新山口駅から特急列車で約1時間。津和野町は島根県の南西端に位置する、人口約7千人の城下町。観光列車「SLやまぐち号」の終着駅であるとともに、山陰の小京都と称される町並みに年間で100万人以上の観光客が訪れる。駅弁は1960年頃に出現し、1977年から駅舎内のうどん店で売られていたが、2021年5月限りで閉店した。1922(大正11)年8月5日開業、島根県鹿足郡津和野町大字後田。
1960年代の発売か。他の津和野駅弁と同じく、経木枠の正方形の容器に経木のふたをして、正方形の掛紙をかけてビニールひもでしばる。その掛紙には「SL復活運行記念」の文字があり、マニアックに見ると蒸気機関車や客車の外観が現在と異なる運行開始時のスタイルなので、おそらく1979(昭和54)年8月当時の絵柄がそのまま使われていたのだろう。
この容器の半分に白飯を敷き、鶏肉そぼろ煮と錦糸卵と刻み海苔で覆い、プラ製トレーに小女子(いかなご・こうなご)佃煮、昆布巻、きんぴら、かまぼこ、漬物、山菜の付合せを詰める。見た目と内容は、九州北部のかしわめしと同じで、駅弁ではその上等版にあたる。風味はそれらに違い、鶏飯の感じが薄い淡泊さ。価格は2004年時点で730円、2015年時点で800円、2020年時点で900円を経て950円、2023年時点で1,000円。駅のうどん店が2021年5月限りで閉店し、駅弁も終売となったが、調製元では予約により買えるほか、ほどなく観光列車の発着に合わせて津和野駅でも売られるようになった。
国内の蒸気機関車は、その動力近代化計画により1975(昭和50)年度で全廃されたが、末期のSLブームと、全廃の翌年にSL列車を復活させた大井川鉄道の盛況を受けて、国鉄でも観光SL列車を走らせることにした。全国の誘致活動のライバルを退けて山口線が選定された理由は、沿線に市街地が少なく観光地があり、転車台や給水塔など蒸気機関車の運行に必要な施設が残っていたからとされるが、当時は関東や関西と山口との間に新幹線以外の交通機関が乏しかったことから、赤字国鉄に収益が大きい場所を選んだのではとの陰口が聞かれた。
※2023年7月補訂:写真を更新2004(平成16)年10月3日に購入した、津和野駅弁の掛紙。上記の2023年のものと、ほぼ変わらない。価格と「調整」と消費期限を捺印するところも変わらない。容器も中身も変わらない。津和野駅弁の売り場がなくなり、駅が改装され、駅員がいなくなり、駅弁はSL発着時にのみ売りに来るようになったのが変化。
津和野駅でSL列車の運転日にのみ販売した、知られざる駅弁。長方形の経木枠の容器を、幕の内駅弁の掛紙に「鮎」の朱印を押した厚手の掛紙で包む。中身はニンジンやシメジなどの五目飯の上に焼アユがまるごと1本載り、玉子焼や大根桜漬などを添えるもの。アユの少々の骨っぽさも含め、見栄えも風味も素朴の塊。価格は2011年の購入時で840円、2015年時点で870円、2020年時点で900円を経て950円、2023年時点で1,000円。駅のうどん店が2021年5月限りで閉店し、駅弁も終売となったが、調製元では予約により買えるほか、ほどなく観光列車の発着に合わせて津和野駅でも売られるようになった。
山陰の小京都と称される津和野は、縄文時代から人が住み、鎌倉時代からの城下町であり、明治時代に活躍した作家である森鴎外ゆかりの地であるが、第二次大戦後まで江戸時代の町並みが残されてしまうような田舎であった。ここに昭和40年代、当時の人気雑誌2誌に語源を持つ「アンノン族」と呼ばれる若い女性が観光客として押し寄せる。津和野の観光地としての立ち上がりはこの頃であり、以後は環境保全条例の制定、史跡の保存や町並みの整備などにより、同時期に観光地化した萩とともに現在の地位を築く。
※2023年6月補訂:値上げを追記他の津和野駅弁と同じく、経木枠の正方形の容器に経木のふたをして、正方形の掛紙をかけてビニールひもでしばる。中身はワラビ・ゼンマイ・姫竹・キクラゲ・えのき茸・フキの混ぜ御飯と、鮎塩焼や蕗佃煮や玉子焼などとみかんスライス。山菜の味や香りが豊かで、しかし苦みや臭みは薄い、とても食べやすい山菜弁当。
2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁。価格は2004年の購入時で840円、2015年時点で870円、2020年時点で1,000円を経て1,050円。10〜5月の販売。駅のうどん店が2021年5月限りで閉店し、駅弁も終売となったが、調製元では予約により買えるほか、ほどなく観光列車の発着に合わせて津和野駅でも売られるようになった。
掛紙にも記されるとおり、津和野の地名はキク科の常緑多年草であるつわぶきの生い茂る野に由来する。よく山口県と勘違いされるが島根県の最西端、山陰の小京都で「SLやまぐち号」の終着駅。市内の水路にはかつて非常食用として放たれたコイが泳ぐ。
※2023年4月補訂:現況を追記津和野駅の幕の内弁当。他の津和野駅弁と同じく、経木枠の正方形の容器に経木のふたをして、正方形の掛紙をかけてビニールひもでしばる。掛紙の背景は毎年7月下旬に津和野市街で開催される鷺舞(さぎまい)の風景で、その由来が掛紙に記される。中身は日の丸御飯にメンチカツや玉子焼やエビフライや焼鱒など。価格に見合うような高級感はないが、手作り感はたっぷりあり、その線で味はよい。
容器や掛紙のデザインに加え、御飯たっぷりでおかず少量な中身も、昔の駅弁の雰囲気を出しており、あとはSL列車向けに立売でも実施されればさらに味が出るが、運行時間帯の影響か、団体客はドライブインやホテルで食事を取るためか、駅でも車内でも弁当が売れている雰囲気はなかった。価格は2004年の購入時で950円、2015年時点で980円。予約販売とされる。駅のうどん店が2021年5月限りで閉店し、駅弁も終売。調製元では予約により買えるそうな。
※2021年6月補訂:終売を追記他の津和野駅弁と同じく、経木枠の正方形の容器に経木のふたをして、正方形の掛紙をかけてビニールひもでしばる。掛紙のカニのイラストの下の写真は、毎年7月下旬に津和野市街で開催される鷺舞(さぎまい)の風景。ここに「つわの恋・来い」の文字、原材料名、調製印、消費期限印、価格と5種類もの捺印がある。
中身は山陰地方の他のカニ寿司駅弁と同じく、酢飯の上にカニほぐし身が敷き詰められるもの。味にパンチ力はないが、カニの風味をほのかに感じられる。価格は2004年の購入時で840円、2015年時点で870円。もう販売されていないと思われる。
津和野は毎年百万人以上の観光客が訪れる一流観光地であるが、そのほとんどがマイカーや観光バスで訪れるためか、道路は渋滞するのに特急はわずか二両編成で事足りて、駅は閑散としている。駅弁も事実上全種類が要予約か注文調製なようで、改札とコンコースと待合室を兼ねた部屋の隅にあるそば屋で注文する。
※2021年3月補訂:終売を追記