博多駅から新幹線で約35分。新山口駅は2003年9月まで小郡(おごおり)駅で、2005年9月まで小郡町に属した。小郡は人口約2万人の宿場町で、山陽道と山陰道が、国道2号と9号が、山陽本線と山口線が接続し山陽新幹線が停車した交通の要衝。隣接する県庁所在地の山口市に囲まれた後にその一部となった。駅弁は1910(明治43)年からの駅弁屋が2015年4月限りで撤退、以後は広島駅の駅弁の一部が売店に入荷する。1900(明治33)年12月3日開業、山口県山口市小郡下郷。
2021(令和3)年10月に発売。蒸気機関車の故障や法定検査で丸一年運休した山口線のSL列車「SLやまぐち号」の運行再開に合わせて、ジェイアールサービスネット広島が従前の「SL弁当」をリニューアルしたというが、新山口駅の駅弁を調製する広島駅弁当による新発売に見える。2022(令和4)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売、続く阪神百貨店と鶴屋百貨店でも販売。
正方形の容器にかけたボール紙のふたには、元祖牽引機で現在故障中の蒸気機関車C57形式1号機のイラストを描いた。中身はその内面に記されるとおり、ふくめし(フグ飯)、岩国寿司、長州どりタレ焼、おばいけ(さらしくじら)、仙崎蒲鉾、大平(レンコン入り煮物)、寒漬(大根の漬物)、日本酒ゼリー、源氏巻など。SLやまぐち号が走る「山口・津和野の食文化」を濃密に詰め込んだ力作。催事場ではシンプルでない内容が大苦戦も、現地で汽車と味わえば旅が深まると思う。
日本鉄道構内営業中央会が駅弁誕生135周年を記念して、会員のうち21社が2020(令和2)年4月10日から販売した、駅弁の原点であるおにぎりをメインとした記念弁当「駅弁誕生135周年おにぎり弁当」の、広島駅弁の広島駅弁当バージョン。同社は山口県内の駅弁屋を吸収したり、福岡県の博多駅の駅弁屋を継承した経緯からか、この山口版と、広島駅版の「廣島おにぎり弁当」と、福岡版の「博多かしわおにぎり弁当」の3種類を、同じ容器と似た掛紙で発売した。
掛紙にはこのキャンペーンに共通の駅弁マークを使わず、フグを描く。中身はフグ天むすび2個、しそわかめおにぎり1個、鶏肉、かまぼこ、つみれ、コンニャク、大根漬など。御飯たっぷり、おかずしっかりで、腹持ちがしそう。4月の東京駅と、おそらく新山口駅と。翌2021年1月の阪神百貨店の駅弁大会で販売。
2020(令和2)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で輸送販売。百貨店のチラシに「販売終了平成27年4月」「復刻令和2年1月」とあり、下関の駅弁屋を引き継いだ新山口駅の駅弁屋をさらに引き継いだ広島駅の駅弁屋の商品なので、過去に下関駅で売られた駅弁と考えられるが、名前も中身も思い当たらない。形状のみ過去の下関駅弁「ふく寿司」に似る容器に、茶飯を詰め、濃色と単色のフグ唐揚を3個ずつと、海苔と漬物を載せていた。フグの唐揚げ弁当。2022年で終売か。
※2023年4月補訂:終売を追記かつての下関駅の名物駅弁「ふく寿司」について、2010(平成22)年の駅弁屋の廃業により新山口駅の駅弁屋に引き継がれてこの駅での販売も開始、2015(平成27)年の駅弁屋の廃業によりさらに広島駅の駅弁屋に引き継がれて、広島駅と新山口駅で販売されているもの。
駅弁の見た目や内容は、この2度の変遷を経ても変わらない。駅弁の名前も「ふぐ」でなく、下関駅弁当時代の「ふく」を踏襲する。真ん丸のプラ容器に酢飯を詰め、錦糸卵で覆い、ふぐ酢漬けを並べ、えび酢漬け、ふぐ皮酢漬け、しいたけ、中華風わかめを散らし、うにくらげを添える。今回はふぐの酢漬けが激烈に酸っぱく、これは偶然か、調製元の再々変更による変化か。2021年までに終売か。
※2022年4月補訂:終売を追記1990年代か、それ以前から販売されている駅弁。小柄で深めの容器に透明なふたをして、駅弁の名前を書いた赤い掛紙ですっぽり包み、ビニールひもで十字にしばる。中身は小さなおにぎりというか大きなのり巻き俵飯が、白飯2個とカツオ1個とワカメ1個で入り、かまぼこ、玉子焼、コーンコロッケ、焼きサバ、ウインナー、たくあんを添えるもの。
内容も分量も風味も雰囲気も、確かなるおにぎり弁当。特徴がないと感じるかもしれないが、こういうタイプの駅弁が一時でなく売られる駅は本当に少ないから、小郡というか新山口の地元や旅客に親しまれているのだろう。駅弁ファンとしては容器の形状もいい感じ。価格は2010年の購入時で580円、2014年4月の消費税率改定で600円。調製元の弁当事業からの撤退により、2015年4月30日限りで終売。
※2015年5月補訂:終売を追記山陽新幹線博多開業30周年を記念して、2005(平成17)年1月23日から9月30日まで販売された、沿線12駅10駅弁業者による「復刻!懐かしの駅弁」シリーズのひとつ。1975年頃に当時の小郡駅で販売されていた、400円の鱒寿司を復刻したという。
昔ながらの駅弁らしい総経木製の折箱を、見るからに昭和してる掛紙で包み、ビニールひもでしばる。ラップに包まれた中身は、昔は駅弁としてありふれていて、今は無予約ではまず買えなくなった、ニジマスの姿寿司。魚の酸味と飯の甘味がよく合っている。その世代には懐かしさを提供し、現代には絶対に生き残れないだろう内容の駅弁。
JR西日本にとっては、2004年度「駅弁の達人」に続く駅弁キャンペーンであったが、4月25日の福知山線事故による自粛ムードのなか、有耶無耶に終わってしまった。
小郡駅のかしわめしは、1960(昭和35)年4月の発売。正方形の経木枠の容器を、ニワトリの顔をデフォルメしてどアップにした絵柄の掛紙で包む。中身は鶏ガラスープとごぼうで炊いた御飯の上を、錦糸卵と鶏そぼろと刻み海苔のストライプで覆い、鶏照焼、玉子焼、かまぼこ、揚げ焼売、昆布巻、タケノコ、奈良漬、パイン、紅生姜を添えるもの。
北部九州で名物であるかしわめし駅弁と同類だが、こちらはストライプの境界線があいまいで、おかずの量や種類は多め。掛紙の大きな大きな鶏顔に、ゆるキャラに通じる味わいがある。価格は2011年の購入時で780円、2014年4月の消費税率改定で800円。調製元の弁当事業からの撤退により、2015年4月30日限りで終売。
※2015年5月補訂:終売を追記1995(平成7)年に小郡駅で発売。松花堂タイプの経木枠の容器に、蒸気機関車とその運行経路を印刷した掛紙で包む。中身はワカメをかけた大きな俵飯、ちらしずし、白身魚フライとハヤ甘露煮にタケノコやシイタケなどの煮物、かまぼこと玉子焼と鶏唐揚とリンゴとはりはり漬。
資料を探せば沿線の名物を入れたと紹介されているが、これも掛紙では単なるイラストにしか見えないことが惜しいところ。また、御飯に対しておかずが少ない印象も受ける。価格は2011年の購入時で780円、2014年4月の消費税率改定で800円。調製元の弁当事業からの撤退により、2015年4月30日限りで終売。後継の広島駅弁当によりほどなく再発売、上記の駅弁「SLやまぐち弁当」と交代し2021年秋に終売か。
1979(昭和54)年に国鉄唯一のSL列車として登場した「SLやまぐち号」は、その後北海道から熊本まで日本全国で登場したSL列車に隠れすっかり地味な存在になったが、現在でも毎シーズンの運行が続けられ、この地域の観光になくてはならぬ存在である。
※2022年4月補訂:再発売と終売を追記JR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の開催に合わせて、2004(平成16)年5月1日に発売。柄物の正方形の容器に「山口」「萩」「津和野」の文字と各風景を並べた掛紙を使用する。正方形十字分割の松花堂弁当タイプの中身は、津和野のイメージで山菜御飯、山口で柚子味噌、萩名物の夏みかん、他にちらし寿司や穴子天や白身魚フライに玉子焼や煮物など。テーマが散漫な気がするが、個々の食材の味はよい。2004年度JR西日本「駅弁の達人」対象駅弁。現在は売られていない模様。
山陽鉄道開業以来百年の歴史を刻んだ「小郡(おごおり)」駅は、2003年10月1日の新幹線ダイヤ改正を機に現駅名へ改称。JR西日本が新幹線「のぞみ」停車の条件として駅名改称を地元に突き付けたもので、改称費用4億2800万円をJR50%、山口県25%、市町村25%の割合で負担した。1975(昭和50)年の山陽新幹線岡山・博多間延伸開業の際にも駅名改称が提案されたが、その時は地元や小郡町が強硬に反対して実現しなかった。
昔から小郡町は山口市と合併すべきという意見があり、2003年3月にはいわゆる平成の大合併により山口市・防府市・小郡町・秋穂町・徳地町・阿知須町の二市四町が合併協議会を設置したが、防府と小郡の反対で翌年5月に休止された。
しかし直後に防府市を除く5市町で合併協議会が再設置され、2005年10月1日に遠方から見ればめでたく、地元から見ればおそらく無念の合併により、山口県の県庁所在地である山口市の一角となった。
※2013年5月補訂:終売を追記昆布とカツオの出汁で炊いた御飯の上に、特製のタレで焼いた穴子蒲焼が6切れ載り、付け合わせとともに長方形で木製風の容器に入り、掛紙をかける。こんなことを書くと駅弁屋さんに怒られそうだが、有名な宮島口駅「あなごめし」の廉価版と言えよう。風味は良いが、味はそれなり。2010年の徳山・新山口・下関の駅弁屋の合併により、これは徳山駅の名物駅弁「特製あなごめし」に置き換えられたと思う。
※2015年1月補訂:終売を追記テレビ山口の情報バラエティ番組「週刊ちぐまや家族」での企画で、2005年8月13日に発売した地産地消の弁当。番組と駅弁屋が協力し、山口県立大学栄養学科安藤真美研究室の監修により登場。パッケージには野菜類のイラストと、番組のロゴマークや出演者などが描かれる。
野菜いっぱいのヘルシーなお弁当という中身は、下段が山口県産米のじゃこ飯、カボチャ煮、青菜しめじ、上段が蒸し鶏、レンコン挟み揚げ、厚焼き玉子、ブロッコリー辛子漬、プチトマト、酢ハスなど。確かに野菜が各所に配され、彩りが豊かで、しかしおかずに困ることもなく、食べ甲斐と食べ応えのある内容。
特にうたわれていないが、地元の食材を使用しているといい、女性に人気だという。一日20個限定。価格は2013年の購入時で900円、2014年4月の消費税率改定で930円。調製元の弁当事業からの撤退により、2015年4月30日限りで終売。
※2015年5月補訂:終売を追記新山口駅の幕の内駅弁。今の名前になったのはいつからだろうか。長方形の容器を、山口名物の写真7点を印刷した白い掛紙で包む。6区画に分けられた中身は、じゃこと梅を載せた俵飯、かまぼこと玉子焼と焼鮭とうぐいす豆、ふぐ天とブロッコリーと鶏唐揚、エビや昆布巻などの煮物、牛肉煮と桜焼売と夏みかん、ちらしずし。
幕の内駅弁の雰囲気がまるでなく、肉を除き味も良く、中身と掛紙で間違いなく山口の名物や名所を取り上げていると思うが、余所者な旅行者に対してはせめて名称でも書いて欲しいところ。価格は2011年の購入時で950円、2014年4月の消費税率改定で980円。調製元の弁当事業からの撤退により、2015年4月30日限りで終売。
「きらら」とは、直接には2001(平成13)年に山口県山口市で開催された地方博覧会で、そのテーマ「いのち燦(きら)めく未来へ」に関連付けたものか。以後、県内では「きらら」が付く施設や商品が出始めてきている印象。
※2015年5月補訂:終売を追記JR西日本管内の九州新幹線全線開業記念駅弁12種のひとつとして、2011(平成23)年3月12日に発売。桜花柄が印刷された松花堂タイプの容器を、中国四国九州の地図に高杉晋作と西郷隆盛の写真や桜花や駅弁の名前を描いた掛紙で包む。4区画の中身は日の丸御飯、黒豚めし、かまぼこと玉子焼とふく天とクジラ竜田揚と漬物、有頭海老にレンコンやきぬさやなどの煮物と夏みかんとチェリー。
中身はかつての薩摩と長州、現在の鹿児島県と山口県にちなんだという。確かにそんなコンセプトを思わせる食材が入り、記念駅弁にしては整然ときれいで分量も確保された佳作なのに、一切の解説文や宣伝文を排しているため、これでは山口や鹿児島が伝わらないと思う。発売開始直後は一日100個が売れる人気駅弁になったという。価格は2011年の購入時で950円、2014年時点で980円。調製元の弁当事業からの撤退により、2015年4月30日限りで終売。
※2015年5月補訂:終売を追記2003(平成15)年11月4日に発売。その前日に放送された瀬戸内海放送、山口朝日放送、愛媛朝日テレビ、広島ホームテレビの瀬戸内地区テレビ局4社の共同製作番組「ふるさと駅弁大賞」で企画制作された駅弁。これは同年10月ダイヤ改正に伴う小郡駅の新山口への駅名改称と、山口県萩市の出身で日本の鉄道の父と呼ばれる井上勝の生誕160年を記念したという。
SLやまぐち号と駅弁の中身の写真をレトロ風にデザインした紙枠を使用、宇部全日空ホテル総料理長の中山氏が、井上勝の留学先であるイギリスをイメージしてプロデュースした中身は、山口県周東町高森牛のローストビーフ、創始者である井上勝他2名の名を農場名に一字ずつ入れた岩手県小岩井のスモークチーズ蒲鉾、萩夏みかんの絞り酢、そしてカレー風味の牛肉大和煮、スコッチエッグやスモークサーモン、俵飯にサンドイッチなど。
高価格帯シティホテルの朝食バイキングに匹敵する、駅弁には悪いが駅弁の枠を越えた上品で良質なお食事に感じ、実際に本格派の洋風弁当として購入者に高い評価を受けているようだ。同じテレビ番組で生まれた他県の3駅弁は早々と売りやめたが、これは2007年時点でも販売が続いた。2004年度JR西日本「駅弁の達人」対象駅弁。現在は売られていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記2012(平成24)年4月7日に発売。パッケージには山口県内の観光資源である瑠璃光寺五重塔、秋吉台、青海島、下関のふく(フグ)、萩の夏みかん、SLやまぐち号を描く。9区画の中身は、山口県産米の日の丸御飯、ゆかりめし、穴子飯、ちらしずし、シロサバフグ甘酢漬、エビとししとうの揚げ物、茶そば、平天やニンジンなどの煮物類、みかんゼリー。
山口ゆかりの料理を詰め合わせたというが、図画にも中身にも一切の解説がないため、予備知識がないとそんな山口の満載に気が付かない、新山口駅版なんでもまるごと駅弁。価格は2013年の購入時で1,100円、2014年4月の消費税率改定で1,130円。調製元の弁当事業からの撤退により、2015年4月30日限りで終売。
※2015年5月補訂:終売を追記1960年代のものと思われる、昔の小郡駅弁の掛紙。「国鉄 中国車内販売 株式会社」の印も押されるため、車内販売で売られた弁当だろう。瑠璃光寺(るりこうじ)五重の塔、ザビエル記念聖堂、秋吉台国定公園という、小郡駅(新山口駅)からは遠い名所が描かれる。
1960年代のものと思われる、昔の小郡駅弁の掛紙。2015年の小郡駅弁(新山口駅弁)の終焉まで残った「かしわめし」と、同じような内容だったのではないかと思う。ニワトリと卵が、なんとなく描かれる。