新大阪駅から特急列車で約70分。和歌山市は和歌山県の北東端に位置する、人口約35万人の城下町かつ県庁所在地。紀州徳川家や製鉄所その他の臨海工業で栄えた。駅弁は昭和時代(創業は明治時代)からの駅弁屋が、改札外の駅ビル内に店舗を構えて販売。1924(大正13)年2月28日開業、和歌山県和歌山市美園町。
1899(明治32)年頃に発売。小鯛を3枚におろして酢飯と握ったものを6個、笹の葉を模したビニールシートに包み、小箱に並べて収める。淡泊で端整な味。昭和時代までは和歌山駅弁あるいは和歌山の名物として知られていたのではないかと思う。注文により7個入りや12個入りにすることもできる。
※2019年8月補訂:写真を更新し解説文を手直し上記の駅弁「小鯛雀寿し」の、2002(平成14)年時点での姿。当時はしおりがいろいろ付いてきて、これを読むだけでも楽しかった。小鯛雀寿しは廃れた紀州名物を駅弁で再現したものの、逆に郷土料理ではなく名物駅弁として世に知られてしまったそうな。価格は2002年の購入時で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円。
※2019年8月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し個数やグレードで数種類が販売されている「小鯛雀寿し」の、駅弁では最高価格のパッケージ。特に高級感のない正八角形の容器を、金箔銀箔を織り込んだ高級感のある厚手のボール紙容器に入れる。中身は小鯛の握り寿司が放射状にたった五個だけ、つまり一個562.5円換算。
これは街で丼物一杯が食べられる値段で、それだけ希少で高級な品物なのであろう。夏の暑い時期に購入したためか小鯛はやや塩辛かったが、その弾力性豊かな身を飯とともに口に含めば、尾ヒレがまるで生きているようにプルンプルンと跳ねる様は、他の駅弁はもちろん普通の寿司屋でも味わえないのではないかと思う。
しかしこれを2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁としてしまうところは、なかなか罪作り。土産物としては20個入り8,500円などというパッケージもある。
※2004年10月補訂:写真の掲載と解説文の改訂上記の駅弁「小鯛雀寿し」の、予約で買える10個入りバージョン。枠ががっしりした木箱に、「おっぽつき」つまり尾びれが付いた小鯛の半身を酢飯に丸く巻いた小鯛雀寿しが、まるまる10個並ぶ。敷物やバランは本物の笹の葉を使う。高級感のある掛紙を巻いて、調製元のサービスエリア版の包装紙で包んでいた。
小鯛の厚みと、これによる風味は、通常版と別物。加えて小鯛や飯の酢の調合に優れ、名物のうまいものをいただいている気分になれた。食べたのは和歌山線の老朽化した通勤電車の車内だったが。
正八角形のプラ容器に酢飯を詰め、錦糸卵や海苔などで覆い、薄く小さな鯛の小片を環状に6切れ。一応はオリジナルデザインの掛紙を巻くので、同じ日に買った駅弁「熊野牛ちらし」よりは、駅弁らしく見える。伝統の駅弁「小鯛雀寿し」の調製元だからか、中身の見た目と風味はきれいなものだった。
JR西日本の駅弁キャンペーンの実施に伴い、2004(平成16)年5月1日に発売した、他では牛肉駅弁の松阪駅付近にしかないと思う牛巻寿司駅弁。熊野牛を高菜で巻いて、酢飯で巻いて、海苔で巻いて太巻とし、八分割にスライスして細長いパッケージに詰める。
そぼろやしぐれでなく薄切焼で入った牛肉がジューシーで、海苔や高菜が隠し味となりそれを引き立てる、もちろん飯の品質も良くなければならないだろう、容器が小柄で目立たないが、味がいつまでも記憶に残る駅弁。2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁。価格は2004年の購入時で800円、2015年時点で830円。
※2015年9月補訂:値上げを追記駅弁の名前は「高菜めはり寿司」とも。和歌山の郷土料理「めはりずし」を、駅弁の俵飯のサイズで5個詰める。「寿司」とあるが酢飯でなく、醤油飯を高菜の塩漬けで巻いたもの。かみ切れない高菜に醤油味のきつい飯という、媚びない味が心地良い。郷土料理のめはりずしは、もっと大きなものらしい。価格は2010年時点で600円、ただし2014年1月の京王百貨店の駅弁大会では500円、2023年1月の購入時でも600円、4月時点で650円。
※2023年7月補訂:写真を更新し値上げを追記2019(平成31)年1月13日に購入した、和歌山駅弁のふた。絵柄は上記の2013年や下記の2014年のものと変わらない。容器も中身も変わらない。
2014(平成26)年1月19日に購入した、和歌山駅弁の紙箱。上記の2019年のものと、中身は同じで、当時は5個で500円。パッケージも同じに見えて、当時はふたに「紀州特産」と記し、その宣伝文も書かれていた。
上記の駅弁「めはり寿司」の、2003(平成15)年時点での姿。中身は醤油飯を高菜の塩漬けで巻いた中身は変わらない。当時は6個入りで600円だった。後に5個入りで500円、そして5個入りで600円になったことがわかる。
※2019年8月補訂:解説文を手直し和歌山駅で買えた、柿の葉寿司のようなもの。和歌山や大阪の商業施設でも売られている、和歌山市内の寿司店の製品。白い紙箱にさけ2個、さば3個の、柿の葉でなくアセの葉で包んだ、酢飯に具を貼り合わせたものを収める。紀州、現在の和歌山県では、ダンチクというイネ科の多年草の葉に魚や飯を包むことが行われているという。そこまで意識していなかったので、笹の葉に包まれた柿の葉寿司のようなものとして食べて、そう思ったものと変わらない風味だった。価格は失念したが、調製元の通販サイトでは7個入りで1,700円くらい。
和歌山駅で買えた、サバの棒寿司。和歌山や大阪の商業施設でも売られている、和歌山市内の寿司店の製品。棒状の酢飯にシメサバと昆布を貼り合わせて8切れにカットし、フィルムと緩衝材に包み、ボール紙箱に収めて掛紙を巻く。駅弁にもある土産物のような密封はされていないので、手作り感があったと思う。価格は失念したが、調製元の通販サイトで2,000円くらい。
正八角形のプラ容器に酢飯を詰め、牛肉やレタスなどで覆う。市販の時刻表にも名前が載る駅弁なのに、これではまるでコンビニ相当。伝統の駅弁「小鯛雀寿し」の調製元だからか、中身の見た目と風味はきれいなものだった。2019年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2014(平成26)年9月から12月まで開催されたJRグループの観光キャンペーン「和歌山デスティネーションキャンペーン」に向けて開発し、同年の9月14日から12月13日まで、和歌山駅や特急列車内で売られたお弁当。映画やドラマで料理の演出をするフードスタイリストの飯島奈美氏が考案したといい、その名が掛紙に記される。
楕円形の容器の中身は、めはりずしが2個と、アジフライ、サツマイモ、れんこん、しいたけ、高野豆腐、すろっぽ和風和え物、金山寺味噌。発売を和歌山県庁とJR西日本が報道発表したので、ひととおりの関連メディアが取り上げたようだが、話題になることなく、販売が継続されることなく、ひっそり消えてしまったのはどうしたことか。
2004(平成16)年頃に発売か。木目調な長方形の容器を、昔は紀州によくあったのだろうか、のれんに寿司と掲げた茶店のイラストを描いた、大きな掛紙ですっぽり包む。中身は正方形に2×4=8分割され、そのひとつひとつに、めはり寿し、太刀魚寿司、こけら寿司、さんま寿司、小鯛雀寿し、柿の葉寿し、梅寿し、わさび寿司と、スシの名の付く以外は共通点に乏しい食材が8種9個入る。
それぞれがとても個性的、悪気はないがまるで好き嫌いチェックのよう。全部がおいしく食べられたら、きっと国内の料理や食材に怖いものはない。私は梅干しとワサビが苦手なので、そのふたつに食感の良さを感じつつ、風味に泣きながら食べた。2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁。2011年頃までの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記1969(昭和34)年に発売。庄内米ササニシキの酢飯に天然物のゆで海老を載せた、寿司屋でよく見掛けるタイプの海老の握り寿司が6個、レモンとだし醤油付きで経木枠の長方形の箱の中に入っている。エビが見てつややか、食べてプリプリで、寿司屋で握ってもらう味に匹敵すると評判が良い。
改札内外に数軒の駅弁売店や駅そば屋がある和歌山駅でも、この商品は阪和線ホームでのみ販売されている。同じ売店でプラ容器のえびずしは、5個入り480円(当時)で販売されており、単価がえらく違うが不思議と共存している。価格は2003年の購入時で1,030円、2015年時点で1,100円。ホーム上売店の閉店により、2016(平成28)年1月限りで終売となった。
※2017年1月補訂:終売を追記入手状況等から1977(昭和52)年の調製と思われる、昔の和歌山駅弁の掛紙。シンプルだが風情のあるデザインだと思う。昔も今も柿の葉寿司の駅弁は土産物としての機能が大きいのか、この掛紙には例えば空き箱は列車のデッキへ等の、車中消費を意識した注意書きがない。