新大阪駅から特急列車で約70分。和歌山市は和歌山県の北東端に位置する、人口約35万人の城下町かつ県庁所在地。紀州徳川家や製鉄所その他の臨海工業で栄えた。駅弁は昭和時代(創業は明治時代)からの駅弁屋が、改札外の駅ビル内に店舗を構えて販売。1924(大正13)年2月28日開業、和歌山県和歌山市美園町。
2011(平成23)年までに1,200円で発売か。大きく見える長方形の容器に、白飯とこけら寿司、梅鶏卵焼と太刀魚梅肉揚、牛肉煮とシイタケ、マグロ角煮としめじのおひたし、高野豆腐とみかんなど。「紀州和歌山の味わい」であってもなくても、高級な折詰だと思う。後にこれが「紀州玉手箱 ぎん」(1,500円)となり、他に「紀州玉手箱 きん」(2,000円)が出た模様。
2016(平成28)年のNHK大河ドラマ「真田丸」の放送にちなんで、主にその放送期間中に発売か。値段は売店で900円と表示されたが、常に810円で販売された模様。「真田」と大きく書いた真っ赤なボール紙箱のふたを上げると、真田三代の甲冑が飛び出てきた。
中身は白飯の上に「田舎巻き」なる高野豆腐やインゲンなどの油揚げ巻きが6個と、すり身揚げ、湯葉包み、鶏照焼、焼サバ、かまぼこ、玉子焼、菊花などの柿の葉ずし1個、ゆず柿など。食材の内容も形も並べ方も、千円以下の駅弁なのにとてもきれい。食べた後に四方紅の敷紙が底から出現し、高級感がぐっと増した。2017年の初頭頃までの販売か。
和歌山県での第70回国民体育大会「2015紀の国わかやま国体」の開催に向けて、2015(平成27)年5月に発売。「きいちゃん」とは、その国体のマスコットキャラクターであり、紀州犬をモチーフに「紀の国」「紀伊国」と「紀州犬」の頭文字「き」をとって親しみやすく「きいちゃん」と名付けたという。掛紙にはきいちゃんが和歌山県内のうち18市町村分掲載されるが、その一部が大きな食品表示ラベルに隠れてしまった。
真っ白な惣菜弁当容器に入れた黒いトレーの中身は、犬の肉球を模したのかもしれないおかかとさけの花形御飯が各1個、玉子焼、かまぼこ、鶏肉、焼サバ、煮物、天ぷら、酢の物、梅干し、みかんなど。賑やかな仕出しタイプの弁当も、やや雑然とした感じか。なお、国体開催前の発売当初は、掛紙でなく専用紙箱を使い、その絵柄と中身はこれとは別物であった模様。2017年の初頭頃までの販売か。
2011(平成23)年か、それ以前の発売か。丸い容器に白飯を詰め、海苔と錦糸卵で覆い、紀州うめどりのてり焼でさらに覆い、紅生姜を添える。どうも容器に決まりがないようで、ネット上を検索するといろんなものが出てくる。その前に収穫報告がほとんどない、幻の駅弁。サクサクとシンプルな鶏肉丼だった。2019年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記和歌山駅の阪和第一食堂版の並等幕の内駅弁。和歌山の城や祭を描いたボール紙の箱を使用、白いトレーに入った中身は、白御飯に鳥フライとエビフライ、椎茸や人参などの煮物、カマボコと玉子焼、牛肉にソーセージに酢の物など。見栄えも内容も風味も、寒々とした古き幕の内駅弁だが、白御飯の形状が俵2個に阪神競馬場型が1個となっており、なぜこんな形にしたのか聞いてみたい気がした。
JR和歌山駅の4本のホームでは、駅ビルや表玄関に近い側から、柿の葉ずしたなか、阪和第一食堂、和歌山水了軒、キヨスク(弁当販売なし)と、それぞれ異なる業者が売店を出していた。こんな色分けのある駅は、とても珍しかった。これらの売店は2016(平成28)年1月までにすべて閉店。阪和第一食堂の商品は改札外のキヨスクなどに引き継がれず、この駅弁の現存は不詳。
※2017年2月補訂:終売可能性を追記JR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の実施に伴い、2004(平成16)年5月1日に発売。加熱機能付き容器を使用した牛飯駅弁で、中身は古代米を加えた御飯の上に熊野牛すき焼き肉を載せて、キャベツ・アスパラ・人参・パイナップル・紅生姜を添えるもの。飯も肉も触感が楽しい牛飯に野菜炒めという内容はなかなか美味くて個性的。2004年度JR西日本「駅弁の達人」対象駅弁。現在は販売されていない模様。
いまだに駅弁に暖かい物がないと嘆く有識者のコラムが新聞や雑誌を賑わせるが、それは東京発着の東海道新幹線しか利用していないのにそれが鉄道や駅弁のすべてだと思い込んでいる証拠。このような加熱機能付き容器の駅弁は少数だが珍品ではなく、駅弁屋さんによってはきめ細かな調製で暖かい商品を常に用意するところや、加温ショーケースで販売するところもあるし、電子レンジで加熱の「O−bento」もある。もっとも、列車内で加熱機能付き容器の蒸気を盛大に噴かせている光景は、あまり見掛けないと思う。
※2013年5月補訂:終売を追記「ビッグホエール」が開業した1997(平成9)年頃に発売か。そのホールを簡単なCGで描いたボール紙の枠の中に、ビッグホエールの形をした無公害樹脂の白い容器が入る。中身は高菜・海苔・シソの3種のおにぎりの周囲を、エビフライや白身魚フライ、エビや焼き魚や玉子焼、煮物やハムにデザートは団子にオレンジという、どちらかと言えば若者向けなボリュームたっぷりの内容。2006年頃に終売の模様。
ビッグホエールとは、鉄道貨物ターミナルであった国鉄和歌山操駅の跡地に和歌山県が建設し、1997年7月にオープンした、8,500人を収容できる鯨型の多目的ホール。貯留雨水による噴水で「くじらの潮吹き」を再現するシステムを持ち、写真では感じ辛いが実物を見るとなかなかクジラに似ており、この駅弁の容器はその建物に本当に似ている。白浜方面行列車に乗れば、和歌山駅を出た数分後に右側の車窓から見えるはず。
※2008年7月補訂:終売を追記。駅弁の名前や外観から判断して、春限定の駅弁か。花一杯の掛紙に包まれた正方形二重の経木折の中に、下段では桜型と扇形と松型の御飯に桜色のカップで梅干を添え、縦横に仕切られた上段には蓮根等の煮物、エビや薩摩芋等の揚げ物、玉子焼に焼き魚、ハムに蒲鉾に団子が入る。
掛紙・容器・視覚・味覚のすべてにおいて上質な内容は、料亭やデパートのお弁当を凌ぐと言っても過言ではなく、鈍行列車の車内では不釣り合いなほどに優れていると感じた。「小鯛雀寿し」の陰に隠れて知名度が無に近いのはもったいない。価格は2003(平成15)年の購入時で1,150円、2016年時点で1,250円。2017年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記和歌山駅の実用的な幕の内弁当。安っぽいビニール容器を使用するが、掛紙は徳川の葵の家紋をバックに和歌浦・観海閣を描き旧字体で御弁当と記す古風なもの。中身は形の悪い胡麻振り俵飯に玉子焼や蒲鉾や鶏照焼に煮物揚げ物が少し入り、コンビニ弁当並みの値段で分量とまずまずの味が確保されている。秀逸な掛紙とのミスマッチも楽しめるか。現存しない模様。
※2021年3月補訂:終売を追記