新大阪駅から新幹線と普通列車を乗り継いで約3時間。防府市は山口県の中部で瀬戸内海に面する、人口約11万人の門前町かつ港町かつ工業都市。古くは周防国分寺や現在の防府天満宮が置かれた行政と交通の拠点で、かつては塩田による製塩業で、戦後は塩田跡地への工場誘致で工業都市として栄える。駅弁は国鉄時代からの駅弁屋「木村寿軒」が手掛けていたが、2010年以降に撤退した模様。1898(明治31)年3月17日開業、山口県防府市戎町1丁目。
2010年の購入当時で、防府駅で唯一の駅弁。駅弁の名前は、店舗の外側での掲示で「サービス駅弁当」、店舗内で「ニュー駅弁当」、食品表示ラベルで「お弁当」と異なるが、1種類しかないので混乱はない。スーパーの惣菜で使われるようなプラ製容器に、日の丸御飯、ハンバーグ、玉子焼、鶏唐揚、肉団子、こんにゃくなどの煮物、牛肉煮?、ひじき、きゅうりサラダが入っていた。感想を述べるような内容や風味ではない、弁当の日用品。
食品表示ラベルには引き続き「構内営業中央会会員」の文字が光る。しかしこれを駅弁と思う人は誰もいないと思うし、市販の時刻表にも掲載がなく、日本鉄道構内営業中央会やその西日本支部の公式サイトでもこの存在が無視されている。
この駅弁は、2016年3月時点で売られていなかった。終売の時期は不明だが、木村寿軒のそば屋の経営は小郡駅弁当に移管され、同社の廃業によりジェイアールサービスネット広島の経営になった模様。
※2016年7月補訂:終売を追記2004年の購入当時で、防府駅で唯一の駅弁。ボール紙の箱に白いプラ製のトレーを入れる汎用の弁当容器を使用。これに掛紙の代わりか、JR西日本エリアの駅弁業者の公式サイト「駅弁図鑑」のパソコンと携帯電話でのアクセス方法を記す紙を挟むが、実は防府駅弁の情報はそこに出ていない。
中身は昔懐かしい高級惣菜弁当、日の丸御飯に塩辛な焼鯖に冷凍物のミニハンバーグやチキンナゲットといった具合で、はっきり言ってあまりうまくない。同じく高架下に店舗を構えるコンビニで弁当を買ったほうがコストパフォーマンスも良い。
しかし、これを販売するうどん店には壁のメニューに「お弁当」を掲げ、看板に記し幟を立てカウンターで毎日一定数が販売され、昼間の特急など都市間列車が来なく一日の利用者が1万人に満たない駅で、目の前にコンビニがあるのに駅弁が存続しているのなら、地域に根付いた名駅弁に数えられるべきかもしれない。なお、2010年3月現在で販売休止中だそうな。後に調製元の撤退により終売。
※2016年7月補訂:終売を追記1960年代のものと思われる、昔の防府駅弁の掛紙。防府天満宮、太平山とロープウェイ、そのあたりから見下ろした防府市街が描かれる。
1960年代のものと思われる、昔の防府駅弁の掛紙。絵柄は上の掛紙と同じ。こちらには駅弁の値段が入っている。
1936(昭和11)年1月11日の調製と思われる、昔の三田尻駅、現在の防府駅の駅弁の掛紙。駅の北約1kmにある防府天満宮を描いたのかどうか。調製元の木村は1898(明治31)年の三田尻駅の開業時から2010年代まで、この駅でひっそりと駅弁を販売した。
1930(昭和5)年8月不明日の調製と思われる、昔の三田尻駅、現在の防府駅の駅弁の掛紙。1962(昭和37)年10月まで、現在のJR山陽本線防府駅は「三田尻(みたじり)」駅だった。価格と品名と駅名と調製元の名のみを記した、シンプルすぎる掛紙。