新大阪駅から特急列車「くろしお」で約4時間。那智勝浦町は、県南東端に位置し太平洋に面する、人口約1万人の観光地。熊野那智大社や那智山など、ユネスコの世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」指定の名所を抱える。駅弁は国鉄時代からの駅弁屋が、駅前広場に店舗を構えて販売する。1912(大正元)年12月4日開業、和歌山県東牟婁郡勝浦町築地。
昭和60年代の発売か。駅弁では新宮駅のものに次ぐ、サンマの姿寿司。商品名を書いた細長いボール紙の容器の中に、酢飯の上に背開きのサンマを載せて、酢飯ごと一口サイズにカットされたものを詰めた容器を収める。三陸沖から熊野灘へ来たサンマを、手作業で骨を取ってミカン酢に漬けたという。今回はサンマが塩辛のように思えた。2004年度JR西日本「駅弁の達人」対象駅弁。価格は2004年の購入時で600円、2015年時点で650円。
※2021年3月補訂:発売時期を推定1987(昭和62)年または1988(昭和63)年の発売。JR1周年の記念駅弁とも、国鉄分割民営化で発足したてのJRからご当地名物の新作駅弁の開発を依頼されたとも、当時名物の駅弁であった「鯨弁当」が1982(昭和57)年の国際捕鯨委員会(IWC)の商業捕鯨モラトリアム(一時停止)で調製が困難になった代わりの新作ともされる。鮪素停育は「まぐろすていく」または「マグロステーキ」と読む。当て字の名前が、まずユニーク。
マグロと漁船を描いた細長いボール紙の長方形の容器の中に、片栗粉をまぶして揚げ、冷水で洗浄した後に味付けたというマグロステーキを3切れ、俵型の白飯を4個、名産のめはり寿しをひとつ、玉子焼、エビ、蒲鉾などを詰める。名前の奇抜さを感じさせない堅実あるいは地味な内容なので、駅弁誕生の物語などを記してもらえば、味わいが出たかもしれない。2004年度JR西日本「駅弁の達人」対象駅弁。価格は2004年の購入時で1,030円、2015年時点で1,080円。
昭和50年代の時刻表では、紀伊勝浦駅には東京駅からの寝台特急列車や、名古屋駅や大阪・天王寺駅からの夜行急行が運転されていたことがわかる。今ではそれらすべてが廃止され、昼行の特急列車「くろしお」「南紀」とわずかな普通列車のみが発着する。駅舎は南紀観光華やかりし頃の、1977(昭和52)年11月に完成。
※2021年3月補訂:発売年を追記