岡山駅から特急列車で約2時間半。松江市は島根県の県庁所在地で日本海と2つの湖に面する、人口約20万人の城下町。中心市街地にも水路が残る水の都に、年間約900万人の観光客が訪れる。駅弁は明治時代からの駅弁屋が、島根県の料理や食材にこだわった駅弁を駅弁売店に取り揃える。1908(明治41)年11月8日開業、島根県松江市朝日町。
2022(令和4)年10月14日に松江駅で発売、3月31日まで販売の予定。日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつ。ここではさらに、特急やくも開通50周年も記念して、既存の駅弁「山陰名物かに寿し」をリニューアルした。レトロ調の水彩画タッチとされる掛紙には、特急やくもと車内と駅弁のイラストを描く。
長方形の容器に、島根県産コシヒカリの酢飯を詰め、錦糸卵とカニそぼろで覆い、ベニズワイガニの棒身の酢漬けを並べ、しその実で彩り、ちくわ「あご野焼き」、とんばら漬け、わかめ佃煮、酢生姜を添える。掛紙には写真付きで食材の紹介があって分かりやすい。値段を気にしなければ、地元の名物も知られざる味も楽しめる、お食事向けに機能的なカニ駅弁だと思う。
岡山駅と出雲市駅を結ぶ特急やくもは、1972年3月のデビュー。新幹線岡山開業に合わせ、伯備線を経由して岡山駅と山陰地方を結ぶ特急列車を設定し、新大阪駅〜浜田駅の特急から名前を引き継いだ。1982年7月には振り子式電車、曲線の多い伯備線で車体を傾けて速く走れる381系電車に置き換えられ、以後40年以上もその電車を使い続ける。列車愛称の由来は、松江ゆかりの作家である小泉八雲(こいずみやくも)にちなんだとされることが多いが、実際はそのペンネームの由来でもある、松江が属した出雲国の名の由来からくる枕詞による。
松江駅のカニ寿司駅弁。甘酢御飯の上にカニの足が、細身ながら10本前後敷かれる。カニ寿司駅弁は、特に駅弁大会向けに遠隔地へ輸送する場合、酢漬けにされてしまうことが多いが、この駅弁は東京都内の駅弁大会で購入したにもかかわらず飯やカニの味を感じられた。価格は2003年の購入時で950円、2008年7月22日から1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円、2016年時点で1,100円、2018年時点で1,150円、2019年時点で1,200円。
※2023年2月補訂:値上げを追記2001(平成13)年の冬シーズンに発売か。中身は上記の駅弁「山陰名物かに寿し」と同じで、カニ味噌を入れたカップが追加されたもの。酢飯には島根産コシヒカリが使われる。10〜3月のみの販売。2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁。
戦前戦中の駅弁には掛紙に各種の標語が記されているものが多いが最近はまず見かけない。この駅弁には側面で目立たないが「ふれあいと 対話が築く 明るい社会」「人権を大切に」と印字される。底面には島根・広島・山口の交通地図を掲載し、一方で駅弁そのものの宣伝や情報は冬期の地方発送案内だけという不思議なもの。あるいは、公的活動という観点から調製元の地元経済界での地位の高さを示すものか。価格は2004年の購入時で1,000円、2010年時点で1,100円、2014年時点で1,150円、2016年時点で1,170円、2018年時点で1,200円、2019年時点で1,250円、2020年時点で1,370円、2023年時点で1,550円。
※2023年6月補訂:値上げを追記赤い長方形の容器を、中身のイメージ写真や駅弁の名前などを印刷したボール紙の枠にはめる。中身は酢飯の上にベニズワイガニの脚肉とほぐし身を敷いてシジミしぐれ煮を添え、かにしんじょう、汐ふき椎茸、とんばら漬けを添えるもの。具が飯に潜るから「もぐり寿し」の名が付いているはずが、見栄えのためか輸送対応か苦情でもあったのか、カニもシジミも酢飯の表面で味を出している。価格は2011年の購入時で1,100円、2014年4月の消費税率改定で1,140円、2016年時点で1,150円、2018年時点で1,200円、2019年時点で1,250円、2020年時点で1,330円、2023年時点で1,500円。
※2023年6月補訂:値上げを追記おそらく2007〜2008年の駅弁大会シーズンをにらんだ、2007年10月1日の発売。赤く小柄でフタがしっかり閉まる構造の容器を、やはりそれがぴったりと収まるボール紙の枠にはめる。その絵柄はカニで真っ赤っか。中身は赤貝入りの茶飯の上をカニのほぐし身と細めの脚肉で覆い隠して、やはり真っ赤っか。サツマイモ、こんにゃく、酢の物を添えてできあがり。
2008年1月の京王百貨店の駅弁大会では入手困難の人気だったそうな。見た目こそカニの分量感があるものの、絶対的に小柄なカニ飯で1,100円は高価に感じる。しかし食べて飯の内外に現れる赤貝の、カニと飯とのハーモニーはクセになる。価格は2008年の購入時で1,100円、2014年4月の消費税率改定で1,140円、2016年時点で1,150円、2018年時点で1,250円、2019年時点で1,300円、2020年時点で1,420円、2023年時点で1,600円。
※2023年6月補訂:値上げを追記JR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の実施に伴い、2004(平成16)年5月1日に発売。江戸時代の長持ちをイメージしたという、けばけばしさの中に落ち着きもある柄の容器に、同じ柄の掛紙をかけてゴムでしばる。中身は、島根ワイナリーの赤ワインで薄紫色に染めた酢飯を敷き、木次のチーズ、八束の朝鮮ニンジン天などが入るちらしずし。
飯とチーズを中心に独特の風味を感じるなど、内容も中身もだいぶ個性的。調製元が「美容と健康」「地産地消」をテーマに三年間の構想期間を経て商品化したそうで、駅弁の名前のとおり中高年の女性によく売れているという。2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁。価格は2004年の購入時で1,100円、2008年7月25日から1,200円、2014年4月の消費税率改定で1,240円、2020年時点で1,400円。
※2023年2月補訂:値上げを追記出雲大社の遷宮を記念して、2013(平成25)年1月の阪神百貨店の駅弁大会でデビューか。長方形の容器に酢飯を敷き、サバほぐし身、カニ酢漬けのほぐし身、シジミの時雨煮で覆い、生姜や黒豆やインゲンなどを添えるもの。駅弁として悪くない味だが、見た目の個性と見栄えのツヤがないため、満員の客で賑わう大都会の百貨店の催事場ではとても地味であり、実演販売ブースではずっと客待ちをしていた。価格は2013年の発売時や購入時で1,050円、2016年時点で1,060円。2018年頃か2020年までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記