東京駅から新幹線で約3時間半。岡山市は岡山県の中央に位置する、人口約71万人の城下町で県庁所在地。市街に複数の百貨店を抱える商業、臨海部や内陸部に工業団地を抱える工業や、桃や米などが特産の農業が盛んであるほか、新幹線に8方向からの在来線が集まる鉄道の要衝でもある。駅弁は明治時代の鉄道開業当時からの駅弁屋の駅弁から、地元の弁当屋が駅構内の店舗に卸す弁当まで、様々なものを朝から晩まで選べる。1891(明治24)年3月18日開業、岡山県岡山市北区駅元町1丁目。
岡山駅の駅弁売り場で買えた太巻き寿司。調製元も売り場も間違いなく、岡山駅弁の三好野本店だが、これが駅弁と紹介されたことを見たことがない。掛紙の絵柄や、細長い折箱に太巻き寿司を6切れ折り重ねて掛紙を巻く姿は、昭和30年代や第二次大戦前の駅弁だと言われても信じてしまいそう。「消費期限」やリサイクル識別マークや食品表示の存在で、21世紀の商品であることに気が付く。商品名は掛紙で「御寿司」、食品表示で「三好野上穴子巻き寿司」。玉子焼と焼穴子と、かんぴょうと高野豆腐、きゅうりと椎茸と高菜漬を、酢飯と海苔で巻いた、具だくさんで実用本位の太巻き寿司。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2021(令和3)年秋の新商品か。四角い容器に酢飯を詰め、錦糸卵で覆い、真鯛の醤油漬け、焼穴子、えび、いくら、玉子焼、れんこん、黒豆を散らし、鶏肉天ぷら、かに風味かまぼこ、にんじんを添える。名物か名産なのか何なのか、よくわからないけれど食べておいしかったと思えるお弁当。2022年7月限りで終売。
※2022年9月補訂:終売を追記2022(令和4)年1月1日に発売。中身はスリーブの写真や商品名のとおり、茶飯に国産真鯛の醤油漬けとネギのトレーを載せて、胡麻だれとわさび小袋を添えて半分、酢飯を錦糸卵や玉子焼とローストビーフで覆い、イクラを載せて紅生姜を添えてローストビーフソースの袋を被せて半分。右と左で味も中身もまるで異なる構成は、ひとつでふたつの内容を楽しめると思うか、組合せのミスマッチを嘆くか。高価な駅弁で、収穫報告がほとんどみられない。2022年で終売か。
※2023年6月補訂:終売を追記JR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の開催に合わせて、2004(平成16)年5月1日から翌年の3月31日まで販売された期間限定駅弁で、2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁。以後も散発的にネット上での収穫報告が見られる。2010年代まで売られたか。
ふたと底面が紙製の長方形の容器を、まるで土産物のように糊付包装紙でしっかり包むので、うまくはがせずボロボロになった。中身は駅弁では珍しくさび抜きでない、小鯛二個・さわら二個・ままかり三個の、岡山県産朝日米での握り寿司。
品質は良く、鰆と小鯛は美味いものの、ママカリは主観でどうしてもそれらに劣り、岡山県民には大変に失礼だが岡山に何のゆかりもない者から見て、名物に旨いものなしだと思う。万人が賞賛できるものであれば、少なくとも瀬戸内地方一帯のエリアに広まっていたはずで。
1982(昭和57)年に発売。長方形の容器の中にママカリのにぎり寿司が配列されている、シンプルな駅弁。ママカリとはニシン科の小魚で「さっぱ」とも呼ばれ、酢で締めると御飯を近所から借りてくるくらい食が進むので「ままかり」の名が付いたのだとか。岡山の駅弁にはたいてい入っている。埋立の進展で、岡山駅は海からかなり遠くなった。2013年頃に終売か。
※2015年10月補訂:終売を追記酢飯の上に錦糸卵が敷かれ、その上に穴子の蒲焼きと煮穴子の刻みにスライス椎茸が載る。わさびマヨネーズの効果で、寿しと名乗るのに酸味よりむしろ甘みを感じ、各食材の味付けが絶妙に合って口の中で溶けるような食感。瀬戸内に広がる穴子駅弁の中でもおすすめの一品。2013年頃までの販売か。
※2015年10月補訂:終売を追記JR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の実施に伴い、2004年5月1日に発売。長円形経木枠の容器に鰆(さわら)をあぶって載せた棒寿司が一本入る。味はまさに焼き魚定食、棒寿司でもバッテラでもなく、御飯の上に焼き魚が載った感じで、そう考えればなかなかいける。調製元は岡山市内の割烹料亭らしい。
岡山は鰆の消費量が全国一で、刺身やしゃぶしゃぶなど他地域では見られない多様な食べ方があるそうで、鰆料理を岡山名物に育てようという動きがある。2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁。2005年頃までの販売か。
※2015年10月補訂:終売を追記2003年のNHK大河ドラマ「武蔵MUSASHI」放送に先立ち、2002(平成14)年12月2日に「おかやま和牛肉弁当武蔵」の名で発売。コンパクト感のある経木枠の容器に公式ロゴを印刷したボール紙のふたをする。中身は酢飯の上に錦糸卵と岡山県北部産の黒毛和牛の時雨煮が載るもの。酢飯に牛肉という組み合わせは個人的に好まないが、他の駅の駅弁でも存在するし最近は郊外型回転寿司チェーンで流れていたりするので、合うと思う人が多いのだろう。やや少量にして高品質な駅弁。武蔵の二刀流を表現した2本のプラスティックナイフは、たぶん飾りもの。現在は売られていない模様。
宮本武蔵の生誕地には諸説があり、岡山県英田郡大原町、兵庫県高砂市、兵庫県揖保郡太子町の三箇所に生誕地の碑が建つが、NHK大河ドラマの原作となった吉川英治の長編小説では大原説を採る。旧国鉄の未開業線である智頭線を引き受けて1994年12月に開業した智頭急行は、開業に際して武蔵生誕の地の近くに小さな「宮本武蔵」駅を追加しており、鉄道ファンには既知の内容であったが、メディアではこんな駅があるとスクープ的に取り扱われた。
なお、2004年5月1日から、中身を変えずにフタのNHKロゴマークや中のナイフを削除し、商品名を「おかやま和牛肉弁当」に変更している。これが2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁。
※2013年5月補訂:終売を追記昭和20年代のものと思われる、昔の岡山駅弁の掛紙。漢字が右上スローガンの「駅」は新字体で価格は旧字体であるが、当時は両者が混用されていたのだろうか。
1972(昭和47)年9月30日の調製と思われる、昔の岡山駅弁の掛紙。同年3月に新幹線が岡山まで延伸開業しており、そのキャッチフレーズが国鉄全国のキャンペーンロゴより上方に掲げられる。掛紙写真は下記の1977年頃のものと同じように見えるが、間違い探しのように両者を比べると異なっている。
入手状況から1977(昭和52)年の調製と思われる、昔の岡山駅弁の掛紙。瀬戸内海の島々を俯瞰したと思われる風景写真のみを載せる。このようなデザインの掛紙は、最近はとても少なくなったと思う。