンジ版。ブレーキの改良や定速走行装置の導入や自動販売機の撤廃などの変更を施した。16両編成のN700系もおおむね同じように改造される予定。JR東海のニュースなので、在京メディアはこぞって、すごいぞすばらしいぞと賞賛の嵐。
※2020年6月補訂:終売を追記300系新幹線電車の引退を記念して、2012(平成24)年3月8日に発売。神戸駅弁の淡路屋の他の新幹線弁当と同じように、先頭車の形状を陶器でデフォルメして、その電車や路線図のイラストを描いた窓付きのボール紙箱に詰める。中身は醤油飯の上をタコの唐揚げ、アナゴ煮、牛肉そぼろ煮、錦糸卵、シイタケ煮、菜の花などで覆うもの。単純においしい丼風弁当としてもよい。2013年まで販売された模様。2022年3月にオンラインショップで再販。
300系は1992年3月のダイヤ改正で「のぞみ」として東海道新幹線でデビューした新幹線電車。デビュー前に約2年間もの試験運転を経て、東海道新幹線での最高速度を50km/h引き上げた270km/h運転で、東京駅から新大阪駅までの所要時間を約3時間から2時間30分に短縮した。1998年までにJR東海が61編成976両、JR西日本が9編成144両を製造し、東海道・山陽新幹線で活躍したが、後に新造された500系、700系、N700系に追われ、2012年3月のダイヤ改正で引退した。
住民運動や労働運動により昭和後期に停滞した、新幹線やその車両の技術向上にカツを入れた功績はとても大きい。しかし功があれば罪もあり。初期トラブルで東海道新幹線を半日止めたり、走行時の激しい揺れが問題になったり、線路の砂利を跳ね上げるためゴムマットや接着剤での固定を余儀なくされたり、食堂車も個室も廃したビジネスユースに偏る車内設備、そして「のぞみ」という別立ての列車と料金を仕立てたことによる料金の値上げや外国人向けパスの利用拒否など、罪だって挙げればいくつも出る。
しかし在京メディアとJR東海が功罪のうち罪ばかりを強調して東海道新幹線から追い出されたJR西日本の500系電車と異なり、テレビでも新聞でも功ばかりを強調して一切の罪がなかったことにされたうえでの華々しい引退となった。先に引退した0系や100系、2012年時点で現役を張る500系や700系と異なり、16両編成400メートルの編成を一切崩さないまま、JR東海の「リニア・鉄道館」で保存された先頭車2両を残し、スクラップとなっていった。
※2023年4月補訂:再販を追記JR西日本管内における九州新幹線開業記念弁当、山陽新幹線との相互直通運転開始記念弁当の7社12種のうちひとつとして、2011(平成23)年3月1日に発売。ただし同年1月の京王百貨店の駅弁大会と阪神百貨店の駅弁大会では先行販売が実施された。山陽新幹線と九州新幹線を直通する新幹線列車「みずほ」「さくら」に使用されるN700系7000,8000番台新幹線電車の先頭形状を模した陶器を、その車両の写真や桜花のイラストを印刷したボール紙の箱に詰める。
中身は醤油飯の上にたこ焼き、牛肉煮、ママカリ高菜巻、煮アナゴ、焼うどん、イカ明太煮、馬肉燻製、薩摩揚を載せるもの。これらはそれぞれ、新幹線「みずほ」停車駅の新大阪、新神戸、岡山、広島、小倉、博多、熊本、鹿児島中央にちなんでいる。しかし中身や味に不統一感はなく、容器で買われる駅弁とは思えないほど中身に凝っている印象。乗車記念としても旅の記念としても印象深い秀作だと思うし、食事として東の新幹線の車両型容器駅弁に完勝していると思う。現在は販売されていない模様。
2010年12月4日の東北新幹線新青森延伸と、2011年3月12日の九州新幹線鹿児島ルート全線開業により、青森から鹿児島までが新幹線で1本に結ばれた。ところが、このうち最古の開業区間である東京駅から新大阪駅までの区間を国鉄から引き継いだJR東海は、東京駅でのレールの接続を拒否し、九州新幹線向け車両の乗り入れを拒否しているため、最低3本の列車を乗り継がなければならない状況にある。1995年7月27日にこれが実現した高速道路とは、この点が異なる。
JR東海にも言い分がありそうだ。全長400メートル16両編成の電車を最高時速270kmで4分間隔にて走らせても、シーズンや時間帯によっては輸送力が不足する旺盛な需要を満たし、行楽客よりビジネス客に好まれる輸送路に適したサービスを提供するため、東京駅では本来は東北新幹線向けに用意され東海道新幹線で先行して使用した1面2線分のプラットホームを東北新幹線向けに提供することを拒んだのだろうし、16両編成を組んでいない九州新幹線の車両を走らせたくないのであろうし、1時間で一巡する列車運行のパターンを崩したくはないのだろう。
しかし、これは新幹線ネットワークのPRや鉄道旅行の魅力向上に逆行する施策であり、ビジネス客にのみ媚びすぎだとか利益至上主義だとかの批判をする格好の材料となるだろう。「のぞみ」と「みずほ」は外国人向け鉄道パス「ジャパンレールパス」では利用も割引もさせない取り扱いもしており、国が観光庁を新設してまで推し進めようとしている観光振興の支障となる残念な経営方針だと思う。
※2013年5月補訂:終売を追記0系新幹線電車の引退にちなんで、2008(平成20)年9月10日に発売。その電車の3両編成をデフォルメした形状の陶器を使用、これを窓付き路線図・開業日付きで容器展示用に工作可能なボール紙の箱に詰める。中身は酢飯の上に焼アナゴと煮アナゴ、タコ旨煮、ローストビーフ、錦糸卵、紅生姜などを載せるもの。神戸駅弁の主力級をとても少量かつコンパクトに詰める中身がどうであれ、これは容器で買われる駅弁だろう。当然に分量は少ないが、味は保証付き。2013年限りで終売の模様。
0系新幹線電車は1964(昭和39)年10月1日の東海道新幹線開業で登場し、2008年11月30日限りで定期営業列車から引退、半月後の臨時列車運転をもって完全に引退した。超高速旅客鉄道という当時の世界の非常識に挑戦し、欧州や後のアジアにおける旅客鉄道の復権や発展の起爆剤となり、今でも海外ではその写真が観光ガイド等で多く使われる丸顔の新幹線が、これで博物館入りとなった。
その稼働期間は44年間にも及んだが、開業当時の車両が長い間走っていたわけではなく、むしろ高速運転で走行距離の長い新幹線電車の寿命は普通の電車の半分強しかない。山陽新幹線の新大阪駅から博多駅までの間で「こだま」に使われた最後の3編成18両は、すべて1980年代の製造である。
開業時の新幹線電車を代替する必要性が生じた昭和50年代は、国鉄の労使が激しく対立し、結果的に国鉄の解体につながる暗黒時代であった。新しい試みは労働強化になるとして労働組合の理解を得られず、新幹線でも新型車両の開発や速度向上の研究は停滞、フランスで最高時速260kmのTGVが1981年に開業するのを横目に、国内では古い電車の製造が続けられた。
技術的にマイナーチェンジ、見た目には二階建車両の連結で大きなモデルチェンジとなった100系新幹線電車の登場は1985(昭和60)年、新幹線の最高時速が220kmに向上したのは国鉄の分割民営化が決定した1986(昭和61)年、ようやく新技術を取り入れて最高時速を270kmまで引き上げた300系新幹線電車と「のぞみ」の登場は、1992年まで待つこととなる。
※2014年6月補訂:終売を追記上記の駅弁「0系新幹線夢の超特急弁当」を、2018(平成30)年1月前後に復刻販売。2014(平成26)年4月の消費税率改定で価格が1,050円から1,080円になった以外は、外箱も3両編成分の陶器も中身も、10年前を踏襲した。紙箱から価格が消え、淡路屋ロゴマーク付近の「JR新神戸駅」標記に「・西明石駅」を追加し、アナゴを刻み、生姜が白くなった。
東海道・山陽新幹線向け新型電車「N700系」のデビューに合わせて、2007(平成19)年7月に発売。その先頭車両の形状をデフォルメした陶器を、側面に窓が開いてその容器が見えるボール紙の箱に詰める。中身は五目チャーハンの上にハンバーグや鶏唐揚やエビフライを載せ、オムレツやスパゲティなどを添えるお子様ランチ。基本的には触って食べて子供が楽しむ弁当だと思う。2012年頃までの販売か。
N700系は日本の新幹線史上初となる車体傾斜装置を導入した。これにより東海道新幹線東京・新大阪間に多く存在する半径2500mの曲線を、同区間の最高速度である時速270kmで走行しても、乗り心地を損なわない。傾斜角はわずか1度なので、傾いた感覚を体験するのは無理だろう。前作の700系で285kmに落とされた山陽新幹線新大阪・博多間の最高時速も、1997年登場の500系と同じ300kmに戻され、過去に新横浜や新神戸への停車や品川駅の開業などでずるずると増やされていた所要時間も再び縮めている。
それよりも乗客に影響があるのは、パソコン用コンセントの導入と全面禁煙化。航空便との競合上、前者は明らかにアドバンテージとなるが、後者は愛煙家の男性会社員に対してどうだろう。喫煙所は用意されているし、世の流れとして企業イメージの確保には資するだろうが。
※2015年9月補訂:終売を追記